資源・新興国通貨の2022年6月末までの展望

\ あなたにピッタリの銘柄がみつかる /

みんかぶプレミアムを無料体験!

プランをみる

さらにお得なキャンペーン!

資産形成応援キャンペーン

期間内であればいつでもエントリーOK

最新投稿日時:2021/12/27 13:42 - 「資源・新興国通貨の2022年6月末までの展望」(八代和也)

お知らせ

読み込みに失敗しました。

しばらくしてからもう一度お試しください。

重要なお知らせ すべて見る

資源・新興国通貨の2022年6月末までの展望

著者:八代和也
投稿:2021/12/27 13:42

豪ドル

RBA(豪中銀)は21年12月7日の政策会合で金融政策の現状維持を決定。政策金利を0.10%に据え置くとともに、量的緩和(少なくとも22年2月半ばまで週40億豪ドルのペースで豪国債を買い入れる)も維持しました。

量的緩和については、RBAは12月の会合で3つの選択肢を検討しました。(1)22年5月に終了することを想定して2月半ばから国債の買い入れペースを落とす、(2)2月半ばから買い入れのペースを落として5月に再検討する、(3)2月半ばで買い入れを終了する、です。

上述の選択肢(1)が雇用とインフレに関する11月時点の予測と整合的とRBAは見ているようですが、豪経済指標の堅調な結果が続けば、量的緩和は22年2月に終わる可能性があります。量的緩和の終了は豪ドルにとってプラス材料と考えられます。

RBAは政策金利について、「インフレ率が2~3%の(RBAの)目標レンジ内に持続的に収まるまで利上げはしない」と表明。利上げの条件が満たされるには、「ある程度の時間がかかる」との見方を示しています。

豪州の21年7-9月期のCPI上昇率は前年比3.0%と、RBAの目標レンジの上限でした。21年の原油高(インフレを押し上げる要因)の影響が続いてCPI上昇率は今後も高止まりする可能性があります。CPI上昇率の高止まりは、RBAに利上げを促す要因と考えられます。RBAは早ければ22年半ばにも利上げを開始する可能性があります。

RBAが利上げに慎重な姿勢を維持していることが、豪ドルの重石となってきました。そのため今後、RBAの姿勢が利上げに前向きなものへと変化した場合、そのインパクトは大きくなりそうです。豪ドルにとって強力な支援材料となり、豪ドル/円は上値を試す展開になるかもしれません。豪ドル/米ドルについては、米FRBの早期利上げ観測が高まれば、伸び悩む可能性があります。

豪ドルには投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴もあります。主要国の株価が上昇するなどしてリスクオンの動きが強まることは、豪ドル/円や豪ドル/米ドルの上昇要因となり得ます。

***
豪ドル/NZドルは当面、上値が重い展開になるかもしれません。RBAの利上げは早くて22年半ばとみられる一方、RBNZ(NZ中銀)は21年に利上げを開始しており、22年も利上げを継続するとみられるからです。

<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)は利上げを開始するか否か。
・リスクオンが進むかどうか。リスクオンは豪ドルの上昇要因。
・資源(主に鉄鉱石)価格は上昇するか。資源価格の上昇は豪ドルの上昇要因。
・米中関係や豪中関係は改善するか、中国経済は堅調に推移するか(中国は豪州最大の輸出先)。

NZドル

RBNZ(NZ中銀)は21年10月と11月の2会合連続で利上げを実施。現在の政策金利は0.75%です。RBNZの次回会合は22年2月です。

RBNZは22年に利上げを継続するとみられます。オアRBNZ総裁は21年12月15日、「(NZ)経済が予想通りに推移すれば、政策金利は最終的に中立金利を上回る水準へと引き上げる必要がある」と発言。RBNZは中立金利の水準を2%と推計しています。

市場では、RBNZは22年に利上げを段階的に行って政策金利は22年末に2.00%へと上昇するとの見方が有力です。日銀の利上げはかなり先とみられる(少なくとも22年の利上げはなさそう)ことから、RBNZと日銀との金融政策の方向性の違いを背景に、NZドル/円は堅調に推移しそうです。NZドル/米ドルについては、米FRBの早期利上げ観測が高まれば、伸び悩む可能性があります。

NZドルは豪ドルと同様に、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴もあります。リスクオンが強まれば、NZドル/円やNZドル/米ドルの上昇要因となりそうです。

<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)はどこまで利上げを行うか。
・リスクオンが進むかどうか。リスクオンはNZドルの上昇要因。
・米中関係は改善するか、中国経済は堅調に推移するか(中国はNZ最大の輸出先)。
・乳製品(NZ最大の輸出品)価格は上昇するか。

