■ティア<2485>の今後の見通し
業績目標を達成するための重点施策については、引き続き以下の4点に取り組んでいく方針だ。
(1) 直営・FC会館の計画的な出店と既存会館の持続的な成長
出店計画について、直営店についてはドミナント戦略に基づき年間7~8店舗の出店とリロケーション・閉店2店舗を行い、2025年9月期末で104店舗を計画している。1年前の計画では年間6~7店舗の出店計画だったことから、若干出店ペース加速の方針に見直している。中核エリアとなる中部地区では多様な出店フォーマットによる出店継続(年間5~6店舗)と営業力強化により地域内シェアの拡大を進めていく。中部地区では葬儀会館と家族葬ホールの2形態で出店を進めているが、次世代型店舗の企画・開発も進めている。感染防止対策を徹底的に施し、安心安全に会葬者が参列できる施設や、先進技術を活用した施設など高付加価値サービス提供型の店舗を想定している。
関東地区や関西地区では年間1店舗ペースで出店する。関東では埼玉県下で越谷市、川口市に2店舗を出店し、いずれも稼働率は高水準を維持しており、千葉県下にも1店舗を出店した。今後も上記エリアに近い場所で出店を進めるものと予想される。一方、東京都下で進めてきた葬儀相談サロンについては、現在出店している9店舗の収益力向上を優先に取り組んでいく。2022年9月期の売上規模は9店舗で約3億円と葬儀会館1店舗分を上回る規模まで成長しており、利益も本社経費負担を除いたベースでは黒字化しているが、さらなる出店を進めていくには人的リソースの拡充が必要であり、その体制を整えてから出店を再開する。一方、関西地区では大阪府下に3店舗の出店を計画しており、事業基盤を拡大していく方針だ。
FC事業においては業務支援体制の整備や人財育成などFC本部の機能を強化し、新規加盟企業の開拓を推進していく。FC店舗については年間6~8店舗ペースで増加を見込み、2025年9月期末で78店舗を計画している。ただ、FC店舗数については、FC企業の意向次第となるため流動的であり、ここ数年は市場環境が悪かったこともあり計画を下回って推移している。FCの新規加盟については2023年9月期に1件の成約を目指し協議を進めている状況にある。
(2) 中核エリアのシェア向上にこだわった営業促進の実施とマーケティング力の向上
中核エリアでのシェア向上にこだわった営業戦略やブランド戦略をDXも活用しながら積極的に展開していく。同社は名古屋市内の斎場シェアを約27%まで拡大してきたが、当面の目標として30%を目指している。従来のペースでいけば、3年後に達成できる見通しだ。また、その他の愛知県下でもシェアを拡大していくほか、三重県の一部エリアにも直営で進出しており、今後店舗を拡大していく計画となっている。
営業戦略としては、価格訴求力を高めたテレビCMや中吊り広告、折込チラシとWeb広告専用サイトのコンテンツを拡充、連携させることで葬儀受注の獲得導線を強化すると同時に、コンタクトセンターのオペレーション体制強化により、葬儀受注率のさらなる向上を図っていく。また、潜在顧客の取りこぼしをなくすため、会員の状況に合わせた最適なアプローチやスムーズな会館案内、最適なタイミングでのアフターフォロー(法要等の案内)等をコンタクトセンターで一括して行うための「顧客情報一元管理システム」を導入、稼働を開始しており、今後の業務効率の向上が期待される。
ブランド戦略ではWebマーケティングの強化によって、インターネットからの会員獲得や葬儀受注獲得を推進するほかPR・IR活動の継続的な実施による日本全国を対象とした認知度向上を図っていく。また、DX戦略を推進すべく新たにDX・SXデザイン事業本部を立ち上げた。同事業本部ではDXデザイン室でDX戦略、SDGsデザイン室でSDGs関連、マーケティングデザイン室でマーケティングなどの企画を行う。具体的な取り組みとしては、2022年10月にYouTube公式チャンネルを開設し、様々な情報を発信する予定だ。また、「ティアの会」デジタル会報誌の発行を近日開始するほか、社内向けのスマートフォンアプリを2023年9月期にリリースする。DXによってティア会員に向けた接点を増やし、終活支援サービスといった新たな展開も含めた収益源の多様化を図っていく。
(3) 葬儀付帯業務の内製化拡大と、行動力と分析能力を高めたM&A
同社はここ数年、葬儀付帯業務の内製化を推進することで売上原価率の低減に取り組んできたが、内製化率の引き上げ余地はFC店舗も含めてまだあると見ており、今後も継続的に取り組む方針である。具体的には、中部地区、関西地区において葬儀運営スタッフとなるセレモニーアシスタントやセレモニーガードの派遣エリアを拡大していくほか、生花事業の取り扱い店舗拡大、湯灌・エンバーミングの業務エリア拡大に取り組んでいく。また、ティアサービスでは新たに(株)ベンリーにFC加盟し、既存会館の定期清掃・営繕業務の請負を開始した。
