c) 製造派遣から製造請負へのシフト
政府が推進する働き方改革の一環となる「同一労働同一賃金」は、2020年4月から大企業に、1年遅れて中小企業に適用となる。目的は、賃金や福利厚生において正規社員と非正規社員との間の不合理な待遇差を解消することにある。働き方改革関連法の改正労働者派遣法により、「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」が定められた。「派遣先均等・均衡方式」は、派遣先の職場で同じ仕事をしている正規社員に合わせて、派遣スタッフの待遇が決定される。この方式では、派遣先企業が派遣元企業に同じ仕事をする正規社員の待遇情報を提供することが義務付けられる。派遣元企業が派遣先企業から受け取る金額が正規社員と同一であれば、派遣元のマージンがなくなってしまう。改正法では、派遣元のマージンに配慮した派遣サービス料金を派遣先企業に求めている。「労使協定方式」は、派遣元企業が一定の要件を満たす労使協定を締結し、派遣スタッフの待遇を決定するため、派遣先の正規社員の待遇水準が派遣スタッフには直接反映されない。派遣元企業と派遣スタッフの過半数労働組合もしくは過半数代表者との間で労使協定を締結し、派遣スタッフの待遇が決まる。企業が非正規社員を活用する理由として、賃金の節約、業務の繁閑への対応、正社員を確保できない、景気変動に応じた雇用量の調整などが挙げられる。一般的に、非正規社員の賃金が正規社員よりも3割程度低い。いずれの方式にしても、派遣先及び派遣元企業にとってコストアップ要因となる。
「同一労働同一賃金」の適用が始まると、日本から賃金の安い東南アジア諸国へ生産移管が加速することが予想される。同社は、中国、ベトナム、タイ、ラオス、フィリピン、インドネシア、カンボジア、スリランカの政府系送り出し機関とのネットワークを生かし、それらの国に製造拠点を持つ顧客企業向けに、日本における外国人技能実習生制度の活用を働きかける。技能実習生は、出国前に帰国後のキャリアプランの設計が可能となる。一方、顧客企業にとって海外子会社の製造現場で活躍するリーダーを養成できる。同社は外国人技能実習生の管理受託規模を拡大できるため、3者間で「Win-Win-Win」の関係が築ける。特定技能制度では、グループ2社が「特定支援機関」に登録されるなど業務支援の幅を広げている。
国内生産が継続されるのなら、人手を要する組立や検査工程において派遣サービスから業務請負へ移行するとみている。同社グループは、HS事業だけでなく、EMS事業及びPS事業を含めグループを挙げて省力化、自動化に取り組んでいる。キーエンス<6861>製の高解像度カメラを用いて、目視で行っていた検査工程の大幅な工数削減と安定した品質管理を実現する省力化装置の製造・販売に参入した。従来の人材サービス生産ライン請負に加えて、生産ライン診断・検証や省力化装置の設計・製作・導入の複合提案をする。既にベトナムや中国で引き合いが増加しており、タイにおいても省力装置事業を展開する。構内作業の請負では、顧客企業に省力化投資を促すが、生産性改善の果実を顧客と同社でシェアするようにしている。ASEANへ生産移管する場合は、HS事業とEMS事業が対応する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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