JFEホールディングス、成長分野・地域への積極投資に加え、京浜地区土地活用を4本目の柱としてさらなる収益拡大を図る

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最新投稿日時:2025/01/28 19:00 - 「JFEホールディングス、成長分野・地域への積極投資に加え、京浜地区土地活用を4本目の柱としてさらなる収益拡大を図る」(ログミーファイナンス)

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JFEホールディングス、成長分野・地域への積極投資に加え、京浜地区土地活用を4本目の柱としてさらなる収益拡大を図る

投稿:2025/01/28 19:00

日経CNBC「トップに聞く」

佐藤友香氏(以下、佐藤):本日はJFEホールディングスの北野嘉久社長にお越しいただいています。北野社長、よろしくお願いします。

北野嘉久氏(以下、北野):JFEホールディングスの北野です。よろしくお願いします。

佐藤:北野社長は今年4月に新しく社長に就任されました。技術畑のご出身で、現場での経験も豊富ということですが、ご自身の経験を活かして、今後どのようなところに注力されますか?

北野:私はJFEスチール時代に、製造現場でエンジニアとして長年勤務していました。特にこれからはカーボンニュートラルの推進という課題がありますので、技術屋の社長として、グループ会社を率いていきたいと思っています。

JFEグループの概要

佐藤:JFEホールディングスの事業内容を簡単に確認していきたいと思います。JFEホールディングスは、傘下に100パーセント子会社の事業会社3社を持ち、鉄鋼をはじめ、エンジニアリング、商社の3事業を手がけています。

JFEスチールは、あらゆる鉄鋼製品を製造・販売する総合鉄鋼メーカーで、全体の売上収益のおよそ7割を占めています。JFEエンジニアリングは、社会生活に不可欠なインフラ設備の建設やサービスの提供を担い、JFE商事は、グループの中核商社としてサプライチェーンをサポートしています。3社が相互に連携する関係性となっています。

事業利益の推移

佐藤:直近の業績の動向について確認していきます。鉄鋼各社では、厳しい環境が続いているようですが、現在の事業環境、そして収益状況について教えてください。

北野:足元の事業環境は、非常に厳しい状況が続いているという認識です。国内では人手不足、あるいは資機材の高騰による建築プロジェクトの遅延、それに伴う鋼材需要の停滞が生じています。海外では中国経済の不調による内需停滞があり、中国から国外への鋼材の輸出が激増しています。このように、事業環境は非常に厳しいものがあります。

スライドの折れ線グラフは、中期計画ごとの平均粗鋼生産量(年間)を、棒グラフは平均の事業利益を示しています。このように粗鋼生産量は中期ごとに低下しており、事業環境が厳しいことが見て取れます。

特にコロナ禍において、6次中期3年間の平均は事業利益が非常に低迷しました。しかし7次中期の4年間で、構造改革を中心とした、量から質へのシフトを行い、厳しい事業環境下でも利益を創出できる体制を構築してきました。

さらに、この7次中期の期間では成長投資も行っていますので、投資の早期収益化、すなわち8次中期に向けての収益化、また中長期的には、成長戦略でさらなる企業価値向上を図りたいと考えています。規模としては、収益レベルの倍増を狙っています。

佐藤:利益倍増については後ほど詳しくお聞きしますが、事業環境は、トランプ次期大統領の政策の影響も気になるところです。関税の影響はいかがでしょうか?

北野:まずトランプ政権に関して、「短期的に米国経済、株価市場はプラスになるだろう」と予測する声は多いです。ただし政権確立後の政策面での関税、つまり過度な保護貿易主義は、貿易摩擦の火種になりますし、世界経済全体にも大きな影響を及ぼすと考えられるため、注視が必要だと見ています。

鉄鋼事業の主要施策

佐藤:ここからは、戦略についてもお聞きします。市況に左右されやすい鉄鋼事業について、厳しい事業環境でも収益を出せる体制を構築してきたということでした。量から質へのシフトに向けては、スライドに記載した3点の施策を行ってきたのですね。

北野:1点目は、生産体制の最適化(構造改革)で、京浜地区の上工程を2023年9月に休止しました。高炉、製鋼、熱間圧延工場の休止により、能力を13パーセント削減し、固定費の削減効果は450億円となりました。

2点目はマージンの拡大と安定収益の確保で、我々の商品価値に見合った販売価格へ抜本的な見直しを推進してきました。さらには、我々の得意とする高付加価値品である、自動車用鋼板・電磁鋼板などの比率を高めてきました。

