資源・新興国通貨の2025年9月までの展望

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最新投稿日時:2025/05/26 14:44 - 「資源・新興国通貨の2025年9月までの展望」(八代和也)

資源・新興国通貨の2025年9月までの展望

著者:八代和也
投稿:2025/05/26 14:44

豪ドル

RBA(豪中銀)は5月19日-20日の政策会合で0.25%の利下げを行うことを決定。政策金利を4.10%から3.85%へと引き下げました。RBAが利下げしたのは2月以来です(前回3月31日-4月1日は政策金利を据え置きました)。

RBAは声明で先行きの金融政策について、「総需要と総供給の両面で不確実性が高まっていることから、先行きについては慎重な姿勢を維持する」としました。ただし、「国際情勢が豪州の経済活動とインフレに重大な影響を及ぼす場合、金融政策は断固として対応できる(追加利下げ?)態勢にある」と表明。ブロックRBA総裁は会合後の会見で「現段階での利下げは正当であり、さらなる調整は可能だ」と述べました。

市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、市場ではRBAは25年12月末までに合計0.75%の追加利下げを行うとの見方が優勢です(5/23時点)。RBAの追加利下げ観測が今後さらに高まる場合、豪ドルのマイナス材料になると考えられます。

一方で、市場は引き続きトランプ政権による関税や米国の財政をめぐるニュースに反応しやすい地合いです。トランプ政権が高率の関税を発動することや米国の財政赤字拡大への懸念が市場で強まれば、米ドルが全般的に軟調に推移しそうです。その場合、豪ドル/米ドルのサポート要因になると考えられます。

豪ドルは、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすい傾向があります。世界的な貿易戦争への懸念が強まるなどしてリスクオフ(リスク回避)が強まる場合、(特に対円で)豪ドルが下押しする可能性があります。
***
【豪ドル/NZドル】
市場では、RBAとRBNZ(NZ中銀)のいずれも12月末までに合計0.75%の追加利下げを行うとの見方が有力です(*RBNZの金融政策の詳細はNZドルの項をご参照ください)。市場の見通しどおりに両中銀の政策金利が推移すれば、政策金利の差は今後大きな変化はなさそうです。金融政策面からみれば、豪ドル/NZドルは明確な方向感が出にくいと考えられます。

NZドル

RBNZ(NZ中銀)は24年8月から25年4月の政策会合まで5回連続で利下げを実施しました。
 
前回4月9日会合時の声明や議事要旨では、「(トランプ政権の)関税政策の範囲と影響が明確になるにつれ、必要に応じて政策金利をさらに引き下げる余地がある」との認識が示されました。

市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、市場では25年12月末までに合計0.75%の追加利下げが行われるとの見方が優勢です(5/23時点)。今後発表されるNZの経済指標の結果により、RBNZの追加利下げ観測が一段と高まる場合、NZドルのマイナス材料になりそうです。

高率のトランプ関税発動や米国の財政赤字拡大への懸念などから米ドルが全般的に軟調に推移する場合、NZドル/米ドルは底堅い展開になる可能性があります。

NZドルは豪ドルと同様、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすい傾向があります。リスクオフが強まる場合、(特に対円で)NZドルが下押しするかもしれません。

カナダドル

BOC(カナダ中銀)は24年6月から25年3月まで7会合連続で利下げを実施した後、前回4月16日の会合では政策金利を据え置きました。

BOCは政策金利を据え置く理由を「米国の関税の道筋とその影響についてより多くの情報を得るため」と説明。マックレム総裁は会合後の会見で「景気減速によるインフレの下押し圧力と、コスト上昇によるインフレの押し上げ圧力(のタイミングと強さ)を引き続き精査する」と述べました。

BOCは金融政策運営において難しい舵取りを迫られそうです。 トランプ政権の関税によって米国やカナダ経済は下振れする可能性があります。その一方で、4月のCPI(消費者物価指数)のトリム値は前年比3.1%、中央値は同3.2%と、いずれも前月(それぞれ2.9%と2.8%)から上昇率が高まりました。BOCはコアインフレ指標としてトリム値と中央値を注視しています。

