資源・新興国通貨の2022年6月末までの展望

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最新投稿日時:2022/01/31 14:27 - 「資源・新興国通貨の2022年6月末までの展望」(八代和也)

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資源・新興国通貨の2022年6月末までの展望

著者:八代和也
投稿:2022/01/31 14:27

豪ドル

RBA(豪中銀)は2月1日の会合でQE(量的緩和)の見直しを行う予定です。本稿執筆時点で会合の結果は判明していませんが、QEを2月で終了することが決定されれば、豪ドルにとってプラス材料になりそうです。

RBAは20年11月に利下げして以降、政策金利を0.10%に据え置いています。豪州でインフレ圧力が強まりつつあることや雇用情勢の改善(※)を受け、市場ではRBAが早ければ5月にも利上げを行うとの観測があります。5月の利上げ観測が一段と高まる、あるいはより早い時期の利上げ観測が浮上すれば、豪ドルにとってさらなるプラス材料になりそうです。豪ドル/円は上値を試す展開が予想される一方、豪ドル/米ドルについては伸び悩むかもしれません。日銀は少なくとも22年中に利上げを行う可能性は低いと考えられる一方、米FRBが3月にも利上げを開始するとみられるからです。

(※)豪州の21年10-12月期CPI(消費者物価指数)トリム平均値は前年比2.6%と、RBAのインフレ目標(2~3%)の中間値を約7年ぶりに上回りました。21年12月の失業率は4.2%と、08年8月以来の低い水準。

主要国の株価動向には注意が必要かもしれません。米国の長期金利(10年物国債利回り)の上昇は株価にとってはマイナス材料になりうるためです。主要国の株価が下落を続ければ、リスクオフ(リスク回避)の動きが市場で強まる可能性があり、その場合には投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)しやすい豪ドルに対して下押し圧力が加わるとみられます。

***
豪ドル/NZドルについては、明確な方向感が出にくいとみられます。RBNZ(NZ中銀)は22年に利上げを継続するとみられる一方、RBAも早ければ5月にも利上げを行う可能性があるからです。

<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)は利上げを開始するか否か。
・主要国の株価動向には注意が必要か。リスクオフは豪ドルにとってマイナス材料。
・資源(主に鉄鉱石)価格は上昇するか。資源価格の上昇は豪ドルの上昇要因。
・米中関係や豪中関係は改善するか、中国経済は堅調に推移するか(中国は豪州最大の輸出先)。

NZドル

RBNZ(NZ中銀)は主要国の中でいち早く利上げを開始。21年10月と11月の2会合連続で利上げを行い、現在の政策金利は0.75%です。

NZの21年10-12月期のCPI(消費者物価指数)は前年比5.9%と、7-9月期の4.9%から上昇率が加速し、約31年ぶりの高い伸びを記録。RBNZのインフレ目標(1~3%)から一段と乖離しました。インフレ圧力の強さを考えると、RBNZは利上げを継続するとみられます。市場では、RBNZの政策金利は22年11月までに2.25%へと上昇するとの見方が有力であり、こうした利上げ観測はNZドルにとってプラス材料です。日銀の利上げはかなり先とみられる(少なくとも22年の利上げはなさそう)ため、NZドル/円は堅調に推移すると予想される一方、米FRBが3月にも利上げを開始するとみられることからNZドル/米ドルは上値が重くなる可能性があります。

NZドルは豪ドルと同様に、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴もあります。米国の長期金利(10年物国債利回り)の上昇は株価にとってはマイナス材料になりうると考えられます。主要国の株価が下落を続ける場合にはリスクオフが強まるかもしれません。リスクオフはNZドル/円やNZドル/米ドルに対する下押し圧力になり得ます。

<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)はどこまで利上げを行うか。
・主要国の株価動向には注意が必要か。リスクオフはNZドルにとってマイナス材料。
・米中関係は改善するか、中国経済は堅調に推移するか(中国はNZ最大の輸出先)。
・乳製品(NZ最大の輸出品)価格は上昇するか。

カナダドル

BOC(カナダ中銀)は1月26日の会合で政策金利を0.25%に据え置くことを決定。マックレムBOC総裁は会合後の会見で政策金利を据え置いた理由を「オミクロン株の急速な(感染)拡大が第1四半期(1-3月期)に(カナダの)消費を抑えることに留意した」と説明しました。

BOCは一方で、3月2日の会合にも利上げを行うことを示唆。声明では、「経済のスラック(需給の緩み)は吸収された」との見方を示し、これまでの「経済のスラックが吸収されるまで政策金利を実効下限(0.25%)に維持するとのフォワードガイダンスは終了する」と表明。「BOCは将来的に政策金利を引き上げる必要があると予想している」としました。

市場は3月の利上げ開始をほぼ織り込んでおり、BOCの政策金利は22年12月までに1.75%へと上昇するとの見方が市場では有力です。1回の利上げ幅を0.25%と仮定すれば、22年の利上げ回数は6回です。BOCの利上げ観測に支えられてカナダドル/円は堅調に推移する可能性があります。

