10倍返し!ミクシィ株に売り向かえるか?

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最新投稿日時:2013/12/12 17:04 - 「10倍返し!ミクシィ株に売り向かえるか?」(広木隆)

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10倍返し!ミクシィ株に売り向かえるか?

著者:広木隆
投稿:2013/12/12 17:04

「今年の漢字」

※当記事は12月11日に執筆いたしました。

明日、12月12日は漢字の日。12月12日を「いい字一字」と読ませるのだという。財団法人日本漢字能力検定協会が、その年をイメージする漢字一字を全国より公募し、その中で最も応募数の多かった漢字一字を、その年の世相を表す「今年の漢字」として、毎年12月12日に京都の清水寺で発表する。森清範貫主がものすごい筆で揮毫するシーンが毎年テレビのニュースで流れ、年末の風物詩となっている。

「今年の漢字」に先立って、「今年の流行語大賞」が発表された。こちらは本命候補が4つとも同時受賞となった。いうまでもなく、「じぇじぇじぇ」「今でしょ!」「倍返し」「お・も・て・な・し」である。今年は流行語が豊作で、ひとつに絞りきれなかったというのも頷ける。

だが「今年の漢字」となると、自ずと絞られるだろう。そう、「倍」である。「今でしょ!」の「今」も漢字だが、「今」一文字ではあまりにも広範であり過ぎて世相を表すとは言い難い。それに対して「倍」のほうは、半沢直樹の「倍返し」以外にも、日銀の異次元緩和「マネタリーベースを2年で2倍」も含意することができる。さらに拡大解釈して「Buy(バイ)My アベノミクス」と安倍首相のニューヨークのスピーチにだってかけられるのだ。「今年の漢字」は「倍」で決まりだろう。

三空の倍返し

酒田五法では「三空に買いなし」または「三空踏み上げに売り向かえ」と言われ、極めて強い売りのサインがある。「窓」を三つも空けるような急騰を演じたら、そこが天井という意味だ。

ところが、どうだろう、ミクシィの株価は「三空」どころか「六空」である。う~ん、まさに「倍返し」だ。

ミクシィは、きのうまで連日ストップ高を演じながら10連騰。今日もストップ高なら株価はついに1万円の大台。11月11日につけた年初来安値からちょうど1カ月で10倍。まさに「10倍返し」だ。が、しかし、そんなに話は甘くない。今日は一転、売り気配で始まって気配値を切り下げている(午前10時現在)。

さて、この先、ミクシィ株はどうなるだろうか。また切り返す可能性もじゅうぶんある。買い材料は、9月に配信を始めたスマートフォン向けゲーム「モンスターストライク」が好調だというもの。しかし、ここまでくるとそれは取ってつけたような材料だろう。実際のところは「騰がるから買う、買うから騰がる」という値動きの良さに着目した短期資金の流入だけが高騰の背景であったろう。これはゲームを材料にしたマネーゲームである。

ミクシィ人気が波及したのか、他のゲーム関連も賑わっている(ちなみに米国株式市場でもツイッターをはじめSNS関連やネット関連銘柄が買われている)。昨日書いたマーケットメールを引用しよう。

<東証の売買代金トップはマザーズ上場でLINE関連銘柄のアドウェイズ(2489)。前場に一時、前日比441円(15.2%)高の3,345円まで上昇し、連日で年初来高値を更新したものの、その後は上げ幅を縮小、下げに転じる場面もあるなど荒い値動きとなりました。終値は2.6%高で引けました。売買代金の2位はDeNA(2432)で14%。東証1部ではソフトバンク(9984)を抑えてトップの商い。売り残がたまっているだけに強烈な買戻しが入ったと見られます。 同業のソーシャルゲームのグリー(3632)が15%高と急伸し連れ高したのでしょう。スマートフォンのゲームを開発するエイチーム(3662)が先日、韓国のNHNエンターテインメントと資本・業務提携すると発表。これをきっかけにエイチームは今日も2日連続となるストップ高。グリーはエイチームの大株主なので、含み益拡大期待で買われ、KLab(3656)など他のゲーム会社も連れ高となりました。
(中略)
ここまでの市況コメントを見てわかる通り、新興市場の銘柄ばかり賑わっており、ソフトバンク、トヨタ(7203)、メガバンクなどの主力大型株は蚊帳の外です。東証1部の売買代金は連日で2兆円割れとなっています。「対ドルで103円台、対ユーロで142円台の円安を好感し、下値は限定的だった」と上述しましたが、むしろこの円安に対する反応は鈍いようにも感じられます。>

(「12月10日付マーケットメール夕刊」より抜粋)

コップの価値と水の量

ミクシィ株の高騰はマネーゲームだ、と述べた。それは悪いことではない。それも相場のひとつに違いない。ただ、僕は、そういう相場に不慣れなだけである。僕がしっくりくる相場の考え方は以前も紹介したがオークツリー・キャピタル・マネジメント会長兼共同創業者のハワード・マークス氏の考え方だ。『投資で一番大切な20の教え』には、まさに綺羅星のごとき名言があふれている。氏の基本的なコンセプトは本源的価値を知るということである。