市場では、BOCは次回6月4日の会合で政策金利を据え置くとの見方が優勢。12月末までに0.25%の追加利下げが1回行われるとの見方が市場では有力です。BOCの金融政策面からみれば、カナダドル安圧力は生じにくいと考えられます。

米ドル/カナダドルについては、トランプ政権の通商政策や米財政状況などにも影響を受けそうです。米財政赤字拡大への懸念が強まるなどして米ドルが全般的に軟調に推移する場合、米ドル/カナダドルは下値を試す可能性があります。

カナダドル/円については、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)の影響を受けやすいかもしれません。リスクオフが強まって円が全般的に堅調に推移すれば、カナダドル/円は上値が重い展開になりそうです。

トルコリラ

トルコの検察当局は3月19日、イマモール・イスタンブール市長を拘束しました。これを受けてトルコの政治リスクが市場で意識されて、トルコリラ/円は同じ日に一時3.466円へと下落し過去最安値をつけました。

TCMB(トルコ中銀)はトルコリラを下支えするため金融引き締めを実施しました。
・3月20日の緊急会合:翌日物貸出金利を44.00%から46.00%へと引き上げ
・4月17日の定例会合:利上げすることを決定。1週間物レポ金利を42.50%から46.00%へ、翌日物貸出金利を46.00%から49.00%へ、翌日物借入金利を41.00%から44.50%へとそれぞれ引き上げ(※)

(※)TCMBは1週間物レポ金利を中心に、上限の翌日物貸出金利と下限の翌日物借入金利の範囲内に市場金利を誘導しています。

TCMBのこれらの措置はトルコリラにとってプラス材料と考えられ、トルコリラ/円はこのところ比較的落ち着いた値動きになっています。ただし、トルコの政治情勢には引き続き要注意です。

南アフリカランド

トランプ米政権の通商政策に南アフリカランドは影響を受けそうです。トランプ政権による相互関税では、南アフリカの関税率は30%とされました(基本税率10%+上乗せ分20%)。相互関税の上乗せ分については7月上旬まで停止されたものの、仮に上乗せ分が発動されれば、南アフリカランドには下押し圧力が生じそうです。

SARB(南アフリカ中銀)の金融政策にも注目です。SARBは24年9月から25年1月まで3会合連続で利下げを実施(利下げ幅はいずれも0.25%)。25年3月の会合では政策金利を据え置きました。

南アフリカの4月CPI(消費者物価指数)は前年比2.8%と、2カ月連続でSARBの3~6%のインフレ目標を下回りました(目標中間値の4.5%を下回ったのは9カ月連続)。SARBは今後さらに利下げを行うとみられ、その場合には南アフリカランドのマイナス材料になる可能性があります。

メキシコペソ

BOM(メキシコ中銀)は5月15日の政策会合で、0.50%の利下げを行うことを決定。政策金利を9.00%から8.50%へと引き下げました。利下げは7会合連続で、24年3月以降で8回目。0.50%幅の利下げは3会合連続です。

BOMは声明で先行きの金融政策について、前回3月会合と同様に「今後も金融政策スタンスの調整を継続し、同程度の規模での調整を検討する可能性がある」と表明。次回6月26日の会合でも0.50%の利下げを行う可能性を示しました。BOMが利下げすることはメキシコペソにとってマイナス材料と考えられます。ただし、日銀など主要国の中銀と比べてBOMの政策金利の水準がかなり高い状況に大きな変化がなければ、金融政策面からのメキシコペソへの下落圧力はそれほど強くならないかもしれません

トランプ米政権の通商政策にも注目です。メキシコは輸出の約8割が米国向けと対米依存度が高いため、トランプ政権の通商政策はメキシコ景気に大きな影響を与えるとみられます。仮に今後、トランプ政権とメキシコのシェインバウム政権の交渉によって対メキシコ関税が軽減されることがあれば、メキシコペソにとってプラス材料になりそうです。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想

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