*12:06JST ネットイヤー Research Memo(6):重点顧客の育成とNTTデータとの協業強化により中長期的な成長を目指す
■ネットイヤーグループ<3622>の今後の見通し
2. 成長戦略
同社は従前より成長戦略として、1) 顧客接点改善の対象領域拡張による競合優位性の強化、2) 多面的なサービス提供による重点顧客の拡充、3) NTTデータとの協業強化による安定的な顧客創出、4) 提供サービスの拡充、5) 人的リソースの確保・育成の5点を推進しており、主なポイントと進捗状況は以下のとおりである。
(1) 顧客接点改善の対象領域拡張による競合優位性の強化
顧客接点改善の対象領域を拡張し、価値提供の範囲を拡大することで顧客の多様なニーズに応え事業成長を加速させる。具体的には、従来のWeb領域に留まらず、デジタル領域全般(ソーシャルメディア、ネット広告、EC等)やリアル(実店舗)まで顧客接点を広げることで顧客企業を支援できる範囲を広げ、競争が激しい市場において競合優位性を確保していく。
(2) 多面的なサービス提供による重点顧客の拡充
顧客企業に対する多面的なサービス提供による関係深化と、重点顧客数の増加による収益効率の向上を目指す。顧客接点ごとに企画やデザイン、開発、運用改善など複数のサービスをワンストップで提供することで、スターバックスのように複数年にわたって数億円規模の安定した取引が見込める重点顧客との取引深耕を図る。現在は数社に留まるが、候補企業として10社程度あり、今後重点顧客へと育成していく考えだ。
(3) NTTデータとの協業強化による安定的な顧客創出
NTTデータ及びグループ各社と顧客戦略を共有し、協働による営業開拓と両社の強みを生かした価値を提供することで、同社単独ではリーチしづらい重点顧客の創出を図る。既述のとおり2025年3月期は4社での協業体制を強化し、協業案件の獲得に注力している。
(4) 提供サービスの拡充
中長期的な持続的成長を実現するため、カスタムプロジェクトの拡大だけではなく、ある程度仕組み化されたサービスの提供にも取り組んでいく。同社は現在「デザイン&アジャイル」「ブランドバリューアップ支援」「SaaSインテグレーション」「フルスタックSX」の4つのサービスの拡大に注力している。前期は一部で成果があったものの、顧客企業側のニーズと、同社が提案するサービスのギャップを埋めることができず、全体の収益を押し上げるまでには至らなかった。2025年3月期は顧客企業にとって魅力あるサービスとなるよう、サービス品質を向上することで拡販を図る。
また、新規サービスの開発も進めている。2023年9月に資本提携契約を締結した(株)HexabaseとはヘッドレスCMS(コンテンツ管理システム)を共同開発し、既に受注実績も出始めている。ヘッドレスCMSとは、フロントエンド(ヘッド)を持たないCMSのことで、従前のCMSとは異なりフロントエンドとバックエンドが完全に分かれているため、柔軟な開発や管理が可能となる。重厚長大なエンタープライズ型のCMSソリューションに対して、自由度の高い開発が可能であり、最近のCMSのトレンドとなっている。
また、2024年6月にはWebサイトのCRO(コンバージョン率最適化)を支援する新サービス「ネットイヤーCVR Max」の提供を開始した。(株)LeanGoのサイト改善ツール「DEJAM」を活用して顧客オウンドメディアのCVR(コンバージョン率)を向上し、効率よく収益成長を支援するサービスである。これまで推進してきたPOS(パフォーマンス最適化サービス)におけるコンサルタントの経験と勘に頼ったアプローチから脱却し、同社のUX視点と「DEJAM」の活用によって、データに基づく客観的な洞察と定性的な分析により、改善策の立案及び施策の実行・効果検証といったPDCAサイクルを通じたパフォーマンス向上をサポートしていく。
現在開発中のツールとしては、AI技術を活用して顧客タイプを類型化し、最適なチャネル(Web、アプリ、SNS、リアル等)を通じてプロモーション施策を実行する「AI Deep Insights」があり、2026年3月期中のリリースを目標としている。同社としては新規顧客開拓のためのドアノックツールとして活用していく考えだ。そのほか、公共空間CRMアプリ「coconiko(ココニコ)※」を開発、提供開始した。公園やスポーツ施設、商店街や観光施設などの公共空間とその来訪・利用者である地域住民をつなぐシステムで、マップ機能やクーポン発行機能、デジタルスタンプラリー施策などの仕組みを提供することにより地域の活性化を支援するアプリとなる。従来、運営者側が把握できていなかった、個人属性情報や行動履歴、位置情報などの来訪・利用者データを収集・分析することで、イベント開催者や観光地、商店街などのサービス事業者は効果的なマーケティング施策を打つことも可能となる。今後、展示会などに出展しながら認知度向上を図る考えだ。