そして3点目に、海外成長戦略の推進を行いました。成長する国(インド、北米など)、分野(電磁鋼板など)で成長投資を推進してきましたので、次の中期が楽しみです。

②マージン拡大~高付加価値品比率拡大~

佐藤:マージンの拡大について、深掘りしていきたいと思います。高付加価値品の比率が、かなり高まってきているということですね。

北野:そのとおりです。スライドのグラフは、左側の6次中期の値を起点に、1年ごとの高付加価値品比率の推移と、汎用品とのトン当たり収益差を示しています。

この4年間で、比率は40パーセントから50パーセントへと拡大し、汎用品とのトン当たり収益差も6次中期に対し8,000円以上拡大しており、マージン拡大に寄与できていると思います。主な高付加価値商品は、右側に示したような商品群です。

③海外成長戦略~JSW Steel社(印)と提携強化~

佐藤:高付加価値品比率が50パーセントにまで高まったということですが、主要施策の3つ目として、海外成長戦略も推進してきました。中でもインドに力を入れてきたということですね。

北野:インドという国はGDPが毎年伸びており、今後も成長するだろうと考えています。GDPの伸びにしたがって、スライド左側のグラフに示したように、電力需要も拡大していくと考えています。

電力需要が拡大すると、送電インフラである変圧器の需要が見込まれます。変圧器に使用される電磁鋼板は非常に高級で、世界でも数社しか製造できないものです。そのため、そこに力を入れていこうと考えています。

まず、インド国内の製鉄会社であるJSW Steel社とは、現在も提携していますが、さらなる提携強化のために合弁会社を設立し、新ラインを建設中です。2027年度にフル生産を予定しています。

加えて、合弁会社を通じて、高級方向性電磁鋼板を製造しているthyssenkrupp AG社の子会社、thyssenkrupp Electrical Steel India(tkES India)を買収する予定です。これにより、2025年度からインドマーケットへの参入早期化を狙っています。

この2つの製造拠点で、インド国内において最大規模で、高級方向性電磁鋼板を供給していく体制が確立できます。これはインドに限った話ではありません。我々は今後も、成長する国の成長する分野に注力していきます。

佐藤:高級方向性電磁鋼板は変圧器に使用されるということですので、送配電のインフラ整備に必要となり、電力需要が増えれば増えるほど、需要が増えていくということですね。

北野:おっしゃるとおりです。

佐藤:国内事業が縮小する中で、北野社長が、今後の海外展開をどのように考えているのか気になるところです。一方で、日本製鉄によるUSスチール買収の行方も気になります。米国は今後トランプ政権となりますが、海外展開していく国や地域をどのように選んでいるのでしょうか?

北野:やはり、我々は高付加価値品が得意ですし、そのようなニーズがある国や地域に、インサイダーとして入っていくことが戦略となります。それが主要施策の3つ目で述べていることです。

先ほど、インドの事例をお話ししましたが、北米もこれから成長が見込まれます。私としては、中東地域もカーボンニュートラルやエネルギー産業として非常に成長していくだろうと考えています。したがって、そのような国々にインサイダーとして入っていこうという戦略です。

CO2排出削減への取り組み

佐藤:北野社長が特に力を入れていくとおっしゃっていた、脱炭素への取り組みについてお聞きしたいと思います。

鉄鋼業はCO2排出量が多い産業としても知られていますが、CO2排出削減の取り組みについて、今はどのようなフェーズにあるのでしょうか?

北野:スライドは、JFEグループのCO2削減、あるいは削減貢献目標に向けた取り組みについて示したものです。

上段の棒グラフで鉄鋼事業のCO2排出量を表しており、2030年度において2013年度比30パーセント以上のCO2排出削減の目標を掲げています。さらに、2050年度にはカーボンニュートラルを目指します。

この間、2030年度までをトランジション期、それ以降をイノベーション期と定義しており、まずトランジション期ではスクラップ利用の拡大・省エネ、さらには高効率大型電気炉の導入を行い、30パーセント以上のCO2排出削減を達成する予定です。

そして、イノベーション期は超革新技術開発への挑戦と位置付け、水素を活用したカーボンリサイクル高炉・水素還元に向けたプロセスを現在研究開発中です。2030年度以降に開発が完了したあかつきには、これを導入していきたいと考えています。

