~東京理科大学が、火災時の熱遮断メカニズムを解明し、火災対策を進化~
日本電気硝子株式会社(本社:滋賀県大津市 社長:岸本暁)は、「第13回アジア・オセアニア火災科学技術シンポジウム」において、東京理科大学大学院博士後期課程の張爍(Zhang Shuo)氏の発表した論文が、「Best Oral Presentation Award(最優秀口頭発表賞)」を受賞したことをお知らせします。
張氏ら(※1)の研究は、日本電気硝子の防火ガラス「ファイアライト(R)」を使用し、火災時にガラス表面に流れる水膜が、どのように熱を遮断しガラスを保護するかを解明したものです。この研究成果は、防火技術の新たな可能性を切り拓くものとして高く評価されました。
※1:共同研究者は、大宮 喜文氏(東京理科大学教授)、王 兪翔氏(東京理科大学助教)、園部 秀平氏(東京理科大学大学院修士課程)の3名。
第13回アジア・オセアニア火災科学技術シンポジウム 授賞式の様子(左から1番目が張氏)
■「アジア・オセアニア火災科学技術シンポジウム」について
アジア・オセアニア火災科学技術シンポジウム(Asia-Oceania Symposium on Fire Science and Technology、略称AOSFST)は、アジア・オセアニア地域の火災科学に関わる研究者や実務者らが集まり、最新の研究や技術などを発表する場です。国際火災安全科学学会 (IAFSS)の後援のもと、アジア・オセアニア火災科学技術学会(AOAFST)が主催しており、各国の学術交流を推進する上で重要な役割を担っています。
今回で13回目となる本シンポジウムは、2024年10月21日(月)から25日(金)に韓国・大邱で開催されました。発表された199編(うち143編が口頭発表、56編がポスター発表)(※2)の論文の中で、張氏らの研究が「Best Oral Presentation Award(最優秀口頭発表賞)」に選ばれました。この賞は、口頭発表の中からわずか7編に贈られる大変名誉あるものです。
※2:シンポジウムプログラムに基づいた値。
■実験の背景と概要
現在、日本の建築基準法や消防法では、火災時に炎を遮る防火性が求められていますが、熱を遮る「遮熱性」に関する性能が建築部位によっては要求されない場合があります。このため、火災時において避難経路に面する防火設備等の遮熱性が十分でない場合、その避難経路の使用が困難になる可能性が指摘されています。
本研究では、この課題に対処するため、散水設備を使用して防火ガラス「ファイアライト(R)」の表面に水膜を形成し、その遮熱性能を検証する実験を行いました。実験は火災を想定した環境下で実施し、ガスバーナーで加熱したガラスに、特殊な散水装置を用いて均一な水膜を形成。ガラスに流れる水膜の速度や特性を測定し、火災熱がガラスに与える影響や水膜の供給量が遮熱効果に及ぼす影響を詳細に調査しました。さらに、水膜がどのように温度上昇を抑制するのか、その仕組みをモデル化し、防火技術の新たな指針を示すためのデータを収集しました。
■ファイアライト(R)が実験に選ばれた理由
ファイアライト(R)は、急激な加熱や冷却にも耐える特殊ガラスであり、火災を想定した高温環境下でも割れることなく安定した性能を発揮します。
通常のガラスは急激な温度変化に弱く、高温の状態から冷水をかけると割れるリスクがあるため、実験データを安定して収集できません。一方、ファイアライト(R)は、米国の厳しい安全基準であるUL規格(※3)が定める加熱試験に加えて加熱直後に行う放水試験によっても著しい欠陥が生じず、この規格に適合することが確認されており、熱膨張による割れが発生しないユニークな特性を持っています。そのため、今回のような過酷な条件下でも実験を可能にする信頼性の高い素材として選ばれました。
※3:アメリカ保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories LLC.:UL)が策定する、製品安全規格。
■研究の成果
