資源・新興国通貨の22年9月末までの展望

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最新投稿日時:2022/05/30 15:51 - 「資源・新興国通貨の22年9月末までの展望」(八代和也)

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資源・新興国通貨の22年9月末までの展望

著者:八代和也
投稿:2022/05/30 15:51

豪ドル

RBA(豪中銀)は5月3日の政策会合で0.25%利上げすることを決定。政策金利を0.10%から0.35%へと引き上げました。RBAが利上げしたのは、10年11月以来11年6カ月ぶりです。

RBAは声明で「今後一定期間、政策金利をさらに引き上げる必要がある見込みだ」とし、利上げを継続する姿勢を示しました。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、市場ではRBAは次回6月7日の会合で0.25%の利上げを行い、政策金利は22年末までに2.6%へと上昇するとの見方が有力。RBAの利上げ観測は豪ドルにとってプラス材料です。日銀は緩和的な金融政策を続ける姿勢を示しており、豪ドルは対円で堅調に推移しそうです。豪ドル/米ドルについては、米FRBの利上げペースによっては上値が重くなる可能性があります。

豪ドルは、投資家のリスク意識(リスクオン/オフ)の影響を受けやすいという特徴もあります。米FRBや英BOE、BOC(カナダ中銀)はすでに利上げを開始しており、ECB(欧州中銀)は早ければ7月にも利上げを行うとの観測があります。主要中銀が利上げすることは、株価にとってはマイナス材料になると考えられます。主要国の株価が下落を続ける場合、リスクオフ(リスク回避)の動きが強まって豪ドルに対して下押し圧力が加わる可能性があります。

***
豪ドル/NZドルは、5月4日に一時1.11041NZドルへと上昇し、18年8月以来の高値をつけました。豪ドル/NZドルが上昇した主な要因として、RBAの利上げ観測が強まったことや実際にRBAが5月に利上げしたことが挙げられます。

RBAが利上げを続ける姿勢を示していることは豪ドルにとってプラス材料である一方、RBNZ(NZ中銀)も利上げを継続するとみられます。RBNZが5月25日に公表した政策金利見通しでは、今後積極的に利上げする可能性が示されました(*NZドルの項目を参照)。NZドルにもプラス材料があるため、豪ドル/NZドルが上昇を続ける状況ではなさそうです。

<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)の利上げペース。
・主要国の株価動向には注意が必要か。リスクオフは豪ドルにとってマイナス材料。
・資源(主に鉄鉱石)価格は上昇するか。資源価格の上昇は豪ドルの上昇要因。

NZドル

RBNZ(NZ中銀)は5月25日の政策会合で0.50%の利上げを決定。政策金利を1.50%から2.00%へと引き上げました。利上げは5会合連続です。

RBNZは四半期に一度の政策金利見通しを公表し、2月時点から政策金利のピーク水準を上方修正して時期も前倒ししました(※)。RBNZは一方で、政策金利は約3.9%へと上昇した後、24年9月に3.8%、12月に3.7%、25年3月に3.6%、6月に3.5%へと下がるとの見通しも示しました。

(※)ピーク水準は、2月時点の約3.4%(時期:24年9月)から約3.9%(同23年6月)へと修正されました。

RBNZが今後積極的に利上げする姿勢を示したことは、NZドルにとってプラス材料。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、市場ではRBNZの政策金利は22年末までに3.75%へと上昇するとの見方が有力です。日銀との金融政策の方向性の違いが明確なこともあり、NZドル高は対円で進みやすいと考えられます。NZドル/米ドルについては、米FRBの利上げペース次第では上値が重くなるかもしれません。

NZドルは豪ドルと同様に、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)にも影響を受けやすいという特徴があります。主要国の株価が下落を続ける場合、リスクオフ(リスク回避)の動きが強まってNZドル/円やNZドル/米ドルは弱含む可能性があります。

<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)は政策金利をどこまで引き上げるか。
・主要国の株価動向には注意が必要か。リスクオフはNZドルにとってマイナス材料。
・乳製品価格の動向。乳製品価格の上昇はNZドルにとってプラス材料。

カナダドル

BOC(カナダ中銀)は、3月に0.25%、4月に0.50%の利上げを行っており、BOCの現在の政策金利は1.00%です。

カナダの4月CPI(消費者物価指数)は前年比6.8%と、上昇率は3月の6.7%から加速し、91年1月以来の高い伸びを記録。BOCのインフレ目標(2%を中心に1~3%)から一段と上方へ乖離しました。

BOCは次回6月1日の政策会合で前回と同じ0.50%の利上げを行い、その後も利上げを続けるとみられます。22年末のBOCの政策金利の水準については、市場では2.50%と2.75%で見方が分かれています。BOCの利上げ観測はカナダドル/円の支援材料となりそうです。