カナダドル/円は、原油価格にも影響を受けやすいという特徴があります。原油価格の代表的な指標である米WTI原油先物は足もとで14年10月以来の高値圏にあります。世界経済の回復が続けば原油の需要は増加するとみられ、WTI原油先物は上昇傾向を続ける可能性があります。その場合、カナダドル/円にとってさらなる支援材料になりそうです。

<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)は22年に何回利上げを行うか。
・資源(特に原油)価格の動向。資源価格の上昇はカナダドルにとってプラス材料。

トルコリラ

TCMB(トルコ中銀)は1月20日の会合で政策金利を14.00%に据え置きくことを決定。21年9月に開始した利下げを停止しました。TCMBの利下げが21年終盤のトルコリラ安の主因だったため、利下げの停止はトルコリラ/円の下支え材料になる可能性があります。

一方で、トルコではインフレが加速しており、21年12月のCPI(消費者物価指数)は前年比36.08%。これまでのトルコリラ安の影響によってCPI上昇率は今後一段と加速しそうです。インフレへの対応策として通常は利上げが考えられるものの、エルドアン大統領が利下げ圧力を加えるなかでTCMBが利上げを行うのは困難とみられます。CPI上昇率が少しでも鈍化すれば、TCMBは利下げを再開する可能性すらあります。利下げ観測が市場で強まる場合、トルコリラ/円は下押ししそうです。

トルコと米国との関係には注意が必要かもしれません。トルコがS400(ロシア製地対空ミサイルシステム)を保有していることに懸念を示しています。NATO(北大西洋条約機構)の機密情報がロシアに漏洩するおそれがあるからです。トルコと米国の関係が悪化した場合、トルコリラ/円の下落材料になる可能性があります。

<注目点・イベントなど>
・TCMB(トルコ中銀)は利下げを再開するかどうか。
・トルコと米国やEUとの関係は改善するか。
・シリア情勢などトルコの地政学リスク。

南アフリカランド

SARB(南アフリカ中銀)は1月27日の会合で0.25%の利上げを行うことを決定。政策金利を3.75%から4.00%へと引き上げました。利上げは2会合連続です。

1月の会合では0.50%の利上げは議論されず、また0.25%の利上げは全会一致(1人は政策金利の据え置きを主張)ではありませんでした。クガニャゴ総裁は会合後の会見で「インフレ期待を固定して将来の政策金利の動きを緩やかにするためには、段階的な利上げで十分だと考えている」と述べました。これらをみれば、SARBの姿勢はハト派的とみなすこともできそうです。

ただ、南アフリカの21年12月CPI(消費者物価指数)は前年比5.9%と、17年3月以来の高い伸びを記録し、SARBのインフレ目標レンジ(3~6%)の上限に接近しました。これまでの原油高の影響によってCPI上昇率は今後一段と加速する可能性があります。SARBは利上げを継続すると考えられます。今後発表されるCPIなどの経済指標でSARBの追加利上げ観測が市場で強まれば、南アフリカランド/円は堅調に推移しそうです。

一方で、エスコム(南アフリカの国営電力会社。国内電力の約9割を供給)は計画停電をたびたび実施しています。計画停電が長期間行われる状況になれば、南アフリカ経済景気をめぐる懸念が市場で強まるかもしれません。その場合、南アフリカランド/円に対する下押し圧力となる可能性があります。

<注目点・イベントなど>
・SARB(南アフリカ中銀)は利上げを継続するかどうか。
・エスコムの計画停電が長期化すれば、南アフリカランド/円に対する下押し圧力となる可能性も。
・米FRBの利上げペース。
・金など商品価格の動向。商品価格の上昇は南アフリカランドにとってプラス材料。

メキシコペソ

BOM(メキシコ中銀)は21年12月の前回会合まで5会合連続で利上げを行い、現在の政策金利は5.50%です。

メキシコのインフレ圧力は依然として強く、21年12月のCPI(消費者物価指数)は前年比7.36%、コアCPIは同5.94%と、いずれもBOMのインフレ目標(3%)の許容レンジ上限である4%を大きく上回りました。

BOMでは1月1日、ビクトリア・ロドリゲス氏が新たに総裁に就任しました。新総裁の下でのBOMの金融政策運営に注目です(次回の政策会合は2月10日)。ロドリゲス新総裁はハト派と目されているものの、インフレ圧力の強さを考えるとBOMは利上げを継続すると考えられ、その場合にはメキシコペソ/円は上値を試す展開になりそうです。

メキシコペソ/円はカナダドル/円と同様に、原油価格の動向にも影響を受けやすいという特徴があります。米WTI原油先物が上昇を続ければ、メキシコペソ/円は堅調さを増すとみられます。

<注目点・イベントなど>
・新総裁の下でBOM(メキシコ中銀)は利上げを継続するかどうか。
・資源(主に原油)価格の動向。資源価格の上昇はメキシコペソ/円の上昇要因。
・米FRBの利上げペース。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想

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