【QAあり】カンロ、売上高、営業利益は過去最高の達成を見込む グミを成長エンジンに、さらなる成長に向け事業領域の拡大へ
本日の内容
村田哲也氏(以下、村田):みなさま、こんにちは。カンロ株式会社代表取締役社長CEOの村田哲也と申します。本日はお忙しいところ、当社の説明会に参加いただきまして誠にありがとうございます。
本日はカンロについて、またカンロがこれから何を目指しているのかについてご説明します。短い時間ですが、お付き合いのほどどうぞよろしくお願いいたします。
本日はスライド左側に記載の4点について、順番にお話しします。右側に掲載している画像は、主要商品の一部です。当社は「金のミルク」「ピュレグミ」「カンデミーナグミ」など、さまざまな商品を販売しています。「この商品、見たことある!」「これもカンロ? あれもカンロだったんだ!」と思っていただけるのではないでしょうか。
会社概要
村田:カンロについてご説明します。まずは私の簡単な自己紹介です。私は、2023年1月に社長に就任しました。大学時代は4年間ボートを漕いでいましたが、趣味は読書や映画鑑賞、そして好きな言葉は「微差は大差」です。
それでは、会社説明に入ります。カンロは大正元年に創業し、創業113年目となる会社です。生産拠点は創業の地である山口県光市に加え、長野県松本市と長野県朝日村の計3工場を有しています。営業拠点は全国をカバーする本社および8支店で、さらに研究拠点として東京にR&D豊洲研究所を構えています。
当社は2022年で上場60年となりました。上場会社としての認知度はまだ低いですが、キャンディ専業メーカーでは唯一の上場会社です。
商品と歴史
村田:商品開発におけるイノベーションを軸としたカンロの歴史についてです。1955年に「カンロ飴」が誕生、大ヒットし、社名にもなりました。1981年に、医薬品ではないお菓子の世界で初めて「のど飴」を発売したのはカンロです。
グミは子ども向けのお菓子でしたが、当社が2002年に大人をターゲットとした「ピュレグミ」を開発し、グミの新たな購買層を開拓しました。また2012年には、素材を活かしたものづくりのシンボルである「金のミルク」を発売し、現在はミルクキャンディブランドで売上No.1となっています。
2017年には、会社の基本方針として「糖から未来をつくる。」を掲げ、「糖と歩むこと」を宣言しました。キャンディの主原料である砂糖や水飴を含む糖は、昔から虫歯・肥満といったネガティブなイメージがあり、昨今では「糖質制限」という言葉もよく聞くところです。
しかし、糖そのものは悪者ではありません。摂り過ぎが問題なのであり、人間の身体・脳の活動には必要不可欠です。カンロは糖を扱うプロフェッショナルとして、糖について正しい情報を発信する責務があると考え、「逆張り」とも言える大胆な会社方針を掲げました。
パーパスドリブン経営
村田:2022年には、その方針を企業パーパス「”Sweeten the Future” 心がひとつぶ、大きくなる。」に進化させました。「パーパス」とはご承知のとおり、企業の社会的存在意義を示すものです。
カンロがみなさまに届けているのは、キャンディを口にした時に思わずほっと笑顔になる「ひととき」です。その「ひととき」をさらに広く、人々や社会、そして地球が笑顔になるように、糖にこだわりながら、糖を越えてお届けしたいと考えています。その思いをグローバルにも届けたいという意味で、英文のパーパスとしました。
カンロは、地球と人の優しい未来に向けて進んでいきます。カンロの社員一人ひとりがその思いを共有し、パーパスドリブンで自ら何をすべきかを考え、邁進しています。
カンロの市場シェア
村田:メーカーシェアで見ると、カンロは2023年の飴(ハードキャンディ)のシェアが20.8パーセントで1位、キャンディ市場全体でも12.5パーセントのトップシェア企業です。
一方、拡大するグミ市場では、2位の15.7パーセントです。輸入商品も含めて各メーカーが注力しており、多くの新製品も登場しています。競争を激化させながら、市場全体が活性化している状況です。
カンロの財務数値
村田:カンロの財務数値についてです。当社は12月決算ですが、2024年9月末値の総資産は約260億円、純資産は約160億円の規模です。その資産を活用した2024年度の売上高は308億円、営業利益は38億1,000万円、当期純利益は28億円の着地予想で、昨年に続いて過去最高の売上高・利益を更新する見込みです。
また、効率性・稼ぐ力を示す指標として重視している投下資本利益率(ROIC)も、18パーセントと高い水準を見込んでいます。
kenmo氏(以下、kenmo):足元の業績のところで、いくつかお聞きします。他社からもいろいろ見聞きするところで、原材料価格高騰の影響があるかと思います。原材料価格の足元の状況や、価格推移などについて教えてください。
村田:当社も原材料や資材価格の高騰などがいろいろありますが、今はそのすべてが高騰している状況からは少し抜けてきたと思っています。ただし、特にこの夏場から下期にかけては、ダンボールやパッケージのフィルムといった包材系の価格が高騰しています。
また、先ほどご紹介した「金のミルク」に関しては、乳原料などの価格が少し上がっている状況です。最近はまた少し円安になってきましたので、このあたりも気にしています。
kenmo:コストが上がっていく中で、価格転嫁も1つの戦略かと思います。価格転嫁の足元の状況、また今後の計画について教えていただけますか?
