2. 受注高、売上高の動向
(1) 受注高の動向
E・Jホールディングス<2153>の2023年5月期の受注高は前期比12.3%増の38,249百万円と2期ぶりに過去最高を更新した。前期はリソース不足と繰越業務の増加により選別受注を実施したため減少に転じていたが、2023年5月期は繰越業務の消化が進んだことからプロポーザル案件を中心に積極的な受注活動を推進した。受注件数は前期比2.7%増の3,184件、平均受注単価が同9.3%増の12,013千円となり、賃金改定を反映した効果もあり受注単価の上昇が受注高の増加に寄与した。
発注機関別の増減率で見ると、中央省庁が同5.1%減と2期連続で減少したが、都道府県が同10.1%増、市町村が同36.6%増、民間が同21.8%増、海外が同99.8%増といずれも伸長し、過去最高を更新した。都道府県や市町村では2021年度まででコロナ対策関連への支出が一段落し、国土強靭化対策等の社会インフラ整備に予算が振り向けられるようになったことが増加要因となった。民間向けに関しては引き続き高速道路のインフラメンテナンス業務(点検業務、耐震補強設計業務等)を中心に好調に推移した。また、海外については新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響がまだ残っているものの、タイで非ODA案件(約30百万円)を初めて受注するなど、営業活動の成果が出始めている。国内地域別受注状況で見ると、前期比6.0%減となった中国を除くすべての地域で増加し、近畿と中国を除いた地域では過去最高を更新した。
受注高のうち注力分野である技術提案型業務は前期比6.6%増の13,074百万円となり、受注高に占める比率は前期の36.0%から34.2%に低下した。前期に選別受注を実施した影響で継続受注案件が減少したため、伸び率は1ケタ台に留まった。また、同社が重点分野として掲げている6分野の受注高も同8.2%増の22,170百万円と1ケタ台の伸びとなり、構成比率は60.1%から58.0%に低下した。重点分野は技術提案業務が多いこともあり、継続受注案件の減少が影響したと見られる。分野別で見ると、インフラメンテナンス分野が同51.2%増と大きく伸長したほか、環境・エネルギー、都市・地域再生分野が増加した一方で、自然災害リスク軽減、公共マネジメント、デジタル・インフラソリューションの3分野が減少するなど好不調が分かれる格好となった。
重点分野ごとの主な受注実績を見ると、環境・エネルギー分野では福井県敦賀市と美浜町の共同プロジェクトとなる新清掃センター整備・運営事業における設計・施工管理業務及び施設運営アドバイザリー業務を受注した。また、環境省が推進する30by30※目標の達成に向けたプロジェクト「令和4年度生態系回復手法検討等及び生態系回復を要する劣化地パターン分類調査業務」を受注した。
※30by30(サーティ・バイ・サーティ)とは、2030年までに地球の陸地と海洋の30%以上を保護地域として効果的に保全するという目標で、2021年6月に開催されたG7サミットで合意した。生物多様性の損失を食い止め、自然をプラスに増やす「ネイチャーポジティブ」に向けた取り組みとなる。日本では、環境省が30by30アライアンスを発足させ、企業や自治体などが参加してOECM(Other Effective area-based Conservation Measures)という生物多様性保全に資する地域を認定し、国際データベースに登録する取り組みを推進している。
自然災害リスク軽減分野では、岡山市から高潮による避難情報発令のタイミングと発令区域の見直しを行うための、「潮位別高潮シミュレーション実施業務委託」を受注したほか、広島県大竹市からハザードマップ作成業務を受注した。都市・地域再生分野では、さいたま市より大宮駅周辺街区のまちづくり、駅前広場を中心とした交通基盤整備、駅機能の高度化を三位一体で推進する「 大宮駅グランドセントラルステーション化構想推進業務」を受注したほか、佐賀市より今後のまちづくりの推進に寄与する資料を作成する「佐賀都市計画基礎調査業務委託」を受注した。
受注が急増したインフラメンテナンス分野においては、茨城県内の常総工事事務所が管理する橋長15メートル以上の橋梁のうち15橋についての定期点検業務を受注したほか、徳島県三好管内に整備された砂防関係施設の長寿命化計画策定業務、各高速道路の点検業務など社会インフラの老朽化に伴うメンテナンス業務を幅広く受注した。公共マネジメント分野では、栃木県真岡市より「令和4年度真岡市公共施設マネジメント関連計画進行管理及び公共施設再配置具体化検討業務」、山形県尾花沢市より「令和4年度尾花沢市特定環境保全公共下水道ストックマネジメント計画策定業務」などを受注した。デジタル・インフラソリューション分野では、国土交通省近畿地方整備局から、管内の道路橋の2014年以降の定期点検結果や橋梁ドクター診断結果、第三者点検結果、工事履歴などを一元的に管理し、容易に閲覧可能なデータベースの作成業務を受注。そのほか、北陸地方整備局から、湯沢砂防管内の登川流域における渓流点検の実施手法の確立を構築するため、ドローンを用いた検証実験計画の立案・実行やAI画像解析による対象物性評価の適用性検討業務などを受注した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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