―事業規模・ブランド力で優位性のある好業績セクター、関連企業のIPOにも注目―
ラーメン店運営企業の業績が軒並み強い。急増するインバウンド需要の恩恵が外食業界全体に及ぶなか、その影響を強く受けていることが背景にあるとみられる。日本食ブームの高まりによってラーメンの人気は世界に広がっており、日本を訪れる外国人観光客が“本場”の味を求めて足を運ぶのだろう。株式市場ではこれまでラーメン関連株がテーマとして注目されることはあまりなかったが、来月に新規上場するラーメン店運営のガーデン <274A> [東証S]の登場で投資家の関心を集める場面が訪れるかもしれない。
●観光客の「最も満足した飲食」意外な順位に
訪日外国人客数の好調が続いている。日本政府観光局が直近発表した9月の訪日外客数(推計値)は前年同月比31.5%増の287万2200人と、8ヵ月連続で同月として過去最高を更新した。米国や中国、マレーシアからの訪日客の増加が全体を押し上げた格好だ。1~9月の累計では約2688万人となり、昨年の年間客数(約2506万人)を既に上回った。
こうした訪日客たちの大きな目的の一つは食事だ。観光庁のインバウンド消費動向調査(4-6月期)によると、「訪日前に最も期待していたこと」を外国人に尋ねたところ、「日本食を食べること」が「自然・景勝地観光」「ショッピング」などを抑えて断トツとなった。「次回日本を訪れた時にしたいこと」(複数回答)でも回答トップとなり、食への関心が強いことがうかがわれる。そして、料理別で人気が高かったのがラーメンだ。「最も満足した飲食」(単一回答)では、多い順に「肉料理」32.2%、「ラーメン」18.7%、「寿司」15.1%、「魚料理」10.2%と並んだ。日本食の代表格である寿司よりもラーメンが上位にきている。肉料理には焼き肉、しゃぶしゃぶなどさまざまな料理が含まれているとみられ、実質的にはラーメンが人気ナンバーワンと言ってよいだろう。
ラーメン業界は インバウンド需要の恩恵を受ける分野として注目できそうだ。この業界は個人店から中堅・大手チェーンまで数多くのプレイヤーがひしめき、競争が激しく生き残りの厳しい世界として知られる。コロナ禍や物価高の影響でラーメン店の倒産が相次いでいるとも伝わっており、決して良い話ばかりではない。ただ、株式市場に上場するラーメン店運営企業は総じて業績好調なものが目立つ。事業規模やブランド力で優位性があり、業界内で「勝ち組」に属する企業が多いためとみられる。
●「最高益」「大幅増益」「上方修正」相次ぐ
ギフトホールディングス <9279> [東証P]は「町田商店」を主力に多様なラーメン業態を手掛ける。総店舗数は国内外で797店舗(3Q末時点)。直営店に加え、店舗運営のノウハウを提供する「プロデュース店」で業容を広げている。積極的な出店が奏功し、6月に24年10月期通期見通しを上方修正した。株価は4月に上場来高値をつけた後8月にかけて調整したが、そこから切り返し足もと回復基調を強めている。
幸楽苑 <7554> [東証P]はラーメンチェーン大手。総店舗数は380店舗(1Q末時点)。季節メニューの販売や営業時間の延長に取り組み、第1四半期は前年同期比で営業黒字に浮上した。25年3月期通期では前期実績(3300万円)から大幅増となる6億円を予想している。今月発表した9月の月次売上高(国内直営既存店)は前年同月比15.6%増と、2ケタ増トレンドをキープ。来月に発表を予定する上期決算に注目だ。
丸千代山岡家 <3399> [東証S]は北海道を拠点に「ラーメン山岡家」を全国展開する。総店舗数は187店舗(2Q末時点)。直営での出店と24時間年中無休の営業スタイルに特徴がある。人流の活発化やインバウンド需要の増加を背景に来店客数の高い伸びが続いており、値上げ効果も追い風に、9月に25年1月期通期見通しを上方修正。従来の最高益予想に上乗せする形で、連続での大幅な営業増益を見込んだ。
魁力屋 <5891> [東証S]は都市部を中心にラーメン店「京都北白川ラーメン魁力屋」を出店する。総店舗数は152店舗(2Q末時点)。積極出店による売り上げ成長で原材料高の影響を吸収し、24年12月期通期は連続での営業最高益更新を目指す。増配も計画するほか、今期から株主優待を導入するなど還元姿勢を強めている。更に、11月に台湾子会社を設立し、現地での事業展開を本格化させる構えにある。
加えて、豚骨ラーメン店「一風堂」を主力に国内外で280店舗以上(1Q末時点)の飲食店を運営する力の源ホールディングス <3561> [東証P]をはじめ、「丸源ラーメン」などのラーメン店を200店舗以上(前期末時点)手掛ける物語コーポレーション <3097> [東証P]、「8番らーめん」を国内やタイ、ベトナムで展開するハチバン <9950> [東証S]、直近IPO銘柄で「らぁ麺はやし田」を手掛けるINGS <245A> [東証G]も要マークとなる。
また、上記以外の関連銘柄として「九州筑豊ラーメン山小屋」のワイエスフード <3358> [東証S]、「一刻魁堂」のJBイレブン <3066> [名証M]、立ち飲み屋を中心にラーメン店「金山家」を運営する光フードサービス <138A> [東証G]がある。
●最高益予想のハイデ日高、イートアンドも
ラーメン関連周辺として中華料理チェーンを運営する企業も見逃せない。大手のハイデイ日高 <7611> [東証P]は今月初めに上期決算を発表し、営業利益は前年同期比16%増の27億8000万円だった。人流活発化やインバウンドの増加を背景に業績を伸ばした。最高益予想の25年2月期通期計画(52億円)に対する進捗は順調だ。
同業で「大阪王将」を展開するイートアンドホールディングス <2882> [東証P]も業績良好だ。インバウンドを中心とした観光需要を追い風に、上期の営業利益は前年同期比7%増の6億6800万円で着地。最高益予想の25年2月期通期計画(12億8000万円)に対する進捗率は5割を超える。株価は年初来高値圏で推移している。
このほか関連銘柄としては、「餃子の王将」を運営する王将フードサービス <9936> [東証P]、「バーミヤン」を展開する外食大手すかいらーくホールディングス <3197> [東証P]のほか、上野に本店を置く東天紅 <8181> [東証S]、東海地方を地盤とする浜木綿 <7682> [東証S]が挙げられる。
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