村田:原材料価格が高騰し続け、物流費やさまざまなエネルギーコスト、人件費も上がってくる中で、2022年、2023年、2024年と毎年1回ずつ、大きな価格改定を行ってきました。
しかし、先ほどお話ししたとおり、今は「どうしようもない」という状況ではなくなってきています。そのため、原材料価格や物流費の推移、エネルギーコストや為替の状況などを含めて、もう少し様子を見ようと思っています。
当然ながら競合との競争でもありますので、競合の状況、そして何よりもお客さまの消費の状況、価格を上げた時に受け入れていただけるかもよく見ながら、判断していきたいと考えています。
2019年~2024年:売上高/営業利益と構成比推移
村田:当社の業績推移です。スライドの棒グラフは売上高で、飴とグミの構成比を併せて表示しており、折れ線グラフは営業利益を示しています。
カンロの売上高と営業利益は拡大し続けています。2019年度の売上高201億円、営業利益9億円の水準から、2023年度は過去最高の売上高290億円、営業利益33億円となりました。グミの売上高比率が年々高まっており、カンロの成長エンジンとなっています。
先ほどご説明したとおり、2024年度は過去最高を更新する見込みですが、カンロの歴史において初めて、グミの売上高が飴の売上高を上回る第3四半期実績となりました。
カンロの強み
村田:好調な業績を支えるカンロの強みについてお話しします。スライドには、カンロの強みを3点記載しました。
1点目は、食品メーカーの一丁目一番地である品質保証体制です。国際食品安全規格を3工場すべてで取得し、安全・安心な商品を生産しています。
2点目は、研究開発力と商品開発力です。創業から永きにわたり、市場のニーズをつかみながら、キャンディや糖と向き合って磨いてきました。
3点目は、112年の歴史で育んだ、お客さまやステークホルダーからの信頼をベースとしたブランド力です。
本日は、2点目について詳しくご説明します。
カンロの商品開発方針
村田:カンロの商品開発方針についてご説明します。キャンディ業界においても各社がしのぎを削って個性豊かな商品を開発していますが、カンロの商品開発は、原材料本来のおいしさを引き出す「素材を活かす」商品づくりと、キャンディならではの「機能性」を追求するという2つの方向性を軸としています。
奇をてらった商品やとがった商品を狙うのではなく、企業パーパスである「心がひとつぶ、大きくなる。」瞬間を、「糖」の力で具現化した商品として、キャンディらしいキャンディを送り出すのがカンロの商品開発方針です。
「素材を活かす」・「機能性」
村田:「素材を活かす」商品の具体例が、スライド上段の2品です。「金のミルク」は、ミルクや素材の濃厚なおいしさを引き出したプレミアムキャンディです。北海道産の生クリームを使用しており、口に入れていただければ違いをご理解いただける自信があります。
「カンロ飴」は、来年70歳を迎えるロングセラーブランドです。隠し味の「しょうゆ」が味の決め手ですが、香料や着色料を使わずに、原料と素材そのものを活かしたおいしさを実現しています。
スライド左下が「機能性」の商品です。キャンディの機能の中核と言えるのが、のどを潤す機能です。こちらのロングセラーブランド「健康のど飴」は、発売から多くの方にご愛顧いただいています。
右下の「マロッシュ」は、グミの生地に空気を抱き込ませる新製法で作られ、食べているうちにグミがマシュマロの食感になる不思議なお菓子です。
Kanro Vision 2030
村田:これからの成長に向けた、カンロの成長戦略についてお話しします。スライドに記載しているのは、コロナ禍の2021年2月に会社の羅針盤として発表した「Kanro Vision 2030」です。
カンロは企業パーパス「Sweeten the Future」を軸として、みなさまの健康と笑顔に満ちた未来を創造する企業になることを、2030年のビジョン・ありたい姿としています。
その実現に向けて、価値創造・ESG経営・事業領域の拡大という3つの重点戦略とともに、コア事業・グローバル・デジタルコマース・フューチャーデザインという4つの事業領域を展開します。
そして、2030年に売上高500億円、営業利益率9パーセント以上、ROIC10パーセント以上を達成するという、アグレッシブな財務目標を掲げています。
中長期的な成長ドライバー
