*12:22JST EG Research Memo(2):ネットセキュリティ業界大手(1)
■会社概要
1. 会社概要と沿革
イー・ガーディアン<6050>は、「We Guard All」を経営理念に掲げる、総合ネットセキュリティ企業である。1998年にコンテンツプロバイダ事業を主とするITベンチャー(旧 (株)ホットポット)として誕生した。インターネット業界の創成期に様々な新事業を手掛けるなか、2005年に掲示板投稿監視事業に一本化し、「イー・ガーディアン株式会社」に商号変更、その他の事業は売却している。2010年に東証マザーズに上場してからは、M&A及び会社分割を行いながらネットセキュリティサービスをワンストップで提供する“総合ネットセキュリティ企業”としての基盤を確立してきた。主なM&Aとしては、ネット監視事業のイーオペ(株)を2012年に完全子会社化(現 イー・ガーディアン東北(株))、人材派遣業の(株)パワーブレインを2014年に完全子会社化(2015年、リンクスタイル(株)に商号変更。2017年、EGヒューマンソリューションズ(株)に商号変更。2018年、同社に吸収合併)、デバッグ事業のトラネル(株)を2017年に会社分割(2019年、EGテスティングサービス(株)に商号変更)、HASHコンサルティング(株)を2015年に完全子会社化(2017年、EGセキュアソリューションズ(株)に商号変更)、デバッグ事業の(株)アイティエスを2017年に完全子会社化(2019年、EGテスティングサービスに商号変更)などがある。
近年はクラウド型セキュリティサービスのグレスアベイルの子会社化(2019年)、ソフトウェア型WAFのNo.1企業であるジェイピー・セキュアの完全子会社化(2020年)など、サイバーセキュリティ分野を強化している。海外展開においては2017年に設立したE-Guardian Philippines、2021年に設立したE-Guardian Vietnamが拡大中である。現在はグループ会社5社、主な事業所で国内12拠点、海外2拠点を持ち、2,486名の従業員(うち臨時従業員数2,080名)を抱える企業グループとなっている。2016年9月に東証1部に昇格、2022年4月の東証再編に際してプライム市場に移行した。2023年8月にはチェンジHDと資本業務提携し、サイバーセキュリティ業界の再編をリードする体制を構築した(「成長戦略」の章で詳述)。
2. 事業概要
売上高の主力はソーシャルサポートであり、2023年9月期通期で売上高の57.5%を占める。ゲームサポート(同15.7%)、アド・プロセス(同12.9%)、サイバーセキュリティ(同6.5%)が続く。その他はハードウェアに対するデバッグなどである(同7.4%)。
(1) ソーシャルサポート
ソーシャルサポートは、ソーシャルWebサービスなどの様々なインターネットサービスを対象に、投稿監視、カスタマーサポート及び風評調査などを提供する。豊富な実績のある人材による監視サービス(有人監視)に加え、専門特化した監視ツール(システム監視)を併用するのが同社の特長である。独自開発されたAI判別システムは低コストかつ高品質なサービス提供をするうえで武器になっている。2023年9月期は、EC・フリマサイト向けのカスタマーサポートサービスや監視業務の受注が増え、売上高で6,848百万円、前期比で2.1%増と堅調に推移した。
(2) ゲームサポート
ゲームサポートは、ソーシャルゲームを対象に、主にカスタマーサポート及びデバッグ業務などを提供する。ゲームをリリースする前に行うデバッグ作業からリリース後のプロモーション、問い合わせ対応まで一気通貫でサポートする体制を確立している。近年は国内のゲーム市場のヒットタイトルが減少し厳しいなか、国内ゲーム会社の海外進出及び中国や韓国など海外のゲーム会社の日本進出など海外案件の獲得を目指している。直近では、海外タイトルの日本人ゲームユーザーに特化した、独自の検証・ユーザーインタビュー・QA対応まで一貫して行い、ユーザーが持つプレイ時の違和感を低減することでセールスを促進する包括的サービス「日本ゲームユーザーインタビュー」の提供を開始した。英語対応はフィリピン、日本語対応はベトナムなど海外拠点も活用する。2023年9月期は、海外ゲーム会社のローカライズ案件(言語翻訳や調整などの支援)が伸びたものの、国内ゲーム会社分の落ち込みを補うまでに至らず、売上高で1,874百万円、前期比で10.0%減と減収となった。
(3) アド・プロセス
