同社の強みは80年超の歴史の中で構築した製造・物流体制にある。加工事業では「シャウエッセン」など、全国的にブランド力の高い商品を展開し、食肉事業では国産・輸入の牛・豚・鶏肉を取扱い、北海道から沖縄まで全国をカバーする販売網を有する。食肉の国内シェアは20%に達している。海外においては、豪州を中心とした食肉販売や北米・アセアンでの加工品販売が堅調に推移している。ボールパーク事業では、北海道地域における高いシェアを背景に既存事業とのシナジーを発揮している。2023年開業のFビレッジでは、プロ野球開催時の観客動員の拡大のみならず、試合がなくても「毎日オープンしているボールパーク」を展開し、試合の開催有無に関わらず、多くの来場者を取り込み、収益化が進んでいる。
2025年3月期は、売上高1,370,553百万円(前期比5.1%増)、事業利益42,540百万円(同5.3%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益26,585百万円(同5.3%減)であった 。売上高は食肉事業における販売価格上昇や、豪州牛肉の生産拡大が寄与し増収となった。一方、利益面では、加工事業で商品ミックスの改善や生産最適化により収益性は改善したものの、食肉事業における国産鶏肉生産部門の収益性悪化や輸入食肉販売の苦戦、フード販売での価格転嫁の遅れが影響し、全体では減益となった。
2026年3月期第1四半期は、売上高354,141百万円(前年同期比4.8%増)、事業利益16,241百万円(同11.5%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益11,417百万円(同12.5%減)であった。売上高は食肉事業で国産鶏肉・豚肉販売単価上昇と販売数量拡大、豪州での牛肉生産拡大が寄与し増収となった。利益面では、国産鶏肉や豚肉、豪州牛肉の単価改善に加え、加工構造改革の進展等もあり、事業利益は増益となった。ボールパーク事業の堅調な来場者数も寄与した。一方、四半期利益は、前期に為替差益を計上していた反動で減益となった。
2026年3月期通期は、売上高1,400,000百万円(前期比2.1%増)、事業利益54,000百万円(同26.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益30,000百万円(同12.8%増)を予想している。売上高は、加工事業での北米製造工場稼働に伴う生産量拡大、食肉事業における国産鶏相場の堅調推移や豪州での販売数量増加により増収を見込む。利益面では、売上増加要因に加え、加工事業での商品ミックス改善や構造改革の進展により増益を見込んでいる。
2024年からスタートした中期経営計画2026では、3年間で構造改革と成長戦略を推進し、最終年度の2027年3月期に売上高1兆3,800億円、事業利益610億円、ROE7~8%以上(2025年3月期は5.2%)を目標として掲げている。2026年3月期には売上高目標を達成する見込みであり、各施策の推進によって収益性向上に注力する。構造改革では、加工事業を中心に商品ミックス改善と生産体制最適化を進め、全社でのバリューチェーンの最適化も目標に追加した。成長戦略として、ブランド強化、国産鶏肉事業の拡大、豪州での牛肉販売の拡大、食肉事業における販売網の加工事業への活用、ボールパーク事業の収益基盤確立などを掲げている。さらに、次期中期経営計画の最終年度である2030年3月期には、事業利益790億円、ROE9%以上を目指している。
株主還元については、配当性向40%を目安、DOE(株主資本配当率)3.0%を目途とした安定配当を基本方針としている。2025年3月期の年間配当金は135円(配当性向51.3%)を実施し、2026年3月期は年間156円(同51.4%)を予定している。前期比21円増配である。自己株式の取得は2025年3月期に200億円を実施し、さらに、2026年3月期は300億円の取得枠を設定した。2025年9月末までに約91億円実施済であり、今後もM&Aなどの成長資金需要と資本構成の状況を踏まえ、継続していく方針である。株主還元の強化姿勢を示している。
株価水準については、PBRは1倍を回復したが、積極的な株主還元姿勢と、中期経営計画達成に向けた施策展開が進めば、投資妙味はさらに高まると考えられる。
<HM>
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