安田秀樹【26年投資のキーワード、企業の"効率性"を見る視点】

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最新投稿日時:2026/01/15 10:00 - 「安田秀樹【26年投資のキーワード、企業の"効率性"を見る視点】」(株探)

安田秀樹【26年投資のキーワード、企業の"効率性"を見る視点】

配信元:株探
投稿:2026/01/15 10:00

●ROE50%超え、極めて効率性の高いエニーカラーの経営

 最近の投資テーマとして、AI(人工知能)が持てはやされている。生成AIやAIエージェントなどの言葉が先行している面が強いが、端的に言えば、企業はAIで効率性(もしくは生産性)の向上を実現するために導入を進めようとしているのである。なぜ企業が効率性の向上を求めているのか。それは効率性の向上が企業価値の創造につながり、企業価値が創造されれば株価が上昇していくからである。

 AI関連株に関してはすでに多くのメディアが触れており、このコラムで取り上げる必要はないだろう。したがって今回は、AIが目的とする"効率性"というキーワードに焦点を当て、筆者なりの視点で優れていると考える企業を紹介していきたい。最初に挙げたいのはANYCOLOR(エニーカラー) <5032> である。2025年4月期でROE(自己資本利益率)は55%を超えており、筆者がウォッチしている企業の中でも、少ない資本で多額の利益を創出する力はダントツである。

 これは同社のビジネスにおいて、資産計上すべきものが少ないということが大きい。設備投資を行って収益を生み出すのではなく、たくさんのタレント(人財)とIP(知的財産)によって価値を創造しているため、単年度で計上される費用がほとんどであり、資産計上されない見えない資産から収益を生み出しているためである。

 グッズの販売による利益貢献度が高く、生産もファブレス(工場を持たない)で、在庫となるグッズも限定品や受注生産品が多く、経営的なリスクが相対的に小さい。このような効率的な経営が、同社を高く評価する理由である。

 本コラムで度々取り上げている通り、同社が運営するVチューバーグループ、「にじさんじ」所属の周央サンゴさんの動画が配信されてから、近鉄グループホールディングス <9041> 傘下の志摩スペイン村の状況が一変した。近鉄側も志摩スペイン村の将来性については、投資を増やすか、運営努力で進めるかで議論していたようなのだが、結果的に運営努力だけで来場者を増やすことに成功したのである。これは効率性の観点からすると非常に良いことである。すでに投資済みの資産で新しい価値創造が実現したからだ。

●鉄道セクターの筆頭は、都市部で圧倒的な輸送力を持つJR東海

 これも度々取り上げていることだが、JR九州 <9142> の子会社が運営する複合商業施設「JR博多シティ」に出店した任天堂 <7974> 運営の「Nintendo FUKUOKA(ニンテンドーフクオカ)」も大きな成果を上げている。12月に筆者が視察した際には、平日朝でも大変盛況で、同施設はインバウンドからファミリーまで幅広い客層で賑わっていた。鉄道事業は一般的に多額の投資が必要なため資産規模が大きい。だが、このように既存のビジネスを組み合わせる工夫次第では、多額の投資をしなくても、さらなる効率化は可能だと思うのである。

 効率的な事業運営という点では、圧倒的な輸送量を誇る東海道新幹線を擁するJR東海 <9022> が筆頭に挙げられる。沿線の東名阪エリアは人口集積が進んでおり、新幹線による移動は安全かつ高速で、飛行機よりも利便性が高く人気である。繁忙期には膨大な輸送需要に対して増発で対応しているものの、追いつかないほどになっている。

 リニア中央新幹線の建設費高騰が話題になっているが、同社の場合、この膨大な輸送量を考えれば、それに見合った投資は必要である。少子高齢化が進む中でも、インターネットが生み出すサービス、サブカルチャーなどは、地方より都市部のほうが魅力的なサービスが多い。しかも都市部に人口が集中する傾向は、21世紀に入ってさらに顕著になっていて、今後も続くと思われる。さらにリニアは品川・新大阪間を67分(予定)で結ぶ計画であり、実現すれば速達性、利便性の両面で飛行機を凌駕することになり、飛行機から鉄道へと利用客のシフトチェンジを促すことになるはずである。

●ゲームセクターで効率性が高い企業が多い理由

 そしてゲームセクターである。25年3月期のROEはカプコン <9697> が約23%、コーエーテクモホールディングス <3635> が約20%、バンダイナムコホールディングス <7832> が約17%と他業種と比べて高いところが多い。各社の効率性が高い背景には、ゲームビジネスが変貌していることが大きい。従来はヒットタイトルを生み出すことで初めて利益を上げることができた。だが現在ではインターネットの普及によって、ゲームソフトの開発費を回収し終わったタイトルもセールし続けることができるようになり、安定的な収益を生み出せるようになったのだ。

 特にカプコンは長期的な視点に立った経営が特徴で、常に安定的な利益を創出できるように施策を打っている。直近では「モンスターハンターワイルズ」がシステム面の不備により、当初想定された通りにはリピート販売を拡大することができず、長期的な収益拡大が難しいのではないかと懸念されている。確かにこのミスは大きいのだが、同社は2010年代、継続して成果を出してきた。長期的に価値創造を目指す同社の経営戦略自体は高く評価しているので、今後に期待したい。

