*11:14JST ビューテHD Research Memo(4):円安の影響を含む原価高騰や人件費増が利益を圧迫
■業績動向
1. 過去の業績推移
ビューティカダンホールディングス<3041>の中期経営計画期間(2022年6月期~2024年6月期)を含む2019年6月期からの6期分の業績を振り返ると、2019年6月期の売上高は5,874百万円、コロナ禍となった2020年6月期からの3期はそれぞれ5,344百万円、5,348百万円、5,857百万円と売上高も低調に推移してきたが、2023年6月期以降はそれぞれ6,413百万円、6,982百万円と、コロナ禍収束とともに増収基調をたどっている。特に、主力の「生花祭壇事業」が件数・単価ともに堅調に推移しているところは、今後に向けても明るい材料と言える。
一方、利益面では、2019年6月期の営業利益は19百万円となったが、コロナ禍の影響を受けた2020年6月期から2期連続でそれぞれ158百万円、27百万円の営業損失を計上すると、2022年6月期から2024年6月期の営業利益は103百万円、124百万円、84百万円と利益化した。売上総利益率・営業利益率は2020年6月期の14.1%、-3.0%を底に、2022年6月期に15.4%、1.8%と一旦回復に向かった。しかし2023年6月期以降は物価高騰や円安の影響、人件費増が売上総利益率や営業利益率の低迷を招き、2023年6月期は14.7%、1.9%、2024年6月期は14.2%、1.2%と推移した。。
財務面では、自己資本比率は2020年6月期の14.6%、2021年6月期の16.5%を除き、20%台で推移してきた。一方、資本効率を示すROEは利益率の変動に伴って不安定な動きをしており、2019年6月期は-1.0%、2020年6月期は-50.9%となった。2021年6月期からの3期は24.0%、19.4%、17.2%と2ケタ水準を確保したものの、2024年6月期は仕入原価の高騰や人件費増に伴う利益の下振れにより、5.2%と大きく低下した。
2. 2024年6月期の決算概要
中期経営計画の最終年度となる2024年6月期の業績は、売上高が前期比8.9%増の6,982百万円、営業利益が同31.8%減の84百万円、経常利益が同26.3%減の99百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同67.9%減の28百万円と増収ながら減益となった。中期経営計画の目標値に対しても売上高では上回ったものの、利益面では未達の結果となっている。
主力の「生花祭壇事業」及び「生花卸売事業」の拡大が増収に寄与した。特に、「生花祭壇事業」の売上高は生花祭壇件数及び平均単価ともに増加し、2期連続で2ケタの伸びを実現した。一方、「ブライダル装花事業」はコロナ禍からの反動増が大きかった前期と比較すると各エリアともに減収となった。「その他事業」はシステム開発事業が好調に推移した。
一方、利益面で減益となったのは、円安の影響や輸送費の高騰により原価率が悪化したことや、人件費増で販管費が膨らんだことが理由である。営業利益率も1.2%(前期は1.9%)に低下した。
財務面では、現預金のほか、車両運搬具やシステム開発に伴うソフトウェアの増加等により総資産は前期末比255百万円増の2,717百万円に拡大した。一方、自己資本は前期の545百万円とほぼ横ばいの544百万円となったことから、自己資本比率は20.0%(前期は22.2%)に低下した。また、有利子負債(リース債務を除く)は長短合わせて前期末比132百万円増の1,439百万円となったが、ネットD/Eレシオは0.68倍に抑えるとともに、インタレスト・カバレッジ・レシオは7.1倍、流動比率は140.3%を確保しており、財務の安全性に懸念はない。一方、資本効率を示すROEは利益水準の落ち込みにより5.2%(前期は17.2%)に低下した。
事業別の業績は以下のとおりである。
(1) 生花祭壇事業
売上高は前期比11.5%増の3,864百万円、セグメント利益は同3.3%増の332百万円と増収増益となった。売上高は、沖縄エリアを除き、各グループ(ビューティ花壇東日本及びビューティ花壇西日本)ともに伸長した。死亡者数の緩やかな増加や葬儀単価の持ち直しが見られるなかで、生花祭壇売上と供花等売上の両方が伸びた。特に生花祭壇売上における祭壇件数はホールディングス化前の旧単体ベースで20,803件(前期比4.4%増)、平均単価は57,858円(同5.8%増)と、ともに増加している。一方、利益面では増収による収益の底上げにより増益を確保したものの、円安の影響や輸送費の高騰により原価率が悪化したことや人件費増により、セグメント利益率は8.6%(前期は9.3%)に低下した。
(2) 生花卸売事業
