―ディスコ・アドテスト超絶決算の衝撃、好業績・高配当の妙味株をピックアップ―
注目された米大統領選挙では共和党候補のトランプ氏が勝利した。同氏の再登板によって減税や高関税の実施に伴うインフレ圧力の再燃、地政学リスクの更なる拡大など不確実性の高まりが意識される。一方、国内では少数与党となった石破政権の今後の政権運営が不安視される状況だ。日米の政治・経済に先行き不透明感がつきまとうなか、株式市場では決算発表シーズンが佳境を迎え、業種ごとの好不調はもちろん、同じ業種の中でも明暗が分かれ、ばらつきが出ているのが見て取れる。なかでも、その傾向が目立つのが不動の人気セクターである 半導体関連株だ。これまで以上に丁寧な選別が必要となっている。
●AI向けか、それ以外か
今回の決算シーズンでは2つの半導体関連株に投資家の視線が集まった。1つはディスコ <6146> [東証P]だ。10月17日に発表した4-9月期決算は営業利益が前年同期比69%増の759億5200万円と大幅増益で着地した。 生成AI関連の需要拡大を追い風に製品の出荷が伸びた。もう1つはアドバンテスト <6857> [東証P]。同月30日に4-9月期決算を発表し、営業利益は同2.7倍の948億5900万円と急増。こちらもAI関連の需要拡大が寄与した格好だ。あわせて通期見通しを上方修正し、自社株買いの実施も発表した。
AIの普及に伴う半導体需要の押し上げ効果が高いことが改めて示された。昨年から続くAIバブルは一時期の熱狂が落ち着き、多くの半導体銘柄の株価は足もと上昇一服あるいは調整局面入りとなり、悲観的な見方も広がったものの、前述の2社の決算はこのムードをいったん食い止め安心感をもたらした。とはいえ、セクター内で跛行色がみられる点には気をつけたい。ここまでの半導体関連各社の決算から、AI向けを中心に旺盛な需要を捉えられている銘柄と、そうでないものとで明暗が分かれている。ルネサスエレクトロニクス <6723> [東証P]は1-9月期大幅減益で着地、京セラ <6971> [東証P]も4-9月期減益で更に通期見通しを下方修正した。
来週にかけて関連各社の決算がまだ続々と出てくるほか、今月後半には米エヌビディア
●利益急回復・最高益など、意外な関連銘柄も
フジミインコーポレーテッド <5384> [東証P]は半導体研磨材の大手。シリコンウエハー用の研磨材で世界首位を誇る。主要顧客に台湾の半導体受託生産最大手TSMC
トーカロ <3433> [東証P]は機械部品の表面に金属やセラミックスを高温で溶かして吹き付け、新しい高機能皮膜を形成する「溶射技術」に強みを持つ表面処理加工メーカー。半導体製造装置をはじめ、さまざまな産業機器・設備の部品に溶射加工を行う。半導体関連を中心に好調な受注が続き、10月31日に上期決算とあわせ25年3月期通期業績予想の上方修正を発表。営業利益を前期比25%増の115億円(従来予想105億円)とし、2期ぶりに過去最高益を更新する見通しだ。更に配当予想も増額修正し、5期連続の増配を目指す。足もとの配当利回りは3%台に達する。
富士紡ホールディングス <3104> [東証P]は繊維事業を祖業とするが、現在では半導体などエレクトロニクス分野向けに超精密加工用研磨材を製造販売する研磨材事業が主力だ。このほか、医薬・農薬中間体を受託製造する化学工業品事業、祖業を受け継ぐ生活衣料事業を展開する。「今後の半導体需要を勘案」(決算短信)し、25年3月期通期業績予想を期中に2回も上方修正、営業利益は前期比2.1倍の60億円と前期から急回復を見込む。配当は前期比10円増の120円の計画だ。株価は8月、9月と200日移動平均線を割り込む場面があったものの持ち直し、底堅い値動きを続けている。
マルマエ <6264> [東証P]は半導体製造装置向けの精密部品加工を手掛ける。高い精度や耐久性が求められる製造装置の中核部品「真空パーツ」の製造を主力とし、切削工程から溶接工程、組み立て、表面処理まで一気通貫で行う。主要顧客に東エレクグループ、ニッパツ <5991> [東証P]を持つ。24年8月期は在庫調整の影響で前の期比8割超の営業減益となったが、25年8月期は市況改善を織り込み前期比10倍の16億円と3期ぶりの増益を予想。株価は8月につけた1280円で大底を確認し、その後1400~1700円近辺のもみ合いに移行したが、そこからジリジリと下値を切り上げ反騰の機をうかがっている。
リオン <6823> [東証P]は補聴器の国内大手だが、半導体業界向けの製品も展開し旺盛な需要を捉えている。空気や液体の中にある微粒子を測定する装置「パーティクルカウンタ」を製造しており、半導体生産に必要なクリーン環境や高純度化学品の管理に利用されている。補聴器の安定した伸びに加え、同装置を含む微粒子計測器の高成長を背景に25年3月期は2期連続で営業最高益(37億円)を更新する見通し。2年後の27年3月期には営業利益44億円を目指す構えだ。株価は10月30日発表の上期決算を手掛かりに2200円前後のもみ合いを上放れ、底値圏離脱の兆しをみせている。
日本高純度化学 <4973> [東証P]は半導体などエレクトロニクス分野向けの貴金属メッキ薬品を手掛ける化学薬品メーカー。貴金属メッキというニッチな分野で高い技術力を有し、世界シェアはトップレベルを誇る。生成AI向けの旺盛な需要に加え、スマートフォンやパソコン向けの回復を追い風に25年3月期は3期ぶりの営業増益を予想。純利益段階では投資有価証券売却益が上乗せされ、前期比2.9倍の15億8000万円と実に17期ぶりとなる過去最高益の更新を見込む。年間配当は前期比25円増の126円を計画する。足もとの配当利回りは4%水準に位置する。
株探ニュース
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