本研究では、火災時の高温環境下でガラス表面に形成された水膜が遮熱効果を発揮することを実証しました。特に、以下の知見が得られました。
- 水膜の流速と厚み
水の供給量が増加すると、水膜の流速が速くなり、厚みも増加することが確認されました。
- 供給水量と遮熱効果
水の供給量が10~20LPM(※4)では遮熱効果が不十分でしたが、40LPM以上ではガラスの温度上昇が大幅に抑制され、避難経路の安全性が向上することが分かりました。
※4:流量単位で、リッター毎分(liter per minute)を表す。
- 防火ガラスの設計への応用
水膜が温度上昇を抑える仕組みをモデル化し、防火ガラスの新たな設計基準として活用できる可能性を提示しました。
■ファイアライト(R) とは 熱膨張係数がほぼゼロのため、800℃に熱して冷水をかけても割れないほど熱衝撃に強い超耐熱結晶化ガラスから成るファイアライト(R)。火災時の高温、そして消火活動時の放水による急冷にも破壊されない、唯一の特定防火設備・防火設備用ガラスです。東京消防庁の火災実験にも採用され、米国のUL規格に適合するなど、その高い防火性能が実証されています。
【会社概要:日本電気硝子】
日本電気硝子株式会社は、滋賀県大津市に本社を置く、特殊ガラスの世界的リーディングメーカーです。新たな機能を生み出す特殊ガラスは、板や管、糸、粉末などさまざまな製品に姿を変え、半導体やディスプレイ、自動車、電子機器、情報通信、医療、エネルギーなど多岐にわたる分野で活躍しています。当社が70年以上の歴史の中で磨き上げてきた技術により開発された特殊ガラスは、暮らしのあたりまえから産業の最先端まで、幅広い分野で高い評価を受けています。
会社名 :日本電気硝子株式会社
代表者 :社長 岸本 暁
本社所在地:滋賀県大津市晴嵐二丁目7番1号
創立 :1949年12月1日
事業内容 :特殊ガラス製品の製造・販売およびガラス製造機械の製作・販売
URL :https://www.neg.co.jp/
日本電気硝子株式会社(本社:滋賀県大津市 社長:岸本暁)は、「第13回アジア・オセアニア火災科学技術シンポジウム」において、東京理科大学大学院博士後期課程の張爍(Zhang Shuo)氏の発表した論文が、「Best Oral Presentation Award(最優秀口頭発表賞)」を受賞したことをお知らせします。
張氏ら(※1)の研究は、日本電気硝子の防火ガラス「ファイアライト(R)」を使用し、火災時にガラス表面に流れる水膜が、どのように熱を遮断しガラスを保護するかを解明したものです。この研究成果は、防火技術の新たな可能性を切り拓くものとして高く評価されました。
※1:共同研究者は、大宮 喜文氏(東京理科大学教授)、王 兪翔氏(東京理科大学助教)、園部 秀平氏(東京理科大学大学院修士課程)の3名。
第13回アジア・オセアニア火災科学技術シンポジウム 授賞式の様子(左から1番目が張氏)
■「アジア・オセアニア火災科学技術シンポジウム」について
アジア・オセアニア火災科学技術シンポジウム(Asia-Oceania Symposium on Fire Science and Technology、略称AOSFST)は、アジア・オセアニア地域の火災科学に関わる研究者や実務者らが集まり、最新の研究や技術などを発表する場です。国際火災安全科学学会 (IAFSS)の後援のもと、アジア・オセアニア火災科学技術学会(AOAFST)が主催しており、各国の学術交流を推進する上で重要な役割を担っています。
今回で13回目となる本シンポジウムは、2024年10月21日(月)から25日(金)に韓国・大邱で開催されました。発表された199編(うち143編が口頭発表、56編がポスター発表)(※2)の論文の中で、張氏らの研究が「Best Oral Presentation Award(最優秀口頭発表賞)」に選ばれました。この賞は、口頭発表の中からわずか7編に贈られる大変名誉あるものです。
※2:シンポジウムプログラムに基づいた値。
■実験の背景と概要
