競合環境の中で、エージェンシー事業はサイバーエージェントやセプテーニHDといった大手と比較されることが多いが、アプリ広告に強い顧客基盤と、UNICORNを活用した高精度配信を組み合わせた「代理店×プラットフォーム」のハイブリッドモデルは独自の立ち位置となる。同じくDSPを展開するソネットメディアネットワークとはモデル上は類似するが、クライアント構成が異なる点や、博報堂DYグループとの協業によるナショナルクライアント案件の増加が差別化につながっている。博報堂との協業では、相互送客を行う関係を構築し、アプリクライアントを紹介する一方で、ナショナルクライアントのブランド広告案件を博報堂経由で受注するなど着実な増加が確認されている。
2025年12月期第3四半期業績は、売上高8,870百万円(前年同期比6.1%減)、営業利益5百万円(同93.4%減)で着地した。国内エージェンシー事業で大手クライアント3社における方針変更が影響し、広告出稿の減少および競争環境の変化による粗利率の低下が業績を押し下げた。ただ、新規案件の受注増などに伴い、徐々に回復傾向にある。海外エージェンシー事業は、中国で新規ゲームアプリのリリースが増加したことに伴いゲームアプリの広告が増加した。一方、アドプラットフォーム事業ではUNICORNの成長が著しく、セグメント利益は大幅に増加した。UNICORNの「ブランド」「VOD」「その他」のジャンルが伸長。UNICORNの自動最適化配信の実績が評価され、ブランド広告主からの選定が加速していること、アフィリエイト領域の金融案件が底堅く推移していることが背景にある。通期の売上高は11,700百万円(前期比7.8%減)、営業利益20百万円(同88.0%減)を見込む。
市場環境としては、広告代理店領域ではインハウス化の進展がリスクとなる。楽天がインハウス化を進めサイバーエージェントとの取引を縮小した事例は象徴的であり、同社もエージェンシー事業においては同様の構造的リスクを認識している。しかし、それによって逆にアドプラットフォームへの需要流入が起きている声もあり、UNICORNの強さがリスクヘッジとして機能している。ブランドセーフティへの高い評価や、広告枠の事前コントロール精度、技術力が選定理由として挙げられており、プラットフォーム事業の競争力は引き続き高いと考えられる。
また、TikTok Shopの公式パートナープログラム3種(TSP、TAP、CAP)を取得したことで、EC領域での広告・アフィリエイト・インフルエンサー支援の三面で事業機会が広がりつつある。中国ではECの3割強がソーシャルコマース経由とされ、同社もこの潮流を国内外で取り込む戦略を描いている。海外エージェンシーでは中国・台湾が中心であり、現地企業や日系クライアントの双方を取り込んでいる。ゲームアプリ案件などが堅調で、獲得方法としては現地企業とのネットワークや既存クライアントの紹介案件が中心となっている。
中期経営計画では2027年12月期に営業利益20億円を掲げている。従来は事業の独立性を優先していたが、事業単体での勝負は難しい状況下で、広告事業の統合型フォーメーションを強化し、エージェンシー事業、DSP事業(UNICORN)、およびアフィリエイト事業(JANet等)の連携最適化による収益拡大を目指している。計画の修正は現時点で想定しておらず、成長ドライバーはUNICORNを軸としたアドプラットフォーム事業の継続的拡大が中心となる。データマネジメントプラットフォーム(IM-DMP)との連携により、より高精度な配信ターゲティングが可能となり、ブランド広告領域での競争力強化が期待される。
株主還元についてはDOEに方針を変更し、配当政策を安定化させる意図がうかがえる。さらに、新規に株主優待導入を発表した。10,000-19,999株保有でオールドルーキーカフェかサウナのどちらか6ヵ月分のVIP会員(22万円相当)、20,000-29,999株保有でオールドルーキーカフェかサウナのどちらか1年分のVIP会員およびオールドルーキーサウナホテル特別室ご宿泊1泊(66万円相当)、また、30,000株以上保有でオールドルーキーカフェ1年分のVIP会員、オールドルーキーサウナ1年分のVIP会員およびオールドルーキーサウナホテル特別室ご宿泊2泊(132万円相当)が贈呈される。これは単なる還元策ではなく、同社のリアル事業への導線をつくり、株主を消費者・支持者へ転換させるインべスタマー的発想も背景にある。1万株以上というハードル設定は利用実態を踏まえたもので、ブランドを実体験してもらうことで認知とロイヤルティ向上を図る狙いがある。
総括すると、アドウェイズは短期的には国内エージェンシー事業の不調が重石となっているものの、中期的にはUNICORNを中心としたプラットフォーム事業が成長ドライバーとして機能し、事業構造は確実に強化されつつある。エージェンシー事業は構造変化に晒されながらも、博報堂との協業や新領域(TikTok Shopなど)によって新たな成長機会を模索している。同社の本質的な競争力は、広告運用とテクノロジーのハイブリッドモデルにあり、PBR0.8倍台で推移するなか、業績回復とともに株価が再評価されるか注目しておきたい。
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