村田:「Kanro Vision 2030」の実現に向けた、これからのカンロの強みと成長ドライバーについてご説明します。
パーパスドリブンの部分で、社員一人ひとりが主体的にパーパス体現に取り組むことを根幹に、環境(Environment)・社会(Society)・ガバナンス(Governance)の3要素を重視するESG経営のもと、3つの成長ドライバーで推進します。
1つ目が、グミを成長エンジンとしたコア事業による国内キャンディトップシェアのさらなる拡大、2つ目が、グローバル事業を中心とした事業領域の拡大、3つ目が、ROIC経営です。具体的な取り組み内容については、以降のスライドでご説明します。
キャンディ市場について
村田:カンロが対面するキャンディ市場の動向についてです。キャンディ市場は、飴(ハードキャンディ)・グミ・錠菓(タブレット)などから構成されており、小売販売金額ベースで約3,000億円の市場規模があります。
コロナ禍でキャンディ市場は落ち込みましたが、グミがいち早く「withコロナ」での消費を捉えて成長基調に回帰し、市場全体の伸びを牽引しています。飴も、コロナ禍当初はマスク生活が逆風となっていましたが、人流の回復とセルフケア意識の高まりなどにより、のど飴需要が増加し回復に転じています。
グミはガムとよく比較され、2021年にグミがガムの市場規模を上回ったことはメディアでも多く取り上げられました。2023年には、972億円と急成長しています。当社は、この流れは一時的なものではなく、今後も持続的に拡大するものと考えています。
グミ市場の成長要因
村田:グミ市場の急拡大には、さまざまな要因があります。目でも耳でも楽しめてSNSとの相性もよいため、情報発信力のある若い世代から強い支持を得ています。
また、若い方の間では、コミュニケーションツールとしても活用しているといった声もあります。リフレッシュしたい時や集中したい時、あるいはストレス発散などを目的に、喫食される方も増えています。
それらのさまざまな要因によってSNSやメディア等で話題となり、他のお菓子や食品カテゴリからの流入も起こっています。そして、新しい食感を含めて次々と新商品が開発され、店頭でのグミ売り場の拡大といった好循環が生まれています。
市場構造としても、日本のグミ市場は1980年代に始まったばかりです。歴史が浅く、年々グミを食べる年代層が広がっていく途上にあります。
グミ市場の伸びしろ
村田:スライドのグラフは、性別・年代別のグミの年間購入率を示しています。男性よりも女性、世代的には40代以下が高い傾向にあります。子どもの頃からグミが周りにある世代が親になり、引き続き自分も食べ、お子さまも一緒に食べるという拡大の循環ができています。
したがって、多くの年代層で購入率が伸びていますが、グミの年間購入率は未だ5割未満にとどまっています。すなわち、5割の方はまだグミとは出会っていないことを示しており、グミには大きな伸びしろがあることをご理解いただけると思います。
市場拡大により、新規性のあるグミも次々に発売されています。グミ市場は今後も成長を続け、遅からずキャンディー市場のトップカテゴリーになると予想しています。
主力ブランド 「ピュレグミ」
村田:グミ市場の拡大への寄与を自負しているのが、当社の主力商品「ピュレグミ」です。2002年の発売以来、20年以上のロングセラーブランドとしてみなさまにご愛顧いただいています。
「ピュレグミ」の主な強みをご紹介します。1つ目は、甘酸っぱい果実のおいしさと果肉食感、噛むほどにフルーティーなおいしさを感じていただける点です。
2つ目は、情緒的価値の提供です。一例として、パッケージにもこだわり、気分や好みに合わせて5色のパッケージからお選びいただけます。3つ目は、「ピュレプレミアム」「ピュレリング」などのブランドエクステンションでターゲットを細分化し、ユーザーを拡大していることです。
おかげさまで、2023年はグミブランドにおいて「ピュレグミ」が念願の売上1位となり、近年のグミブームの中で「年間売上No.1グミ」という快挙を果たしました。まだ召し上がったことない方は、これを機にぜひ一度手に取っていただければ幸いです。
kenmo:恥ずかしながら、私はこれだけグミが人気になっていることを全然知りませんでした。スライドに「ブランドエクステンションでユーザー拡大」とありますが、同じ商品でも少しパッケージを変えてターゲットを細分化している点について、もう少し詳しく教えていただけますか?
