*16:11JST アンジェス Research Memo(1):「コラテジェン」の米国での治験結果は2024年秋に発表予定
■要約
アンジェス<4563>は、1999年に設立された大阪大学発のバイオベンチャーで、長期ビジョンとして「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目指している。2020年に先進ゲノム編集技術の開発を行うEmendoBio Inc.(以下、Emendo)を子会社化したほか、2021年には国内で希少遺伝性疾患の新生児向けオプショナルスクリーニング検査※を行う衛生検査所「アンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(以下、ACRL)」を開設し、検査受託サービスを開始した。
※ 公費負担ですべての新生児に実施しているマススクリーニング検査に含まれていない7疾患に対する有償検査サービスで、(一社)希少疾患の医療と研究を推進する会(以下、CReARID(クレアリッド))から受託して実施している。
1. 「コラテジェン」の動向
HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン」は、国内で重度の閉塞性動脈硬化症を対象とした条件及び期限付き製造販売の承認申請を2024年6月に取り下げ、今後は米国での開発を優先する方針を明らかにした。米国で実施した下肢潰瘍を有する軽度から中等度の閉塞性動脈硬化症を対象とした後期第2相臨床試験で、潰瘍の改善だけに留まらず治癒まで期待できることが明らかとなったためだ。詳細な内容については2024年秋にも発表される予定で、画期的治療薬として注目を浴びる可能性がある。また、治験担当医師より「米国で効率的に販売拡大するためには、強力な販売力を持つ米大手製薬企業とパートナーを組むことが最適」との助言があったことや国内の承認申請を取り下げたこともあり、2024年8月に田辺三菱製薬(株)との日米における独占的販売権許諾契約の解消を発表し、米国では新たなパートナーの探索に着手している。今後の開発方針もFDAと協議して決定する予定で、第3相臨床試験を行うか、早期承認制度を活用して販売承認申請を行うことが考えられる。9月18日付でFDAよりブレイクスルーセラピー(画期的新薬)※に指定されたことも発表しており、ポジティブに評価される。米国での対象患者数は数万人規模と見られ、上市できれば数百億円の売上ポテンシャルが期待できるほか、欧州への展開も進める予定だ。国内についても米国の開発動向を見てPMDAと協議しながら方針を決定する。
※ ブレイクスルーセラピー指定制度:重篤な疾患や生命を脅かす疾患に対する新規治療薬の開発と審査を迅速化することを目的にFDAが導入した制度で、臨床試験の結果などをもとに指定する。
2. ACRLの取り組み状況
新生児を対象とした希少遺伝性疾患の検査事業は、前年比2倍強のペースで受託件数が拡大している。2024年8月には(公財)群馬県健康づくり財団と新たに契約し、群馬県における拡大新生児スクリーニング検査の受託も開始した。そのほかにも複数の自治体から引き合いがきており、年内にも契約が決まる見通しだ。2024年12月期は売上高で250百万円前後と前期比2倍以上に拡大し、損益面でも初めて黒字化が見込まれる。また、早老症治療剤「ゾキンヴィ」の発売(2024年5月)に合わせて、同疾患を対象とした遺伝学的検査(確定診断)※も開始した。今後は治療効果のモニタリングを行うためのバイオマーカー検査へと領域を拡大する予定で、希少遺伝性疾患検査に関するワンストップサービス体制を構築し、医療関係者や患者ニーズに応える方針だ。また、検査事業を推進するなかで、希少遺伝性疾患の新たな治療薬候補品の開発にもつなげていく。
※ スクリーニング検査の結果で疾患の疑いがある場合、また、発症した症状から該当の疾患である可能性がある場合に、その病気の原因となる遺伝子変異の有無を確認することで該当の疾患かどうかを確定させる検査(確定検査)。
3. 業績動向
