資源・新興国通貨の2022年12月までの展望

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最新投稿日時:2022/06/27 15:43 - 「資源・新興国通貨の2022年12月までの展望」(八代和也)

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資源・新興国通貨の2022年12月までの展望

著者:八代和也
投稿:2022/06/27 15:43

豪ドル

RBA(豪中銀)は5月に0.25%、6月に0.50%の利上げを行い、現在の政策金利は0.85%です。

RBAは今後も利上げを継続する姿勢を示しており、市場ではRBAの政策金利は22年末までに3.35%へと引き上げられるとの見方が有力です。RBAの年内の会合はあと6回のため、市場は0.50%の利上げが4回、0.25%の利上げが2回とみているようです。

日銀は金融政策の現状維持を続けるとみられており、RBAとの金融政策の方向性の違いから豪ドル/円は堅調に推移しそうです。

豪ドル/米ドルについては、米FRBの利上げペースがどうなるのかにも影響を受けそうです。FRBの利上げペースが鈍化するとの観測が強まる場合、豪ドル/米ドルは底固い展開が想定されます。

豪ドルは、投資家のリスク意識(リスクオン/オフ)の影響を受けやすいという特徴もあります。米FRBや英BOE、BOC(カナダ中銀)はすでに利上げを開始しており、ECB(欧州中銀)は7月にも利上げを行うとみられます。主要中銀が利上げすることは、株価にとってはマイナス材料であり、主要国の株価が下落を続ける場合、リスクオフ(リスク回避)の動きが強まって豪ドルに対して下押し圧力が加わる可能性があります。

***
豪ドル/NZドルは、6月16日に一時1.11623NZドルへと上昇し、18年8月以来の高値をつけました。足もとの豪ドル/NZドル上昇の主な要因として、RBAが6月7日の会合で市場予想(0.25%)を上回る0.50%の利上げを行ったことが挙げられます。

RBAが今後さらに利上げを行うとみられることは豪ドルにとってプラス材料です。一方で、RBNZ(NZ中銀)も利上げを継続すると考えられ、NZドルにもプラス材料があります。RBAとRBNZの金融政策の方向性を踏まえると、豪ドル/NZドルが上昇を続ける状況ではなさそうです。

<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)の利上げペース。
・主要国の株価動向には注意が必要か。リスクオフは豪ドルにとってマイナス材料。
・資源(主に鉄鉱石)価格は上昇するか。資源価格の上昇は豪ドルの上昇要因。

NZドル

RBNZ(NZ中銀)は21年10月に利上げを開始し、前回22年5月まで5会合連続で利上げを行いました。RBNZの現在の政策金利は2.00%です。

NZの22年1-3月期CPI(消費者物価指数)は前年比6.9%と、90年4-6月期以来、約32年ぶりの高い伸びを記録。RBNZのインフレ目標(1~3%)の中央値である2%を大きく上回りました。

インフレを抑制するためRBNZは利上げを継続する姿勢を示しています。RBNZが5月に公表した金融政策報告では、政策金利は22年末に3.4%へと上昇し、その後23年6月に3.9%でピークに達するとの見通しが示されました。

市場はより積極的に利上げが行われるとみており、市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によれば、市場ではRBNZの政策金利は22年末までに4.00%になるとの見方が有力です。RBNZの次回会合は7月13日、年内の会合は7月を含めてあと4回です。

RBNZの利上げ観測に支えられて、NZドル/円は堅調に推移しそうです。NZドル/米ドルについては、米FRBにも利上げ観測があり(米ドルのプラス材料)、FRBの利上げペース次第では上値が重くなるかもしれません。

NZドルは豪ドルと同様に、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)にも影響を受けやすいという特徴があります。主要国の株価が下落を続ける場合、リスクオフ(リスク回避)の動きが強まってNZドル/円やNZドル/米ドルは弱含む可能性があります。

<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)は政策金利をどこまで引き上げるか。
・主要国の株価動向には注意が必要か。リスクオフはNZドルにとってマイナス材料。
・乳製品価格の動向。乳製品価格の上昇はNZドルにとってプラス材料。

カナダドル

BOC(カナダ中銀)は、3月に0.25%、4月と6月にいずれも0.50%の利上げを行っており、現在の政策金利は1.50%です。

カナダの5月CPI(消費者物価指数)は前年比7.7%と、上昇率は前月の6.8%から加速し、91年1月以来の高い伸びを記録。BOCのインフレ目標(2%を中心に1~3%)から一段と上方へ乖離しました。

BOCは今後さらに利上げすることを示唆しており、「必要なら、より大幅な(0.75%?)利上げを行う」との方針を示しています。市場では、BOCは次回7月13日の会合で0.75%利上げし、政策金利は22年末までに3.50%へと上昇するとの見方が有力です。BOCの利上げ観測はカナダドルにとってプラス材料であり、カナダドル/円は堅調に推移しそうです。

米ドル/カナダドルについては、米FRBも利上げを継続するとみられます。BOCとFRBの利上げペースに大きな差がなければ、金融政策面からは米ドル/カナダドルに明確な方向感が出にくいと考えられます。

一方で、原油価格や主要国株価の動向には注意が必要です。原油価格や主要国の株価に大きな変動がみられれば、市場はそれらを強く意識するかもしれません。原油価格が下落を続け、また主要国株価が下落するなどしてリスクオフ(リスク回避)の動きが強まれば、カナダドル/円は上値が重くなり、米ドル/カナダドルは底固く推移する可能性があります(原油安はカナダドルにとってマイナス材料、リスクオフは円や米ドルにとってプラス材料のため)。