村田:「ピュレグミ」は、レモン味・グレープ味・マスカット味がメインの「フルーツピュレ」と呼ばれるものが定番商品です。
このような定番商品を含めて、「ピュレグミ」には「すっぱいパウダー」を使用しているのが特徴ですが、このパウダーがお子さまには少し酸っぱすぎるということで、酸っぱさを控えめにした「ピュレリング」という商品を小さなお子さま向けに販売しています。
このように、「ピュレグミ」という1つのブランドに対して、ターゲットを明確にしながらさまざまな商品を開発しています。
kenmo:いただいているご質問の中にも「御社のグミは甘みより酸味があるものが多い」とあります。これは、狙って酸味の強いものを作り続けているのでしょうか? そのあたりの商品戦略についても教えてください。
村田:当社の商品の特徴は消費者の方もよく知っていただいてありがたいのですが、「ピュレグミ」以外の商品も、酸っぱさと甘さのバランスを考えながらも酸味のあるパウダーを使用するものが多いため、ここは当社の特徴だと思います。
グミを成長エンジンに!
村田:拡大を続けるグミ市場に対するカンロの取り組みについてご紹介します。当社は前中期経営計画において「グミ」を成長エンジンに掲げ、2019年には松本工場に新グミラインを建設し、朝日工場との2ライン体制で生産能力を倍増させました。
2022年からの中期経営計画においては、2023年に既存ライン増産のための設備投資を実施して朝日工場を増強し、グミ生産能力を2022年度比で約6パーセント増加させました。2024年9月末には、松本工場のグミ棟拡張により、生産能力を2023年度比で約14パーセント増加させています。
「Kanro Vision 2030」の実現に向けては、もう一段の生産能力増強が必要と認識しています。来年度からスタートする次期中計においては、カンロの成長戦略として具体化すべく、現在検討を進めています。
kenmo:グミ生産能力が約14パーセント増加した松本工場は、すでに稼働が始まっている状況でしょうか?
村田:始まっています。
kenmo:その上で、今後もまだまだ工場を作り、生産能力を拡大していかれると思います。当然ながら現段階で見えているところと見えてないところがあると思いますが、もう少し解像度を上げて、今後の戦略について教えていただけないでしょうか?
村田:短期的には、大型というよりも設備の更新や生産効率向上、さらに世の中でよく言われている環境負荷を削減するような製造設備への投資が、目先の戦略になってくるかと思います。
一方で中長期的には、先ほどお話ししたとおり、今後もグミ市場は成長していくと考えていますので、現在の生産体制をより強化するための増産体制を検討しているステージにあります。
参考:世界のグミ・飴市場規模(2021年)
村田:スライドには、世界のグミ・飴市場のデータを記載しています。先ほど、日本のグミ市場の歴史の浅さについて触れましたが、グミは今から約100年前にドイツで生まれたという長い歴史があります。
日本ではグミよりも飴の市場規模のほうが大きいのですが、世界ではグミ市場のほうが圧倒的に大きく、かつ成長しています。このことからも、日本のグミ市場は今後もさらに拡大していくと言えます。
さらには、日本のおいしくて機能性のある飴と多様な楽しみ方があるグミは、どちらも世界で大きなチャンスがあると考えています。
事業領域の拡大(グローバル事業、デジタルコマース・ヒトツブカンロ事業)
村田:事業領域の拡大についてです。カンロクオリティを世界に届けることは、私たちのパーパス実現につながる大きな夢であり目標です。市場としては、規模の大きさや味覚の親和性から、中国とアメリカに着目しています。
中国市場においては、中国企業のAmos社とパートナーシップを結び、中国専用商品の飴を輸出しています。現在注力しているのは米国市場へのチャレンジです。部門を横断した全社プロジェクトを立ち上げ、課題の洗い出しや解決に向けた国攻め戦略を練っているところです。
