*12:45JST 加藤製作所 Research Memo(5):「ステークホルダーを意識した経営」を最優先課題として企業価値向上を推進
■成長戦略
1. 中期経営計画(2025~2027)
加藤製作所<6390>は2025年3月に中期経営計画(2025~2027)を策定した。テーマに「飛躍、そして次の時代へ」を掲げ、基本方針は企業価値の向上、成長戦略の推進と有効投資、収益性の更なる向上、サステナビリティ経営の実践としている。経営目標値については最終年度2028年3月期の売上高790億円、営業利益36億円、営業利益率4.5%、ROE8.0%としている。なお2026年3月期の営業利益は計画を下回る見込みとなったが、下期から回復基調となり、さらに2027年3月期はコストダウンを実現した新型機種の投入などにより収益性の向上が見込まれるため、最終年度2028年3月期の計画に変更はなく目標達成を目指す。また次期中期経営計画では、将来のありたい姿に「あらゆるステークホルダーから共感と支持を得られる企業へ」「更なる飛躍と持続的な成長の実現」を掲げ、売上高1,000億円超、営業利益率5%以上の達成を目指す。
重点施策として、企業価値の向上ではPBR1倍割れの解消を目指して、重点領域への集中投資及び低ROIC事業の戦略再構築(インド事業開始、中国事業撤退など)により収益性と資本効率の向上を図るとともに、資本市場との対話促進や株主還元の強化なども推進し、株主資本コスト(現状想定7.5%程度)を上回るROE8.0%、WACC(現状想定4.5%程度)を上回るROIC5.0%の実現を目指す。株主還元については1株当たり配当金の下限を70円に設定し、一過性損益を除いた経常利益の30%を目安に配分する方針だ。また資本政策を加味しつつ、発行済み株式数の5%を目安にした自己株式取得も検討する。
成長戦略の推進と有効投資では、業績伸長に向けた事業力強化・拡大を推進する。具体的な取り組みとして、国内では営業・サービス拠点の再編、マーケティング強化、環境配慮型製品の開発・市場投入、工場のDX化推進など、海外ではインド事業の確立、インドを起点にしたアジア・中東での販売拡大、販売ネットワークの強化・拡充などを推進する。インドではACE社と合弁会社設立に向けた協議を進めており、欧州ではイタリアのKATO IMERへの出資比率を高めた。日本国内での研究開発強化と生産設備への投資、アジア展開拠点のインドへのシフト、欧州市場での競争力強化、北米での販売ネットワーク強化などにより、グループシナジーを高めてグローバル展開を加速する。なお海外売上高比率については本中期経営計画では30%超、次期中期経営計画では40%超を目指す。
収益性の更なる向上では、付加価値の提供としてマーケットインによる新機種投入や製品ラインナップ拡充、HV型建設用クレーンや電動型小型建機など環境配慮型製品の市場投入、遠隔操作・自動運転・画像処理といった新技術・新機能の強化、サービス拠点の再編や物流の強靭化を推進する。製造コスト・間接費用の削減としては開発プロセス強化による部品点数削減、生産体制見直しと生産設備投資による製造効率改善、サプライチェーンの拡充、インドにおける低コストモデル製品の開発、全社的な業務効率化などを推進する。
サステナビリティ経営の実践では、5つのマテリアリティ(「社会を豊かにするイノベーションの創出」「持続可能な地球環境への貢献」「働きがいのある職場づくり」「サプライチェーンの強化」「責任ある組織体制の確立」)に取り組むことで、あらゆるステークホルダーから共感と支持を得られる企業を目指す。環境配慮型製品の開発では、建機のサイズに合わせて環境配慮モデルを順次投入し、2050年度にカーボンニュートラルを目指す。さらに2026年1月には群馬工場に太陽光パネルを設置予定であり、これらの省エネ活動の取り組みによって、2030年度での達成目標に掲げている2018年度比CO2排出量38%削減を2026年度に前倒し達成する見込みだ。社会貢献活動では、能登半島地震復興支援としてショベルカーの無償講習や日本航空大学校石川への建機寄贈などを行った。人的資本投資関連では2025年9月に、同社の従業員を対象とした「従業員持株会支援信託ESOP」の導入(信託期間は2025年12月~2030年11月の予定)を決議した。
配当は一過性損益を除いた経常利益の30%を目安
2. 株主還元策
株主還元については、本中期経営計画では1株当たり配当金の下限を70円に設定し、一過性損益を除いた経常利益の30%を目安に配分する方針としている。この方針に基づいて2026年3月期の配当予想は前期と同額の70.0円(第2四半期末35.0円、期末35.0円)としている。2026年3月期の連結業績予想を下方修正したが配当については期初予想を据え置いた。また自己株式取得については、2025年5月15日~2025年6月11日に400,000株を取得、同年11月14日に東証の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)によって200,000株を取得した。
収益性向上施策の進展に注目
3. 弊社の視点
同社は中期経営計画(2025~2027)において、インドを起点とするアジア展開、競争力強化や収益性向上の推進に加えて、株主還元の強化も打ち出した。こうした「株主などのステークホルダーを意識した経営」を評価するべきだろうと弊社では考えている。また2026年3月期は営業・経常損失予想で収益性改善が一服する形となったが、これは一過性要因も影響しているため、下期から2027年3月期に向けて回復基調が期待できるだろうと弊社では考えている。建設用クレーン、油圧ショベルとも、2027年3月期に市場投入する新型機種ではコストダウンが進展しており、これによって収益性が一段と高まる見込みだ。したがって新製品開発・販売の強化、販売価格の適正化、原価低減や業務効率化、インド事業の立ち上げ、欧州事業の基盤強化、新たなM&Aなど、中長期的な収益性向上施策の進展に注目したいと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)
