―統合イノベーション戦略決定で再脚光、高度化技術で街が抱える課題を解決へ―
政府は9日、総合科学技術・イノベーション会議で取りまとめた「統合イノベーション戦略2023」を閣議決定した。これは第6期科学技術・イノベーション基本計画の3年目の年次戦略で、政府全体の科学技術政策の羅針盤といえるもの。経済発展と社会的課題の解決を両立する未来社会の姿であるSociety(ソサエティー)5.0を実現するために今後1年間で取り組む政策を具体化している。そこで、今回はSociety5.0の先行的な実現の場と定義されている「スマートシティ」関連株にスポットを当てた。
●KDDIは本社移転を発表
スマートシティとは、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)などの先端的な情報通信技術(ICT)を活用することで、都市や地域の機能やサービスを効率化・高度化し、各種の課題解決を図るとともに、快適性や利便性を含めた新たな価値を創出する取り組みのこと。スマートシティの実現には官民の連携が不可欠で、SDGsの観点からも今後の成長が期待できるビジネス市場として注目度の高いテーマとなっており、国土交通省では4月下旬に複数のスマートシティサービスの連携を示したユースケースを公開するなど社会実装を支援している。また、首相官邸のホームページで公開されている「日本のスマートシティ」では、世界各地での急速な都市化に伴い深刻化する「水資源」や「エネルギー供給と省エネ」「廃棄物処理」などの問題に加え、「気候変動と災害」「感染症対策」など共生方法の模索が続いている課題への解決策として、その重要性が指摘されている。
こうしたなか、直近では東急不動産ホールディングス <3289> [東証P]傘下の東急不動産とソフトバンク <9434> [東証P]が、竹芝地区(東京都港区)において共同で推進するプロジェクト「Smart City Takeshiba(スマートシティ竹芝)」で、収集した多様なデータをさまざまな事業者がリアルタイムに利用できるデータ流通プラットフォームを活用し、防災力の強化や来訪者の回遊性向上など都市課題の解決に向けた取り組みを更に拡大すると発表。KDDI <9433> [東証P]は分散型スマートシティの実現を自らが実践し加速させるため、25年春をメドにJR東日本 <9020> [東証P]が推進している“100年先の心豊かなくらしのための実験場”のビジョンを掲げる「TAKANAWA GATEWAY CITY」に移転することを明らかにしている。
●社会実装に向けた動き続々
シミックホールディングス <2309> [東証P]のグループ会社で、医療情報の電子化促進を目指すharmoはこのほど、神戸市が推進するスマートシティのまちづくりにつながる事業公募において、事業実施候補4事業者の一つに選定されたと発表した。同事業では「電子お薬手帳での市民と薬局の連携強化による健康増進施策」として、電子お薬手帳サービス「harmo(ハルモ)おくすり手帳」を活用し、かかりつけ薬剤師の認知度向上及び対象患者との導線をつくることが可能かどうかについて実証試験を行うという。
GMOグローバルサイン・ホールディングス <3788> [東証P]は、大阪府内13自治体で電子契約サービス「電子印鑑GMOサイン」の導入が決定し、今月から順次運用が開始されることを明らかにしている。大阪府と府内全市町村では、情報システムや情報ネットワークなどに関する情報の交換や共有を行うとともに、連携・協働を図ることを目的として「大阪市町村スマートシティ推進連絡会議」を設立することで、府内の自治体が協力してさまざまな行政業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、財政負担の緩和や市民のための行政サービス向上に取り組んでおり、豊中市や東大阪市では既にGMOサインが利用されている。
ヘッドウォータース <4011> [東証G]は5月、ROBOT PAYMENT <4374> [東証G]と連携してスマートシティやスマートストア向け認証基盤プラットフォームに決済サービスを追加すると発表。両社は16年7月に資本提携しており、ヘッドウォが持つ技術力とロボペイの決済サービスという強みを多面的に連携させ、企業のスマート化推進につなげるとしている。また、ヘッドウォは2月にBTM <5247> [東証G]との協業を強化すると発表しており、スマートシティや企業DX支援サービスの地方展開を加速・拡大する構えだ。
unerry <5034> [東証G]は、リアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」を運営しており、実社会をデータ化することでOMOマーケティング(消費者の目線でECサイトと実店舗を融合した顧客体験の向上を目的とするマーケティング手法)支援やスマートシティの実現に向けた事業などを展開。直近ではインドネシアに続き、タイでも「Beacon Bank」事業を開始している。
ウイングアーク1st <4432> [東証P]は2月にスマートバリュー <9417> [東証S]と締結した資本・業務提携に基づき、行政手続きデジタル化領域の事業開発、スマートシティ及びモビリティ領域の事業開発、新規ビジネスの開発及び既存事業のスケールアップ、その他ビジネス支援に共同で取り組んでいる。この一環として、スマバ子会社のOne Bright KOBEが推進する「神戸アリーナプロジェクト」に参画し、スマートシティの社会実装を目指している。
●ラック、エルテスなどにも注目
これ以外では、乗換案内アプリの着地型情報提供インターフェース「スマートシティモード」の拡大を進めるジョルダン <3710> [東証S]、26年3月期を最終年度とする新中期経営計画のなかで注力姿勢をみせているアドソル日進 <3837> [東証P]、街全体を見守る総合的なセーフティ・サービス「smart town事業構想」を掲げるラック <3857> [東証S]、22年5月にメタバースを活用した「メタシティ構想」を公表したエルテス <3967> [東証G]、デジタル技術を用いた複合的な都市開発の実現を目指すニューラルグループ <4056> [東証G]、サブスクリプションビジネスのための統合プラットフォーム「Bplats」がsmart town事業構想に採用されているビープラッツ <4381> [東証G]、シブヤ・スマートシティ推進機構に参画しているセーフィー <4375> [東証G]などに注目したい。
加えて、28~30日に東京ビッグサイトで開催される「スマートシティ推進EXPO」には、日本工営 <1954> [東証P]、マクニカホールディングス <3132> [東証P]傘下のマクニカ、ニューテック <6734> [東証S]、ヤマハ発動機 <7272> [東証P]、大日本印刷 <7912> [東証P]などが出展する予定となっている。
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