資源・新興国通貨の2025年9月までの展望
1

\ あなたにピッタリの銘柄がみつかる /

みんかぶプレミアムを無料体験!

プランをみる

最新投稿日時:2025/03/31 15:35 - 「資源・新興国通貨の2025年9月までの展望」(八代和也)

資源・新興国通貨の2025年9月までの展望

著者:八代和也
投稿:2025/03/31 15:35

豪ドル

RBA(豪中銀)は2月17-18日の政策会合で0.25%の利下げを実施しました。2月の会合以降、RBAの政策メンバーは追加利下げに慎重な姿勢を相次いで示しました。ハウザー副総裁は3月4日に「2月の利下げによってインフレ率が(2~3%の目標中間値の)2.5%を下回るリスクは低下した」、「RBAは現時点で、連続利下げが必要になるとは考えていない」と述べ、ハンター総裁補は18日に「RBAは追加利下げについて市場よりも依然として慎重だ」と語りました。

ただ、市場では引き続きRBAは5月に追加利下げを実施するとの見方が優勢(次回4月1日の会合では政策金利の据え置きを予想)。また、5月を含めて12月末までに合計3回の利下げが行われるとの観測があります。

4月1日の会合での声明やブロック総裁会見、今後発表される豪州のCPI(消費者物価指数)などの結果を受け、RBAの追加利下げ観測が市場で強まる場合、豪ドルのマイナス材料になりそうです。

豪ドル/円は日銀の、豪ドル/米ドルはFRBの金融政策にも影響を受けると考えられます。日銀が今後追加利上げを実施する、FRBの追加利下げ観測が後退する場合、豪ドル/円や豪ドル/米ドルは軟調に推移する可能性があります。

主要国の株価動向にも目を向ける必要がありそうです。豪ドルは投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすい傾向があります。主要国の株価が下落を続けるなどしてリスクオフ(リスク回避)が強まる場合、豪ドルに対して下押し圧力が加わるかもしれません。

5月3日に豪州の総選挙が実施されます。最近の世論調査では、与党・労働党と野党・保守連合(自由党と国民党)の支持率は拮抗しているようです。総選挙の結果次第では、豪ドルの材料になる可能性があります。
***
【豪ドル/NZドル】
RBAとRBNZ(NZ中銀)の金融政策はいずれも、利下げ方向と考えられます。金融政策面から見れば、豪ドル/NZドルは明確な方向性が出にくいかもしれません(*RBNZの金融政策の詳細はNZドルの項をご参照ください)。

NZドル

RBNZ(NZ中銀)は、前回25年2月の政策会合まで4回連続で利下げを実施。利下げ幅は最初の24年8月が0.25%で、その後の3会合はいずれも0.50%でした。

RBNZのオア総裁は2月会合時の会見で「今年7月頃までに0.50%の追加利下げを予想している。追加利下げは0.25%ずつの2回で、4月と5月の可能性が高い」と述べ、今後は利下げペースを落とす可能性を示しました。

市場では、25年末までに4月と5月を含めて3回の利下げを実施するとの観測があります。次回4月9日のRBNZ会合時の声明や、CPI(消費者物価指数)などNZの経済指標の結果を受け、RBNZの追加利下げ観測が市場で強まる場合、NZドルのマイナス材料になりそうです。

NZドル/円は日銀の、NZドル/米ドルはFRBの金融政策にも影響を受けると考えられます。日銀が今後追加利上げを実施する、FRBの追加利下げ観測が後退する場合、NZドル/円やNZドル/米ドルは軟調に推移する可能性があります。

NZドルは豪ドルと同様、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすい傾向があります。主要国の株価が下落を続けるなどしてリスクオフが強まれば、NZドルに対して下押し圧力が加わる可能性があります。

カナダドル

カナダドルは引き続き、トランプ米政権の関税政策に影響を受けやすいと考えられます。トランプ政権がカナダに対して高率の関税を実際に課せば、カナダドルは軟調に推移する可能性があります。