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1. 中期経営計画(2025~2027)
加藤製作所<6390>は2025年3月に中期経営計画(2025~2027)を策定した。テーマに「飛躍、そして次の時代へ」を掲げ、基本方針は企業価値の向上、成長戦略の推進と有効投資、収益性の更なる向上、サステナビリティ経営の実践としている。経営目標値については最終年度2028年3月期の売上高790億円、営業利益36億円、営業利益率4.5%、ROE8.0%としている。なお2026年3月期の営業利益は計画を下回る見込みとなったが、下期から回復基調となり、さらに2027年3月期はコストダウンを実現した新型機種の投入などにより収益性の向上が見込まれるため、最終年度2028年3月期の計画に変更はなく目標達成を目指す。また次期中期経営計画では、将来のありたい姿に「あらゆるステークホルダーから共感と支持を得られる企業へ」「更なる飛躍と持続的な成長の実現」を掲げ、売上高1,000億円超、営業利益率5%以上の達成を目指す。
重点施策として、企業価値の向上ではPBR1倍割れの解消を目指して、重点領域への集中投資及び低ROIC事業の戦略再構築(インド事業開始、中国事業撤退など)により収益性と資本効率の向上を図るとともに、資本市場との対話促進や株主還元の強化なども推進し、株主資本コスト(現状想定7.5%程度)を上回るROE8.0%、WACC(現状想定4.5%程度)を上回るROIC5.0%の実現を目指す。株主還元については1株当たり配当金の下限を70円に設定し、一過性損益を除いた経常利益の30%を目安に配分する方針だ。また資本政策を加味しつつ、発行済み株式数の5%を目安にした自己株式取得も検討する。
成長戦略の推進と有効投資では、業績伸長に向けた事業力強化・拡大を推進する。具体的な取り組みとして、国内では営業・サービス拠点の再編、マーケティング強化、環境配慮型製品の開発・市場投入、工場のDX化推進など、海外ではインド事業の確立、インドを起点にしたアジア・中東での販売拡大、販売ネットワークの強化・拡充などを推進する。インドではACE社と合弁会社設立に向けた協議を進めており、欧州ではイタリアのKATO IMERへの出資比率を高めた。日本国内での研究開発強化と生産設備への投資、アジア展開拠点のインドへのシフト、欧州市場での競争力強化、北米での販売ネットワーク強化などにより、グループシナジーを高めてグローバル展開を加速する。なお海外売上高比率については本中期経営計画では30%超、次期中期経営計画では40%超を目指す。
収益性の更なる向上では、付加価値の提供としてマーケットインによる新機種投入や製品ラインナップ拡充、HV型建設用クレーンや電動型小型建機など環境配慮型製品の市場投入、遠隔操作・自動運転・画像処理といった新技術・新機能の強化、サービス拠点の再編や物流の強靭化を推進する。製造コスト・間接費用の削減としては開発プロセス強化による部品点数削減、生産体制見直しと生産設備投資による製造効率改善、サプライチェーンの拡充、インドにおける低コストモデル製品の開発、全社的な業務効率化などを推進する。
サステナビリティ経営の実践では、5つのマテリアリティ(「社会を豊かにするイノベーションの創出」「持続可能な地球環境への貢献」「働きがいのある職場づくり」「サプライチェーンの強化」「責任ある組織体制の確立」)に取り組むことで、あらゆるステークホルダーから共感と支持を得られる企業を目指す。環境配慮型製品の開発では、建機のサイズに合わせて環境配慮モデルを順次投入し、2050年度にカーボンニュートラルを目指す。さらに2026年1月には群馬工場に太陽光パネルを設置予定であり、これらの省エネ活動の取り組みによって、2030年度での達成目標に掲げている2018年度比CO2排出量38%削減を2026年度に前倒し達成する見込みだ。社会貢献活動では、能登半島地震復興支援としてショベルカーの無償講習や日本航空大学校石川への建機寄贈などを行った。人的資本投資関連では2025年9月に、同社の従業員を対象とした「従業員持株会支援信託ESOP」の導入(信託期間は2025年12月~2030年11月の予定)を決議した。
配当は一過性損益を除いた経常利益の30%を目安
2. 株主還元策
株主還元については、本中期経営計画では1株当たり配当金の下限を70円に設定し、一過性損益を除いた経常利益の30%を目安に配分する方針としている。この方針に基づいて2026年3月期の配当予想は前期と同額の70.0円(第2四半期末35.0円、期末35.0円)としている。2026年3月期の連結業績予想を下方修正したが配当については期初予想を据え置いた。また自己株式取得については、2025年5月15日~2025年6月11日に400,000株を取得、同年11月14日に東証の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)によって200,000株を取得した。
収益性向上施策の進展に注目
3. 弊社の視点
同社は中期経営計画(2025~2027)において、インドを起点とするアジア展開、競争力強化や収益性向上の推進に加えて、株主還元の強化も打ち出した。こうした「株主などのステークホルダーを意識した経営」を評価するべきだろうと弊社では考えている。また2026年3月期は営業・経常損失予想で収益性改善が一服する形となったが、これは一過性要因も影響しているため、下期から2027年3月期に向けて回復基調が期待できるだろうと弊社では考えている。建設用クレーン、油圧ショベルとも、2027年3月期に市場投入する新型機種ではコストダウンが進展しており、これによって収益性が一段と高まる見込みだ。したがって新製品開発・販売の強化、販売価格の適正化、原価低減や業務効率化、インド事業の立ち上げ、欧州事業の基盤強化、新たなM&Aなど、中長期的な収益性向上施策の進展に注目したいと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)
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