1. 財務構造
キャンバス<4575>の財務構造を見る際のポイントは、単に事業収益(売上高)向上の観点ではなく、中長期的に研究開発を維持するための研究開発投資=キャッシュ獲得にある。同社では創業以来、アイデア探索創出のための基礎研究、複数同時の開発パイプラインの臨床開発、そして昨年からスタートしたCBP501臨床試験のための研究開発投資(累積投資約70~80億円)の大半は新株発行や転換社債などの資金調達で賄ってきた。
大きな研究開発投資=キャッシュが必要であり、資金調達だけに依存するのではなく、事業収益も原資にするに越したことはない。そういう意味では、今回の米国Stemlineとのライセンス契約を3年間(2021年6月25日まで)延長し技術アドバイザリー収入約1億円/年が内定したことは、開発投資リスク軽減と言える。
2. 2019年6月期通期見通し
2019年6月期の事業収益見通しは、Stemlineからの技術アドバイザリーフィーと契約修正一時金115百万円を計上している。そして、Stemlineとの技術ライセンス契約延長で今後3年間は約1億円以上/年の収入を見込む。
さらに、「CBS9106日中台韓地域ライセンス交渉」に関するヤクルト本社<2267>からの解決金を特別利益に計上している。CBS9106のライセンスに関連しては、Stemlineへライセンス導出に際し、欧米地域はStemlineに導出しつつ、日中台韓地域はライセンス対象から除外してキャンバスが留保し、日本をはじめとする東アジア圏の製薬企業等への分割導出を模索してきた。その交渉先の1つであったヤクルト本社とのライセンス交渉が不調に終わり、その経緯に関連する解決金の受領と同社は説明している。
これと相前後して同社は日中台韓地域の権利をStemlineに追加導出することとした(8月14日公表)ため、Stemlineが世界全域のライセンス権利を保有することとなり、Stemlineとはより強固な提携関係を築くこととなった。
また、早ければ2018年内にCBP501のフェーズ1b臨床拡大相試験の開始を予定しているが、仮に現在想定している資金調達が不調に終わった場合には試験実施が停滞または先送りとなる開発リスクが内在している。なお一方で、試験実施先送りになった場合、3~4億円程度の開発費用が先送りされ、短期的な損失は圧縮され資金面の懸念は低減される模様。
3. 資金調達
2018年内にCBP501の臨床第1b相試験への拡大相の組み入れ開始を予定している。この拡大相試験にかかる開発投資は約3~4億円が見込まれる。拡大相試験の症例実施目標20件、1,000~1,500万円/患者として約2~3億円。販管費などのランニングコストは月間3,000万円前後であり、これを合わせると向こう2年間で合計約8億円(臨床試験2年間)の支出が必要になる。
既に、2015年7月発行の第10回新株予約権の期間満了に伴い残存分取得消却で751百万円を調達済み、さらに2018年7月から転換社債と新株予約権(合計調達額約8億円)募集を開始しており、早期の調達を期待したい。
また、創薬バイオベンチャーの場合、国・自治体の補助金/助成金制度を活用するケースがあるが、同社でもCBP501の合成法はNEDOの助成制度で獲得した。同社にとって、補助金/助成金制度の活用は今後も重要な資金調達政策である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
<MH>
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