※ 企業や自治体、スポーツチーム、公園施設、及びエンターテイメント分野のファンマーケティングを支援する(株)nandary candary(ナンダリカンダリ)との共同開発アプリ。nandary candaryが総代理店となって販売する。
(5) 人的リソースの確保・育成
事業成長に伴う人材の確保については、優れた専門性を有した多様性に富む人材の採用に努めるとともに、働き方の多様化に対応した雇用形態や、リモートワークを中心とした柔軟な勤務形態など、労働環境の整備を進める。また、人材育成については各種資格の取得を支援する制度を設けているほか、内発的動機を引き出す教育プログラムや人材マネジメントの拡充を図っており、離職率も業界平均を下回る10%以下の水準となっている。2025年3月期は持続的な成長を意図した中長期の人材開発計画も策定する予定だ。
また、人材確保のための具体的な取り組みとして、中途採用についてはリファラル採用や地方採用のほか、2022年3月よりLULLと共同で「若手IT・デジタル人材育成プロジェクト」を推進している。IT業界未経験者の人材をエンジニアとして育成し、社員化する取り組みである。同スキームでは、LULLのIT人材育成カリキュラムを採用しており、Web講師とキャリアアドバイザーがスキルとキャリアの両側面をサポートする。併せて同社から豊富なナレッジにより設計されたUXに関するカリキュラムを提供している。LULLを通じて同社の開発プロジェクトに参画しているメンバーは数十名であり、そのなかから社員化する人材も出てきており、今後もこうした取り組みを継続する考えだ。また、不足する人的リソースについては、協力会社を通じて必要なスキルを持ったフリーランス人材をプロジェクトごとにアサインし対応するなど、人的流通ネットワークも構築している。
人員の増強が進めば、売上原価の4割前後を占める外注比率が低下し収益性向上につながることが期待される。2025年3月期は中途採用を抑制したが、2026年3月期以降は持続的な成長を実現するための経営基盤を構築するため、積極的に人材投資も行う方針だ。
(6) 中期的成長イメージ
同社は今後の業績成長に向けて、2025年3月期を回復期と位置付け、コスト効率化と重点顧客の創出に注力している。2026年3月期以降は重点顧客の拡充による持続的な成長に取り組むとともに、同社が強みを持つUXデザイン力とテクノロジーを融合した規模的成長によって収益を成長軌道に乗せていく戦略である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 成長戦略
同社は従前より成長戦略として、1) 顧客接点改善の対象領域拡張による競合優位性の強化、2) 多面的なサービス提供による重点顧客の拡充、3) NTTデータとの協業強化による安定的な顧客創出、4) 提供サービスの拡充、5) 人的リソースの確保・育成の5点を推進しており、主なポイントと進捗状況は以下のとおりである。
(1) 顧客接点改善の対象領域拡張による競合優位性の強化
顧客接点改善の対象領域を拡張し、価値提供の範囲を拡大することで顧客の多様なニーズに応え事業成長を加速させる。具体的には、従来のWeb領域に留まらず、デジタル領域全般(ソーシャルメディア、ネット広告、EC等)やリアル(実店舗)まで顧客接点を広げることで顧客企業を支援できる範囲を広げ、競争が激しい市場において競合優位性を確保していく。
(2) 多面的なサービス提供による重点顧客の拡充
顧客企業に対する多面的なサービス提供による関係深化と、重点顧客数の増加による収益効率の向上を目指す。顧客接点ごとに企画やデザイン、開発、運用改善など複数のサービスをワンストップで提供することで、スターバックスのように複数年にわたって数億円規模の安定した取引が見込める重点顧客との取引深耕を図る。現在は数社に留まるが、候補企業として10社程度あり、今後重点顧客へと育成していく考えだ。
(3) NTTデータとの協業強化による安定的な顧客創出
NTTデータ及びグループ各社と顧客戦略を共有し、協働による営業開拓と両社の強みを生かした価値を提供することで、同社単独ではリーチしづらい重点顧客の創出を図る。既述のとおり2025年3月期は4社での協業体制を強化し、協業案件の獲得に注力している。
(4) 提供サービスの拡充
中長期的な持続的成長を実現するため、カスタムプロジェクトの拡大だけではなく、ある程度仕組み化されたサービスの提供にも取り組んでいく。同社は現在「デザイン&アジャイル」「ブランドバリューアップ支援」「SaaSインテグレーション」「フルスタックSX」の4つのサービスの拡大に注力している。前期は一部で成果があったものの、顧客企業側のニーズと、同社が提案するサービスのギャップを埋めることができず、全体の収益を押し上げるまでには至らなかった。2025年3月期は顧客企業にとって魅力あるサービスとなるよう、サービス品質を向上することで拡販を図る。
