エル・ティー・エス、「デジタル時代のベスト・パートナー」へ 人材などへ投資し2024年に営業利益20億円達成目指す
株式会社エル・ティー・エスの概要
樺島弘明氏(以下、樺島):本日は、エル・ティー・エスの会社事業の内容と成長戦略についてご説明します。当社は2002年3月に設立し、2022年に20周年を迎えました。15周年の時に東証マザーズに上場しています。社員は509名で、およそ200名のコンサルタントと200名のエンジニアがいる会社です。
事業内容
樺島:事業内容については、1社1社の変革および事業成長、DXを支援するプロフェッショナルサービス事業と、IT業界での発注プロセスとITサイトの営業プロセスをスマートにするような仕組みを作るプラットフォーム事業の2つです。
プラットフォーム事業は7,000名のフリーのコンサルタントや5,000社を超えるIT企業を会員としており、このリソースをプロフェッショナルサービス事業の体制作りに活かしていくなど、別の事業でありながら補完性を持って展開しています。
変革の日常化(プロフェッショナルサービス好調の背景)
樺島:プロフェッショナルサービス事業が売上の90パーセントを占めていますが、こちらが好調な理由として、クライアント側で変革の日常化や内製化が進んでいることが挙げられます。
これまで、企業は10年に1回の大規模変革として、初めての海外M&Aやシステム統合、グループ会社の整理再編をして競争力を維持することが一般的でした。しかし、今は10年に1回の大規模変革では競争力を保てず、日常的にさまざまなテーマで大・中・小の変革を推進するような時代になりました。
したがって、個別のプロジェクトを進めるだけでなく、組織が変化対応力を身に付けることが大事になってきます。エル・ティー・エスの引き合いが多いのには、このような背景があります。
プロフェッショナルサービス事業の特徴1
樺島:大規模なコンサル会社やITの会社は、ビジネスの主軸が大規模プロジェクトを立ち上げ遂行することであり、そこに注力しています。しかし実際は、プロジェクトが大きくなるほど、支援するほどクライアント側にとっての投資対効果が下がります。一方で支援するコンサル会社側は、ビジネスが拡大するという構造があるのです。
エル・ティー・エスの場合は、大・中・小のさまざまなプロジェクトを推進・支援するだけでなく、高いROIのプロジェクトを企画・立案できることが強みです。具体的には、中核技術が個別のプロジェクトで支援したお客さまにそのまま残り、その事業組織の事業構造や業務フローで使われているITシステムやデータの流れ、投入されている社員の時間・コストをブロックのように見える化し、適切に管理します。場合によってはそれを分解して再構成し、再度現場のオペレーションに戻します。
このビジネスプロセスマネジメントの技術は、我々が日本で一番実績があり、対応できるコンサルタントの数も多いです。この技術があると、きちんと投資対効果の出るプロジェクトを計画できます。
例えば、ある課題に対して数十億円かけてITシステムを刷新する、アルゴリズムを用いる、ITではなく社内の業務改善活動に取り組む、アウトソーシング会社を見直すといった解決策がきちんと見えるかたちでプロジェクト計画を作ることができるのです。こちらが、直近の7年、8年の間にエル・ティー・エスへのご依頼やご期待が急増してきているポイントかと思っています。
また、直近の5年間で、RPAの効果が出なかった際の駆け込み寺のように機能してきたこともポイントです。RPAブームでたくさんのサービスが立ち上がったのですが、思ったほどコスト削減効果が出ずどうしようかという時に、銀行も公務員もエル・ティー・エスに相談に来るのですね。
なぜかと言いますと、社員が行っている業務処理をRPAという自動化ツールに移管するだけでは、コストインパクトがないからです。大事なのは、ビジネスプロセスを俯瞰して、そのプロセスの処理をしているのは社員なのか、旧来のITシステムなのか、アウトソーシング会社なのか、あるいはそのような自動化ツールが向いているのかを選択肢として持って捉えることです。
また、そもそもやめたほうがよい業務や変えたほうがよい業務もあります。それらをなんでもRPAにするのではなく、ITシステムの機能を改変したほうがよい場合や、アウトソーシング会社に出しているコストと品質を改善することで、トータルで数億円から数十億円のコスト削減をすることが従来の王道でした。
一時期のブームで、RPAと人を移管することが増えましたが、まったく効果が出ず、野良ロボットのような誰も管理しない自動化ツールだけが残りました。ROIを出すためにはビジネスプロセスを踏まえてきちんと計画することが大事で、その点で一番能力と実績があるエル・ティー・エスへの引き合いがこの数年とても多かったのです。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):確かになんでもRPAに移管しようという動きはあったと思うのですが、当時はRPAの能力が人に比べて劣っており、単純な業務は移管できても、できない部分もあったと思います。御社は何にでもRPAを入れるのではなく、他のところを変えたほうがよい場合の構想も得意とし、それを行ってきたということですよね。
現在はだいぶRPAの性能が上がってきているのかと思うのですが、足元の状況もあまり変わりませんか?