2024年12月期第2四半期累計の業績は、事業収益が347百万円(前年同期比296百万円増)、営業損失が5,107百万円(同843百万円減)となった。事業収益は、検査事業が伸びたこと加えて「ゾキンヴィ」の販売開始で151百万円、スウェーデンのAnocca AB(以下、Anocca)※からのライセンス契約一時金の受領により76百万円を計上したことが増加要因となった。営業損失の縮小は、Emendoの研究開発体制再編により研究開発費が同918百万円減少したことが主因だ。2024年12月期の事業収益は600百万円(前期比447百万円増)、営業損失は8,450百万円(同3,517百万円減)を見込む。検査事業の拡大や「ゾキンヴィ」の売上計上等が増収要因となる。また研究開発費の減少により営業損失は縮小する見込みだが、第2四半期まで為替が想定(142円/米ドル)より円安で推移し外貨建てコストが膨らんだこともあり、損失額は計画よりもやや膨らむ可能性がある。なお、2024年6月末の現金及び預金は1,820百万円と資金調達が必要な状況にある。このため、同社は2024年9月に第三者割当による社債(13億円)及び第45回新株予約権(下限行使価額35.5円、潜在株式数12,920万株)を発行し、今後の事業活動資金に充当する方針だ。
※ 2014年の設立で、科学者、エンジニア、ソフトウェア開発者を中心に従業員数は100名を超える。特定の抗原を認識するTCRを発現するT細胞を選別、培養する技術を保有しており、複数のがん標的に対するTCR-T療法のライブラリーを持ち、40を超える製品候補を抱えている。これまでに150百万米ドルの資金調達を行った。
■Key Points
・HGF遺伝子治療用製品は米国治験で想定を大きく上回る結果が得られ、米大手製薬企業とのパートナー契約締結を目指す
・早老症治療剤「ゾキンヴィ」は2024年12月期第2四半期に151百万円を売上計上
・希少遺伝性疾患検査はスクリーニング検査から遺伝学的検査、バイオマーカー検査までワンストップで提供する方針
・Emendoの事業構造改革により2024年12月期の営業損失は縮小の見通し
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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アンジェス<4563>は、1999年に設立された大阪大学発のバイオベンチャーで、長期ビジョンとして「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目指している。2020年に先進ゲノム編集技術の開発を行うEmendoBio Inc.(以下、Emendo)を子会社化したほか、2021年には国内で希少遺伝性疾患の新生児向けオプショナルスクリーニング検査※を行う衛生検査所「アンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(以下、ACRL)」を開設し、検査受託サービスを開始した。
※ 公費負担ですべての新生児に実施しているマススクリーニング検査に含まれていない7疾患に対する有償検査サービスで、(一社)希少疾患の医療と研究を推進する会(以下、CReARID(クレアリッド))から受託して実施している。
1. 「コラテジェン」の動向
HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン」は、国内で重度の閉塞性動脈硬化症を対象とした条件及び期限付き製造販売の承認申請を2024年6月に取り下げ、今後は米国での開発を優先する方針を明らかにした。米国で実施した下肢潰瘍を有する軽度から中等度の閉塞性動脈硬化症を対象とした後期第2相臨床試験で、潰瘍の改善だけに留まらず治癒まで期待できることが明らかとなったためだ。詳細な内容については2024年秋にも発表される予定で、画期的治療薬として注目を浴びる可能性がある。また、治験担当医師より「米国で効率的に販売拡大するためには、強力な販売力を持つ米大手製薬企業とパートナーを組むことが最適」との助言があったことや国内の承認申請を取り下げたこともあり、2024年8月に田辺三菱製薬(株)との日米における独占的販売権許諾契約の解消を発表し、米国では新たなパートナーの探索に着手している。今後の開発方針もFDAと協議して決定する予定で、第3相臨床試験を行うか、早期承認制度を活用して販売承認申請を行うことが考えられる。9月18日付でFDAよりブレイクスルーセラピー(画期的新薬)※に指定されたことも発表しており、ポジティブに評価される。米国での対象患者数は数万人規模と見られ、上市できれば数百億円の売上ポテンシャルが期待できるほか、欧州への展開も進める予定だ。国内についても米国の開発動向を見てPMDAと協議しながら方針を決定する。