売上高は前期比8.5%増の2,239百万円、セグメント利益は同2.8%増の32百万円と増収増益となった。売上高は、販売数量の増加や販売単価の上昇が増収に寄与した。販売単価の上昇は、円安や夏場の高温を受けた生育不足等による供給不足のためである。一方、利益面では、増収による収益の底上げにより増益を確保したものの、原価高騰の影響を受けセグメント利益率は1.5%(前期は1.5%)となった。
(3) ブライダル装花事業
売上高は前期比5.7%減の353百万円、セグメント損失は2百万円(前期は18百万円の利益)と、減収及び、セグメント損失計上となった。ブライダル事業はコロナ禍からの反動増が大きかった前期と比較すると各エリア(関西・九州)ともにやや低調に推移した。一方、リテール事業については、店舗販売が既存店の回復や新規出店により伸長し、造園事業も増収を確保したものの、EC販売が競争激化により苦戦している。利益面では、減収による収益の下押しや人件費増などによりブライダル事業が減益となり、セグメント損失に陥った。
(4) その他事業
売上高は前期比3.2%増の525百万円、セグメント損失は2百万円(前期は18百万円の利益)と増収及び、セグメント損失計上となった。SHF(システム開発事業)については葬儀社向けシステム販売が横ばいで推移した一方、建築業界向けシステムが順調に拡大した。一方、セレモニーサービス(冠婚葬祭に関する企画並びにコンサルタント業務)は競争激化の影響を受け減収となり、キャリアライフサポート(就労継続支援事業)は障害福祉サービス等報酬改定(令和6年)により売上減となった。利益面では、SHFが増益を確保したものの、セレモニーサービス及びキャリアライフサポートが減益となったほか、アグリフラワー(花卉の生産・販売事業)が連作障害※により大幅減益となった。
※ 同一作物を同じ圃場で繰り返しつくり続けることによって生育不良となり、収量が落ちてしまう障害のこと。
3. 2024年6月期の総括
以上から、2024年6月期を総括すると、コロナ禍の回復とともに2期連続で計画を上回る売上高の伸びを実現したところは、同社戦略の進捗や優位性を確認するうえでも大いに評価できるポイントである。一方、円安の影響を含めた原価増や人件費増など外部要因により利益面で下振れたところは今後の課題と言えるだろう。活動面でも、中期経営計画の最終年度として、コア事業の拡大に向けた取り組み(エリア展開等)や新サービスの開発などで一定の成果を残すことができた(詳細は後述)。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 過去の業績推移
ビューティカダンホールディングス<3041>の中期経営計画期間(2022年6月期~2024年6月期)を含む2019年6月期からの6期分の業績を振り返ると、2019年6月期の売上高は5,874百万円、コロナ禍となった2020年6月期からの3期はそれぞれ5,344百万円、5,348百万円、5,857百万円と売上高も低調に推移してきたが、2023年6月期以降はそれぞれ6,413百万円、6,982百万円と、コロナ禍収束とともに増収基調をたどっている。特に、主力の「生花祭壇事業」が件数・単価ともに堅調に推移しているところは、今後に向けても明るい材料と言える。
一方、利益面では、2019年6月期の営業利益は19百万円となったが、コロナ禍の影響を受けた2020年6月期から2期連続でそれぞれ158百万円、27百万円の営業損失を計上すると、2022年6月期から2024年6月期の営業利益は103百万円、124百万円、84百万円と利益化した。売上総利益率・営業利益率は2020年6月期の14.1%、-3.0%を底に、2022年6月期に15.4%、1.8%と一旦回復に向かった。しかし2023年6月期以降は物価高騰や円安の影響、人件費増が売上総利益率や営業利益率の低迷を招き、2023年6月期は14.7%、1.9%、2024年6月期は14.2%、1.2%と推移した。。
財務面では、自己資本比率は2020年6月期の14.6%、2021年6月期の16.5%を除き、20%台で推移してきた。一方、資本効率を示すROEは利益率の変動に伴って不安定な動きをしており、2019年6月期は-1.0%、2020年6月期は-50.9%となった。2021年6月期からの3期は24.0%、19.4%、17.2%と2ケタ水準を確保したものの、2024年6月期は仕入原価の高騰や人件費増に伴う利益の下振れにより、5.2%と大きく低下した。
2. 2024年6月期の決算概要
中期経営計画の最終年度となる2024年6月期の業績は、売上高が前期比8.9%増の6,982百万円、営業利益が同31.8%減の84百万円、経常利益が同26.3%減の99百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同67.9%減の28百万円と増収ながら減益となった。中期経営計画の目標値に対しても売上高では上回ったものの、利益面では未達の結果となっている。