樺島:企業側もこなれてきており、ソリューションの選択肢として、RPAだけでなくITシステムへの投資、業務改善活動、アウトソーシング会社や派遣会社の使い方の見直しなども考え始めています。これらをトータルで活用して利益を取ろうとすると、RPA専業のベンダーやIT専門のベンダーでは応えきれません。
そこにコンサルタントが介在するのです。ただし、コンサルタントが介在するとコストがかかり、コストをかけて得られる効果がどれだけなのかは説明がつきません。そのため、我々は立ち上げてはいけない領域に関してはそもそもその必要はないと伝えます。
事業の構造や業務フロー、データコストは見えていますので、例えばクリエイティブな領域に自動化を導入してもなんの成果も出ないのです。社員の業務時間を管理したところで、パフォーマンスは上がり得ないですからね。そのようなことをきちんと見ていくことはとても大事で、実はROIはスタートの段階でほぼ決まっているのです。
増井麻里子氏(以下、増井):私はシステムを開発してお客さまに納品することもしているのですが、なかなか全体の業務をわかっている方がいないと感じました。マネジメントクラスの方は実際の個別の作業が全然わかっておらず、作業者はその部分しかわからないという具合です。
コンサルをする上で、どのような方にヒアリングして全体のアドバイスをしているのでしょうか?
樺島:我々のお客さまは、カンパニーや事業部のような、企業の中の1つの事業組織です。事業組織という単位では、どのようなプロセスでお客さまに価値を提供しているかがわかっていないとビジネスができません。最初はごくシンプルなのですが、時間が経ってITや外部に任せた時に、誰もわからなくなってしまいます。
それをきちんと見える化しながら事業を進めてきたコンビニや自動車会社は、やはり変革の計画が得意です。要するに、見えているから手が打てるのです。逆に、そこを見えないままにしていた会社は、いざどうしようかとなった時に見える化の作業から始まります。
2000年代の前半は、見える化にお金をかけたくないという企業と、見える化しないと何もできないではないかという企業に分かれていましたが、今は多くの会社が見えていないと始まらないと認識しています。
見えるようにして管理する技術がビジネスプロセスマネジメントやビジネスアナリシスであり、それをきちんとお客さまにも教育しながら一緒に行っていきます。我々はプロジェクトを推進・支援しながら、業務改革推進室、経営企画等に見える化の作業のためのITやその仕組み、やり方をお伝えしながら進めていっています。
増井:見える化の段階からお手伝いしているのですね。
樺島:そのとおりです。毎月高い頻度でセミナーや教育を行っています。
プロフェッショナルサービス事業の特徴2
樺島:このようなビジネスを回していくと、お客さまとは長期で関係を作ることになります。個別のプロジェクトを支援しながら変化対応力や変革企画能力を上げていくため、例えば商社とのお付き合いでは本社の仕事にも関わります。コンビニや飲料、アパレルメーカー、金融機関でも、本体に加えて関連する不動産や保険、銀行などに幅広く関わりながら、長期でお付き合いをし、プロジェクトを計画、コンペ無しで受注します。
そこで成果が出ると、「あの企業でこのテーマで成果を上げたエル・ティー・エス」としてまた新しい引き合いが多く来ます。このサイクルが、直近の10年で上手く回ってきています。
事例:花王株式会社向け AI自動棚割りアルゴリズム開発
樺島:花王で棚割作業を自動化するという事例では、どの商品をどこに置くのかを人間ではなくアルゴリズムで解決しました。このような成果を上げたことで、またいろいろな引き合いが来るというサイクルが順調に回っていると思っています。
坂本:スライドの右下「新規顧客」に自治体とありますが、県や地方公共団体も、御社のようなコンサル会社にシステムの統合やDXを任せなければいけない状況になっているのでしょうか?
