南シナ海紛争:フィリピンの対中外交・世論の変化(2)【中国問題グローバル研究所】
配信元:フィスコ
投稿:2024/07/16 16:03
*16:03JST 南シナ海紛争:フィリピンの対中外交・世論の変化(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「南シナ海紛争:フィリピンの対中外交・世論の変化(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。
フィリピンメディアの中国報道に変化
フィリピンでは、南シナ海紛争における自国の立場を懸念する声が国民の間で強まっている。これまでの比較的親中的な姿勢が反中感情へと転化する中で、フィリピンが米中間の地政学的緊張の駒にされるのではないかと心配しているのである。特にトランプ前米国大統領の大統領選立候補以来、フィリピン国民は、米国が自国の利益を優先して、フィリピンが中国の圧力と挑発にさらされるのを放置するのではないかとの不安を抱いている。
2024年6月以降、フィリピンメディアによる中国報道の論調は著しく変わった。それまでは比較的中立、あるいは友好的ですらあったが、今では強く非難し、警戒する論調となっている。こうした変化は主に、南シナ海における中国の独断的な行動に対する、フィリピン社会での不満の広がりに起因する。
フィリピンメディアは、中国船の領海侵入や国内漁業者に対する嫌がらせの事案をたびたび報道し、こうした行動が、フィリピンの主権と安全保障への脅威となっていると伝えている。報道機関は中国の一帯一路構想についても、新しい形の経済統制であり、長期的に見てフィリピンの発展に悪影響を及ぼすおそれがあるとして批判している。加えてフィリピンメディアは、より断固とした姿勢を取り、他国との協力を強めて中国側からの挑戦に対処するよう政府に求めている。
こうした報道や解説を通じて、フィリピンメディアは世論形成で極めて重要な役割を果たすとともに政府の政策に影響を与えており、フィリピンの対中政策転換の大きな原動力となっている。
親中から反中感情への転化
近年、フィリピン国民の中国に対する姿勢は大きな変化を見せ、これまでの親中から一転して反中感情が広まっている。こうした変化は、主に中国の独断的行動や進出行為をはじめとした南シナ海での緊張の高まりに起因しており、フィリピン国民の間で不満の声が高まっている。これまでは、中国との友好的な関係の維持が経済的恩恵と地域の安定をもたらすと考えるフィリピン人が多かった。だが実情の変化にともない、こうした見方が揺らいでいる。
こうした状況を背景に、フィリピン国民の間では、米中間の地政学的対立における自国の立場を懸念する声が強まっている。二大国の勢力争いに駒として巻き込まれ、圧力やリスクが高まるのではないかと心配しているのである。特に2024年の米国大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利した場合、その「アメリカ・ファースト」政策を米国優先のサインととらえ、フィリピンへの支援が縮減されるかもしれないと考えるフィリピン人は多い。そのため、フィリピンでは南シナ海紛争で孤立無援になることへの懸念が高まっているのである。
フィリピン国民の反中感情は、メディアの報道とソーシャルメディアプラットフォームで特に顕著に見られる。その多くが、中国の行動に対する不満を示し、より強硬な姿勢を取るよう政府に求めている。中国との断交を提唱する極端な意見も一部にある。こうした反中感情の広まりにともない、南シナ海紛争への対処に向けた外交政策で、より慎重かつ断固たる決定を下すようフィリピン政府に求める圧力が高まっている。
まとめ
南シナ海紛争の複雑なダイナミクスで極めて重要な役割を担うフィリピンは、国際連合のようなフォーラムへの積極的な参加を含め、国際法を守り多国間協力を通じて平和的な解決を推し進める外交戦略を展開している。フィリピンにおける最近の世論の変化は、中国の強硬姿勢に対する懸念の高まりの表れであり、より断固とした外交姿勢を求める声が出始めている。こうしたダイナミクスに対応しながら、フィリピンは引き続き国益保護と地域協力促進のバランスを取り、インド太平洋地域における安定構築に尽力する姿勢を示すことになる。
写真: Philippines Japan Defense Pact