BOC(カナダ中銀)は3月12日の政策会合で0.25%の利下げを行うことを決定。政策金利を3.00%から2.75%へと引き下げました。BOCの利下げは7会合連続です。

マックレムBOC総裁は会見で、トランプ政権の関税がカナダ経済に与える悪影響に言及しました。その一方で、コスト上昇によるインフレの押し上げ圧力と内需の減速によるインフレの下押し圧力の両方を精査する必要があり、「政策金利のさらなる変更については慎重に進める」と述べました。BOCの追加利下げに慎重な姿勢が今後も変化しなければ、カナダドルを下支えする要因になるかもしれません。

4月28日にカナダの総選挙が実施されます。世論調査によると、カーニー首相が率いる自由党と最大野党・保守党の支持率は拮抗しており、選挙は接戦になると予想されています。カーニー首相が続投するのかどうか、そして選挙後の関税をめぐるトランプ政権との交渉が注目されます。

トルコリラ

トルコリラは3月19日に急落し、対米ドルや対円で過去最安値をつけました。トルコの検察当局がイマモール・イスタンブール市長を拘束したためです。イマモール氏はエルドアン大統領の最大のライバルで、28年に予定されるトルコの次期大統領選の野党の有力候補とみられていました。

トルコリラを下支えするため、19日に複数の国営銀行が大規模な米ドル売り・トルコリラ買いを行ったもようです。また、TCMB(トルコ中銀)は20日に緊急会合を開き、翌日物貸出金利を44.00%から46.00%へと引き上げる(※)とともに、1週間物レポ入札を停止することを決定しました。

(※)TCMBは1週間物レポ金利を中心に、上限の翌日物貸出金利と下限の翌日物借入金利の範囲内に市場金利を誘導しています。TCMBは1週間物レポ金利と翌日物借入金利を据え置く一方で、上限の翌日物貸出金利を引き上げました。

TCMBが事実上の金融引き締めを実施したことにより、トルコリラ安はいったん落ち着く可能性があります。ただし、トルコの政治情勢には引き続き引き続き要注意。政治の混乱が長期化する場合、トルコリラには再び下押し圧力が加わるかもしれません。

南アフリカランド

SARB(南アフリカ中銀)は3月20日の政策会合で政策金利を7.50%に据え置くことを決定。24年9月に開始した利下げサイクルをいったん停止しました。

会合では6人の政策メンバーのうち4人が政策金利の据え置きに賛成し、2人が0.25%利下げすることを支持しました。クガニャゴ総裁は会合後の会見で、「世界経済は安定しておらず、国内にも不確実性がある。(金融政策において)慎重なアプローチが必要だ」と述べました。

SARBの次回政策会合は5月29日の予定です。今後発表される南アフリカの経済指標を受け、5月会合でも利下げが見送られるとの観測が市場で強まれば、南アフリカランドのプラス材料になりそうです。

メキシコペソ

メキシコ経済は対米依存度が高く、輸出の約8割が米国向けです。トランプ政権がメキシコに対して高率の関税を課せば、メキシコ景気の先行きへの懸念が強まるとともに、メキシコペソには下落圧力が生じる可能性があります。

BOM(メキシコ中銀)の金融政策にも注目です。BOMは3月27日の政策会合で0.50%の利下げを行うことを決定。政策金利を9.50%から9.00%へと引き下げました。この時の声明では、2月会合と同じく、「今後も金融政策スタンスの調整を継続し、同程度の規模での調整を検討する可能性がある」としました。BOMが次回5月の会合でも0.50%利下げする可能性に言及したことは、メキシコペソのマイナス材料と考えられます。

ただ、FRBや日銀など主要国の中銀と比べてBOMの政策金利の水準は依然としてかなり高い状況です。このことが市場で意識されれば、仮にBOMが追加利下げを行ったとしても、メキシコペソ/円はそれほど下落しない可能性があります。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想

みんかぶおすすめ