樺島:我々はITの活用がまだ上手く進んでいないところにサービス提供するため、自治体もターゲットに入れています。広島県で行ったことも、実は企業に対するアプローチと似ていて、複合的・総合的な支援です。
広島県では人口流出が止まらず、それを止めるために企業誘致が必要だと考えました。中でも、スタートアップ企業を県外ではなく極力県内で起こしてもらい、地場の企業にもDXを推進することでその企業を育てていこうという方針で、それに対して県がファンドをつけ、募集・出資し、メンタリングも行うことになりました。そのような複合的な取り組みをエル・ティー・エスが支援し、今ではインキュベーション施設の運営や大学向けの教育も行っています。
地方創生などいろいろな切り口がありますが、地方の中で一番大きなテーマはやはり人口減少、そしてビジネスで産業が育たないことです。ここに対するアプローチを、いろいろなものを通して行っており、広島県だけでなく静岡県や他の県にも提供しています。
増井:スライドの図の上から2つ目「持続的な変革サイクルの創出」は、最近のトピックでいいますと「SAP」が更新されることなどがあるかと思うのですが、御社は基幹システムの更新や導入に関するアドバイス・支援をしているのでしょうか?
樺島:企業の変革テーマは、フロントで稼ぐことと、コーポレートの保守や効率化があります。シェアNo.1の基幹システム「SAP」は多く採用されているため、基幹システムの刷新プロジェクトをクライアント側で構想計画、業務改革、ベンダー選定などをします。
そして、実際の開発作業は大手外資のコンサル会社やIT企業が担っていくというフォーメーションでたくさん支援しています。また、フロントエンドでお客さまとの関係を再構築するためのビジネスプロセスとモデルの提案や、データ解析の仕事もあります。
このように我々は多種多様なプロジェクトを手掛けているため、わかりづらいという声もあります。しかし実際は、ビジネスプロセスマネジメントの中核技術で基幹システムの計画を作り、ベンダーを呼んで、ROIが出るかたちでアプローチしています。この点で、エル・ティー・エスはお客さまにとって唯一の存在と捉えられています。
売上高の推移
樺島:業績に関して、今期の売上高は93億円で、2017年に上場して以降も25パーセントから30パーセントの売上成長を続けています。
営業利益の推移
営業利益は、2017年の上場以降は増収増益で、増益幅もそれなりに大きかったのですが、2022年度は増収減益となり、来年以降に増益基調に戻す計画です。
2022年12月期第3四半期の総括
第3四半期を終えて、グループ全体の売上高は70億1,400万円、営業利益は4億2,600万円、経常利益は4億1,900万と増収減益で、期初の計画どおりです。
2022年12月期第3四半期 進捗率
売上進捗率は75.4パーセント、営業利益進捗率は88.9パーセントとなっています。2017年の上場後、2018年から2021年の4年間は毎期上方修正をしています。業績予想はある程度保守的に出し、業績の達成状況に左右されずに余裕を持って経営しています。
数値目標
樺島:今後の成長についてお話しします。数値目標としては、2024年に連結営業利益20億円、連結売上高165億円をターゲットに置いています。この数値目標は2021年に開示しましたが、実は「2024年の営業利益20億円を達成するためには」「2025年以降息切れしないようにするためには」といった視点のほうが強いです。
2022年は20周年でもあったため、採用広報やクライアントへのあらためての広報活動、グリップ活動に十分コストをかけました。また、10月にはオフィスも移転しました。売上高100億円を超えたタイミングで社内の業務やIT基盤に投資していこうと考え、販売管理費にくくられるコストを前年比でかなり上げました。
その結果、2022年は少し減益にする年にしていますが、基本的には2023年に再度増益に戻し、2024年に営業利益20億円を達成することを念頭に、各種活動を進めています。
目指す姿
樺島:目指す姿は「デジタル時代のベスト・パートナー」です。新型コロナウイルスやテクノロジーの進化により、社会構造はどんどん変わってきています。生活者の消費行動はすでに変わりましたし、企業と従業員の関係性も従来とはまったく異なります。
企業経営の前提や、行政や社会インフラと呼ばれる仕組みも変わってきています。そのような変化にいかにして立ち向かうかに取り組む組織が、エル・ティー・エスのクライアントにあたりますので、ビジネスオポチュニティはとても多い時代だろうと思っています。