一方、エンジニアリング事業においても、再生可能エネルギー発電の事業に力を入れています。これにより、CO2の排出削減に貢献する事業を推進しています。

2030年度には、年間2,500万トンのCO2削減貢献量を目指していますし、エンジニアリング事業にとって、カーボンニュートラル問題はリスクではなく事業拡大のチャンスと捉えて、ビジネスに注力していこうと考えています。

CO2排出削減によるグリーン鋼材「JGreeX」供給

佐藤:その一例として、グリーン鋼材にも注目されていますね。

北野:2023年から供給を開始し、環境価値に関心のあるお客さまにプレミアムを付けて販売しています。このような需要喚起策を、政府と連携し、制度あるいは枠組み等を作っていくことが課題だと思っています。

JFEエンジニアリングの環境ビジネス〜廃棄物発電〜

佐藤:廃棄物発電にも取り組まれていますね。

北野:これはJFEエンジニアリングの事業ですが、日本のみならず、現在は欧州・アジアにも展開しています。グローバルで、受注を拡大していこうと考えています。

グループ全体で成長分野に投資〜洋上風力発電ビジネス

佐藤:そして、洋上風力発電事業にもグループ一体で取り組んでいるということですね。

北野:国としても、洋上風力発電比率を高めるという導入目標があります。JFEエンジニアリングで工場を作り、JFEスチールが鋼材を供給し、JFE商事がサプライチェーンをサポートするという、グループ一体となった枠組みで取り組んでいるところです。

ステークホルダーへの還元

佐藤:株主還元についてお聞きします。JFEホールディングスは、配当利回りが非常に高いことでも知られていますが、市況が低迷する中でも、配当はしっかり維持していくのでしょうか?

株主資本配当率であるDOE、累進配当などを導入する企業も増えています。そのあたりも検討するという報道が、先日ありましたが、いかがでしょうか?

北野:まず、スライドの図は過去10年間の配当実績を示したものです。今年は事業環境が厳しい中でも、昨年と同レベルの配当を予定しています。

従来は配当性向30パーセントという考え方で進めてきましたが、株主への安定的な利益還元を重視していこうと考え、今年度は、100円の配当を予定しています。

8次中期経営計画立案に向けて、このあたりの考え方を整理している最中です。特に、安定配当を重視していく考えです。

株価推移

佐藤:株価の推移について、2024年10月時点では、1,720円近辺での動きとなっています。株価の現在の水準、そしてPBRの改善についてはどのようにお考えでしょうか?

北野:PBRは0.5倍弱と、非常に低いレベルで、市場からそのように評価されていると考えざるを得ません。

理由として、厳しい事業環境で業績が期待ほど出ていないこと、さらにはカーボンニュートラルの課題に対して、鉄鋼事業の不透明性が株価の重しになっていることが考えられます。

次の長期ビジョン、または8次中期で我々の戦略を示すことで、PBRの向上に努めていきたいと思っています。PBRの向上は重要な経営課題であると捉えているところです。

さらなる成長に向けた重点課題

佐藤:今後の重点施策について、収益力の倍増もありますが、来年度以降の成長についての考えを聞かせてください。

北野:企業価値向上に向けた取り組みを整理したのが、今お示ししているスライドです。

まず、我々の事業活動で最も重要だと考えられる「GX戦略」「DX戦略」「人財戦略」をしっかりと立てます。そして、この基盤の上に「量から質への転換加速」「成長分野・地域への攻めの投融資」を行い、収益力を倍増させます。この4つの視点が大事だと思っています。

また、構造改革で休止した京浜地区の土地活用を、将来収益の4本目の柱にしていきたいと考えているところです。

京浜地区土地活用

佐藤:4本目の柱について、川崎市にあったJFEスチールの東日本製鉄所京浜地区は、高炉の火が落ちてから1年が経ちます。およそ400ヘクタールの広大な土地ですが、どのように活用していくのでしょうか? 

北野:開発法人は、カーボンニュートラル、リサイクルを軸とした新たな事業活用ということで、先導的にはGI基金活用での受け入れが決定しています。今後も政府と連携しながら、有効な土地活用を、国のために行っていきたいと思っています。

佐藤:方向性としては、脱炭素技術の集結地となっていくのでしょうか?

北野:そのとおりです。

佐藤:2025年春に策定予定の、中期経営計画を楽しみにしています。

JFEホールディングスの北野社長にお話をお聞きしました。北野社長、ここまでありがとうございました。

北野:ありがとうございました。

配信元: ログミーファイナンス

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