販路・チャネルの拡大においては、デジタルコマース事業ならびに直営店事業に注力しています。柱となっているのが、直営店舗や自社EC機能を持つデジタルプラットフォーム「Kanro POCKeT」でオンライン販売している「グミッツェル」です。独自の製法により、外側はパリッと、中はしっとりという独特な食感を、5年の開発期間をかけて実現しました。
ご好評につき「グミッツェル」は整理券販売となり、お客さまにはご不便をおかけしています。他の商品も販売していますので、機会がありましたら、ヒトツブカンロ グランスタ東京店ならびに原宿の常設店へぜひお立ち寄りください。
kenmo:ヒトツブカンロが流行していることは、昨年ぐらいから投資家の間でもすごく話題となり、実際に店舗へ行ってお土産として購入してくださる方もいました。現状の店舗状況と、今後の国内の店舗拡大戦略について教えてください。
村田:ヒトツブカンロ事業については、東京駅と原宿の2店舗に加え、自社ECで「グミッツェル」を中心に販売しています。今はそのようなお客さまとの接点で販売しており、おかげさまで非常に順調に拡大しています。
ただし一番の主力である「グミッツェル」は、おかげさまでご好評いただき、購入するためにはデジタル整理券を取って並んでいただく状態となりご不便をおかけしています。我々も最大限の生産を行って生産量も年々上げているのですが、今の一番の課題は、できるだけ多くの方にご不便なく購入いただける生産体制を作ることだと考えています。
kenmo:「グミッツェル」の生産供給が今の課題ということですね。
村田:そのとおりです。一般的な「ピュレグミ」などの商品と違い、「グミッツェル」は製品になるまでの期間が長く、機械を回すと大量に商品ができる商品とは違うといったジレンマもあります。
しかしながら、お客さまにご満足いただけるよう、生産効率を上げる機械を入れて生産を増強する体制も検討しており、現在はできることから着手しているような状況です。
kenmo:ありがとうございます。続いて、グローバル展開についてお聞きします。現状は中国とアメリカが中心だと思いますが、現時点で海外が御社の売上のどのくらいの割合を占めているのかを教えてください。
村田:海外については、アメリカと中国を中心に、さらに香港と台湾でも現地の代理店と組んで拡販しています。当社の売上における海外比率はまだ5パーセント未満ということで、全体としての構成比は少ない状況です。
kenmo:今後は中国やアメリカ、それ以外にも市場拡大していくと思います。市場拡大にあたっての課題感について、国ごとに教えてください。
村田:中国については、先ほど飴を輸出しているとお話ししましたが、我々はやはりグミでいきたいと思っています。しかし、東日本大震災の後、福島県から300キロ圏内の10都県で生産されている製品は中国へ輸出できなくなりました。我々のグミの生産拠点は長野県松本市と朝日村の2ヶ所にあるため、グミの輸出ができず、今は飴で勝負している状況です。
幸い、その中でもAmosという現地メーカーとパートナーシップを組むことができました。現在は、何が中国の消費者に受け入れられるのかを考えています。受け入れられる商品を作ることができれば配荷できますので、それに向けた商品戦略を練っているところです。
一方、アメリカでの課題の1つは、日本とのレギュレーションの違いです。アメリカで許可されている添加物と日本で許可されている添加物に違いがあるため、まずはアメリカのレギュレーションに合う商品をきちんと作り上げることが課題です。こちらはすでに着手しています。
その上で、アメリカにおいては、販路の開拓と拡大も課題です。現在は、どことパートナーシップを組むかも含めて考えているところです。その中でまずは、2025年1月に開催される展示会に出展してアメリカ市場に知っていただこうと、準備を進めている状況です。
kenmo:東南アジアへの進出は考えていますか?