企業は最初にベストテクノロジーやベストソリューションを探しますが、実際にはベストパートナーを探しているのです。問いやテーマごとに最適なテクノロジーを探し続けるのは、実質、不可能です。
「この分野については、この企業としっかり取り組んでいく」と考えてもらえるパートナーシップを組める企業になれるかが、BtoBの世界ではとても大事です。エル・ティー・エスは、これまでの顧客基盤があり、ビジネスプロセスマネジメントを含めて多種多様なテーマを支援する体制もできていますので、良いポジションになっていると思います。
資本市場から見ると、おそらくワンテクノロジー、ワンソリューションのほうが非常にわかりやすく、採用育成の型化が進みやすいとは思います。確かにそこで事業を続けていけるビジネスサイズはあるとは思います。
しかし、企業サイドから見ると、ベストパートナーのポジションになる側と、ベストテクノロジーで選ばれ続ける側には大きな違いがあると思います。エル・ティー・エスは、ベストパートナーサイドに向かっていますし、そのようなお客さまを1社でも多く増やしていけそうだという手応えを持っています。
人材
樺島:取り組むテーマには人材、顧客、サービスがあります。人材については、採用育成を行うことと、ナレッジマネジメントを重視しています。たくさんの現場がある分だけ、ナレッジが生まれます。それを他の現場に届けることで、教育あるいは品質、サービス提供スピードがどんどん変わります。
売上高100億円、従業員数百名の規模を超えると、採用育成において、ナレッジの還元・流通はかなり大きなテーマになります。エル・ティー・エスでは、この点にもしっかり力を入れて取り組んでいます。
コンサルタント・エンジニアの採用進捗
樺島:採用を非常に強化していますが、今年は良い点も悪い点もありました。悪い点として、100名以上コンサルタントとエンジニアを増やそうと考えていましたが、今年は第3四半期で57名の採用にとどまっており、通期で100名採用は若干未達で終わる見込みです。
良い点としては、採用基準を落とさずに、来年4月入社の新卒が80名を超えています。なおかつ、今期、中途採用であらゆる施策を打って、その分、反省や課題も見えましたので、そこを改善すれば良い人が採れるという自信も今は持っています。
来年以降については、採用人数を150名にするかどうかなどの詳細はまだ決めていませんが、採用力には一定の自信を持っていることを補足しておきます。
顧客
樺島:顧客については、15年から20年近く付き合っている企業が多く、新しいテーマにどんどん果敢に取り組む先進企業群がほとんどです。そことの関係を強化しながら、西日本やアジアのエリアでのクライアントに対するサービス提供も増やしていきます。また、先ほど少し触れましたが、我々が「パブリック&ソーシャル」と呼んでいる自治体にもサービス提供をしていこうと考えています。
自治体向けサービス推進_自治体DX事例 広島県
樺島:こちらは先ほどお伝えした事例になりますので、割愛します。
横河デジタル株式会社との資本業務提携
樺島:今年は2つの資本業務提携を結びました。1つ目が、YOKOGAWAグループの横河デジタルとの資本業務提携です。横河電機は、エネルギー、マテリアル、ライフなど、プラントの生産制御あるいは運転監視のシステムで高いシェアを持っています。要は、オペレーションテクノロジー(OT)の分野ではナンバーワン企業であり、国内外にたくさんのお客さまがいます。
そのお客さまの生産設備の生産性向上や運転、運用、保守の効率化は、まだまだこれからが本番です。OTだけで解決できず、OTとITで生産性向上や運用、保守の効率化に取り組まなければいけない時に、エル・ティー・エスと組んでいろいろ取り組んでいくことになります。
そして、YOKOGAWAグループにおいて横河デジタルという会社を作り、それを1つの核として組織能力を上げていこうという取り組みになっています。したがって、このOT、IT分野でサービス提供することは、他のコンサル企業やIT企業には見られない戦略であり、YOKOGAWAグループと組めたことはとても大きな強みだと思っています。
エル・ティー・エスから見ると、横河デジタルは顧客である側面と、その先のお客さまに一緒にサービス提供をするビジネスパートナーの側面の両方がありますので、この中計はもちろん、次期中計の中でも重要なアライアンスになったと思っています。
坂本:YOKOGAWAグループからの紹介や協業などは、実際にすでに進んでいるのでしょうか?