<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)の政策金利はどこまで上昇するか。
・資源(主に原油)価格の動向。資源価格の下落はカナダドルにとってマイナス材料。
・主要国株価の動向。リスクオフが強まれば、米ドル/カナダドルは底固く推移か。

トルコリラ

トルコの5月CPI(消費者物価指数)は前年比73.50%と、上昇率は前月の69.97%から加速。98年10月以来、23年7カ月ぶりの高い伸びとなりました。

インフレが加速しているにもかかわらず、TCMB(トルコ中銀)は6月23日の会合で政策金利を14.00%に据え置きました。TCMBは政策金利を据え置いた理由を「ベース効果(※)やウクライナでの紛争解決のほか、持続可能な物価と金融の安定のためにとられた措置を背景に、ディスインフレ(インフレ率の鈍化)のプロセスが始まると予想されるため」と説明しました。

トルコリラ安圧力を緩和するためにはTCMBの利上げが必要と考えられますが、今回の声明を見る限りTCMBが近い将来に利上げする雰囲気は感じられません。トルコリラ/円には下押し圧力が加わりやすいとみられます。

また、金融政策に大きな影響力を持つエルドアン・トルコ大統領は低金利を志向しており、TCMBに対して利下げするよう繰り返し求めています。エルドアン大統領の言動には要注意です。エルドアン大統領はこれまでに自らの意向に従わないTCMB総裁を解任したことがあるからです(19年7月以降、3人の総裁を解任。直近では21年3月に解任)。エルドアン大統領が総裁を解任する、あるいはTCMBが利下げを再開すれば、トルコリラ/円には強い下押し圧力が加わる可能性があります。

<注目点・イベントなど>
・TCMB(トルコ中銀)の金融政策。利下げを再開すればトルコリラ安圧力が強まりそう。
・金融政策をめぐるエルドアン大統領の言動には要注意。
・トルコと米国やEUとの関係は改善するか。
・シリア情勢などトルコの地政学リスク。

南アフリカランド

SARB(南アフリカ中銀)は21年11月に利上げを開始し、22年5月まで4会合連続で利上げを実施。現在の政策金利は4.75%です。

南アフリカの5月CPI(消費者物価指数)は前年比6.5%と、 前月の5.9%から上昇率が加速し、5年4カ月ぶりの高い伸びを記録しました。SARBのインフレ目標(3~6%)を上回ったのは、5年2カ月ぶりです。

インフレ圧力の強さを考えると、SARBは今後も利上げを続けるとみられます。SARBの次回会合は7月21日、SARBの年内の会合は7月を含めてあと3回開かれます(7月、9月、11月)。金融政策面からみれば、南アフリカランド/円は堅調に推移しそうです。

一方で、発電設備の老朽化などによって南アフリカは慢性的な電力不足に陥っており、計画停電がたびたび実施されています。今後停電が長期間行われるようなことになれば、南アフリカ景気をめぐる懸念が市場で強まる可能性があります。その場合には、南アフリカランド/円に対して下押し圧力が加わるかもしれません。

<注目点・イベントなど>
・SARB(南アフリカ中銀)の政策金利はどこまで上昇するか。
・今後、南アフリカで停電が長期間行われるようなら、南アフリカランド安材料になる可能性も。
・米FRBの利上げペース。
・金など商品価格の動向。商品価格の上昇は南アフリカランドにとってプラス材料。

メキシコペソ

BOM(メキシコ中銀)は6月23日の会合で0.75%の利上げを行うことを決定。政策金利を7.00%から7.75%へと引き上げました。利上げは9会合連続であり、利上げ幅は前回の0.50%から拡大されました。

BOMは声明で、「次回の政策会合で引き続き利上げを行う意向であり、必要なら同様の強力な措置を講じることを検討する」と表明。利上げ継続を示唆するとともに、次回8月11日の会合でも0.75%の利上げを行う可能性に言及しました。

メキシコの5月CPI(消費者物価指数)は、総合指数が前年比7.65%、変動の大きいエネルギーや食品を除いたコア指数は同7.28%。依然としてBOMのインフレ目標(3%。その上下1%が許容レンジ)を大きく上回っています。

インフレ圧力の強さを考えると、BOMは8月にさらに0.75%利上げし、その後も利上げを継続しそうです。一方、日銀は金融政策の現状維持を続けるとみられます。BOMと日銀との金融政策の方向性の違いに支えられ、メキシコペソ/円は上値を試す展開が想定されます。

メキシコペソはカナダドルと同様、原油価格の動向にも影響を受けやすいという特徴があります。また、主要国の株価が下落を続ければリスクオフ(リスク回避)の動きが強まるかもしれません。原油価格が下落傾向となり、リスクオフが強まる場合、メキシコペソ/円は伸び悩む可能性があります。

<注目点・イベントなど>
・BOM(メキシコ中銀)は利上げを継続するとみられ、メキシコペソ/円を支援しそう。
・資源(主に原油)価格の動向。資源価格の下落はメキシコペソにとってマイナス材料。
・主要国株価の動向。リスクオフが強まれば、メキシコペソ/円は上値が重くなる可能性も。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想

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