現在、日本の建築基準法や消防法では、火災時に炎を遮る防火性が求められていますが、熱を遮る「遮熱性」に関する性能が建築部位によっては要求されない場合があります。このため、火災時において避難経路に面する防火設備等の遮熱性が十分でない場合、その避難経路の使用が困難になる可能性が指摘されています。
本研究では、この課題に対処するため、散水設備を使用して防火ガラス「ファイアライト(R)」の表面に水膜を形成し、その遮熱性能を検証する実験を行いました。実験は火災を想定した環境下で実施し、ガスバーナーで加熱したガラスに、特殊な散水装置を用いて均一な水膜を形成。ガラスに流れる水膜の速度や特性を測定し、火災熱がガラスに与える影響や水膜の供給量が遮熱効果に及ぼす影響を詳細に調査しました。さらに、水膜がどのように温度上昇を抑制するのか、その仕組みをモデル化し、防火技術の新たな指針を示すためのデータを収集しました。
■ファイアライト(R)が実験に選ばれた理由
ファイアライト(R)は、急激な加熱や冷却にも耐える特殊ガラスであり、火災を想定した高温環境下でも割れることなく安定した性能を発揮します。
通常のガラスは急激な温度変化に弱く、高温の状態から冷水をかけると割れるリスクがあるため、実験データを安定して収集できません。一方、ファイアライト(R)は、米国の厳しい安全基準であるUL規格(※3)が定める加熱試験に加えて加熱直後に行う放水試験によっても著しい欠陥が生じず、この規格に適合することが確認されており、熱膨張による割れが発生しないユニークな特性を持っています。そのため、今回のような過酷な条件下でも実験を可能にする信頼性の高い素材として選ばれました。
※3:アメリカ保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories LLC.:UL)が策定する、製品安全規格。
■研究の成果
本研究では、火災時の高温環境下でガラス表面に形成された水膜が遮熱効果を発揮することを実証しました。特に、以下の知見が得られました。
- 水膜の流速と厚み
水の供給量が増加すると、水膜の流速が速くなり、厚みも増加することが確認されました。
- 供給水量と遮熱効果
水の供給量が10~20LPM(※4)では遮熱効果が不十分でしたが、40LPM以上ではガラスの温度上昇が大幅に抑制され、避難経路の安全性が向上することが分かりました。
※4:流量単位で、リッター毎分(liter per minute)を表す。
- 防火ガラスの設計への応用
水膜が温度上昇を抑える仕組みをモデル化し、防火ガラスの新たな設計基準として活用できる可能性を提示しました。
■ファイアライト(R) とは 熱膨張係数がほぼゼロのため、800℃に熱して冷水をかけても割れないほど熱衝撃に強い超耐熱結晶化ガラスから成るファイアライト(R)。火災時の高温、そして消火活動時の放水による急冷にも破壊されない、唯一の特定防火設備・防火設備用ガラスです。東京消防庁の火災実験にも採用され、米国のUL規格に適合するなど、その高い防火性能が実証されています。
【会社概要:日本電気硝子】
日本電気硝子株式会社は、滋賀県大津市に本社を置く、特殊ガラスの世界的リーディングメーカーです。新たな機能を生み出す特殊ガラスは、板や管、糸、粉末などさまざまな製品に姿を変え、半導体やディスプレイ、自動車、電子機器、情報通信、医療、エネルギーなど多岐にわたる分野で活躍しています。当社が70年以上の歴史の中で磨き上げてきた技術により開発された特殊ガラスは、暮らしのあたりまえから産業の最先端まで、幅広い分野で高い評価を受けています。
会社名 :日本電気硝子株式会社
代表者 :社長 岸本 暁
本社所在地:滋賀県大津市晴嵐二丁目7番1号
創立 :1949年12月1日
事業内容 :特殊ガラス製品の製造・販売およびガラス製造機械の製作・販売
URL :https://www.neg.co.jp/
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