S&P500月例レポート(23年12月配信)<前編>

\ あなたにピッタリの銘柄がみつかる /

みんかぶプレミアムを無料体験!

プランをみる

最新投稿日時:2023/12/20 14:30 - 「S&P500月例レポート(23年12月配信)<前編>」(みんかぶ株式コラム)

お知らせ

読み込みに失敗しました。

しばらくしてからもう一度お試しください。

重要なお知らせ すべて見る

S&P500月例レポート(23年12月配信)<前編>

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET:2023年11月
個人的見解:サンタクロースは早く来たが、このまま居続けてくれるだろうか?

 11月は七面鳥料理が2度提供されました。1つは感謝祭の食卓に並べられ、もう1つは11月中にショートポジションを解消した投資家が例外なく手に入れました(6月と7月の相場を思い起こさせます)。そして再び、保有していたポジションにもよりますが、過去3ヵ月間の下落相場(累積で8.61%下落)において空売りで手にした利益は、11月の上昇相場で被った損失で相殺されてしまいました(11月は8.92%上昇したので、正味リターンはマイナス0.46%)。年初来の騰落率は18.97%の上昇となりましたが、彼らはおそらくマグニフィセントセブン銘柄を除いた493銘柄の中から投資銘柄を厳選してポートフォリオを組んでいたのでしょう。

 株式市場では、(少なくとも次のリセッションまでの)利上げ終了を確信させるに十分な経済指標の発表が続いたことが材料視されました。議会はつなぎ予算の成立を決断し、次回の土壇場での与野党合意(と政府機関閉鎖の可能性)を2024年1月19日まで先延ばししました(一部予算については期限を2月2日に延長)。期限が二段階となったのは、法案に盛り込む内容を詰めることができなかったからでしょう(ただし、特に他の誰かが資金を提供してくれる場合は、内容について考えることは好きなため、彼らは内容を詰めるでしょう)。多少の綻び(消費者の支出額は増加しているが、購買数量は減少)や懸念材料(債務コスト、クレジットカード残高や自動車ローン、住宅ローンの借り換え)はあるものの、引き続き米国経済は緩やかなペースで拡大し続けています。

 11月の消費活動は予想を上回るペースとなりました(そして、その勢いはクリスマス商戦に突入しても続いています)。ブラックフライデーのオンライン売上高は過去最高の98億ドル、サイバーマンデーの売上高も過去最高となる120億ドルと推定されます。感謝祭期間(5日間のインターネット通販と実店舗)の売上総額は380億ドルが見込まれています。特筆すべきは、マスターカードのデータによると、オンライン売上高が急増している一方で、実店舗での買い物は低調だったことです。個人向け金融サービスサイトのバンクレート・ドット・コムによると、流通系のクレジットカードの平均金利が28.93%なのに対し、全クレジットカードは21.19%となっています(国債や銀行預金、債券の利回りとは大違いです)。今後のホリデーシーズンに関して言えば、小売業者は割引率を引き上げたり、バーゲン期間を長期化したりすることにたじろいでいると当初は考えられています(地下鉄が次々と到着するのと同様に、この後にも別のバーゲンセールが予定されています)。選別志向を強めている消費者による支出額は2022年比3%増が予想されていますが、物価の上昇を踏まえると、実質的に販売数量は減少が見込まれます。

 12月に関して言えば、相場にお化粧買いの動きが戻ってくることが予想されます。マグニフィセントセブン銘柄の偏った値上がりを背景に、株式市場の年初来リターンは18.97%となっていますが、保有銘柄の株価が低迷している(非インデックス運用の)投資家が多くいるはずだからです。12月前半に公表予定の経済指標(PMI、ISM景気指数、雇用統計、CPIそしてPPI)が株式市場を下支え、個人投資家は「取り残されることを恐れる」心理状態に陥り、彼らが金利5%の短期金融商品に眠らせている数兆ドルの保有資金の一部を株式市場にシフトさせる可能性があります。そして、もし売り手が気弱であれば株式資金への資金流入が需給の不均衡を生み出し、自己増殖的に株価が上昇することになります。

 米連邦準備制度理事会(FRB)に関しては、高官の発言が報道されるたびに警戒感が一段と強まることになるでしょうが、2024年上半期に利下げが実施されると予想する向きが今や多数派のようです。けれども私は相変わらず少数派に属しています。FRBはインフレの燃え殻が完全に消えることを重視しており、かすかといえどもインフレの痕跡が残るようなリスクは取らないでしょう。要するに、FRBは2024年第3四半期まで政策金利を据え置くということです(2024年前半の雇用市場は引き続き堅調だとみられ、利下げ開始の助け舟にはならないでしょう)。