一方、M&Aについても引き続き積極的に取り組む。M&Aについてはティアサービスの1件のみにとどまっていたが、現在は定期的にエリアごとのM&A候補先のリストを更新し、デューデリジェンスを実施している。市場環境が厳しいこともあって案件数は増加し、買収コストは下落傾向にあるものの、条件面で合致する案件が少ないようだ。
(4) 計画に則した人財確保・育成と次世代基幹システムの構築
人財戦略のうち、新卒採用に関しては3年間で約75名の採用を計画している。人財育成にあたって、新卒社員には早期育成を目的とした12ヶ月間の教育プログラムを実施しており、既存社員については施行品質の向上を目的とした研修に加えて、管理職候補育成のための研修を実施している。
また、教育研修施設「THRC」で専門講師9名の稼働状況やリソース(業務内容)の配分状況を時間単位でデータ収集しており、これらデータを可視化し分析することで、人財育成に対する効率向上に取り組んでいる。人財育成システムの効率化が進めば、新規出店ペースも今まで以上に加速していくことが可能となるため、同社にとっては重要戦略の1つとなる。
ICT戦略として、次世代基幹システムの構築を2023年9月期からスタートする予定となっている。ハード・ソフトの充実による多様な働き方への対応や、重大インシデントにつながりかねない出来事や状況を早期に発見できる検知システムの導入、情報セキュリティ対策の強化などに取り組んでいく。また、情報セキュリティに関する専門知識を有する人財の確保や、情報セキュリティ体制強化に向け、社員に対する教育なども実施していく。
(5) 事業リスク
事業リスクとしては、葬儀単価の動向が挙げられる。核家族化や少子化の進展により葬儀スタイルも家族葬など小規模に済ませるケースが今後も増加する可能性があり、こうした領域では顧客獲得競争も激しいため、葬儀単価が回復しないリスクも想定しておく必要がある。ただ、葬儀を単なる「哀悼の儀式」としてだけではなく、「哀悼と感動のセレモニー」として顧客に感謝される「究極のサービス」を提供していくことで他社との差別化は可能と弊社では考えている。実際、同社の葬儀件数(FC含む)は国内全体の葬儀件数の伸びを上回って成長を続けている。今後も店舗数の拡大とサービス品質の維持向上を図りながらシェアを拡大していくことで、中長期的に業績は安定成長が続くものと予想している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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業績目標を達成するための重点施策については、引き続き以下の4点に取り組んでいく方針だ。
(1) 直営・FC会館の計画的な出店と既存会館の持続的な成長
出店計画について、直営店についてはドミナント戦略に基づき年間7~8店舗の出店とリロケーション・閉店2店舗を行い、2025年9月期末で104店舗を計画している。1年前の計画では年間6~7店舗の出店計画だったことから、若干出店ペース加速の方針に見直している。中核エリアとなる中部地区では多様な出店フォーマットによる出店継続(年間5~6店舗)と営業力強化により地域内シェアの拡大を進めていく。中部地区では葬儀会館と家族葬ホールの2形態で出店を進めているが、次世代型店舗の企画・開発も進めている。感染防止対策を徹底的に施し、安心安全に会葬者が参列できる施設や、先進技術を活用した施設など高付加価値サービス提供型の店舗を想定している。
関東地区や関西地区では年間1店舗ペースで出店する。関東では埼玉県下で越谷市、川口市に2店舗を出店し、いずれも稼働率は高水準を維持しており、千葉県下にも1店舗を出店した。今後も上記エリアに近い場所で出店を進めるものと予想される。一方、東京都下で進めてきた葬儀相談サロンについては、現在出店している9店舗の収益力向上を優先に取り組んでいく。2022年9月期の売上規模は9店舗で約3億円と葬儀会館1店舗分を上回る規模まで成長しており、利益も本社経費負担を除いたベースでは黒字化しているが、さらなる出店を進めていくには人的リソースの拡充が必要であり、その体制を整えてから出店を再開する。一方、関西地区では大阪府下に3店舗の出店を計画しており、事業基盤を拡大していく方針だ。
FC事業においては業務支援体制の整備や人財育成などFC本部の機能を強化し、新規加盟企業の開拓を推進していく。FC店舗については年間6~8店舗ペースで増加を見込み、2025年9月期末で78店舗を計画している。ただ、FC店舗数については、FC企業の意向次第となるため流動的であり、ここ数年は市場環境が悪かったこともあり計画を下回って推移している。FCの新規加盟については2023年9月期に1件の成約を目指し協議を進めている状況にある。
(2) 中核エリアのシェア向上にこだわった営業促進の実施とマーケティング力の向上