「南シナ海紛争:フィリピンの対中外交・世論の変化(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
(※1)https://grici.or.jp/
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フィリピンメディアの中国報道に変化
フィリピンでは、南シナ海紛争における自国の立場を懸念する声が国民の間で強まっている。これまでの比較的親中的な姿勢が反中感情へと転化する中で、フィリピンが米中間の地政学的緊張の駒にされるのではないかと心配しているのである。特にトランプ前米国大統領の大統領選立候補以来、フィリピン国民は、米国が自国の利益を優先して、フィリピンが中国の圧力と挑発にさらされるのを放置するのではないかとの不安を抱いている。
2024年6月以降、フィリピンメディアによる中国報道の論調は著しく変わった。それまでは比較的中立、あるいは友好的ですらあったが、今では強く非難し、警戒する論調となっている。こうした変化は主に、南シナ海における中国の独断的な行動に対する、フィリピン社会での不満の広がりに起因する。
フィリピンメディアは、中国船の領海侵入や国内漁業者に対する嫌がらせの事案をたびたび報道し、こうした行動が、フィリピンの主権と安全保障への脅威となっていると伝えている。報道機関は中国の一帯一路構想についても、新しい形の経済統制であり、長期的に見てフィリピンの発展に悪影響を及ぼすおそれがあるとして批判している。加えてフィリピンメディアは、より断固とした姿勢を取り、他国との協力を強めて中国側からの挑戦に対処するよう政府に求めている。
こうした報道や解説を通じて、フィリピンメディアは世論形成で極めて重要な役割を果たすとともに政府の政策に影響を与えており、フィリピンの対中政策転換の大きな原動力となっている。
親中から反中感情への転化
近年、フィリピン国民の中国に対する姿勢は大きな変化を見せ、これまでの親中から一転して反中感情が広まっている。こうした変化は、主に中国の独断的行動や進出行為をはじめとした南シナ海での緊張の高まりに起因しており、フィリピン国民の間で不満の声が高まっている。これまでは、中国との友好的な関係の維持が経済的恩恵と地域の安定をもたらすと考えるフィリピン人が多かった。だが実情の変化にともない、こうした見方が揺らいでいる。
こうした状況を背景に、フィリピン国民の間では、米中間の地政学的対立における自国の立場を懸念する声が強まっている。二大国の勢力争いに駒として巻き込まれ、圧力やリスクが高まるのではないかと心配しているのである。特に2024年の米国大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利した場合、その「アメリカ・ファースト」政策を米国優先のサインととらえ、フィリピンへの支援が縮減されるかもしれないと考えるフィリピン人は多い。そのため、フィリピンでは南シナ海紛争で孤立無援になることへの懸念が高まっているのである。
フィリピン国民の反中感情は、メディアの報道とソーシャルメディアプラットフォームで特に顕著に見られる。その多くが、中国の行動に対する不満を示し、より強硬な姿勢を取るよう政府に求めている。中国との断交を提唱する極端な意見も一部にある。こうした反中感情の広まりにともない、南シナ海紛争への対処に向けた外交政策で、より慎重かつ断固たる決定を下すようフィリピン政府に求める圧力が高まっている。
まとめ
南シナ海紛争の複雑なダイナミクスで極めて重要な役割を担うフィリピンは、国際連合のようなフォーラムへの積極的な参加を含め、国際法を守り多国間協力を通じて平和的な解決を推し進める外交戦略を展開している。フィリピンにおける最近の世論の変化は、中国の強硬姿勢に対する懸念の高まりの表れであり、より断固とした外交姿勢を求める声が出始めている。こうしたダイナミクスに対応しながら、フィリピンは引き続き国益保護と地域協力促進のバランスを取り、インド太平洋地域における安定構築に尽力する姿勢を示すことになる。
写真: Philippines Japan Defense Pact
「南シナ海紛争:フィリピンの対中外交・世論の変化(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
(※1)https://grici.or.jp/
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