アド・プロセスは、広告審査業務をはじめ、広告枠管理、入稿管理、広告ライティングなどの業務を提供する。同社センターで請負う場合と派遣・常駐する場合がある。広告関連の業務は、従来、労働集約的な面が強かったが、同社独自のAIシステムやRPA(Robotic Process Automation)を活用し生産性が向上している。近年は、成長が続く動画市場において、動画に掲載される広告に対する審査業務が増加している。2020年には、(株)サイバー・コミュニケーションズとネット広告関連業務BPOを行う合弁会社である(株)ビズテーラー・パートナーズを設立し、受注チャネルを拡大した。2023年9月期は、官公庁案件の受注実績やデジタル広告市場の規制強化などによる需要の増加を受け、広告審査業務が堅調に推移し、売上高で1,534百万円、前期比で8.1 %増と増収となった。
前述3業務の業務モデルの特長は、対応量(件数)に応じた課金体系であり、リーズナブルな料金で専門的なサービスを提供でき、導入までのスピードが速いことである。
(4) サイバーセキュリティ
サイバーセキュリティは、セキュリティ業界の第一人者である徳丸浩(とくまるひろし)氏率いる専門家集団による脆弱性診断やセキュリティ対策サービス、WAF、SOC(Security Operation Center)サービスなどを擁し、総合的なサイバーセキュリティサービスを行う。2021年10月に、グループシナジーの強化を目的としてEGセキュアソリューションズを存続会社とするサイバーセキュリティ関連子会社3社の統合を行った。2022年9月には、多様なWebサイトのセキュリティ対策をサポートするべく、新たにクラウド型WAFの提供を開始した。各企業のセキュリティ強化、サプライチェーンリスク低減などサイバーセキュリティ需要は拡大しており、今後もさらなる成長が期待できる。2023年9月期の売上高は773百万円、前期比で16.7%増と成長性が高い。
(5) その他
その他には、ハードウェアのデバッグ事業が含まれる。子会社EGテスティングサービスが30年以上の経験とノウハウに裏打ちされた高品質なサービスを行っており、2021年には八王子テストセンターを開設し、多面的機能テストの需要へ対応する体制が整った。2023年9月期の売上高は877百万円、前期比で0.1%減となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
<SI>
1. 会社概要と沿革
イー・ガーディアン<6050>は、「We Guard All」を経営理念に掲げる、総合ネットセキュリティ企業である。1998年にコンテンツプロバイダ事業を主とするITベンチャー(旧 (株)ホットポット)として誕生した。インターネット業界の創成期に様々な新事業を手掛けるなか、2005年に掲示板投稿監視事業に一本化し、「イー・ガーディアン株式会社」に商号変更、その他の事業は売却している。2010年に東証マザーズに上場してからは、M&A及び会社分割を行いながらネットセキュリティサービスをワンストップで提供する“総合ネットセキュリティ企業”としての基盤を確立してきた。主なM&Aとしては、ネット監視事業のイーオペ(株)を2012年に完全子会社化(現 イー・ガーディアン東北(株))、人材派遣業の(株)パワーブレインを2014年に完全子会社化(2015年、リンクスタイル(株)に商号変更。2017年、EGヒューマンソリューションズ(株)に商号変更。2018年、同社に吸収合併)、デバッグ事業のトラネル(株)を2017年に会社分割(2019年、EGテスティングサービス(株)に商号変更)、HASHコンサルティング(株)を2015年に完全子会社化(2017年、EGセキュアソリューションズ(株)に商号変更)、デバッグ事業の(株)アイティエスを2017年に完全子会社化(2019年、EGテスティングサービスに商号変更)などがある。
近年はクラウド型セキュリティサービスのグレスアベイルの子会社化(2019年)、ソフトウェア型WAFのNo.1企業であるジェイピー・セキュアの完全子会社化(2020年)など、サイバーセキュリティ分野を強化している。海外展開においては2017年に設立したE-Guardian Philippines、2021年に設立したE-Guardian Vietnamが拡大中である。現在はグループ会社5社、主な事業所で国内12拠点、海外2拠点を持ち、2,486名の従業員(うち臨時従業員数2,080名)を抱える企業グループとなっている。2016年9月に東証1部に昇格、2022年4月の東証再編に際してプライム市場に移行した。2023年8月にはチェンジHDと資本業務提携し、サイバーセキュリティ業界の再編をリードする体制を構築した(「成長戦略」の章で詳述)。