樺島:1年以上いろいろと議論し、具体的な提案なども行っています。リリースする際はYOKOGAWAグループサイドからになりますが、すでにかなり進んできています。
FPT ジャパンホールディングス株式会社との資本業務提携
樺島:2つ目が、FPTとの資本業務提携です。FPTはベトナムに本社があるグローバルIT企業です。グループ従業員数は現時点で5万人近く、グループ連結売上高は2,000億円くらいで、時価総額約6,000億円の会社です。
FPTとは2019年に合弁会社を設立し、その合弁会社の中にコンサル機能を作る際にエル・ティー・エスが支援を行い、これが非常に成功した事例として評価を得ています。すでに150人規模の体制になっており、エル・ティー・エスとFPTの協業の仕事も増え、コンサル機能を持つことでFPTグループのビジネスのサイズや顧客との関係性が一段階上がりました。これをさらに加速するために、今回、資本業務提携契約を締結しました。
我々としては、大・中・小のプロジェクトを支援する際、中・小規模であればエル・ティー・エスにてワンストップで支援できます。ただし、数十億円を超えるプロジェクトの場合は、やはりクライアント側でいろいろ仕切って、ベンダー選定に対して支援することになります。
その際に、従来であれば日本のIT企業とインド含む外資系のIT企業の2択でした。そこに3つ目の選択肢としてエル・ティー・エスとFPTが入ることは、企業にとっても非常に好ましいとのことで、非常に順調にビジネスが進んでいます。
自画自賛ではありませんが、日本においては、ある程度順調に進んできていると思います。今後は、エル・ティー・エスとして海外展開に活かしていくフェーズに入ったと考え、このタイミングで資本業務提携を結びました。
増井:FPTは海外展開で特に重要なパートナーとなっていく予定ですか?
樺島:おっしゃるとおりです。FPTの顧客基盤には、GAFA含めたアメリカの会社や、東南アジアのユニコーン、デカコーンや財閥系の会社、ヨーロッパの会社などもあります。
日本企業の海外への取り組みを支援することは、すでに行ってきました。我々が海外展開する際に海外企業とどのようにつながっていくかを考えると、やはりFPTの顧客基盤を使えることはとても大事です。
エル・ティー・エスには英語ができるメンバーもたくさんいますし、サービス面では問題ありませんが、顧客面ではいつも難しさがありました。今回、FPTと正式に長期的なアライアンスが組めましたので、エル・ティー・エスの海外展開も相当進んでいくと思います。
興味深いことに、東南アジアの企業がコンサルやITに払う単価について、3年前には日本企業の単価に「近づいた」とお話ししましたが、現在は超えてきています。そのため、日本企業とのビジネス以上に、海外とのビジネスは収益性の面でもこれからとても大きくなるのではと思っています。
グループ経営(M&Aについて)
樺島:顧客、人、サービスに加えて、やはりM&Aが重要です。上場後、3社をグループに迎え入れました。この2年は動きがありませんが、グループ経営の形もできましたので、引き続き仲間作りの一環としてM&Aは進めていく予定です。
坂本:採用と仲間作りについて質問です。仲間作りでは仕事をお互いに融通するなどもあると思いますが、今後M&Aを行う場合、どのぐらいの予算感になるでしょうか? もちろん案件によって異なるとは思いますが、最低でどの程度の規模感でしょうか? また、人材とM&Aのどちらの投資額が大きくなるのか、割合のイメージがあれば教えてください。
樺島:上場後3社グループに迎え入れた時は、数億円サイズの企業価値の会社を迎え入れました。今後については、営業キャッシュフローで作った現金と、この2社との資本業務提携で12億円弱の調達もしています。
したがって、企業価値で言いますと、50億円を超える金額であってもそこまで怖がらずに進められる財務状態になっています。我々はそれを「大型M&A」と呼んでいますが、持ち込まれる案件というよりも、もともとつながっている企業にきちんとアプローチしながら、1年1年、お話を進めているところです。
プラットフォーム
樺島:プラットフォーム事業には2つの側面があります。1つは、単体で収益貢献していくという側面です。
もう1つは、プラットフォーム事業にはフリーランス、そしてIT企業が会員として多数集まります。そこでいろいろな情報が集まってきますので、プロフェッショナルサービスの体制作りに貢献するという側面です。この2面から、これからも伸ばしていこうと思っています。
数値目標
樺島:数値目標です。繰り返しになりますが、今中計でターゲットに置いているのは、2024年にとにかく営業利益20億円を達成することです。そのために必要な人材周りの投資を、2022年と2023年の前半戦でしっかり取り組もうと考えています。
今年は、販管費、採用や教育、20周年に伴ういろいろな広報活動、オフィス移転、システム投資が重なり、増収減益となりました。今年度は売上販管比率が上がっていますが、あくまでスポット性が高く、来年の上半期から徐々に下がっていって下半期には普通の状態に戻っていきます。したがって、収益性についてはそれほど心配していません。
10億円レベルの営業利益を出したあと、息切れする会社と、そのまま10億円単位で上がっていける会社があります。我々は後者になるために何が必要なのかを考えて、日々手を打っているところです。
坂本:利益率も上がっていますが、2023年以降の伸びは金額としては相当大きいと思います。採用人数を増やして基盤整備することと、提携先との協業で仕事が来る部分があるとは思いますが、M&Aなどを行わずにオーガニックな成長でこの2024年の計画は達成できますか?