主力の「生花祭壇事業」及び「生花卸売事業」の拡大が増収に寄与した。特に、「生花祭壇事業」の売上高は生花祭壇件数及び平均単価ともに増加し、2期連続で2ケタの伸びを実現した。一方、「ブライダル装花事業」はコロナ禍からの反動増が大きかった前期と比較すると各エリアともに減収となった。「その他事業」はシステム開発事業が好調に推移した。
一方、利益面で減益となったのは、円安の影響や輸送費の高騰により原価率が悪化したことや、人件費増で販管費が膨らんだことが理由である。営業利益率も1.2%(前期は1.9%)に低下した。
財務面では、現預金のほか、車両運搬具やシステム開発に伴うソフトウェアの増加等により総資産は前期末比255百万円増の2,717百万円に拡大した。一方、自己資本は前期の545百万円とほぼ横ばいの544百万円となったことから、自己資本比率は20.0%(前期は22.2%)に低下した。また、有利子負債(リース債務を除く)は長短合わせて前期末比132百万円増の1,439百万円となったが、ネットD/Eレシオは0.68倍に抑えるとともに、インタレスト・カバレッジ・レシオは7.1倍、流動比率は140.3%を確保しており、財務の安全性に懸念はない。一方、資本効率を示すROEは利益水準の落ち込みにより5.2%(前期は17.2%)に低下した。
事業別の業績は以下のとおりである。
(1) 生花祭壇事業
売上高は前期比11.5%増の3,864百万円、セグメント利益は同3.3%増の332百万円と増収増益となった。売上高は、沖縄エリアを除き、各グループ(ビューティ花壇東日本及びビューティ花壇西日本)ともに伸長した。死亡者数の緩やかな増加や葬儀単価の持ち直しが見られるなかで、生花祭壇売上と供花等売上の両方が伸びた。特に生花祭壇売上における祭壇件数はホールディングス化前の旧単体ベースで20,803件(前期比4.4%増)、平均単価は57,858円(同5.8%増)と、ともに増加している。一方、利益面では増収による収益の底上げにより増益を確保したものの、円安の影響や輸送費の高騰により原価率が悪化したことや人件費増により、セグメント利益率は8.6%(前期は9.3%)に低下した。
(2) 生花卸売事業
売上高は前期比8.5%増の2,239百万円、セグメント利益は同2.8%増の32百万円と増収増益となった。売上高は、販売数量の増加や販売単価の上昇が増収に寄与した。販売単価の上昇は、円安や夏場の高温を受けた生育不足等による供給不足のためである。一方、利益面では、増収による収益の底上げにより増益を確保したものの、原価高騰の影響を受けセグメント利益率は1.5%(前期は1.5%)となった。
(3) ブライダル装花事業
売上高は前期比5.7%減の353百万円、セグメント損失は2百万円(前期は18百万円の利益)と、減収及び、セグメント損失計上となった。ブライダル事業はコロナ禍からの反動増が大きかった前期と比較すると各エリア(関西・九州)ともにやや低調に推移した。一方、リテール事業については、店舗販売が既存店の回復や新規出店により伸長し、造園事業も増収を確保したものの、EC販売が競争激化により苦戦している。利益面では、減収による収益の下押しや人件費増などによりブライダル事業が減益となり、セグメント損失に陥った。
(4) その他事業
売上高は前期比3.2%増の525百万円、セグメント損失は2百万円(前期は18百万円の利益)と増収及び、セグメント損失計上となった。SHF(システム開発事業)については葬儀社向けシステム販売が横ばいで推移した一方、建築業界向けシステムが順調に拡大した。一方、セレモニーサービス(冠婚葬祭に関する企画並びにコンサルタント業務)は競争激化の影響を受け減収となり、キャリアライフサポート(就労継続支援事業)は障害福祉サービス等報酬改定(令和6年)により売上減となった。利益面では、SHFが増益を確保したものの、セレモニーサービス及びキャリアライフサポートが減益となったほか、アグリフラワー(花卉の生産・販売事業)が連作障害※により大幅減益となった。
※ 同一作物を同じ圃場で繰り返しつくり続けることによって生育不良となり、収量が落ちてしまう障害のこと。
3. 2024年6月期の総括
以上から、2024年6月期を総括すると、コロナ禍の回復とともに2期連続で計画を上回る売上高の伸びを実現したところは、同社戦略の進捗や優位性を確認するうえでも大いに評価できるポイントである。一方、円安の影響を含めた原価増や人件費増など外部要因により利益面で下振れたところは今後の課題と言えるだろう。活動面でも、中期経営計画の最終年度として、コア事業の拡大に向けた取り組み(エリア展開等)や新サービスの開発などで一定の成果を残すことができた(詳細は後述)。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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