<最も古くからある投資の原則は、最もシンプルである。「安く買って、高く売れ」。まばゆいばかりに明瞭だ。(中略)深く考えなければ、あるものを自分が売る場合よりも安い値段で買え、という意味にもとれる。しかし、売るのはかなり先になるため、今日買うのに適正な価格を割り出す際の参考にはならない。「高い」、「安い」という言葉については、何らかの客観的な基準が必要であり、最も実用的な基準はそのものの本質的価値と言える。そうすると、この原則の意味は明確になる。「本質的価値を下回る価格で買い、上回る価格で売れ」だ>
(ハワード・マークス著『投資で一番大切な20の教え』)

これと一見、正反対のことを言うものもいる。誰であろう、我がマネックス証券社長、松本大である。松本大は「ものの値段は、本源的価値とは無関係」だというのだ。松本はいつも、「コップ」のたとえ話をする。ここにコップがある。そこに水を注ぐ。その「コップに注がれた水の量」を値段と定義しよう。例えば、「100ml=100円」というふうに。水の量を変えれば値段は変わる。50mlの水がコップに注がれれば50円だし、200ml入れれば200円だ。しかし、「コップの価値」自体はまったく変わっていないのだ。

地球上に存在するおカネは地球上を回り続ける。地球上の「比較的いい場所」を求めて動き回る。だから、コップに注がれる水の量は絶えず変化するわけだ。

ここで僕が、「これと一見、正反対のこと」と書いたことに注意してほしい。「一見、正反対のこと」のようで、実はハワード・マークスと松本の言っていることは同じである。「ものの値段は、本源的価値とは無関係」に動くからこそ、「本質的価値を下回る価格で買い、上回る価格で売る」チャンスがやってくるのだ。だから、コップに注がれる水の勢いとコップの容量の両方を見極めて、コップから水があふれ出す前に手を打つことが肝要である。見極めきれなくなくなったらどうするか?迷わず、降りることである。松本は言う。自分が見てきた数多くのトレーダーのなかで、優れている人というのは、「自分の理解を超えたときに相場から降りる」というタイミングが絶妙だった、と。

本質的価値を見極めることと同じくらい、投資においてはタイミングが重要なのだ。そして、それは「投資レポート」を発行する場合についても言える。このレポート、本当は昨日出す予定であった。それなのに、キャバクラ嬢からのお誘いメールにのってしまって早々に同伴ディナーに出かけるために、レポート執筆を放り投げてしまったのである(>_<)!!「明日でいいや、どうせミクシィは明日もストップ高で1万円つけるだろう」とたかをくくっていたのだ。

そんな間隙を突いて、僕よりちょっとだけ勤勉な某外資系のアナリストがミクシィを格下げしたのだ。また、僕より少しだけ勤勉な某経済紙の記者が「ミクシィ株人気は危険なゲームか」と題する記事を書いたりもしたのである。まったく、この師走で浮き立つ夜の街に繰り出すことをしないで、君たちは仕事ばっかりして楽しいかね?と愚痴を言っても始まらない。僕より、ほんの少しだけ勤勉なひとたちのおかげで、ミクシィ株は売り気配。このままでは一転、ストップ安の勢いである。下げに転じてからレポートを書いたら、後追いみたいでカッコ悪いじゃないか。ああ、昨日、飲みにいかないで真面目に仕事していれば良かった…。

しかし、ミクシィを格下げしたそのアナリストも気が利かない。僕の予想ではミクシィが下げに転じるのは明日のはずだった。1日、早いのである。格下げしたい気持ちは分かるが、せめてもう1日待って欲しかった。(蛇足ながら言わせてもらえば、「格下げしたい気持ちはわかる」と言ったものの、「中立」から「売り」に格下げしておいて、目標株価を従来の1100円から1200円に引き上げってのが理解不能である。)

ミクシィが下げに転じるのはなぜ明日なのかって?冒頭に書いた通り、明日12月12日は漢字の日。1212をひっくり返したら2121、ミクシィの銘柄コードだ。まさにミクシィ株、反転の日である。

こうなったら、明日は反転の反転、またストップ高になってくれないか、と願う。よってミクシィの空売りはやめておいたほうが無難ですよ!

益嶋(後輩)「広木さん、ミクシィは貸借融資銘柄(信用は買い建てのみ)だから、そもそも空売りはできないんですが…」

「し、知ってたよ!そんなことくらい。俺はチーフ・ストラテジストなんだぞっ!だからレポートのタイトルに書いているじゃないか、売り向かえるか?って。これは反語なんだよ。売り向かえるか?否、売り向かえないって」

益嶋「でも、そもそも、空売りできないものを、売り向かえるかっていうのも、どーなんでしょうか?」
「うるさーい!俺はチーフ・ストラテジストなんだぞっ!そんなこと言うなら、もうキャバクラに連れていってやらないからな!」

益嶋「もうキャバクラはいかないほうがいいんじゃないですか?またレポート出すタイミングを逃しますよ。真面目に仕事したほうが…」

「うるさーい!じゃあ俺、一人でいくからいいよっ!」

益嶋「まだ朝の10時ですけど」
広木隆
マネックス証券株式会社 チーフ・ストラテジスト
配信元: 達人の予想

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