4. ヘルステックのフル活用
chocoZAPの急成長の要因としてヘルステックの活用が不可欠である。chocoZAPアプリは、入退会、日々の入退館、混雑情報の確認、ライフログ・顧客特性からAIが最適な運動を提案、おすすめ動画の配信、継続を支えるゲーム機能(くじ引き・すごろくなど)、顧客同士のコミュニティ機能などで不可欠な存在となっている。また、各店舗に平均10台設置された監視カメラ映像をAIが解析し「不審な行為」や「転倒」を検知した場合には、適切な対処を遅延なく行える体制が整っており、無人店舗のセキュリティ確保に大きく貢献している。また、体組成計、ヘルスウォッチ、様々な新規アプリによるライフログの蓄積は顧客サービスにおいて重要な役割を果たしている。
RIZAPグループ<2928>は2022年6月にDX専門子会社であるRIZAPテクノロジーズ(株)を新設した。Web・UIUXデザイナー、デジタルマーケター、データアナリスト、エンジニアなどのDX人財を積極的に採用し、育成している。現在では、同社のDX人財は総勢130名超となり、ヘルステック企業としてだけでも大手に位置付けられることになる。内製化率100%となったことでナレッジ資産蓄積や開発速度の向上が成果として顕在化する。筋トレやトレーニングジムの業界にはない発想と専門性で、chocoZAP事業の集客や満足度向上に貢献している。
5. 大きな出店ポテンシャル
chocoZAPは大都市を中心に店舗網を広げ、2024年8月14日現在で1,597店に拡大した。同社では、中期経営計画2026年3月期に2,800店、2027年3月期に3,800店、長期的には1万店以上を目指すというビジョンを掲げている。その背景には、小商圏で確実な会員獲得や収益化が可能であることに確信を持っている点がある。chocoZAPの店舗利用者は1km以内に居住する人が60%、2km以内に居住する人が85%である。逆に言えば、1〜2km圏内に一定以上の人口があれば成立する小商圏ビジネスモデルと言える(コンビニエンスストアの商圏は500m前後と言われている)。また、地方都市への拡大も可能性を広げた。2024年6月末時点では、既設店舗の63%が大都市店舗(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県)であるのに対し、37%はそれ以外の地方都市の店舗であり、地方都市の店舗の比率は上昇し続けている。店舗当たりの会員数では大都市店舗を下回るものの、固定費を安く抑えられることで十分収益性が成り立つ。
新たな立地の可能性が示されている。都心において10坪から20坪の小規模店舗の出店も始まっており、洗濯・乾燥機のみ、カラオケのみなど機能を絞った店舗が成立する可能性がでてきた。2024年5月には、高速道路店舗である「chocoZAP日本平PA(上り、E1東名高速道路)」が開店した。地方自治体と連携した「官民連携コンビニジム」も2店舗オープンしており、商圏人口が少ない中でも運営・収益化が可能であることを証明した。2024年6月には、研究施設内出店として湘南アイパーク店をオープンし、フィットネス補助が働きやすさや業績の向上に繋がるか、また企業内出店へのアプローチに向けた実証実験がスタートした。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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