村田:もちろん進出したいという思いはあります。しかし、中国市場とアメリカ市場でさえまだチャレンジしている段階ですので、まずはそちらをきちんと進めたいと思っています。両国の市場において、一定程度当社の製品が認知されるようになりましたら、東南アジアにも広げていきたいと考えています。
資本コスト(ROIC)経営を基盤とする財務戦略
村田:事業の拡大を支える成長ドライバーである、ROIC経営を基盤とする財務戦略についてご説明します。当社は健全な財務状況のもと、成長投資の実行力を有しています。
財務戦略としては、借入によるレバレッジの活用も進めながら、株主のみなさまからお預かりしている資金を効率的に活用して事業拡大を図るべく、資本コストを意識したROIC経営を推進しています。
スライドに記載したさまざまな施策を展開しています。
ESG経営:E(Environment/環境)/ S(Social/社会)
村田:成長ドライバーの基盤となるESG経営についてご説明します。環境面では、2050年温室効果ガス排出実績ゼロの達成に向けて、自社工場電力の再エネルギー化を2024年5月に完了しました。次期中計でも温室効果ガスの削減目標を設定し、着実に取り組んでいきます。
また、廃棄包材の再資源化を進めるべく、スタートアップ企業のREMAREとのアップサイクルに向けた協業も開始しました。
社会面では、人的資本経営を推進しています。社員の健康保持増進に関する取り組みや子育て支援の取り組みが強化され、優良法人としての各種認定も受けています。
ESG経営:G(Governance/ガバナンス)情報開示
村田:ガバナンス面では、海外での認知度を少しでも広げたいという思いで、2021年から英文のアニュアルレポートを発行しているほか、広いステークホルダーを意識した和文の統合報告書も発行しています。
アニュアルレポートは毎年工夫を凝らしています。花札をモチーフにした2023年のレポートは、アニュアルレポートの国際コンテストで初めて最高賞を受賞し、世界1位となりました。PDF版はホームページにてご覧いただけます。
財務情報に加えて、温室効果ガス排出量や脱炭素、人的資本経営の取り組みなどの非財務情報についても積極的な開示を進めます。外部の目にもしっかりとさらされながら、国内外のステークホルダーのみなさまへ、当社の企業価値に向けた取り組みを引き続き発信していきます。
中期経営計画2024進捗
村田:成長に向けたさまざまな取り組みについてご説明してきましたが、「中期経営計画 2024」は目標数値を大きく上回って順調に推移しています。しかしながら、アグレッシブな「Kanro Vision 2030」の実現に向けては、次期中計でしっかりとそこまでの道筋を示すことが必要だと認識しています。
課題は明確であり、グミを成長エンジンとしたコア事業のさらなる拡大、グローバル事業を核とする事業領域の拡大の実現に向けて、成長投資の実行にスピード感を持って取り組んでいきます。
CEOとして強い覚悟と信念を持って、持続的成長に向けた具体的なストーリーを描き、来年2月に公表予定の次期中期経営計画にてご報告します。
株主優待は3コース
村田:カンロの株主になっていただいた場合のお話をします。12月末を基準日とする株主優待は、3つのコースから選んでいただけます。
100株から599株保有の場合、配当に加えて1,000円相当のカンロ商品をお届けします。人気の「グミッツェル」が入ったセットもお選びいただけます。なお、600株以上の場合は2,000円、1,000株以上の場合は3,000円の優待としています。
配当予想
村田:配当実績と2024年度の予想配当です。「中期経営計画 2024」においては「株主還元の拡充」を掲げ、2024年度は中間配当と期末配当を合わせた年間配当を80円に増配し、配当性向を40.1パーセントに引き上げる計画です。
成長性・収益性・効率性の財務目標をしっかりと達成することで、成長投資と株主還元の拡充を両立していきます。
株価とTOPIXの推移
村田:スライドのグラフは、当社株価とTOPIXの推移を指数化したものです。おかげさまで、当社の株価はTOPIXを大きく上回る高い伸び率で上昇しており、2年半で約4倍の株価となっています。
昨今、PBR1倍割れ企業への改善要請が東証から強く出されていますが、当社のPBRは2倍を超えて推移しています。
カンロ株主数(単元株主)推移
村田:株主数は、個人株主を中心に大幅に増加しています。個人株主のみなさまは、商品のみならずカンロ自身も応援していただける強力なサポーターです。今後も株主さまのご期待にしっかりと応えられるよう、緊張感を持って経営に努めていきます。
本日のまとめ
村田:本日のまとめです。1つ目、カンロは国内ではキャンディ市場でのトップシェアを拡大し、グミを成長エンジンに、今後も市場のニーズをつかみながら、みなさまに笑顔と楽しい時間を提供していきます。
2つ目、カンロは自社の強みを最大限に活かすことにより、海外を含む新たなチャネルや領域に事業を拡大し、「Kanro Vision 2030」の実現を目指します。
3つ目、カンロは企業パーパス「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」瞬間を積み重ね、事業を通じて社会・地球の課題解決に貢献し、企業価値を向上させます。
次期中期経営計画もご期待ください。以上で、私からのご説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:Z世代に反響が大きかった商品について
kenmo:マーケティング戦略についておうかがいします。先ほども「特に若者にグミが受けている」というお話がありましたが、特にZ世代を中心とした若者に向けたマーケティングの中で、特に反響の大きかった商品があれば教えてください。
村田:先ほどお話ししたように、我々は「ターゲットを大事にする」という意識を持ちながらマーケティングを進めています。
Z世代に対しては、昨年5月に「透明なハートで生きたい」という商品を発売しました。こちらの商品は、現役の女子高校生と一緒にプロジェクトを組んだものになり、プロジェクト名は「Z世代 飴の原体験共創プロジェクト」です。
現役高校生たちと一緒に商品の企画からパッケージ、味までを考えて「透明なハートで生きたい」という商品を開発し、非常に大きな反響をいただきました。
質疑応答:新商品の開発状況について
kenmo:新たな商品開発の状況を教えてください。最近は、大学との共同開発などのお話を他社のリリースでもよく見掛けますが、そのあたりの状況についても教えていただけますでしょうか?
