<話題の焦点>
昨年12月、政府は地方での若者雇用を5年間で30万人分創出し、人材の地方回帰の流れをつくる総合戦略を策定した。この一環として、今年6月19日には本社機能を地方に移した企業などを税制面で優遇する改正地域再生法が成立。東京23区に本社がある企業が地方(首都圏や近畿圏、名古屋圏の中心部などを除く地域)に本社機能や研究所などを移した場合、新たなオフィスなどにかかった費用を損失にして法人税の負担を軽くする「特別償却」や、「雇用促進税制」として雇用を増やした場合に納税額を減らす税額控除などを盛り込み、企業の地方移転を支援している。
これに加えて、従業員の賃金を上げた場合の企業向けの「所得拡大促進税制」も利用できるようにする方針。これまで所得拡大促進税制は雇用促進税制とは併用できなかったが、これを利用できるようにすることで、税制面でのメリットを増やし、企業の地方移転を増やすのが狙いだ。
税制面での優遇だけでは、実際に企業が地方に移転するのには不足との見方は根強い。ただ、地方への移転が人材の流出防止につながったとの声も聞かれ、こうした点をアピールしつつ、税制面の優遇を訴えることで、企業の地方移転が進展するのではないだろうか。
そこで今回は、オフィス移転でメリットを受ける企業に注目したい。
これまでは景気回復に伴う移転や新規開設の増加が追い風となっていたが、今後は地方へ移転の増加でも恩恵を受けそうだ。