―全体の5割超の病院が赤字経営、資金支援や経営戦略見直しに貢献する企業の商機拡大―
病院やクリニックなど 医療機関の経営が厳しさを増している。帝国データバンク(東京都港区)によると、2024年の医療機関(病院、診療所、歯科医院)の倒産は64件、また休廃業・解散は722件となり、それぞれ過去最多を更新した。経営難から今や赤字経営の医療機関は全体の半数に及ぶとされている。
こうしたなか、医療機関の経営を支援する企業やM&A仲介事業者の存在感が増している。株式市場でも関連企業が徐々に増えており注目したい。
●コスト増も価格転嫁できず経営を圧迫
少子高齢化の進展により、医療や介護を必要とする人の数は増えているものの、人口減少のペースがそれを上回っていることが医療機関の経営難の背景にある。厚生労働省の「病院報告」によると、23年の1日平均外来患者数は123万3703人(前年比1.9%減)で、比較可能な最も古い02年と比べると29.0%減少した。また、23年の一般病床の利用率は70.8%で、02年の80.1%に比べて9.3ポイント減少した。
医療機関の主な収入源は入院費や治療費などだが、これらの価格は国が定めた診療報酬で決められている。診療報酬は通常2年に一度改定されるが、医療費の膨張を避けるために診療報酬は抑えられる傾向にある。そのため、人件費や材料費が高騰しても価格転嫁はできず、外来患者数や入院患者数の減少は収入減に直結し、医療機関の経営を圧迫する。
●「赤字病院」が5割を超える
医療機関の収益構造は、病院の本業である外来患者や入院患者へ医療サービスを提供して得られる「医業収益」から、医療サービスを提供するために費やした人件費や材料費、設備投資や機器保守料などの費用全般を表す「医業費用」を引いたものを「医業利益」といい、これが一般企業の営業利益に当たる。また、「医業利益」に医業外収益を加え、医業外費用を控除したものを「経常利益」という。経常利益は医療法人全体で得られた利益を指すことから、経営状態を見るのに使われるが、福祉医療機構が今年1月に発表した「2023年度 病院の経営状況について」によると、一般病院で経常損益が赤字となったいわゆる「赤字病院」の割合は、51.0%と前年度から18.5ポイント増加した。
人口減少から、医業収益に対する医業利益の割合を表す医業利益率は低下傾向にあったものの、コロナ補助金により経常利益率は一定の水準を維持していた。ただ、23年度は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「コロナ補助金」が終了したことで赤字の医療機関が一気に増加したという。
●コンサルやM&A需要は増加中
人口減少により医業収益が減少する一方、医療材料・機器の値上げ、医療従事者の人件費の上昇などにより医業費用の増加は今後も続くとみられ、医療機関の経営を取り巻く環境は今後も厳しさを増すと予想される。
そうしたなか、経営や行政対応、財務面などのアドバイスや業務支援を行う医療コンサルティングの需要が増加している。医療関連サービス振興会が発表している医療関連サービスにおける委託率の推移をみると、医業経営コンサルティングを利用する医療機関の割合は年を追うごとに増加している。
また、医療機関のM&A件数も増加傾向にある。経営の安定化を目的としたものばかりではなく、後継者不在による事業承継を目的としたものなども増えている。厚労省は「地域医療構想」として地域の病床を4つの機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)に分化・連携を進める医療提供体制の再構築に取り組んでおり、これも医療機関のM&Aに拍車をかけている。
そのため、今後も医療機関の経営を支援するビジネスの市場は成長が見込まれる。関連企業の活躍の場は広がりそうだ。
●医療機関支援の関連銘柄
D&Mカンパニー <189A> [東証G]は医療、介護・福祉サービス関連業界に特化して資金・マネジメント・人材に関する支援をワンストップで提供。具体的には、診療・介護報酬債権のファクタリング(債権買い取り)による資金支援を行い、あわせてコンサルティングによる経営戦略の伴走や、人材紹介・派遣などの人材サービスやアウトソースによる運営事務のサポートなど複数のサービスを提供している。25年5月期第2四半期時点で取引社数は123社(うち債権買取社数64社)に上り、連結営業利益は1億5800万円を計上。通期では同3億100万円(前期比7.4%増)を見込んでいる。
シーユーシー <9158> [東証G]は国内では医療機関向け経営支援、ホスピス、居宅訪問看護の3つの事業を展開するほか、海外で足病クリニックの運営を行っている。「医療機関」事業では医療機関に対する経営戦略策定・経営管理支援からマーケティング、IT・経理・総務支援などに加えて、M&Aや新規クリニックの開設支援などを提供。25年3月期第3四半期累計決算は、支援先医療機関やM&A支援報酬の増加などで同事業が伸長したほか、居宅訪問看護事業の利用者数の増加などにより連結営業利益は45億7600万円(前年同期比74.6%増)を計上。同時に通期予想を40億円から50億円(前期比33.8%増)に上方修正した。
船井総研ホールディングス <9757> [東証P]は 経営コンサルティング大手で、あらゆる業種に対するコンサルティングを展開するが、なかでも住宅・不動産や医療・介護分野に強みがある。その医療機関向けでは、業界に特化した専門的なコンサルティングを展開し、診療科ごとに専門コンサルタントを配置。現在までに300を超える病院やクリニックの経営を支援している。24年12月期連結決算では、医療・介護・福祉分野の売り上げが2割近く伸長。経営コンサルティング事業のほかロジスティクス事業なども伸長し営業利益は83億2400万円(前の期比14.9%増)となった。25年12月期は同89億円(前期比6.9%増)を見込む。
ユカリア <286A> [東証G]は、病院の経営サポート事業を柱に、介護施設の運営や紹介などの事業を展開。また、コンタクトレンズメーカーのシンシア <7782> [東証S]の親会社でもある。主力の医療経営総合支援事業では20以上の病院とパートナーシップを結び病院経営のコンサルティングから、不動産のセール&リースバックや診療報酬債権のファクタリングなどの資金支援、院内業務のDX支援などを提供。更にパートナーシップ先を順調に増やしている。24年12月期の決算発表は2月14日の予定だが、従来予想では連結営業利益20億1800万円(前の期比6.3%増)を予想。これに対し第3四半期累計の営業利益は19億4400万円だった。
レオクラン <7681> [東証S]は、新築・移転時の医療機関や福祉施設などに対して、企画段階から開設に至るまでの総合的なコンサルティングを行い、医療機器・医療設備・医療情報システムの販売を行うメディカルトータルソリューション事業が主力。そのほか、医用画像の遠隔診断サービスや介護・福祉施設向け給食サービスを展開している。25年9月期は連結営業利益3億円(前期比68.4%増)と3期ぶりの営業増益を目指しており、第1四半期の決算発表は2月14日を予定している。
このほか、医療事務受託をはじめとする業務支援のほか、実務に携わる専門チームによる経営支援サービスを行うソラスト <6197> [東証P]、医療機関向け自動受付精算機やセルフ精算レジで医療人材不足への対応や医療事務業務スリム化を支援するGENOVA <9341> [東証P]、訪問看護ステーション向けSaaS型業務支援ツールの提供をはじめ在宅医療のDXを支援するeWeLL <5038> [東証G]などにも注目したい。
株探ニュース
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