※ ブレイクスルーセラピー指定制度:重篤な疾患や生命を脅かす疾患に対する新規治療薬の開発と審査を迅速化することを目的にFDAが導入した制度で、臨床試験の結果などをもとに指定する。
2. ACRLの取り組み状況
新生児を対象とした希少遺伝性疾患の検査事業は、前年比2倍強のペースで受託件数が拡大している。2024年8月には(公財)群馬県健康づくり財団と新たに契約し、群馬県における拡大新生児スクリーニング検査の受託も開始した。そのほかにも複数の自治体から引き合いがきており、年内にも契約が決まる見通しだ。2024年12月期は売上高で250百万円前後と前期比2倍以上に拡大し、損益面でも初めて黒字化が見込まれる。また、早老症治療剤「ゾキンヴィ」の発売(2024年5月)に合わせて、同疾患を対象とした遺伝学的検査(確定診断)※も開始した。今後は治療効果のモニタリングを行うためのバイオマーカー検査へと領域を拡大する予定で、希少遺伝性疾患検査に関するワンストップサービス体制を構築し、医療関係者や患者ニーズに応える方針だ。また、検査事業を推進するなかで、希少遺伝性疾患の新たな治療薬候補品の開発にもつなげていく。
※ スクリーニング検査の結果で疾患の疑いがある場合、また、発症した症状から該当の疾患である可能性がある場合に、その病気の原因となる遺伝子変異の有無を確認することで該当の疾患かどうかを確定させる検査(確定検査)。
3. 業績動向
2024年12月期第2四半期累計の業績は、事業収益が347百万円(前年同期比296百万円増)、営業損失が5,107百万円(同843百万円減)となった。事業収益は、検査事業が伸びたこと加えて「ゾキンヴィ」の販売開始で151百万円、スウェーデンのAnocca AB(以下、Anocca)※からのライセンス契約一時金の受領により76百万円を計上したことが増加要因となった。営業損失の縮小は、Emendoの研究開発体制再編により研究開発費が同918百万円減少したことが主因だ。2024年12月期の事業収益は600百万円(前期比447百万円増)、営業損失は8,450百万円(同3,517百万円減)を見込む。検査事業の拡大や「ゾキンヴィ」の売上計上等が増収要因となる。また研究開発費の減少により営業損失は縮小する見込みだが、第2四半期まで為替が想定(142円/米ドル)より円安で推移し外貨建てコストが膨らんだこともあり、損失額は計画よりもやや膨らむ可能性がある。なお、2024年6月末の現金及び預金は1,820百万円と資金調達が必要な状況にある。このため、同社は2024年9月に第三者割当による社債(13億円)及び第45回新株予約権(下限行使価額35.5円、潜在株式数12,920万株)を発行し、今後の事業活動資金に充当する方針だ。
※ 2014年の設立で、科学者、エンジニア、ソフトウェア開発者を中心に従業員数は100名を超える。特定の抗原を認識するTCRを発現するT細胞を選別、培養する技術を保有しており、複数のがん標的に対するTCR-T療法のライブラリーを持ち、40を超える製品候補を抱えている。これまでに150百万米ドルの資金調達を行った。
■Key Points
・HGF遺伝子治療用製品は米国治験で想定を大きく上回る結果が得られ、米大手製薬企業とのパートナー契約締結を目指す
・早老症治療剤「ゾキンヴィ」は2024年12月期第2四半期に151百万円を売上計上
・希少遺伝性疾患検査はスクリーニング検査から遺伝学的検査、バイオマーカー検査までワンストップで提供する方針
・Emendoの事業構造改革により2024年12月期の営業損失は縮小の見通し
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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