村田:おかげさまで、いろいろとお声掛けをいただいています。その中でご紹介できる直近のお話としては、某大学のゼミ生たちと何年間かにわたって、いわゆる産学連携のようなかたちでいろいろと進めています。
我々は学生たちからアイデアをもらい、我々は学生たちに対してカンロをどのように見ているかなどの調査的な要素を集めることで、最終的には商品作りまで持っていっています。実際に「#チョコじゃねーよアメだよ」という商品を販売し、単に学生たちを含めた大学との連携だけではなく、最終的に商品展開まで行うことを意識して、いろいろな取り組みを進めています。
質疑応答:インバウンド需要を取り込むための施策について
kenmo:最近は外国人観光客が多い状況だと思います。インバウンド需要を取り込むための施策などがあれば教えてください。
村田:実を言うと、我々はインバウンド需要に少し弱いと言いますか、「まだまだだな」という認識をしており、課題でもあります。そのため、今はインバウンド向けに、例えばパッケージを和風のデザインにしたり、海外のYouTuberに販促してもらったりと、いろいろと考えられることは行っている状況です。
また、インバウンドに強い店舗では、当社の中でもインバウンド客に受ける抹茶味の「金のミルク」やいろいろな種類のグミを置いたり、多言語のPOPを付けたりする取り組みを行っています。
最終的には、先ほどもお話ししたとおり、グローバル展開をすることで海外でもカンロの商品を知っている、そして日本に来てもカンロの商品を知っているというように、回ってくることが一番の理想であると思っています。
したがって、国内のインバウンドにも取り組みつつ、先ほど来お話ししている海外への展開にもしっかりと取り組んでいかなければならないと思っています。
kenmo:逆の見方をすれば「そこが伸びしろになるため、今後も投資家の方は期待していてください」というメッセージと捉えました。ありがとうございます。
質疑応答:日本人アスリートによる海外でのグミブームの影響について
荒井沙織氏(以下、荒井):「先ほど『YouTuber』というワードが出ましたが、昨今は、海外で活躍している日本人アスリートが日本のグミを仲間に渡してブームとなっています。御社への影響は、直接的・間接的に何かありますでしょうか?」というご質問です。
村田:結論からお伝えすると、残念ながらありません。
荒井:そうなのですか? ありそうに思います。
村田:そのようなニュースが出ると、「うちの商品かな?」とドキドキしながら見るのですが、残念ながら今のところ影響はありません。
荒井:しかし、そのようなちょっとしたところから「日本のグミっておいしい」というかたちで広がっていけばよいですね。
村田:おっしゃるとおりです。ですので、そのようなことにも期待しつつ、自分たちでできることにしっかりと取り組んでいこうと思います。
質疑応答:今後の採用計画について
kenmo:コロナ禍では少し採用を抑制していたような状況だったと思うのですが、今は毎年30名程度の増員ペースになっているかと思います。今後の採用計画について教えてください。
村田:具体的な数字に関しては、毎年の計画になるためお伝えできない部分はあります。しかし、特に生産が上がっているところもありますので、工場も含めてきちんと採用していく必要はあると思っています。
また、本社の営業や、海外へ攻めていくには海外に強い人材が必要になってきます。加えて、会社としてDXの推進も掲げていますので、そのようなデジタルに強い人材を社内で育成しつつ、外から新しい力も採用していくということは進めていきたいと思っています。
やはり「人」が一番の力になりますので、毎年着実に採用は続けていこうと思っています。
質疑応答:今後の株主優待について
荒井:「株主優待は今後も継続していく方針でしょうか?」というご質問です。
村田:企業によっては配当にシフトしているところもありますが、我々がお送りしている優待は当社の商品になります。そのため、株主の方にはカンロの商品のファンになっていただきたいという観点から、株主優待は継続していくと考えています。
質疑応答:業績の季節偏重について
荒井:「業績の季節偏重はありますか? 冬や花粉の季節が好調なのでしょうか?」というご質問です。
村田:飴とグミに分けてお話しします。飴については、夏場は高温多湿ということもあり、やはり飴から離れていく傾向はあります。しかし、冬になると空気の乾燥により喉がかれてくるということで、飴はやはり冬のほうが需要が高い傾向があります。
一方、グミは季節変動が比較的なく、月ごとで見ても毎年わりと安定しています。しかし、当社の場合は、春先に先ほどもご紹介した「ピュレグミ」のキャンペーンなどのコミュニケーションを、テレビCMを中心に強化していることもあり、安定している中でも春先が比較的高いという傾向があります。
グミが大きく伸びてきましたので、そのような意味では会社全体でも季節変動はだいぶなくなってきた印象です。
荒井:春先にグミを推すというのは、どのような意味合いがあるのでしょうか?
