【社長が語る業界の最前線】 「成長戦略のカギはスキマバイトの拡張」 タイミー・小川嶺氏が描く、新たな価値創造のためのビジョン
来期のタイミーの戦略
――来期の目標とその実現に向けたプランを教えてください。
小川嶺氏(以下、小川):まずは来期もしっかり成長をしていくことが非常に重要だと思っています。競争環境が激化する中で、結局タイミーの牙城は崩されないんだなということを証明する1年だと思っています。
信念をしっかりと貫いて、いいものづくりをして、しっかりとした説明を企業さまにしていくことによって、タイミーさんだったら任せてみようという企業を1つでも多く集めたいと思っています。今までもそうですが、お客さまあってのタイミーだと思っているので、引き続きお客さまに向き合い続けて、お客さまの欲しいものを作り続けるというところが、一番重要なポイントかなと思っています。
具体的には、物流・小売の業種以外に、ホテル・介護・保育・製造業など、さまざまな業界に広がってきているので、その点において着実に成長を作っていくというのは、1つ重要なポイントかなと思います。
あとは、47都道府県、離島も含めて広がった状況ではありますが、よりその密度を高めていくことを各市町村単位でやっていきたいと思っています。いろいろなところで使えるものを作れるかどうかは非常に重要だなと思っているので、新規の開拓に関しては、しっかりと対応していきたいなと思います。
来年は、スキマバイトの拡張をどうやってやっていけるかが非常に大きな成長戦略になるかなと思っています。
――サービス展開における今後の展望をおうかがいします。海外展開なども含めて、何か考えられてることはありますか?
小川:キャリアプラスという新規事業を立ち上げています。新規事業など、あらゆる手段を考えて成長していくというところは、非常に重要なテーマなのかなと思っているので、そういうところに対する投資を加速化させていくというところと、グローバルに関しては、まずは国内をしっかり取っていくことが重要だと思っているので、急ぎすぎず、しっかりと国内を成長軌道に乗っけていくというところが重要なポイントかなと思っています。
5年後、10年後に目指す労働市場のビジョン
――5年後、10年後はどのようになっていたいですか?
小川:5年後、10年後ですか。そうですね、来年には団塊世代、75歳以上の方が人口の5分の1くらいになるということで、本当に少子高齢化がより加速していきますし、5年後、10年後というスパンで言うと、より加速していく。それぐらい労働力不足というのは加速していくんじゃないかなと思っています。
もちろんDX・機械化も非常に重要だと思っていますが、それ以上にやはり働き手が、自分が働きたいと思う職業に出会うことができて、そこでしっかりとがんばることによって生産性は上がっていくものだと思っているので、「職の出会いをよりなめらかにしていく」というところは、この5年、10年でやってきたことかなと思っています。
私たちとしては「はたらくに“彩り”を。」をサービスタグラインとして掲げ、嫌々仕事をやるよりも、やりたい仕事を見つけることが、日本においては非常に重要だと思っています。インターネットの力を用いて、その人に合った仕事をレコメンドしていくということが、私たちがインフラとしてこの5年から10年でしっかりとやっていきたいことです。
ロールモデルはサイバーエージェントの藤田晋氏
――どんな経営者を目指していますか?
小川:サイバーエージェントの藤田さん(藤田晋氏)は、自分のロールモデルというか、非常に好きな方です。もともと株主としてお越しいただいている中でお会いしているところもありますが、やはり若くして経営者になって、年上の方々もマネージしながらやってきたというところで、非常に境遇が近いと思っています。
何より、やはり経営者タイプとして、すごくものづくりを大事にされていますし、「これは大事だから自分が行く」というところで自らも先陣を切るタイプです。何が大事かという、嗅覚の見極めみたいなところもすごく鋭い方だと思っています。時代の流れが激しい中で、何が大事かをしっかりと見極めて、そこにしっかりとベットをして、自らが先陣を切っていく経営者になっていきたいなと思っています。
まだ27歳という年齢で、まだまだ体も健康でいろいろ動けますので、誰よりも働いて、しっかりと背中で語り、先陣を切れるような経営者でありたいなと思っています。
――藤田さんがロールモデルになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
小川:そうですね。何回か意思決定のところでご相談させていただく中で、「ああ、こういう観点で考えるんだな」とか、今までの乗り越えてきた課題だったりをお聞きする中で、自分がこれから歩みそうな場所を、すでに失敗も含めていろいろ経験されているなと思いました。
まずは藤田さんをトレースさせていただくというか、藤田さんが歩んできたものから学ばせていただきながら、自分なりの道をこれからしっかり見つけていけたらな、と思っています。
失敗を経て確立した「リソース集中」の戦略
――先ほど、藤田さんについてのお話の中で、「失敗も含めて経験されている」というお話があったと思いますが、小川さんが今まで「これ、失敗しちゃったな」みたいなものはありますか?