樺島:スライドの数値はすべてオーガニックであり、M&Aは一切考慮していません。2021年まできれいに増収増益で来ましたので、「2022年も営業利益8億円くらい出して」という投資家の期待もわかったのですが、採用競争などの会社のレベルを上げるための取り組みを考えると、やはり販管費は必要だと考えました。
2023年度についても、実は大手のコンサル企業やIT企業が中途採用をぐっと抑えていますので、その分エル・ティー・エスが採りやすい状況もあります。来年、一挙に入社する80名の新卒をどのレベルに育てていくのかによって、2025年以降の風景が大きく変わっていきます。そのような中で、来年の上半期や下半期の取り組み、コストをどうするかを考えています。
2022年と2023の上半期は一時的に販管費率が上がってしまっていますが、収益性および営業利益率を上げながら進むことについては、2023年の下期からはまったく問題ないと思っています。
坂本:質疑応答で会場からよく出る質問なのですが、ITの会社を含めて新卒を採る会社はかなりありますが、戦力化するまでにどのくらいの時間がかかりますか? コンサルとエンジニアでは異なると思いますが、そのあたりのイメージがあれば教えてください。
樺島:まず、コンサルタントについては、4月から6月が研修期間、7月からプロジェクト現場に行きます。10月になると7割くらいの人たちはお客さまに対してきちんと請求するかたちになるため、実態としての収益貢献が始まります。ただし、プレーヤーとして一人前になるのはだいたい1年後で、遅い人でも1年半後が標準です。
エンジニアは、お客さまに請求できるレベルになるのはコンサルよりさらに3ヶ月遅れることが多いですが、優秀で地頭が良い人たちを見極めて採っているため、2年目くらいにはプレーヤーとしてある程度のレベルまでたどり着いていることが多いです。
坂本:確かにそれが2024年の収益貢献にかなり入っている部分もありますよね。
樺島:そのとおりです。エル・ティー・エスはBPMを主軸に、データ解析、戦略コンサル、ITコンサル、会計コンサルなど、いろいろ行っています。そのため、「育成が大変ではないか」というお声もいただきますが、ベーシックなコンサルとしての教育、BPMの教育という意味ではすでに形ができているため、問題ありません。
大事な視点は、その人間のキャリアです。ワンソリューションだと、採用と教育の型化が非常に簡単です。しかし、そこから外れるキャリアプランは描けませんので、転職するということがよくあります。
エル・ティー・エスには、AIなどの機械学習を学んできた大学院生が入社してデータ解析の仕事などを行いますが、「戦略をやりたい」ということであれば、「やってみなよ」と促します。そのため、コンサルタントからエンジニアになる人もいますし、エンジニアからコンサルタントになる人たちもいます。
いろいろなことに取り組んで難しいという見方もあれば、いろいろあることで組織としてスケールする時に社員のキャリアが作りやすく、結果的に組織能力が上がりやすいという側面もあります。
この数年はちょうど過渡期でした。それを何度か突破し、また良い方向に進むだろうという期待も私は持っています。
2025年以降のさらなる成⻑に向けて
樺島:2024年に中期経営計画の数値目標を達成したあと、息切れせずに売上高成長率25パーセントを維持し、オーガニックで売上高500億円まで目指します。M&Aなどを展開することで、さらに上の成長を目指していこうと考えているところです。
ポイントは、収益性を上げながら進めるために必要な取り組みを洗い出していくことです。現在、着実に手を打っているかと思います。
坂本:先ほどM&Aについておうかがいしました。海外事業もM&Aを含んでいるかはわかりませんが、どの地域で展開するのか、今後の予定や今取り組んでいることも含めて教えてください。
樺島:主要なお客さまである日本の大手企業の海外プロジェクトは、この数年で復活してきています。エリアはアメリカ、東南アジア、中国というのはまだ変わっていません。
海外の企業との取り組みは、FPTグループとの協業がポイントになります。FPTグループの顧客には、日本、アメリカ、東南アジア、そしてヨーロッパが10パーセントほどあります。現在、東南アジアとアメリカの顧客へのサービス提供の中で、我々が一緒に入っていける部分はあるかなどを議論しています。
そのため、エリアとしては日本企業とFPTグループ、FPTグループはアメリカと東南アジアのトップオブトップの企業を相手にしたビジネスが中心になると考えています。そこで体制をしっかり作っていくと、FPTグループだけではなく、エル・ティー・エスとしても自立的に海外事業に取り組めるようになります。そのために、まずは体制を作ろうと取り組んでいます。
