辞任勧告を受けた取締役は田原弘貴氏(以下「田原氏」)。2024年11月上旬、クシム代表取締役の中川博貴氏に対し、田原氏より、東京証券取引所スタンダード市場上場会社の代表取締役社長(以下「A氏」)を紹介したい旨の打診があり、意見交換会を実施したところ、田原氏からA氏を前にしてクシムに関する未公表の会社情報(以下「重要事実」)への言及があった。また、この意見交換会の場で、クシムの重要事実の情報受領者であるA氏から、田原氏からクシムの重要事実が情報共有されていると確定できる発言があったこと、直接・間接的にクシム株式を保有していること、クシム連結子会社である株式会社Zaifに、中国本土からビットコインを持ち込むことが可能である旨の提案があった。この提案には、マネーロンダリングの懸念が伴うとともに、国内の暗号資産交換業者が遵守すべきFATF(金融活動作業部会)の基準を無視した内容が含まれており、クシムの経済的基盤に重大な影響を及ぼす恐れがあるだけでなく、国家の経済安全保障上のリスクにもつながり得るものであったとのこと。
また、重要事実の情報受領者のA氏から、同じく東京証券取引所プライム市場上場会社の代表者の実名が出ており、上記提案への関与を疑わせる発言もあったことから、クシムは重要事実の漏洩にとどまらない不適切行為の可能性に対する重大な懸念があると判断し、田原氏のインサイダー取引への関与の有無の確認を目的として、2024年11月下旬にクシムと利害関係のない外部弁護士による田原氏に対するヒアリング等の事前調査を行った。この事前調査の結果、2024年7月ごろから2024年10月にかけて、田原氏が複数の顧客および株主に対して、クシム取締役としての職務上の地位を利用して、取締役会等を通じて入手したクシムの重要事実を含む会社情報を漏洩し、相手方がその情報に基づきクシム株式を売買している形跡の疑いがあることが判明したという。
インサイダー取引への関与疑義はもちろん、もしクシム株への買い占めが進んでいるようであれば、資本市場改革後(2014年伊藤レポート)における初の重要インフラ企業の乗っ取り事案となる。
なお、クシムは、その行為が金融商品取引法に規定するインサイダー取引規制違反を生じかねないこと、今回の情報漏えい行為自体で辞任勧告に値するものと判断したとのこと。また、事前調査の調査結果に基づき、田原氏の情報漏洩によるインサイダー取引規制に該当する取引が広範囲に及ぶと考えられること、本事案の重要性を鑑み、社内調査委員会の調査報告をもって、しかるべき対応を行う予定。
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