 以上は将来の見通しですが、現時点でS&P500指数の配当込みのトータルリターンは年初来でプラス20.80%となり、昨年の18.11%の下落分をほぼ取り戻しました(2021年末比では4.16%下落、トータルリターンはマイナス1.08%でした。2021年末の米2年物国債の利回りは0.73%)。1928年以降で見ると、12月は月間騰落率が最も良い月です。72.6%の確率で上昇しており、平均上昇率は1.28%の上昇です(とはいえ、2022年12月は5.90%下落したことには触れておくべきかもしれません)。サンタクロースがまだ去っていないことは大いに期待できます。数少ない勇気ある強気派はS&P500指数が2022年1月3日に付けた終値での最高値4796.56を目標値に掲げていますが、そこに到達するには現在の水準から4.77%上昇する必要があります(夢は持つべきでしょう。でも、計画を持って売り指値注文を入れる方がはるかに安心できるかもしれません)。

インデックスの動き

 ○S&P500指数は8.92%上昇して4567.80で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス[一大1]9.13%で、2022年7月の9.11%以来、最高の月となりました)。10月は4193.80で終え、2.20%の下落(同マイナス2.10%)、9月は4288.05で終え、4.87%の下落(同マイナス4.77%)でした。過去3ヵ月では1.33%の上昇(同プラス1.74%)、年初来では18.97%の上昇(同プラス20.80%)、過去1年では11.95%の上昇(同プラス13.82%)でした。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は8.77%上昇(同プラス9.15%)して3万5950.89ドルで月を終えました。S&P500指数のプラス8.92%を下回り、年初来ではS&P500指数のプラス18.97%に対してプラス8.46%(同プラス10.01%)と、引き続きS&P500指数を大きく下回っています。このかい離は、ウェイト付け(時価総額に対して単純株価)によるものですが、歴史的に見ると追随しています。

  ⇒S&P500指数の時価総額は11月に3兆1780億ドル増加(10月は8030億ドル減少)、年初来では6兆1800億ドル増加し、38兆1690億ドルとなりました。

 ○11月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は、10月の1.28%から0.75%に低下、年初来では1.06%となりました。2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした。

 ○11月の出来高は、10月に前月比1%減少した後、4%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では17%の減少でした。2023年11月までの過去1年では前年比4%増加しました。2022年は同6%の増加でした。

 ○11月は1%以上変動した日数は、21営業日中4日(上昇が4日、下落が0日)でした。10月は22営業日中8日(上昇が3日、下落が5日)でした。年初来では、1%以上変動した日数は230営業日中60日(上昇が34日、下落が26日)、2%以上変動した日数は2日(上昇が1日、下落が1日)でした。11月は21営業日中6日で日中の変動率が1%以上となり、変動率が2%以上の日はありませんでした。10月は22営業日中17日で日中の変動率が1%以上となり、変動率が2%以上の日はありませんでした。年初来では1%以上の変動が111日、2%以上の変動が13日、変動率が3%以上の日はありませんでした。(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。

 過去の実績を見ると、11月は61.1%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.02%、下落した月の平均下落率は4.16%、全体の平均騰落率は0.88%の上昇となっています。2023年11月のS&P500指数は8.92%の上昇でした。

 12月は72.6%の確率で上昇と1年で最高の月となっており、上昇した月の平均上昇率は2.97%、下落した月の平均下落率は3.19%、全体の平均騰落率は1.28%の上昇となっています。

 今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、2023年は12月12日-13日、2024年は1月30日-2月1日、3月19日-20日、4月30日-5月1日、6月11日-12日、7月30日-31日、9月17日-18日、11月6日-7日、12月17日-18日となっています。

主なポイント

 ○10月までの3ヵ月間は下落相場が続きました(累計で8.61%下落)が、11月はまさに感謝にあふれる期間となり、株式市場はほぼ全面高となりました(値上がり銘柄数が441銘柄、値下がり銘柄数が62銘柄、騰落率は8.92%の上昇)。相場の上昇に一役買ったのが経済指標(CPI、PPI)で、これらの指標を受けて、FRBの追加利上げの道は(完全ではありませんが)ほぼ閉ざされました(確率は4%で低下しています)。市場参加者は初回利下げについて、2024年3月に44%の確率、5月に76%の確率であると見込んでおり、また、2024年中に0.25%ずつの利下げが4回行われる確率は79%となっています。

 金利もこうした市場の期待に反応を示し、長期金利は低下しましたが(米10年物国債利回りは9月に5.02%に達しましたが、11月は4.34%で取引を終えました)、投資家が特に注目している短期金利は僅かな低下にとどまりました(3ヵ月物金利は5.40%)。(自動車ローンや住宅ローンと同様に)クレジットカードローンに関する懸念は強まっているものの、個人消費は引き続き活発でカード残高も膨らんでいるようです。議会はすべき仕事をしっかりとこなし、つなぎ予算の執行期限を延長しました(今回の期限は2024年1月19日と2月2日の二段階に設定)。これらは全て人の手(と一部は取引プログラム)によって行われました。AI(人工知能)の未来は窓もないであろうごく小さな部屋で議論されました。