小川:いっぱいありますよ。そもそもタイミーは2社目で、1社目の失敗は非常に大きかったなと思っています。プロダクト、ものづくりもわからずに「こういう機能を作ってほしい」みたいなことをエンジニアに言って、エンジニアから「いや、この体験を作ればいいのに、なんでこの機能のこのボタンの位置にこだわるのか」みたいに言われたり。
正直、その部分を何もわかっていなかったので、そこからプログラミングを勉強することで、今は一定、共通言語を持ちながらコミュニケーションを取れるようになったので、いい経験になったと思っています。
「自分が何にコミットすべきなのか」という観点で、新しいことをやるのがすごく好きなタイプではあったので、「タイミー」が一定立ち上がったら、「新規事業をやろう」としていた時期もあったんですけど、やはり選択と集中の大事さみたいなところで。新規事業は楽しいものの、成功する確度も低く、本業も大して伸びていないのだったら、本業も他の会社に負けてしまう可能性がある。
いかに選択と集中をして1個のものを立ち上げることが大事かということも、新規事業をいろいろ作って、潰して、という失敗を経て学びました。
ある程度大きな会社になっても、「タイミー」に全リソースを集中しているというのは、けっこう珍しいのかなと思います。
時価総額1,000億円超えて、従業員数も多い場合、いろいろなことをやっている会社が多いと思うんですけど、うちは基本的には1本で、まずはしっかりと幹を太くする、ということを最重要な戦略に置いているというところも、やはり失敗から学んだことかなとは思います。
コロナ禍に「タイミーデリバリー」という、「出前館」みたいなサービスを立ち上げたのですが、悲惨に失敗しました。それも大きな失敗経験かなと思っています。
個人投資家に向けたメッセージ
――個人投資家のみなさんに向けてメッセージをお願いします。
小川:まずは日本の労働環境ですね。これからの日本は人手不足の国なので、ワークシェアリング、シェアリングエコノミーの中でも、特に働く時間のシェアリングは、明らかに伸びていくマーケットだと自負しています。まだまだ「タイミー」は若手中心のサービスですが、昨年一番伸びたユーザーはシニア層で、倍以上に増えました。
今まで労働参画していなかった方も、スキマ時間であれば働けるというところで、主婦の方がスキマ時間に働いたり、シニアの方が労働参画したりなど、日本に眠っていた労働力が顕在化されるというところも含めて、非常に大義のある話だと思っていますし、ものすごく大きなポテンシャルを持っているサービスだと思っています。
「このマーケットは間違っていない」と僕は心から思っていますし、投資家の方にも信じていただいて、投資いただきたいなと思っています。
やはり、伸びているマーケットの中で、トップランナーのファーストムーバーアドバンテージは、非常に大きなものだと思っているので、しっかりと業界の拡大とともに会社の拡大を実現していきたいなと思いますし、自分たちだからこそ作っていける新しい機能、新しい世界観があると思っています。
競合は、まずは「タイミー」を真似することに精一杯になると思っているので、自分たちがリーディングカンパニーとして、常に新しいことを作っていくということを実現していきたいです。長いトレンドで、「タイミー」が伸びているのは、確信的なのかなと思っているので、ぜひご支援いただけたらうれしいなと思っています。
自分自身もまだ27歳の経営者で、上場経営者の中ではたぶん、最も若い経営者なのかなと思っているのですが、若いからこそ「もっとこうあるべきなんじゃないの?」というところの前提を疑いたいと思いますし、社内の平均年齢が29歳というところで、非常に若くて優秀な人が集まる会社になってきているので、1,500人、2,000人と広がっていく中で、しっかりと組織マネジメントしたいと思っています。
「タイミー」は今、900万人、29.7万事業所というものすごいアセットを持っていますし、弊社はM&Aや新規事業などにより非連続的な成長ができる体力もあるので、これらも使いながら成長させていきたいと考えています。ぜひ、応援、ご支援いただけたらうれしいです。
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