S&P500月例レポート(2024年12月配信)<後編>
雇用関係
○10月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想の12万5000人増を大幅に下回る1万2000人増となりました。9月は当初発表では25万4000人増(当初予想は13万2000人増)と予想を大幅に上回りましたが、改定値では22万3000人増に下方修正されました。予想からの大幅な下振れと下方修正は最近のハリケーンや労働ストライキに関連していた模様で、市場は雇用統計を難なく織り込みました。
⇒10月の失業率は予想通り、9月から横ばいの4.1%となりました(8月は4.2%、7月は4.3%、6月は4.1%、5月は4.0%、4月は3.9%、3月は3.8%、2月は3.9%、1月と2023年12月、11月は3.7%、10月は3.9%、9月は3.8%でした。2020年2月は3.5%でしたが、同年5月13.3%となりました)。
⇒労働参加率は9月の62.7%から62.6%に低下しました(8月は62.7%、7月は62.7%、6月は62.6%、5月は62.5%、4月は62.7%、3月は62.7%、2月、1月と2023年12月は62.5%、11月は62.8%、10月は62.7%、9月62.8%)。
⇒10月の週平均労働時間は事前予想通り、9月の34.2時間から34.3時間に増加しました(8月は34.4時間、7月は34.2時間、6月は34.3時間、5月は34.3時間、4月は34.3時間、3月は34.4時間、2月は34.3時間、1月は34.2時間、2023年12月は34.3時間、11月は34.4時間、10月は34.3時間、9月は34.4時間)。
⇒10月の平均時給は前月比0.3%増の予想に対し、同0.4%増(前月の35.31ドルから35.46ドルに増加)となりました。9月は当初発表の同0.4%増から同0.3%増に下方修正されました(8月は同0.4%増、7月は同0.2%増、6月は同0.3%増、5月は同0.2%増、4月は同0.2%増、3月は同0.3%増、2月は同0.2%増、1月は同0.5%増)。前年同月比では事前予想通り4.0%増となり、9月は当初発表の同4.0%増から同3.9%増に下方修正されました(8月は同3.9%増、7月は同3.6%増、5月は同4.1%増、4月は同4.0%増、3月は同4.1%増、2月は同4.3%増、1月は同4.4%増)。
○失業保険継続受給件数(季節調整済み)は、前月の186万2000件から190万7000件に増加しました。
⇒週間新規失業保険申請件数(当初報告通り):
→2024年11月7日発表の週間新規失業保険申請件数:22万1000件
→2024年11月14日発表の週間新規失業保険申請件数:21万7000件
→2024年11月21日発表の週間新規失業保険申請件数:21万3000件
→2024年11月27日発表の週間新規失業保険申請件数:21万7000件
企業業績
○S&P500指数の時価総額の95.6%に相当する銘柄が2024年第3四半期の決算発表を終え、営業利益と売上高はともに四半期での過去最高を更新する見通しです。営業利益率は11.89%と高い水準で推移しています。将来の予想はこれまでの水準を維持しており、2025年末まで毎四半期で過去最高の更新が予想されています。
⇒現時点で484銘柄が決算発表を終え、そのうちの349銘柄(72.0%)で利益が予想を上回り、483銘柄中299銘柄(61.9%)で売上高が予想を上回りました。
⇒2024年第3四半期の営業利益は前期比で2.0%増、前年同期(前期から落ち込んだ2023年第3四半期)比では13.9%増が見込まれており、過去最高を更新するとみられています。
⇒売上高は前期比で2.5%増となり、四半期での過去最高を更新する見込みで、前年同期比では6.9%増となる見通しです。
⇒2024年第3四半期の営業利益率は2024年第2四半期の11.94%から低下する一方、2023年第3四半期の11.15%を上回る11.89%になると予想されます(1993年以降の平均は8.46%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。
⇒2024年第3四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は14.0%となっています。この割合は、2024年第2四半期は12.7%、2023年第3四半期は13.8%でした。
○2024年通年の利益は前年比9.8%増が見込まれており、この予想に基づく2024年の予想株価収益率(PER)は25.8倍となっています。
○2025年通年の利益は前年比16.6%増が見込まれており、予想PERは22.0倍となっています。
個別銘柄
○航空機メーカー、ボーイング
○自動車メーカーのフォルクスワーゲンは、電気自動車メーカーのリビアン・オートモーティブ
⇒リビアン社はジョージア州に工場を建設するために、米エネルギー省から66億ドルの融資を受けたことを明らかにしました。
○航空会社スピリット航空
配当金
○2024年11月の配当支払額は前年同月比11.0%減となりました。10月は同16.2%増、9月は同31.3%増でした。年初来の配当支払い額は4.3%増で、11月までの12ヵ月間では3.7%増加しています。
⇒11月の配当支払金は前年同月の1株当たり8.82ドルから7.86ドルに減少しました。
⇒年初来の配当支払金は1株当たり67.71ドルと、前年同期の64.91ドルから増加しました。
⇒過去12ヵ月間の配当支払金は1株当たり73.11ドルと、前年同期の70.58ドルから増加しました。
○2024年11月は、増配が27件、配当開始が0件、減配が2件で、配当停止は0件でした。2023年11月は、増配が32件、配当開始が1件で、減配が2件、配当停止は0件でした。
⇒年初来では、増配が304件、配当開始が6件、減配が14件、配当停止が2件となっています。2023年の同期間は、増配が316件、配当開始が10件、減配が12件で、配当停止は2件でした。
⇒2023年通年では、増配が348件、配当開始が11件、減配が26件、配当停止が4件ありました。2022年は、増配が377件、配当開始が7件、減配が5件で、配当停止はありませんでした。
○11月の増配率の中央値は、10月の5.26%から7.14%に上昇しました(9月は4.63%でした)。年初来では6.25%(10月末時点は6.25%、9月末時点は6.45%)となっています。11月の平均増配率は10月の7.91%から7.52%に低下し(9月は7.66%)、年初来では8.20%(10月末時点は8.26%。いずれも2倍以上になった銘柄は除く)。2023年の年間の増配率の中央値は7.01%(2022年と2021年はともに8.33%)、平均値は8.68%(同11.80%、同11.76%)でした。