村田:先ほども「ピュレグミ」には情緒的な部分があるとお話ししましたが、「ピュレグミ」を持つことで気分を上げてもらいたいと思っています。
4月の春先というのは、ちょうど学生や社会人の新生活が始まるタイミングです。新しい世界に飛び込んでいくみなさまを「ピュレグミ」で応援したいというメッセージ性を込めて、最近は春先に「ピュレグミ」のプロモーションを入れています。
質疑応答:株式分割とプライム市場への変更について
kenmo:「株式の分割は行わないのでしょうか? また、プライム市場への変更についてどのようにお考えでしょうか?」というご質問をいただいています。
村田:株式の分割という観点では、今のところ特に検討はしていません。直近では2019年と2022年に分割をしていますが、今後も推移を見ながら機会があればというかたちになります。
プライム市場に関しても、現時点でプライム市場に上場するという具体的な検討は進んでいない状況です。しかし、スタンダード市場にありながらも、プライム市場に強く求められる企業へのガバナンスはきちんとクリアしながら、まずは企業価値を高めていきたいと考えています。
質疑応答:個人株主の女性比率について
荒井:「個人株主の比率について、女性の割合はどのくらいなのでしょうか? 株価との因果関係はないとは思いますが教えてください」というご質問です。こちらのスライドでも「女性の売上が高い」というお話がありましたので、そのようなところをにらんでのご質問かと思いますが、いかがでしょうか?
村田:申し訳ありませんが、今すぐに具体的な数字をお答えすることはできません。しかし、株主総会の参加者の様子を見ると、比率としては半々ぐらいで、比較的女性の方も株主になっていただいているという印象はあります。
荒井:購入者の内訳として、30代・40代が、10代・20代より多いことが意外なのですが、これはお子さまに買っている分もあるのでしょうか?
村田:おっしゃるとおりです。ご自分で消費される部分と、お母さん世代の方が子どもと一緒に食べるために購入されている部分も含まれていますので、やはり高くなるかと思います。
荒井:そのようなことから、商品開発などの戦略としては、やはりスライドの数字に出ている30代・40代よりも若い、Z世代以下のところを狙って商品開発などを進めているということでしょうか?
村田:こちらに関しては、本当に商品によりけりかと思います。若い世代に向けての商品は、そのようなコンセプトで出していく必要があります。しかしながら、例えば「ピュレグミ」は比較的自分で消費される方が多いため、お子さまのところだけに絞ると、商品としての支持が減ってしまう恐れがあります。
ターゲットをよく見ていくことは難しいのですが、よく見ながら商品開発をしていきたいと思います。
荒井:私もまさに今日、「ピュレグミプレミアム」のピーチ味をおやつとして持ってきていますが、ジューシーでおいしいですね。
村田:「プレミアム」は中には少しだけジュレが入っています。本当に支持をいただきありがとうございます。
荒井:30代女性の私も、ぐっと心をつかまれました。
村田:ありがとうございます。
村田氏からのご挨拶
村田:カンロは、飴やグミの1粒で、お客さまに笑顔やわくわく、ほっとする時間を与えられたらと思っています。
引き続き、カンロの商品やサービス、そしてカンロという会社自身を、みなさまに応援していただければと思っています。また、応援していただけるようにがんばっていきますので、今後ともよろしくお願いします。本日はありがとうございました。
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