質疑応答:デジタル田園都市国家構想について
坂本:「政府の進めるデジタル田園都市国家構想についての考えを教えてください」というご質問です。
樺島:デジタル田園都市国家構想とは、デジタルの実装を通して、人の暮らしや地域産業、社会そのものを変革し、より良くしていこうというものです。先ほど広島県での取り組みをお話ししましたが、エル・ティー・エスとしては1社1社のテーマの支援ではなく、複合的な支援を行っています。
例えば、デジタル田園都市国家構想であれば、人と産業をしっかりと呼び込んでいく、あるいは地場産業や企業を強くしていく、新しい事業・産業を作っていくために必要な人の話、お金の話がいろいろあります。そのようなものを都度見つけてきて自治体が施策を打っていくよりは、全体の構想をしっかりと設計し、最後まで伴走できるような存在がとても大事です。エル・ティー・エスはそのような存在になりつつあり、そのようなケイパビリティを持っています。
デジタル田園都市国家構想や地方自治体との取り組みは、自治体支援というよりも地域の総合的な支援ですので、引き続き取り組んでいきます。広島県ではそれに近い取り組みを何年も続けており、成果も上げてきています。
問題は、パブリック・ソーシャル系の取り組みは民間企業との取り組みも含めて、利益率が圧倒的に下がることです。しかし、提供する価値という意味では非常に大きなものがあるため、我々としては民間でのビジネスも進めながら、バランスを整えていこうと考えています。
質疑応答:静岡の拠点について
増井:「静岡に拠点があるのはどのような経緯ですか?」というご質問です。
樺島:創業時からのクライアントに、矢崎総業というワイヤーハーネスなどのグローバルシェアで1兆円を超える企業があります。そちらの取り組みを支援する中で、静岡在住の社員を増やしてきた経緯があり、静岡にも拠点を作りました。
また、静岡エリアには、矢崎総業の他にも鈴与やヤマハがあります。東京から出張で行く支援よりも、そこで体制を作って長期的に支援していこうということで拠点を作り、静岡在住の人の採用を行っています。今度、ソフテックという静岡ベースのIT企業とのM&Aも行うなど、体制を整えてきました。
このように、創業時から静岡は大事なエリアで、それを大きく育ててきています。どうしても海外のことを言いがちですが、京都や大阪など国内での取り組みもとても大事にしています。
質疑応答:販管費について
坂本:「『今期予定していた販管費の一部を来期に使用する』とお話がありましたが、来期の業績への影響はどの程度考えていますか?」というご質問です。
樺島:2月10日に本決算の発表と来期業績予想の発表があります。それにつながる話になるため、言葉選びが難しいのですが、もともと販管費比率が大幅に上がるのは今年と来年の上半期頃という見通しがあり、そこをどのように見込むかによって、2023年度通期業績の営業利益の着地が変わってきます。ただし、2024年に営業利益20億円をターゲットとしてずっと宣言しているため、「上半期にここまで達成しておこうか」などいろいろな考え方があります。
この規模感と粗利を一定数保っていくと、販管費の使い方で営業利益がいくらでも変わってしまうところはあります。そこを絞ることができればその年は良いのですが、翌年の採用を絞ったり、翌年の重要な施策を諦めることにもなりますので、今まさに議論しているところです。しかし、全体の流れとして増収減益は今期限りで、今後は増収増益基調に戻り、2024年の営業利益20億円に向けて経営陣はコミットしているという点はご理解いただきたいと思います。
質疑応答:中期経営計画への意気込みについて
坂本:今のご質問に関連していると思いますが、「中計達成への意気込みについてお聞かせください。決算説明資料によると、プラットフォーム事業のプロモーション、採用広報・ブランド強化に関わる広告宣伝費の一部を来期に持ってくるというのは、今期にかけるはずだった費用を延期したと考えてよいのでしょうか? 中計達成に大事な費用と思えますが、意気込みも含めて詳しく教えてください」というご質問です。
樺島:採用教育への投資については、2021年、2022年は前年比で大きく増やしました。2023年、2024年もそれなりの金額を使っていきます。
広告・広報については、エル・ティー・エスとしての採用広報や企業広報、20周年イベントについてはかなりスポット的な要素があり、来年の上半期にはスポット的な支出がいったん終わります。
残るのは、プラットフォーム事業の広告です。こちらは今期に予算としては積んでいましたが、費用対効果を考慮して行いませんでした。来年も費用対効果が出ると考えた時は進めますが、そう思えなければ実行しません。今は5年前と比べて、広告単価が異常に上がりました。
坂本:特に人材は高いですよね。
