―複雑化する手続き、解体工事からリユースまで急拡大するビジネスチャンス―
加速する超高齢化社会に日本列島が揺れている。少子高齢化による人口減少は国力の弱体化につながり、日本の行く末に暗雲を投げかける。こうしたなか、団塊の世代が75歳以上になる、いわゆる「2025年問題」を背景に死亡数も過去最多を更新しており、いよいよ「大相続時代」を迎えることになる。こういった状況で、急速に注目を集めているのが、いわゆる「家じまい」や「実家じまい」だ。関連分野が相続に関する法律から税金、 解体工事や リユースと多岐にわたるだけに、幅広いテーマ性を内包しており株式市場でも熱い視線が向けられる。身近に迫る「家じまい」と、その関連株を追った。
●死亡数過去最多が大きな要因に
厚生労働省が昨年9月に公表した23年の「人口動態統計(確定数)の概況」によると、出生数は過去最少となり人口減少に歯止めがかからない状況が浮き彫りになった。一方、死亡数は157万6016人となり、こちらも調査開始以来最多となった。少子化が懸念される状況では出生数に関心が向きがちだが、死亡数の増加も社会構造に大きな変化をもたらしている。
一般的には人が亡くなれば、そこには相続人が生まれ、死亡数が増加すれば、当然のことながら相続件数も増えることになる。核家族化が進んだ現在、一人暮らしだった親が亡くなり、今後使用する見込みのない実家が放置されるケースが増加。倒壊の危険性や衛生、治安の悪化につながり「空き家」は大きな社会問題になっている。
国も 空き家対策の強化を目指し、23年12月には「改正空き家対策特別措置法」を施行。管理が行き届かない危険な空き家は、固定資産税などの軽減措置が受けられなくなり、税負担が大幅に増加する可能性もある。なによりも不動産を相続して空き家を放置していることで、管理費や税金に加え修繕費など余計なコストがかかることになる。
●空き家問題は他人ごとではない
オープンハウスグループ <3288> [東証P]とLIFULL <2120> [東証P]は、「家じまいに関する意識調査」を共同実施し、昨年9月に結果を発表した。同調査では、住宅・土地統計調査(18年)によると、首都圏においては空き家予備軍(65歳以上の高齢者しか住んでいない持ち家)が全国より多く、今後25年問題とともに相続が発生する家を多く抱えており、空き家問題は他人ごとではないと指摘している。実家の売却経験者が苦労したことや後悔したことでは、1位に「思うような価格で売れなかった」(39.1%)、2位には「依頼する不動産会社を複数しっかり比較しなかった」(26.7%)となっており、売却の難しさが浮き彫りになった。同調査を行ったオープンHでは「ここ数年、家じまいや実家じまいに関連した売却の相談件数が大幅に増加している。当社としても非常に有望な市場の一つと捉えており、直接買い取りを開始し体制を強化している」(広報グループ)という。
また、LIFULLは全国の自治体や国が管理する空き家情報を集めたプラットフォーム「LIFULL HOME’S 空き家バンク」を運営している点も見逃せない。日本全国の空き家と暮らし情報を発信しており、理想の生活スタイル探しにも一役買う。同社の25年9月期連結業績は、営業損益段階で35億円の黒字に急浮上する見通しだ。
●ベクトルは「相続ナビ」
こうしたなか、複雑で面倒な相続手続きを、オンライン上で簡単に完了することができるサービスも立ち上がっている。昨年1月にはベクトル <6058> [東証P]と同社子会社のOwnedが共同で、「相続ナビ」を提供開始した。7月には、「相続ナビ」において新機能「手続きチェックリスト」を公開、ユーザーはチェックリストを使って、完了した手続きにチェックを入れることで進捗状況を確認することが可能になった。ベクトルは、SNSに強みを持ちデジタルマーケティングを提供するが、業績も好調だ。今月14日に発表した25年2月期第3四半期累計連結決算は、営業利益40億800万円(前年同期比14.6%増)と2ケタ増益で着地。通期は前期比22.5%増の同85億円を見込み過去最高益更新を計画している。