中核エリアでのシェア向上にこだわった営業戦略やブランド戦略をDXも活用しながら積極的に展開していく。同社は名古屋市内の斎場シェアを約27%まで拡大してきたが、当面の目標として30%を目指している。従来のペースでいけば、3年後に達成できる見通しだ。また、その他の愛知県下でもシェアを拡大していくほか、三重県の一部エリアにも直営で進出しており、今後店舗を拡大していく計画となっている。
営業戦略としては、価格訴求力を高めたテレビCMや中吊り広告、折込チラシとWeb広告専用サイトのコンテンツを拡充、連携させることで葬儀受注の獲得導線を強化すると同時に、コンタクトセンターのオペレーション体制強化により、葬儀受注率のさらなる向上を図っていく。また、潜在顧客の取りこぼしをなくすため、会員の状況に合わせた最適なアプローチやスムーズな会館案内、最適なタイミングでのアフターフォロー(法要等の案内)等をコンタクトセンターで一括して行うための「顧客情報一元管理システム」を導入、稼働を開始しており、今後の業務効率の向上が期待される。
ブランド戦略ではWebマーケティングの強化によって、インターネットからの会員獲得や葬儀受注獲得を推進するほかPR・IR活動の継続的な実施による日本全国を対象とした認知度向上を図っていく。また、DX戦略を推進すべく新たにDX・SXデザイン事業本部を立ち上げた。同事業本部ではDXデザイン室でDX戦略、SDGsデザイン室でSDGs関連、マーケティングデザイン室でマーケティングなどの企画を行う。具体的な取り組みとしては、2022年10月にYouTube公式チャンネルを開設し、様々な情報を発信する予定だ。また、「ティアの会」デジタル会報誌の発行を近日開始するほか、社内向けのスマートフォンアプリを2023年9月期にリリースする。DXによってティア会員に向けた接点を増やし、終活支援サービスといった新たな展開も含めた収益源の多様化を図っていく。
(3) 葬儀付帯業務の内製化拡大と、行動力と分析能力を高めたM&A
同社はここ数年、葬儀付帯業務の内製化を推進することで売上原価率の低減に取り組んできたが、内製化率の引き上げ余地はFC店舗も含めてまだあると見ており、今後も継続的に取り組む方針である。具体的には、中部地区、関西地区において葬儀運営スタッフとなるセレモニーアシスタントやセレモニーガードの派遣エリアを拡大していくほか、生花事業の取り扱い店舗拡大、湯灌・エンバーミングの業務エリア拡大に取り組んでいく。また、ティアサービスでは新たに(株)ベンリーにFC加盟し、既存会館の定期清掃・営繕業務の請負を開始した。
一方、M&Aについても引き続き積極的に取り組む。M&Aについてはティアサービスの1件のみにとどまっていたが、現在は定期的にエリアごとのM&A候補先のリストを更新し、デューデリジェンスを実施している。市場環境が厳しいこともあって案件数は増加し、買収コストは下落傾向にあるものの、条件面で合致する案件が少ないようだ。
(4) 計画に則した人財確保・育成と次世代基幹システムの構築
人財戦略のうち、新卒採用に関しては3年間で約75名の採用を計画している。人財育成にあたって、新卒社員には早期育成を目的とした12ヶ月間の教育プログラムを実施しており、既存社員については施行品質の向上を目的とした研修に加えて、管理職候補育成のための研修を実施している。
また、教育研修施設「THRC」で専門講師9名の稼働状況やリソース(業務内容)の配分状況を時間単位でデータ収集しており、これらデータを可視化し分析することで、人財育成に対する効率向上に取り組んでいる。人財育成システムの効率化が進めば、新規出店ペースも今まで以上に加速していくことが可能となるため、同社にとっては重要戦略の1つとなる。
ICT戦略として、次世代基幹システムの構築を2023年9月期からスタートする予定となっている。ハード・ソフトの充実による多様な働き方への対応や、重大インシデントにつながりかねない出来事や状況を早期に発見できる検知システムの導入、情報セキュリティ対策の強化などに取り組んでいく。また、情報セキュリティに関する専門知識を有する人財の確保や、情報セキュリティ体制強化に向け、社員に対する教育なども実施していく。
(5) 事業リスク
事業リスクとしては、葬儀単価の動向が挙げられる。核家族化や少子化の進展により葬儀スタイルも家族葬など小規模に済ませるケースが今後も増加する可能性があり、こうした領域では顧客獲得競争も激しいため、葬儀単価が回復しないリスクも想定しておく必要がある。ただ、葬儀を単なる「哀悼の儀式」としてだけではなく、「哀悼と感動のセレモニー」として顧客に感謝される「究極のサービス」を提供していくことで他社との差別化は可能と弊社では考えている。実際、同社の葬儀件数(FC含む)は国内全体の葬儀件数の伸びを上回って成長を続けている。今後も店舗数の拡大とサービス品質の維持向上を図りながらシェアを拡大していくことで、中長期的に業績は安定成長が続くものと予想している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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