樺島:おっしゃるとおりです。非常に難しい局面であるため、来年度に予算に組んで使うのか・使わないのか、そもそも予算として組まないのかは、まさにこれから決めていくところです。ただし、繰り返しになりますが、「1つの事業の業績により全体の業績がこのようになった」という方程式はありますが、どのようなかたちでも中計で出した目標は達成できるように施策を打っていこうと思っています。
また、外部環境の影響もあります。力強く成長するためには、アジェンダとして何が大事なのかを決めて、販管費を上げながらも不必要なものは絞ります。逆に、注力分野のソリューションについてはYOKOGAWAグループ、FPTグループとの協業の中でも大事なテーマにきちんとお金を使って体制を整えていくなど、バランスを取りながら進めています。
質疑応答:採用難航の影響について
坂本:「中途採用の人数が難航している影響でフリーランスの外注費が増加することで、中計に記載の売上確保ができても、営業利益が押し下げられる可能性はありますか?」というご質問です。
僕がITの話を絡めてしまったので、少し勘違いさせてしまった部分もあるかもしれません。御社で足りない部分を外注に振ることはあまりないように思いますが、いかがでしょうか?
樺島:エル・ティー・エスも外注を一定数使っています。外注の大半がプラットフォーム事業の会員のフリーランスのコンサルタントか、IT企業です。もちろん社員で整えられない部分をフリーのコンサルタントにお願いすると、その分コストは上がりますし、部分部分で見ると社員より外注のほうが粗利率が悪化します。
そのため、社員を一定数伸ばしながら、外注も上手く使っていくことが大事です。採用については今期は100名を予定していましたが、そこにたどり着きませんでした。ただし、100名以上採る採用力はありますし、新卒は80名入ってきます。
ただし、そこは誤差レベルであり、例えば採用人数が目標から10名足りなかったために、その10名が外注に代わり、粗利が下がって営業利益未達になるというほどのインパクトはありません。
坂本:SEの会社などでは本当に人材が足りないとすべて外注になり、とんでもなく営業利益がぶれるパターンもありますが、御社はそこまでではないというイメージですね。
樺島:おっしゃるとおりです。
質疑応答:広告の形態について
増井:先ほど「広告費が上がっている」というお話がありましたが、どのような形態の広告を出していますか?
樺島:当社グループとしては企業がお客さまですので、『ハーバード・ビジネス・レビュー』や書籍の出版、さまざまな取材対応なども毎月数件行い、土地に水をまくようにいろいろ取り組んでいます。
実際に、知る人ぞ知る日本の大手企業のCIOやCTOは以前からエル・ティー・エスをよく知ってくださっていましたが、その他のCXOの方たちにも知ってもらうような活動として、今お伝えした主要な媒体を通して記事広告などを載せています。
それとは別に、子会社のサービスについての投資となると、Web広告からタクシー広告、テレビCMなどいろいろな選択肢がありますが、やはり単価が上がっています。
坂本:最近、タクシーはかなり高いみたいですね。
樺島:そのとおりです。5年前と少し違いますので、今そこに踏み込むメリットを考え、今年は行わないことに決めました。来年についても、まだ何とも言えません。
増井:状況を見ながらということですね。
樺島:おっしゃるとおりです。外部環境は悪くないという見方は間違いなくありますが、マクロや全体で見るとそうでもない風景があり、業種や企業のテーマごとにも変わります。
基幹系の取り組みは2025年の問題があるため止まらず走りますが、新規事業などいくつかのものについては非常にシビアに見られていますので、広告・広報の単価は下がるかもしれません。そのため、流動的に捉えていただきたいと考えています。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:ごく最近では、一部の企業でエンジニアの採用がしやすくなってきたという話も聞きますが、御社ではいかがでしょうか?
回答:大手コンサル・IT企業の中途採用意欲(具体的には採用目標人数)が横ばいから低下したことを受けて、以前よりも面談に進むエンジニア・コンサルタント候補者は増えています。
<質問2>
質問:競合相手も多いのではないでしょうか?
回答:サービス単位で見ると同じサービスを提供している他社もありますが、現場ではそれぞれの強みを活かして協働することが多くあります。
<質問3>
質問:横河デジタルとの合併でシナジーを発揮するという発想はないのでしょうか?
回答:横河デジタルとの合併という選択肢はもっていません。
関連銘柄
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