また、解体仲介サイト「解体の窓口」を運営するバリュークリエーション <9238> [東証G]、AI査定を活用した中古住宅流通事業「リノテック」を運営するアールプランナー <2983> [東証G]などにも目を配っておきたい。
売ることもままならない、借り手もつかない“負動産”などと揶揄(やゆ)される物件が増加し、資産の有効利用ができないという状況は、もはや国家的な視点でみても大きなマイナスだ。とはいえ、空き家の処分については、中古物件としての売却、あるいは解体して更地に戻したうえで新たに有効活用することなどが挙げられ、そこには大きなビジネスチャンスも生まれている。
●AndDoやカチタスに活躍素地
And Doホールディングス <3457> [東証P]は、不動産売買仲介のフランチャイズ運営を展開するが、子会社のハウスドゥ販売管理が空き家、空き地の活用に対する提案・コンサル業務を行っている。売却や賃貸運用、リフォームなど、どのような活用が最適かを調べる空き家無料調査をはじめ、売却サポートや賃貸管理サポート、ファイナンシャルサービス(税制面)などきめの細かいサービスで攻勢を掛ける。AndDoは昨年12月18日、第一生命ホールディングス <8750> [東証P]との資本・業務提携を発表。両社はリバースモーゲージ保証やハウス・リースバック、不動産売買などで協業を推進。不動産を活用した金融サービスの拡大に向けて共同で取り組むという。この発表を受け株価は急動意し、現在は1200円を挟みもみ合っており、目が離せない展開が続いている。
中古住宅の再生・販売を地方中心に全国展開するカチタス <8919> [東証P]にも注目したい。同社は、主に地方都市をターゲットにして、新築・中古・賃貸に加え「第4の選択肢」として、「リフォーム済み住宅」を市場に供給している。独自のノウハウで空き家を仕入れ、リフォームによって付加価値をつけ、中古住宅の買い取り再販事業で成長ロードを快走している。昨年11月には、北海道中富良野町と「空き家対策推進に関わる包括連携協定」を締結するなど活躍のフィールドを広げている。25年3月期の連結業績は、営業利益段階で前期比10.5%増の140億円を計画している。株価は、昨年5月につけた1549円を底に、下値を切り上げ、年初には一時2300円を突破した。現在は上昇一服も、2100円台で頑強展開にある。
●まんだらけに鎌倉新書も
前述した「家じまいに関する意識調査」で、興味深いのが「家にあった売れそうな物を、5人に1人が手間と時間で売ることができなかった」と回答したことだ。同調査では、この「残置物」をどう価値化するかが、大相続時代において課題になると指摘している。美術品や価値が高いと思われるコレクタブルな物は、時間をかけてやはり専門業者に査定してもらうのが適切といえる。
美術品では、高級絵画や陶磁器などのオークション開催で国内最大手のShinwa Wise Holdings <2437> [東証S]、ビンテージな漫画や玩具を手掛けるまんだらけ <2652> [東証S]などに妙味がありそうだ。まんだらけの25年9月期単独業績は5期連続の増収増益見通しで、3期連続の営業最高益更新を見込む。株価は下値模索の展開が続くが、インバウンド人気にも乗り業績も好調なだけに、そろり見直し気分も台頭しそうだ。
「家じまい」と関係性が深いのが「墓じまい」だが、こちらもなかなか簡単にはいかない。実家も片づけ終わり、もはや将来的に郷里に住む予定もない場合は墓参りもままならないことから「墓じまい」も考えざるを得ないわけだ。墓じまいを巡っては、寺院や親族とのトラブルを時折耳にするが、不安だけが募りいったいなにから手を付けていいのかも分からないのが実情だ。「墓じまい」では、鎌倉新書 <6184> [東証P]子会社のハウスボートクラブがお墓の引越し・墓じまい専門サービス「お墓の引越し&墓じまいくん」を運営しており、今後注目が一層集まりそうだ。鎌倉新書の25年1月期連結業績は、営業利益で前期比34.8%増の11億円と最高益更新を予想している。
株探ニュース
関連銘柄
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