カナダドル/円は、原油価格の動向にも影響を受けやすいという特徴があります。カナダは原油を主要輸出品とするため、原油価格の上昇はカナダドルにとってプラス材料です。

米ドル/カナダドルについては、米FRBも利上げ継続見通しとの観点から、BOCとFRBの利上げペースに大きな差がなければ、金融政策面からは米ドル/カナダドルに明確な方向感が出にくいかもしれません。

主要国の株価動向には注意が必要かもしれません。主要国の株価が下落を続ければ、市場は株価を強く意識する可能性があります。リスクオフの動きが強まって米ドル/カナダドルには上昇圧力が加わりやすいと考えられます(リスクオフは米ドル高材料のため)。

<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)の政策金利はどこまで上昇するか。
・資源(特に原油)価格の動向。資源価格の上昇はカナダドルにとってプラス材料。

トルコリラ

トルコリラは5月26日、対米ドルや対円で21年12月以来5カ月ぶりの安値をつけました。

足もとのトルコリラ安の主な要因として、トルコのインフレ加速やTCMB(トルコ中銀)の金融政策が挙げられます。トルコの4月CPI(消費者物価指数)は前年比69.97%と、02年2月以来20年2カ月ぶりの高水準を記録。インフレが加速しているにもかかわらず、TCMBは1月以降政策金利を14.00%に据え置いています。低金利を志向するエルドアン大統領の圧力によるものと考えられます。トルコの経常赤字の拡大もトルコリラの重石です。トルコの経常収支は3月まで5カ月連続の赤字となりました。

CPI上昇率が持続的に鈍化する、あるいはTCMBが利上げしなければ(少なくとも利上げがあり得るとの姿勢を示さなければ)、トルコリラには下押し圧力が加わりやすいとみられます。トルコリラ/円については、米ドル/円の影響も受けるものの、過去最安値である6.087円(21/12/20安値)に向かって下落する可能性があります。

<注目点・イベントなど>
・トルコリラが反発するには、CPI上昇率の鈍化やTCMB(トルコ中銀)の利上げが必要か。
・トルコと米国やEUとの関係は改善するか。
・シリア情勢などトルコの地政学リスク。

南アフリカランド

SARB(南アフリカ中銀)は、5月19日の政策会合で0.50%の利上げを行うことを決定。政策金利を4.25%から4.75%へと引き上げました。利上げは4会合連続です。

SARBはインフレ見通しを3月時点から上方修正。CPI(消費者物価指数)上昇率は、22年が5.9%(3月時点5.8%)、23年は5.0%(同4.6%)、24年は4.7%(同4.6%)との見通しを示しました。

南アフリカの4月CPI(消費者物価指数)は前年比5.9%と、SARBのインフレ目標(3~6%)内に収まったものの、目標レンジの上限に近く、また中間点である4.5%を上回りました。SARBがインフレ見通しを上方修正したことも考えれば、SARBは次回7月の会合でさらに利上げする可能性があります。利上げ観測は、南アフリカランド/円の支援材料です。

一方で、発電設備の老朽化などによって南アフリカは慢性的な電力不足に陥っており、計画停電がたびたび実施されています。今後停電が長期間行われるようなことになれば、南アフリカ景気をめぐる懸念が市場で強まり、南アフリカランド/円は下押しするかもしれません。

<注目点・イベントなど>
・SARB(南アフリカ中銀)の政策金利はどこまで上昇するか。
・今後、南アフリカで停電が長期間行われるようなら、南アフリカランド安材料になる可能性も。
・米FRBの利上げペース。
・金など商品価格の動向。商品価格の上昇は南アフリカランドにとってプラス材料。

メキシコペソ

BOM(メキシコ中銀)は5月12日の会合で0.50%の利上げを行うことを決定。政策金利を6.50%から7.00%へと引き上げました。利上げは8会合連続です。

5月の会合において0.50%利上げするという決定は4対1で下され、決定に反対したエスピノサ副総裁は0.75%の利上げを主張。声明では、「インフレ目標を達成するために一段と強力な措置が検討される可能性がある」とし、今後利上げペースが加速する可能性を示しました。

メキシコの4月CPI(消費者物価指数)は、総合指数が前年比7.68%、変動の大きい食品やエネルギーを除いたコア指数は同7.22%。総合指数とコア指数のいずれもBOMのインフレ目標(3%。その上下1%が許容レンジ)を大きく上回りました。

BOMは今後も利上げを続けるとみられ、そのことはメキシコペソにとってプラス材料と考えられます。BOMと日銀の金融政策の方向性の違いに支えられ、メキシコペソ/円は堅調に推移しそうです。

メキシコペソはカナダドルと同様、原油価格の動向にも影響を受けやすいという特徴があります。原油高が進む場合、メキシコペソ/円にとってさらなる支援材料となりそうです。

<注目点・イベントなど>
・BOM(メキシコ中銀)は利上げを継続するとみられ、メキシコペソ/円を支援しそう。
・資源(主に原油)価格の動向。資源価格の上昇はメキシコペソ/円の上昇要因。
・米FRBの利上げペース。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想

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