 ○11月の主なデータ

  ⇒11月の株式市場は上昇に転じました。10月以前の3ヵ月間は連続して下落し、(10月は2.20%下落、9月は4.87%下落、8月は1.77%下落して、3ヵ月累計では8.61%下落)。それ以前は5ヵ月連続で上昇していました(累計で15.59%上昇)。11月は21営業日のうち16日で上昇しました。また、11セクターのうち10セクターが上昇し、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を大幅に上回りました(値上がり銘柄数は441銘柄、値下がり銘柄数は62銘柄。10月は値上がり銘柄数が148銘柄で、値下がり銘柄数が355銘柄)。11月の出来高は前月比4%増、前年同月比では18%減となりました。

   →11月は11セクターのうち10セクターが上昇しました。9月と10月は11セクターのうち10セクターが下落しました。11月のパフォーマンスが最も良かったのは情報技術で、12.73%上昇しました(年初来では50.68%上昇となり、セクター別では最高の騰落率、2021年末比では7.12%上昇)。パフォーマンスが最低だったのはエネルギー(11月に唯一下落したセクター)で、1.65%下落しました(年初来では4.62%下落となりましたが、2021年末比では51.70%上昇となり、セクター別で最高の騰落率)。

  ⇒S&P500指数は11月に8.91%上昇して4567.80で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス9.13%)。10月は4193.80で終え、2.20%下落でした(同マイナス2.10%)、9月は4288.05で終え、4.87%下落(同マイナス4.77%)でした。過去3ヵ月では1.33%上昇(同プラス1.74%)、年初来では18.97%上昇(同プラス20.80%)、過去1年では11.95%上昇(同プラス13.84%)でした。

   →バイデン大統領が勝利した2020年11月3日の大統領選挙以降では35.58%上昇(同プラス42.36%)でしたが、2021年1月20日の就任以降では18.59%上昇(同プラス24.06%)でした。

   →重要な相場の節目を起点とした騰落率:シリコンバレー銀行破綻前の2023年3月8日からは14.42%上昇(同プラス15.81%で、金融セクターは同期間に2.63%上昇)、2022年1月3日の終値での過去最高値からは4.77%下落(同マイナス1.71%)、コロナ危機前の2020年2月19日の高値からは34.90%上昇(同プラス43.46%)となっています。

 ○米国10年国債利回りは低下を続け(10月には16年ぶりに5.02%に達しました)、10月末の4.92%から4.34%に低下して月を終えました(2022年末は3.88%、2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは10月末の5.08%から4.50%に低下して取引を終えました(同3.97%、同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは10月末の1ポンド=1.2142ドルから1.2627ドルに上昇し(同1.2099ドル、同1.3525ドル、同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは10月末の1ユーロ=1.0575ドルから1.0889ドルに上昇しました(同1.0703ドル、同1.1379ドル、同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は10月末の1ドル=151.68円から148.19円に上昇し(同132.21円、同115.08円、同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は10月末の1ドル=7.3158元から7.1289元に上昇しました(同6.9683元、同6.3599元、同6.6994元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○11月末の原油価格は7.0%下落し、10月末の1バレル=81.34ドルから同75.67ドルとなりました(2022年末は同79.35ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は11月に6.6%下落しました(現在1ガロン=3.363ドル、10月末は3.600ドル、2022年末は同3.203ドル、2021年末は同3.375ドル)。2020年末から原油価格は56.3%上昇し(2020年末は1バレル=48.42ドル)、ガソリン価格は44.3%上昇しました(2020年末は1ガロン=2.330ドル)。

  ⇒2023年9月時点のEIAの報告によると、ガソリン価格の内訳は、55%が原油(8月は50%、7月は50%、6月は47%、5月は49%、4月は51%、3月は50%、2月は53%、1月は55%)、13%が連邦税および州税(同13%、同14%、同14%、同14%、同14%、同15%、同15%、同15%)、12%が販売・マーケティング費(同11%、同11%、同14%、同15%、同12%、同11%、同13%、同10%)、そして19%が精製コストおよび利益(同25%、同25%、同24%、同21%、同23%、同24%、同20%、同20%)となっています。

 ○金価格は10月末の1トロイオンス=1992.30ドルから上昇し2056.00ドルで11月の取引を終えました(2021年末は1829.80ドル、2020年末は1901.60ドル、2019年末は1520.00ドル、2018年末は1284.70ドル、2017年末は1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は10月末の18.14から12.92に低下して10月を終えました。月中の最高は18.42、最低は12.45でした(2022年末は21.67、2021年末は17.22、2020年末は22.75、2019年末は13.78、2018年末は16.12)。

  ⇒同指数の2022年の最高は38.89、最低は16.34でした。

  ⇒同指数の2021年の最高は37.51、最低は14.10でした。

  ⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

 ○市場関係者のS&P500指数の1年後の目標値は、2ヵ月連続で低下し(それ以前は9ヵ月連続で低下した後に11ヵ月連続で上昇していました)、現在値から10.5%上昇の5047となっています(前月は20.7%上昇の5063、前々月は5135)。ダウ平均の目標値も3ヵ月連続の上昇を経て2ヵ月連続で低下し、現在値から7.4%上昇の3万8615ドルとなっています(前月は17.7%上昇の3万8896ドル、前々月は3万9354ドル)。

<後編>へ続く
 


配信元: みんかぶ株式コラム

みんかぶおすすめ