【不適切な会計処理】
例年通り、企業評価の“眼”を更新することを目的として、
『上場企業の不適切な会計処理』のリリースをまとめたレポートをお送りします。
【23件のリリース】
“今年”※は23件の「不適切な会計のリリース」があった。
(ちなみに、2021年15件、2020年21件、2019年25件、2018年24件、2017年21件、2016年21件、2015年21件、2014年14件、2013年20件、2012年29社、2011年17件、2010年15件だった。)
昨年と比べると増加した。
※ 集計及び資料作成時期の都合上、2021年8月~2022年10月を“今年”と表現させて頂いております。何卒ご了承ください。
【不適切な会計に関する調査報告書-概論-】
報告書には、2種類ある。
(1)内部調査委員会報告書(社内調査委員会報告書)
社内の監査役や顧問弁護士等によって作成された報告書。
→身内によって作成された報告書のため、甘い報告書となりがち。
「調査した」という外形を整えることを目的とした報告書に見えるものが多い。
(2)第三者委員会報告書(社外調査委員会報告書)
企業から独立した弁護士や専門家等によって作成された報告書。
日弁連の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に沿って、作成される。
→経営者等のためではなく、すべてのステーク・ホルダーのために作成された報告書のため、内部調査委員会の報告書に比べれば、格段に透明性の高い報告書である。
調査報告書の概要については、下記の資料をご参照ください。
<不適切な会計に関する調査報告書-概論->
https://alox.jp/dcms_media/other/171204_outline_dressingreport.pdf
【2022年度の不適切な会計処理一覧と型】
2022年度の粉飾について、その内容に基づき、
「売上加工」「利益捻出」「資金流出」の3つに分類した。
<2022年不適切な会計処理 リリース概要一覧表>
https://alox.jp/dcms_media/other/221225_2022dressing.pdf
1「売上加工」とは
→架空売上、押し込み販売、売上の前倒しなど、売上を増やす行為
・アウトソーシング
・グレイステクノロジー
・ジー・スリーホールディングス
・日本M&Aセンター
・サカイホールディングス
・EduLab
・アジャイルメディア・ネットワーク
・ハイパー
・東京産業
・ディー・ディー・エス
2「利益捻出」とは
→売上原価の過小計上や翌期繰延、費用の過小計上や翌期繰越、棚卸資産の過大計上など、利益を増やす行為
・北弘電社
・出前館
・レオン自動機
・アールビバン
・ナカノフドー建設
・ダイイチ
・大東建託
・ムトー精工
3「資金流出」とは
→創業者や特定の担当者による商行為の私物化、協力会社との癒着によるキックバック、買収や取引を通じてグループや協力会社への資金援助など、会社から資金を流出させる行為
・イー・ガーディアン
・グローム・ホールディングス
・三協フロンティア
・レスターホールディングス
・日本食品化工
【「粉飾のテクニック」集】
「売上加工」「利益捻出」「資金流出」を目的として、下記のようなテクニックが用いられた。
〔日本食品化工〕
不正行為を行った社員は、その発覚を防ぐため、不正に取得した現金相当額について、自らの会計記帳により原材料費や経費といった製造原価に含めていた。
〔東京産業〕
原価付替は、以下のような2つの方法で実施された。
①超過原価が発生した仕入先への支払について、別の取引先に立替払いを依頼し、その補てんとして、後日別案件に関する原価であるかのようにして支払う。
②超過原価が発生した仕入先への支払に対応する架空案件を創出した上で、特定の取引先に当該架空案件の売上を装って入金を依頼し、後日別案件に関する原価であるかのように支払い、補てんする方法。
→『ザ・原価の付け替え』というべきテクニック。このテクニックは、往々にして、付け替えの限界値に達して破綻します。
〔ハイパー〕
・顧客に依頼して検収書を前倒しで取得するとともに、IT機器等を倉庫・配送業者に一時保管させて出荷を偽装する手口による売上を前倒し計上。
・外注先に作業を先行して実施させながら、発注を遅らせて買掛金を簿外処理する手口による仕入計上の先送り。
→「発注を遅らせて買掛金を発生させない」というテクニックは、親密?な取引先だからこそできる代物と言えるでしょう。
〔ダイイチ〕
経営陣が、当期に先行計上する売上原価の総額を決定し、各店舗への配分量及び納期が計画された。
売上原価の先行計上のために商品を仕入れる行為を「買込み」と呼称することがあった。
〔グレイステクノロジー〕
架空売上の売掛金において、役員が自己資金(主として新株予約権の行使で得た当社株式の売却益を原資とするもの)を顧客名義で当社に振込入金することで正常な入金を偽装した。
→昔の体育会系を思わせる際立った個性の役員による恫喝、必要な書類の偽造など、生々しい粉飾の現場を垣間見ることができる報告書。
【ベストオブ不適切な会計に関する調査報告書】
株式会社EduLab
2022年2月28日 『特別調査委員会による最終報告書の公表に関するお知らせ』
<調査報告書>
https://alox.jp/dcms_media/other/220225_4427_EduLab.pdf
独断と偏見に基づく、今年の報告書は、EduLabである。
監査法人の指摘からはじまった不適切会計の調査が、調査の過程で新事実が発見され、二次調査、三次調査となり、さらに追加で自主調査の結果、新事実が発見され第四次調査まで発展した。
その結果、特別調査員会報告書は、309ページに渡る大作となった。
どちらかと言うと粉飾内容よりも、「芋づる式に発覚した事実により、読み手を考慮しない膨大な報告書である点」が選定した理由である。
内容の衝撃度という点では、グレーステクノロジーの報告書の方が、強烈である。
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