―インバウンド急増で燃料需給逼迫、昨夏に顕在化した再発リスクくすぶる―
日本政府観光局(JNTO)は1月15日、2024年通年の訪日外客数が前の年と比べ47.1%増の3686万9900人になったと発表。過去最高だった19年の3188万2049人を約500万人上回り、年間最多を更新した。政府は観光立国の実現に向けた目標として、30年までに訪日外客数を6000万人に増やすことを掲げているが、冷や水を浴びせかねないリスクのひとつが航空燃料の不足だ。こうしたなか、今後の需要拡大が見込まれているのが持続可能な航空燃料「SAF」で、改めて関連銘柄に注目してみたい。
●脱炭素化でも高い関心
成田国際空港(NAA)は24年6月、航空燃料の不足などにより一部の増便や新規就航を見合わせていることを明らかにした。東京や大阪にある主要空港だけでなく、インバウンドを呼び込みたい地方空港にとっても由々しき事態で、危機感を募らせた政府は同年7月に民間と連携して燃料の輸入拡大などを柱とする行動計画を策定した。ただ、NAAの運用状況をみると、24年通年の給油量は約336万キロリットル(23年は約307万キロリットル)に拡大しており、昨夏に突如顕在化した燃料不足の再発リスクは依然としてくすぶっている。
この問題を解決する切り札として期待されているのがSAFで、廃食油や微細藻類、木くず、サトウキビ、古紙などを主な原料として製造される。従来使用されている化石燃料(石油など)からつくったジェット燃料と比べて二酸化炭素(CO2)削減効果があるとされ、例えばSAFの一種であり微細藻類や木くずからつくられる「バイオジェット燃料」は、燃焼させるとCO2を排出するが、その元となるバイオマスはCO2を吸収して再生産されるため、全体としてみれば大気中のCO2が増加しない燃料とみなすことができる。
SAFは航空輸送のカーボンニュートラルを実現するうえでも不可欠な代替燃料で、政府は30年までに国内の航空会社が使用する燃料のうち10%をSAFに置き換えることを目標にしている。ただ、市場を形成・発展させていくためには、必要十分な製造能力や原料のサプライチェーン(供給網)を確保することが重要。また、国際競争力のある価格で安定的に供給できる体制を構築するとともに、需要側においてSAFを安定的に調達する環境を整備することも欠かせず、関連銘柄のビジネス機会が増えそうだ。
●航空各社への供給相次ぐ
ENEOSホールディングス <5020> [東証P]傘下のENEOSは3日、スカイマーク <9204> [東証G]向けにSAFの供給を始めると発表した。同社は3月末にかけて羽田発那覇行きの運航便向けに、一定量の廃食油由来のSAFを混合した航空燃料を納入する予定。スカイマークにとって今回が初めてのSAFの調達で、「30年に航空燃料の10%をSAFに置き換える」という目標達成に向けた重要なマイルストーンとなる。
ユーグレナ <2931> [東証P]は3日、経済産業省の「令和5年度補正グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」に、自社の「バングラデシュ人民共和国/バングラデシュにおけるSAF向け原料サプライチェーン構築に向けた調査事業」が採択されたことを明らかにした。SAFの主な原料である使用済み食用油(UCO)は、世界的な需要拡大により供給量不足や価格高騰が予想され、UCOやそれに代替する原料の安定確保、及び原料確保のためのサプライチェーン構築が課題。バングラデシュはUCO回収事業やSAF向け原料としての油糧作物栽培がほぼ未開拓の状態であり、新たなSAF向け原料の供給地としての将来性が見込まれているという。
コスモエネルギーホールディングス <5021> [東証P]グループのコスモ石油マーケティングは1月27日、SAFFAIRE SKY ENERGY(横浜市西区)が国内で製造するSAFについて、4月から日本航空 <9201> [東証P]及びANAホールディングス <9202> [東証P]傘下の全日本空輸に供給すると発表。供給予定のSAFは、21年に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として採択され取り組んできたもので、国内で初めて大規模生産される国産SAFとなる。また、翌28日にはドイツの国際物流大手DHLエクスプレスとSAFの売買契約を締結したことも明らかにしている。
Green Earth Institute <9212> [東証G]は1月24日、NEDOが公募した「バイオものづくり革命推進事業」で、日本製紙 <3863> [東証P]とともに「純国産木材バイオリファイナリーによる世界最高クラスの低炭素 バイオエタノール生産プロセスの開発」事業の実施予定先として採択されたことに関し、補助金の交付決定通知があったと発表。24年度と25年度の2年間にそれぞれ4360万円、7354万円を受領し、その後の計画では26年度に6126万円、27年度に3050万円、28年度に4324万円、29年度に4336万円の補助を受ける予定だ。
●Jオイルなどにも注目
このほかの関連銘柄としては、コスモ石油などと国産SAF製造サプライチェーンの構築に取り組んでいる日揮ホールディングス <1963> [東証P]、植物によるバイオ燃料の製造・販売を手掛けるグループ会社を持つジー・スリーホールディングス <3647> [東証S]、SAFの原料となるバイオエタノールで27年までに年2万キロリットルの生産を目指すレンゴー <3941> [東証P]、国産SAFの大規模生産実証設備向け廃食油精製用遠心分離機を受注した実績のある三菱化工機 <6331> [東証P]、SAF原料用バイオエタノールを蒸留する際のCO2排出をゼロにする「ヒートポンプ式バイオエタノール蒸留装置」の技術を持つ木村化工機 <6378> [東証S]、SAFの商用化及び普及・拡大に取り組む有志団体「ACT FOR SKY」のメンバーに名を連ねている大栄環境 <9336> [東証P]など。
直近ではJ-オイルミルズ <2613> [東証P]が、食用でない植物から100%バイオマス由来のSAFの生成に成功したことを明らかにした。これは沖縄などに自生する亜熱帯植物のテリハボクとポンガミアの種子から搾油・精製した油脂を用いたもので、今回生成したニートSAF(バイオマス原料などをもとに製造された純度100%のジェット燃料)は国際品質規格である「ASTM D7566 Annex A2」に適合。この成果により、新たな原料が将来のSAF供給拡大につながることが期待される。
株探ニュース
関連銘柄
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