 コーエーテクモHDは、同社の財務部門による投資運用成果が大きいことがしばしば取り上げられる。それは確かにその通りなのだが、同社の強みはもう一つあって、歴史シミュレーションゲーム「三國志」シリーズの許諾を中国メーカーに与えることで効率的なビジネスを展開していることである。言うまでもなく三国志自体は、もとが歴史的事実であり、そこから生み出された三国志演義も中世の物語ですでに権利はない。しかし中国では、同社のゲームが様々な理由で遊ばれた結果、多くの人々が「コーエーテクモの『三國志』シリーズこそが、三国志の正統的なゲーム」という認識を持つようになっているため、こうした許諾ビジネスが成立するようになったのである。

 バンダイナムコHDは「機動戦士ガンダム」から「ワンピース」、「仮面ライダー」、「ELDEN RING(エルデンリング)」、「アイドルマスター」と非常に有力なIPを多数持っている。ビジネス展開も玩具、ハイターゲット(大人向け製品)、カードゲーム、「一番くじ」(ハズレなしのキャラクターくじ)、アニメ、コンシューマ・スマートフォンゲームと幅広く、それぞれ効率性も高い。

 逆に任天堂は25年3月期、今期26年3月期予想とも、効率性は低下している。「Switch」ビジネスが最終局面に入ったことと、昨今の物価上昇によって、新機種「Switch2」の採算性がそれほど良くないためだ。ただ先にハードが普及しないとソフトで業績を伸ばすことはできないことも確かだ。中長期的な視点で投資をするのなら、足もとの採算性を犠牲にした施策を同社が採っていることは、留意をすべきだろう。

 スクウェア・エニックス・ホールディングス <9684> は、効率性の低下をアクティビストが指摘する資料が出回り、話題になっていた。だが、経営体制の交代によって事業の立て直しをすでに進めており、現時点で批評するのは時期尚早ではないかと思う。ゲーム開発は5年ぐらい要することも珍しくなくなっており、不動産ビジネスと同様に、価値創造までには相応の時間が必要なのである。一般的な投資家目線では、5年もかかるのかと感じてしまうのかもしれないが、こうしたゲームビジネスの特性も理解する必要があるだろう。

 ゲームセクターに関しては25年、特にクリスマスシーズンの米国市場が今一つだったとの報道もあり、中期的に市場がどうなるかにも、注目が集まることになろう。

●効率性の向上はあくまで結果であり経営の目的ではない

 新年最初のコラムということもあって少しだけ、投資哲学的な話をしておきたい。現在、東京証券取引所が資本コストを意識した経営を上場企業に要請しているのは、「より少ない資本で効率よく稼げば稼ぐほど企業価値が高まる」というサイクルを創出したい考えがあるからである。このことに筆者も異論はない。

 しかしこの図式には、長期経営の視点が入っていないのである。先ほども述べたように、鉄道会社の話が典型的で、不動産事業は土地の取得からバリューアップ(価値創造)、売却まで数年は時間がかかるのである。決算は単年度なので、価値を高めている時間は何も利益を生み出していないと見なされ、資産計上されているだけなので、評価はネガティブになりがちである。

 様々な投資家や経営者と議論しても、現時点では長期投資のリターンと、リターンを実現するまでの非効率な期間の存在意義については、明確な見解が確立されていない。効率性向上や資本コストを上回るROE(=企業価値創造=株価上昇)というのはあくまで結果であって、本来の経営の目的ではないように筆者は思うのだが、短期的な成果を追求するアクティビストに共感を求めるのは難しい話であろう。

 今回の話を振り返ると、効率性の高い企業は、効率性を追求した結果ではなく、優れた経営戦略の帰結として、結果的に効率性が高くなっていると筆者は感じている。効率性は確かに重要なのだが、真の意味で高い効率性を誇る企業や改善を進めている企業を見ると、1年間の効率性だけを見るのはあまり意味がないのではないかと思う。1つだけ確かなのは、経営が方向性を変えてから成果が出るまでには、相応の時間が必要になるということだ。この点を踏まえて、経営者の考えや戦略をよく吟味して、投資を行う必要があるだろう。


【著者】
安田秀樹〈やすだ・ひでき〉
東洋証券アナリスト 

1972年生まれ。96年4月にテクニカル・アナリストのアシスタントとしてエース証券に入社。その後、エース経済研究所に異動し、2001年より電子部品、運輸、ゲーム業界担当アナリストとして、物流や民生機器を含む幅広い分野を担当。22年5月に東洋証券に移籍し、同社アナリストとなる。大手証券会社の利害に縛られない、独立系アナリストとしての忖度のないオピニオンで、個人投資家にも人気が高い。現在、人気Vチューバーとの掛け合いによるYouTube動画「ゲーム業界WEBセミナー」を随時、公開中。

株探ニュース
配信元: 株探

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