―日本版データスペース構想が株価を刺激、グロース市場で活躍期待の6銘柄をセレクト―
私たちの日常生活の行動や選択の一つひとつ、例えば何気ないWebサイト上でのクリック、SNSでの発信、買い物などが実は大きな情報価値を有している。簡単に言えばそれが 「ビッグデータ」の世界だ。企業はこれによって、商品開発や経営判断を高度化してきた。今や現代社会においては、情報の記録・解析・予測の車輪が至る所で回っていると考えてよい。まさに足もとでは、こうした流れが国策を背景に更にダイナミックな方向に向かっていこうとしている。今回は人工知能(AI)との関係も密接な「ビッグデータ」関連にスポットライトをあてた。
●仮説をことごとく覆すビッグデータ
今月、我々人間にとって非常に示唆に富んだ研究成果が発表された。それは東京都市大学、近畿大学、英国シェフィールド大学、日本自然保護協会からなる研究グループが実施した、生物多様性に対して人口増減がもたらす影響に関する調査だ。人口増、具体的には宅地の拡大などの土地開発によって山林が失われ、熊や猪などが民家や田畑に出没して被害を生むケースは、メディアでも多数報じられている。人口増加が他の生物に影響を与えてしまっていることを想像するのはたやすい。しかし、今回の研究結果からはむしろ、人口が増加している地域と減少している地域のいずれにおいても、昆虫類を含む生物多様性が減少している場合が多いことが明らかになったという。人口減が生物多様性の回復を促すという仮説は必ずしも正しいとはいえず、生態系(自然)は大きな変化を与えてしまった張本人がいなくなりさえすれば、勝手に自己再生するといった簡単なものではないということのようだ。
ここで何が言いたいのかと言うと、一見正しいと思われる仮説を覆すことが膨大なデータの検証によって可能となり、現実に相次いでいるということだ。新たな視点や発想の転換につながるような有意義な研究結果は、元来個別事象の探求から得られるものだが、近年は膨大なデータの集積の中からくみ取られることも急速に増えてきた。言わずもがな「ビッグデータ」の存在が世界を変えているのだ。
●26年の通常国会で新法制定が視野に
そうしたなか、足もとで医療・金融・教育をはじめとしたデータを社会課題の解決に用いるべく、自治体や中小企業が活用できるような仕組みを政府が整えようとしている。今月まとめられた「データ利活用制度のあり方に関する基本方針」にそれが盛り込まれた。今後詳細を詰めて、2026年の通常国会で関連法の改正及び新法を制定する流れとみられる。国がデータ保有者と契約することで、データ活用の際に直面するさまざまな障壁を取り除くことが発想の肝となる。
既に企業や組織間にまたがって存在しているデータを共有していく動きは、実際に欧州連合(EU)が「データスペース構想」として始めていることはあまり知られていないかもしれない。くしくもトランプ政権下で行われた研究費削減の影響で、トップレベルの研究者たちが米国外に流出し、その獲得に各国が躍起となる中で、ビッグデータ活用の下地が日本でも整っていくことは歓迎されるべき方向といってよい。日本版データスペース構想が視界に入りつつあるなか、「ビッグデータ」関連の銘柄は目先注目といえる。
個別にみていくと、例えば日鉄ソリューションズ <2327> [東証P]が製造業を中心に流通業、官公庁に向けてソリューションを提供するほか、日立製作所 <6501> [東証P]は最先端の技術・手法でデータの収集・加工・蓄積・分析を行い、AIで解析する「ビッグデータ×AI」を提供する。BIPROGY <8056> [東証P]は「オープンデータ情報連携管理基盤(ODMaP)」を提供するとともに、提供側と利用側の課題をICTで解決し、地域共創モデルの創出を支援する。SCSK <9719> [東証P]は膨大なデータを簡単に可視化し、業務課題や質問の解を探索できるデータ分析プラットフォームなどを提供している。このほか、グロース上場銘柄で注目される有力な中小型株を紹介する。
●ビッグデータ関連で活躍期待のグロース株6選
◆マイクロアド <9553> [東証G]~データ集積・分析の知見を活用し、企業のマーケティング基盤構築を支援するサービスとして「UNIVERSE」を提供。UNIVERSEでは、企業の保有する顧客CRMデータ、同社が保有する4億ユニークブラウザのパソコン及びスマートフォンの行動データを、単一のIDによって統合的に結び付け分析する機能を提供している。今年6月には日本での「TikTok Shop」の本格展開に備え、総合支援の専門子会社「UNIVERSE PULSE」を設立しており、UNIVERSEの膨大なデータによる分析力を軸に企業の販促を包括的に支援する。
◆Finatextホールディングス <4419> [東証G]~金融サービスに必要な基幹システムをクラウドで提供。「ビッグデータ解析事業」では、企業が保有するPOSデータやクレジットカードデータなどのビッグデータを解析し、その結果をライセンスとして外部に販売。次世代クラウド基幹システムとデータ・ 生成AI開発基盤を組み合わせることで、業務効率の飛躍的な向上を目指しており、ビッグデータ解析事業で蓄積した生成AIのノウハウと業務知識を掛け合わせ、金融業務に特化した生成AIツール開発を進めている。
◆unerry <5034> [東証G]~デジタル・リアルを融合させた生活者行動ビッグデータであらゆる産業のデータ支援を展開する。その中核をなしているのが人流ビッグデータであり、日本と北米を中心に4.2億IDというデータ量になる。これらデータを活用して、分析・可視化サービスである「ショッパーみえーる」、行動変容サービスの「Beacon Bank AD」、One to Oneサービスの「Beacon Bank 1to1」を提供する。
◆ELEMENTS <5246> [東証G]~データに基づいた個人認証・個人最適化ソリューションを、各業界のサービス提供事業社にBaaS(Backend as a Service)として提供している。BaaSには生体認証、購買解析、空間解析、体型解析に伴うさまざまなデータを保有。一般ユーザー向けサービスも提供しており、ユーザーからのフィードバックも取り入れることで、BaaSの新機能開発・精度向上につなげている。AIクラウド基盤(IoP Cloud)は日々取得するヒトに関するデータを継続的に機械学習し、サービス品質の維持・向上につなげている。
◆TDSE <7046> [東証G]~AI・ビッグデータ活用領域のコンサルティングやソリューションを提供。小売・流通、製造、建設・社会インフラ、保険など、多くの業界でビッグデータの分析・活用実績がある。24年10月には三菱総合研究所 <3636> [東証P]とAI・ビッグデータ活用領域において業務提携しており、両社のAI・ビッグデータ活用領域の強みを組み合わせることで、AI活用市場における対応力を強化している。
◆True Data <4416> [東証G]~全国の消費者購買データを扱うビッグデータプラットフォームを運営。同社の購買ビッグデータとさまざまなビッグデータを活用し、消費財メーカーや小売業だけではなく、あらゆる業界・業種の企業や地域・自治体などが、その規模に関わらずデータマーケティングに取り組めるソリューションを提供している。豊富な消費者ビッグデータをマップに搭載しており、店舗商圏・エリア別に消費者の購買特性や価値観・嗜好性、生活様式などの特徴を把握することが可能。
株探ニュース
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