また、新規サービスの開発も進めている。2023年9月に資本提携契約を締結した(株)HexabaseとはヘッドレスCMS(コンテンツ管理システム)を共同開発し、既に受注実績も出始めている。ヘッドレスCMSとは、フロントエンド(ヘッド)を持たないCMSのことで、従前のCMSとは異なりフロントエンドとバックエンドが完全に分かれているため、柔軟な開発や管理が可能となる。重厚長大なエンタープライズ型のCMSソリューションに対して、自由度の高い開発が可能であり、最近のCMSのトレンドとなっている。
また、2024年6月にはWebサイトのCRO(コンバージョン率最適化)を支援する新サービス「ネットイヤーCVR Max」の提供を開始した。(株)LeanGoのサイト改善ツール「DEJAM」を活用して顧客オウンドメディアのCVR(コンバージョン率)を向上し、効率よく収益成長を支援するサービスである。これまで推進してきたPOS(パフォーマンス最適化サービス)におけるコンサルタントの経験と勘に頼ったアプローチから脱却し、同社のUX視点と「DEJAM」の活用によって、データに基づく客観的な洞察と定性的な分析により、改善策の立案及び施策の実行・効果検証といったPDCAサイクルを通じたパフォーマンス向上をサポートしていく。
現在開発中のツールとしては、AI技術を活用して顧客タイプを類型化し、最適なチャネル(Web、アプリ、SNS、リアル等)を通じてプロモーション施策を実行する「AI Deep Insights」があり、2026年3月期中のリリースを目標としている。同社としては新規顧客開拓のためのドアノックツールとして活用していく考えだ。そのほか、公共空間CRMアプリ「coconiko(ココニコ)※」を開発、提供開始した。公園やスポーツ施設、商店街や観光施設などの公共空間とその来訪・利用者である地域住民をつなぐシステムで、マップ機能やクーポン発行機能、デジタルスタンプラリー施策などの仕組みを提供することにより地域の活性化を支援するアプリとなる。従来、運営者側が把握できていなかった、個人属性情報や行動履歴、位置情報などの来訪・利用者データを収集・分析することで、イベント開催者や観光地、商店街などのサービス事業者は効果的なマーケティング施策を打つことも可能となる。今後、展示会などに出展しながら認知度向上を図る考えだ。
※ 企業や自治体、スポーツチーム、公園施設、及びエンターテイメント分野のファンマーケティングを支援する(株)nandary candary(ナンダリカンダリ)との共同開発アプリ。nandary candaryが総代理店となって販売する。
(5) 人的リソースの確保・育成
事業成長に伴う人材の確保については、優れた専門性を有した多様性に富む人材の採用に努めるとともに、働き方の多様化に対応した雇用形態や、リモートワークを中心とした柔軟な勤務形態など、労働環境の整備を進める。また、人材育成については各種資格の取得を支援する制度を設けているほか、内発的動機を引き出す教育プログラムや人材マネジメントの拡充を図っており、離職率も業界平均を下回る10%以下の水準となっている。2025年3月期は持続的な成長を意図した中長期の人材開発計画も策定する予定だ。
また、人材確保のための具体的な取り組みとして、中途採用についてはリファラル採用や地方採用のほか、2022年3月よりLULLと共同で「若手IT・デジタル人材育成プロジェクト」を推進している。IT業界未経験者の人材をエンジニアとして育成し、社員化する取り組みである。同スキームでは、LULLのIT人材育成カリキュラムを採用しており、Web講師とキャリアアドバイザーがスキルとキャリアの両側面をサポートする。併せて同社から豊富なナレッジにより設計されたUXに関するカリキュラムを提供している。LULLを通じて同社の開発プロジェクトに参画しているメンバーは数十名であり、そのなかから社員化する人材も出てきており、今後もこうした取り組みを継続する考えだ。また、不足する人的リソースについては、協力会社を通じて必要なスキルを持ったフリーランス人材をプロジェクトごとにアサインし対応するなど、人的流通ネットワークも構築している。
人員の増強が進めば、売上原価の4割前後を占める外注比率が低下し収益性向上につながることが期待される。2025年3月期は中途採用を抑制したが、2026年3月期以降は持続的な成長を実現するための経営基盤を構築するため、積極的に人材投資も行う方針だ。
(6) 中期的成長イメージ
同社は今後の業績成長に向けて、2025年3月期を回復期と位置付け、コスト効率化と重点顧客の創出に注力している。2026年3月期以降は重点顧客の拡充による持続的な成長に取り組むとともに、同社が強みを持つUXデザイン力とテクノロジーを融合した規模的成長によって収益を成長軌道に乗せていく戦略である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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