―バリュー性ゆえ金利上昇局面で評価機運、サプライチェーンの結節点で収益拡大へ―
AI・半導体関連株に対する極端な一極集中型物色は収束に向かいつつあるものの、業績の成長力ゆえ押し目買い意欲は旺盛な状態が続いている。データセンター周りの部材や半導体素材など、いわゆる「AIツルハシ銘柄」と並んで、サプライチェーンのなかで重要な役割を担う「半導体商社」は、そのビジネスモデルゆえ半導体メモリーなど部材価格の高騰といったAIインフレの恩恵を満喫するセクターとして期待されている。
●メモリー供給難解消に立ちはだかるハードル
半導体商社は、海外メーカーから製品を仕入れ、得意先に卸売りをするビジネスを展開する。半導体とともに電子部品を取り扱う企業も多い。足もとで半導体メモリーの価格高騰が話題となっている。AI関連での旺盛な需要があるのに対し、製品の供給が絞られていることが背景になる。商社としては仕入れ価格が上昇しても、需要が備わっているのであれば販売価格に転嫁すればよい。そもそも商社自体、インフレに強い業種と考えられている。
半導体は生成AIインフラを支える一丁目一番地ともいえる存在だ。過去を振り返ると、コロナ禍からウクライナ戦争、米中貿易摩擦と続いてサプライチェーンが混乱し、半導体不足が深刻化した局面において、半導体商社の業績は大きく押し上げられた。今回はメモリー不足により、利幅が拡大する流れとなっている。供給元となる半導体メーカーにしても、安易に供給量を増加させれば市況が崩れるリスクが高まり、持続的な開発活動が困難になっていく。
半導体業界にとどまらず、各国の中央銀行が物価の趨勢を見極めるうえで、AIのインパクトはもはや無視できないものとなっている。ハイパースケーラーの巨額投資によるメモリー市況の高騰が、メモリーを搭載した民生機器の価格上昇をもたらし、インフレを加速させるシナリオが現実味を帯びつつある。
「AIインフレ」の抑制に向け各国中銀が利上げに踏み切り、世界的に金利に上昇圧力が高まれば、バリュー性を兼ね備える商社株はおのずと株式市場において有望セクターとみなされることになるだろう。特に半導体メモリーやMLCC(積層セラミックコンデンサー)といった製品群を取り扱うエレクトロニクス系商社は、AIインフレの追い風をダイレクトに受けると期待される。
●筆頭格のマクニカHDは青天井圏
半導体商社株の筆頭格となるマクニカホールディングス <3132> [東証P]は株式市場ではエヌビディア
トーメンデバイス <2737> [東証P]は韓国サムスン電子の半導体や電子部品に特化した商社で、豊田通商 <8015> [東証P]が議決権ベースで過半を持つ親会社。7月30日発表の26年4~6月期決算は売上高が前年同期比3.9倍、営業利益が同12倍と急拡大した。27年3月期通期業績・配当予想の大幅上方修正をしたとあって、同日より4営業日連続のストップ高となり多くの投資家の耳目を集めた。メモリー市況の想定を上回る上昇がダイレクトに業績拡大に寄与しており、今期の売上高(1兆4000億円)はマクニカHD(1兆3000億円)を上回る規模となる見通し。急騰後の過熱感を冷ます局面に差し掛かったが、配当利回りは5%台となお高水準である。
リョーサン菱洋ホールディングス <167A> [東証P]はリョーサンと菱洋エレクトロが経営統合し24年に発足。前期の売上高の22%弱を占めていたルネサスエレクトロニクス <6723> [東証P]の特約店契約が来年3月末に終了することになる悪材料に見舞われた。8月7日にルネサス製品の一部ビジネス終息の影響を織り込む形で、これまで未定としていた27年3月期の業績予想を公表。年間配当予想は前期の140円を維持し、配当利回りは4%台に上る。株価は7月以降、戻りを試す動きとなっているが、なお出遅れ感が強い。
東京エレクトロン デバイス <2760> [東証P]は東京エレクトロン <8035> [東証P]の持ち分法適用関連会社。東エレクの半導体製造装置の販売は行っておらず、テキサス・インスツルメンツやインテル
のストレージ関連製品、ネットスコープなどのセキュリティー関連製品も取り扱う。IT投資や半導体需要の拡大を背景に、26年4~6月期の受注高は前年同期比で倍増となり1000億円弱。半導体やIT製品の長納期化や価格高騰懸念を背景に、顧客が先行的に手配しようとする動きがあり、想定を上回る規模となっているという。7月29日に27年3月期通期の業績予想を上方修正したが、下期の計画は据え置いている。
●三菱電系商社などにも注目
立花エレテック <8159> [東証P]は三菱電機 <6503> [東証P]系商社。同社のFAシステムに関連する事業を手掛けるとともに、ルネサスの半導体などを供給する。8月5日発表の26年4~6月期決算は売上高が前年同期比20%程度の大幅増収で、営業利益は同2.2倍に急拡大。メモリー価格の高騰が半導体デバイス事業の収益を押し上げたほか、NAND型フラッシュメモリーが使われる記憶装置のSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)の販売も大幅に伸びた。FAシステム事業も受注環境が好転し、27年3月期の通期業績予想を上方修正した。株価は7月末以降に騰勢を強め、上場来高値の更新を続けている。
三菱電系で最大の商社であるRYODEN <8084> [東証P]はFAシステムや冷熱・ビルシステムとともに半導体・デバイス品を販売するエレクトロニクス事業などを展開。データセンターに関連した需要が追い風となっている。なかでも欧米ではバッテリーモジュール用半導体がデータセンター向けに販売が拡大。26年4~6月期の営業利益は前年同期比で2.3倍と業績は好調だった。10月1日付で1対2の株式分割を実施する予定で、流動性向上に期待が膨らむ。
レスター <3156> [東証P]は19年にUKCホールディングスとバイテックホールディングスが経営統合して誕生。子会社に組み込みソフト開発のPCIホールディングス <3918> [東証S]がある。ソニーグループ <6758> [東証P]のイメージセンサーでは国内最大の販売代理店として知られ、メモリーでは韓国SKハイニックス製品などを取り扱う。8月7日発表の26年4~6月期決算は前年同期比4割の増収で営業利益は同5.9倍と大幅に増加。27年3月期通期の業績・配当予想も上方修正した。同時にインドのICT関連の大手専門商社ラシ・ペリフェラルズとの合弁会社設立を発表。インド市場での半導体営業を展開し、事業拡大につなげる構えだ。
丸文 <7537> [東証P]は呉服問屋として1844年に創業し、戦後にエレクトロニクス商社に転換。世界最大級の半導体商社である米アロー・エレクトロニクス
このほか半導体商社として、加賀電子 <8154> [東証P]や三信電気 <8150> [東証P]、シンデン・ハイテックス <3131> [東証S]、イノテック <9880> [東証P]などをマークしておきたい。
株探ニュース
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