○2024年の配当に関しては、大半が支払い済みないし発表済みとなっており、暫定結果では前年比5.6%増が見込まれています。今年増加すれば、S&P500指数の株主への実際の年間の現金配当は15年連続で増加し、13年連続で過去最高を更新することになります。
⇒2025年に関しては、(今年これまでの)168億ドル相当の配当開始(アルファベット
インデックス・レビュー
◇S&P 500指数
米大統領選の結果を占う世論調査は今回も外れました。選挙翌日(11月6日)の早朝には選挙戦でのトランプ氏の勝利が見込まれる情勢となり、勝敗が読めないほどの接戦との予想は、トランプ氏の明確な勝利に終わりました。市場の反応として、S&P500指数は6回にわたり終値での史上最高値を更新し(年初来では53回)、初めて終値での5900と6000の大台を突破しました。
11月にS&P500指数は5.73%と大幅に上昇しました(配当込みのトータルリターンはプラス5.87%)。10月は0.99%下落(同マイナス0.91%)、9月は2.02%上昇(同プラス2.14%)でした。過去3ヵ月間のS&P500指数の騰落率は6.80%の上昇となりました(同プラス7.15%)。年初来では26.47%上昇(同プラス28.07%)となり、年率換算すると29.08%上昇(同プラス30.86%)に相当します。過去1年間では32.06%上昇(同プラス33.89%)となっています。11月は20営業日中15日で上昇しました(10月は23営業日中11日)。年初来では231営業日中134日で上昇しています。11月は値上がり銘柄数が増加して値下がり銘柄数を大幅に上回り、値上がり銘柄数が385銘柄、値下がり銘柄数が118銘柄でした(10月は値上がり銘柄数が199銘柄、値下がり銘柄数が304銘柄)。11月の出来高は前月比17%増加、前年同月比では9%増加となりました。
マグニフィセント・セブンの影響力は低下し、S&P500指数の年初来のリターンに占める割合は10月末の47%から11月末は44%に縮小しました。11月はリターンの32%を占め、同指数の時価総額に占める割合も32%となっています。11月5日の米大統領選以降ではリターンの28%を占めています。
11月は11セクター全てが上昇しました。10月は3セクターが上昇、9月は8セクターが上昇しました。11月のパフォーマンスが最高となったのは一般消費財で、13.24%上昇しました(年初来では26.19%上昇、2021年末比では11.09%上昇)。パフォーマンスが最低だったのはヘルスケアで、0.13%上昇しました(同7.76%上昇、同4.25%上昇)。
11月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は0.83%と、10月の0.81%か上昇し(9月は1.08%)、年初来では0.91%となっています。なお、2023年通年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。
11月の出来高は、10月に前月比10%減少した後に、同17%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では9%増加となりました。2024年11月までの12ヵ月間では前年同期比2%減少しています。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年では同6%増でした。
11月は1%以上変動した日数は20営業日中3日(上昇が2日、下落が1日)で、市場は2%以上変動を1日(上昇)記録しました。10月は1%以上変動した日数は23営業日中1日(下落)、2%以上変動した日はありませんでした。年初来では、1%以上変動した日数は45日(上昇が29日、下落が16日)で、2%以上変動した日数は6日(上昇が3日、下落が3日)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。
11月は20営業日中6日で日中の変動率が1%以上となり、日中の変動率が2%以上となった日はありませんでした。対して10月は1%以上の変動が23営業日中5日で、2%以上変動した日はありませんでした。年初来では、76日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日数は9日ありました。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が219日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。
11月は前月から一転し、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を大幅に上回りました。11月の値上がり銘柄数は385銘柄(平均上昇率は9.21%)と、10月の199銘柄(同5.31%)から増加しました。10%以上上昇した銘柄数は147銘柄(同15.28%)と、10月の30銘柄(同15.27%)から増加し、9銘柄(10月は2銘柄)が25%以上上昇しました。一方、11月の値下がり銘柄数は118銘柄(平均下落率は4.39%)と、10月の304銘柄(同6.35%)から減少しました。11月の10%以上下落した銘柄数は12名柄(同17.20%)と10月の54銘柄(同15.90%)から減少し、2銘柄が25%以上下落しました(10月は5銘柄)。年初来では、値上がり銘柄数が増加し、引き続き値下がり銘柄数を大幅に上回りました。値上がり銘柄数は383銘柄(平均上昇率は32.28%)で、318銘柄(同37.77%)が10%以上上昇し、188銘柄が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は117銘柄(平均下落率は16.04%)で、67銘柄(同24.32%)が10%以上下落し、23銘柄が25%以上下落しました。2023年通年では、値上がり銘柄数は322銘柄で、値下がり銘柄数は179銘柄でした。10%以上上昇した銘柄数は248銘柄、10%以上下落した銘柄数は85銘柄でした。143銘柄が25%以上上昇し、20銘柄が25%以上下落しました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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