2. 事業概要
売上高の主力はソーシャルサポートであり、2023年9月期通期で売上高の57.5%を占める。ゲームサポート(同15.7%)、アド・プロセス(同12.9%)、サイバーセキュリティ(同6.5%)が続く。その他はハードウェアに対するデバッグなどである(同7.4%)。
(1) ソーシャルサポート
ソーシャルサポートは、ソーシャルWebサービスなどの様々なインターネットサービスを対象に、投稿監視、カスタマーサポート及び風評調査などを提供する。豊富な実績のある人材による監視サービス(有人監視)に加え、専門特化した監視ツール(システム監視)を併用するのが同社の特長である。独自開発されたAI判別システムは低コストかつ高品質なサービス提供をするうえで武器になっている。2023年9月期は、EC・フリマサイト向けのカスタマーサポートサービスや監視業務の受注が増え、売上高で6,848百万円、前期比で2.1%増と堅調に推移した。
(2) ゲームサポート
ゲームサポートは、ソーシャルゲームを対象に、主にカスタマーサポート及びデバッグ業務などを提供する。ゲームをリリースする前に行うデバッグ作業からリリース後のプロモーション、問い合わせ対応まで一気通貫でサポートする体制を確立している。近年は国内のゲーム市場のヒットタイトルが減少し厳しいなか、国内ゲーム会社の海外進出及び中国や韓国など海外のゲーム会社の日本進出など海外案件の獲得を目指している。直近では、海外タイトルの日本人ゲームユーザーに特化した、独自の検証・ユーザーインタビュー・QA対応まで一貫して行い、ユーザーが持つプレイ時の違和感を低減することでセールスを促進する包括的サービス「日本ゲームユーザーインタビュー」の提供を開始した。英語対応はフィリピン、日本語対応はベトナムなど海外拠点も活用する。2023年9月期は、海外ゲーム会社のローカライズ案件(言語翻訳や調整などの支援)が伸びたものの、国内ゲーム会社分の落ち込みを補うまでに至らず、売上高で1,874百万円、前期比で10.0%減と減収となった。
(3) アド・プロセス
アド・プロセスは、広告審査業務をはじめ、広告枠管理、入稿管理、広告ライティングなどの業務を提供する。同社センターで請負う場合と派遣・常駐する場合がある。広告関連の業務は、従来、労働集約的な面が強かったが、同社独自のAIシステムやRPA(Robotic Process Automation)を活用し生産性が向上している。近年は、成長が続く動画市場において、動画に掲載される広告に対する審査業務が増加している。2020年には、(株)サイバー・コミュニケーションズとネット広告関連業務BPOを行う合弁会社である(株)ビズテーラー・パートナーズを設立し、受注チャネルを拡大した。2023年9月期は、官公庁案件の受注実績やデジタル広告市場の規制強化などによる需要の増加を受け、広告審査業務が堅調に推移し、売上高で1,534百万円、前期比で8.1 %増と増収となった。
前述3業務の業務モデルの特長は、対応量(件数)に応じた課金体系であり、リーズナブルな料金で専門的なサービスを提供でき、導入までのスピードが速いことである。
(4) サイバーセキュリティ
サイバーセキュリティは、セキュリティ業界の第一人者である徳丸浩(とくまるひろし)氏率いる専門家集団による脆弱性診断やセキュリティ対策サービス、WAF、SOC(Security Operation Center)サービスなどを擁し、総合的なサイバーセキュリティサービスを行う。2021年10月に、グループシナジーの強化を目的としてEGセキュアソリューションズを存続会社とするサイバーセキュリティ関連子会社3社の統合を行った。2022年9月には、多様なWebサイトのセキュリティ対策をサポートするべく、新たにクラウド型WAFの提供を開始した。各企業のセキュリティ強化、サプライチェーンリスク低減などサイバーセキュリティ需要は拡大しており、今後もさらなる成長が期待できる。2023年9月期の売上高は773百万円、前期比で16.7%増と成長性が高い。
(5) その他
その他には、ハードウェアのデバッグ事業が含まれる。子会社EGテスティングサービスが30年以上の経験とノウハウに裏打ちされた高品質なサービスを行っており、2021年には八王子テストセンターを開設し、多面的機能テストの需要へ対応する体制が整った。2023年9月期の売上高は877百万円、前期比で0.1%減となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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