カナダドル

BOC(カナダ中銀)は21年12月8日の政策会合で政策金利を0.25%に据え置くことを決定しました。BOCは声明で「経済のスラック(需給の緩み)が吸収されるまで、政策金利を据え置く」と改めて表明。スラックの吸収(≒利上げ開始時期)は22年半ばになるとの見通しを示しました。

カナダの21年11月CPI(消費者物価指数)は前年比4.7%と、BOCのインフレ目標(2%、目標レンジは1~3%)を大きく上回りました。また、カナダの失業率は20年5月の13.7%をピークに低下しており、21年11月は6.0%と、20年2月以来の低い水準でした。インフレ圧力の強さや雇用の改善を考えると、利上げはBOCの見通しよりも早く(22年1-3月期)開始される可能性があります。市場では、BOCは22年1月26日の次回会合で利上げを開始し、政策金利は22年末に1.50%へと上昇するとの見方が有力です(21/12/24時点)。市場の予想通りにBOCが利上げを行えば、カナダドル/円は上値を試す展開になりそうです。

カナダドル/円は、原油価格(米WTI原油先物など)にも影響を受けやすいという特徴があります。22年の世界経済は緩やかに回復を続けていくとみられ、原油価格は堅調に推移する可能性があります。その場合、カナダドル/円は堅調さを増すとみられます。

<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)はいつ利上げを開始するか。
・資源(特に原油)価格の動向。資源価格の上昇はカナダドルの上昇要因。

トルコリラ

トルコリラは21年12月20日、対米ドルや対円で最安値を更新しました。しかし、その直後にエルドアン大統領は“為替変動に対するトルコリラ建て預金の保護(※)”などのトルコリラ防衛策を発表。それを受けてトルコリラは、対米ドルや対円で反発しました。

(※)満期3~12カ月の個人のトルコリラ建て定期預金を対象とし、預金口座が満期を迎えた時にトルコリラの下落率が預金金利よりも大きい場合には差額を口座に入金する。

最近のトルコリラ安の根本的な原因として、以下のことが挙げられます。
・高インフレにもかかわらずTCMBが利下げを継続した結果、トルコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)が大幅なマイナスになっていること。
・一連の利下げがエルドアン大統領の圧力によるものと考えられること(=TCMBの独立性をめぐる懸念)。

 これらの根本原因が解消されなければ、いずれトルコリラ売りが再開してトルコリラ/円は最安値(21/12/20につけた6.087円)を更新する可能性があります。

トルコと米国との関係には注意が必要かもしれません。NATO(北大西洋条約機構)の機密情報がロシアに漏洩するおそれがあるとして、米国はトルコがS400(ロシア製地対空ミサイルシステム)を保有していることに懸念を表明しています。両国の関係が悪化するようなら、トルコリラ/円に対して下押し圧力が加わりそうです。

<注目点・イベントなど>
・TCMB(トルコ中銀)は市場の信用を回復できるか。
・トルコと米国やEUとの関係は改善するか。
・シリア情勢などトルコの地政学リスク。

南アフリカランド

SARB(南アフリカ中銀)は21年11月の政策会合で0.25%の利上げを行うことを決定。政策金利を3.50%から3.75%へと引き上げました。利上げは18年11月以来、3年ぶりです。

南アフリカの21年11月CPI(消費者物価指数)は前年比5.5%と、17年3月以来の高い伸びを記録。SARBのインフレ目標の(3~6%)のレンジ内には収まったものの、目標中央値である4.5%は7カ月連続で上回りました。今後、インフレ圧力の強さが改めて確認されれば、SARBは追加利上げに踏み切るとみられます。SARBの利上げ観測が南アフリカランド/円を下支えしそうです。

一方で、南アフリカにはエスコム(国内電力の約9割を供給する国営電力会社)の問題があります。エスコムは経営危機に陥っており、以前から計画停電をたびたび実施しています。計画停電が長期間行われるようなら、南アフリカ景気をめぐる懸念が市場で高まり、南アフリカランド/円に対する下押し圧力となる可能性があります。

<注目点・イベントなど>
・SARB(南アフリカ中銀)は追加利上げを行うかどうか。
・エスコムの計画停電が長期化すれば、南アフリカランド/円に対する下押し圧力となる可能性も。
・米FRBの利上げペース。
・金など商品価格の動向。商品価格の上昇は南アフリカランドにとってプラス材料。

メキシコペソ

BOM(メキシコ中銀)は21年12月16日の政策会合で0.50%の利上げを行うことを決定。政策金利を5.00%から5.50%へと引き上げました。利上げは5会合連続。利上げ幅は過去4回の0.25%よりも大幅でした。

メキシコではインフレ圧力が依然として強い状況。21年11月のCPI(消費者物価指数)は前年比7.37%と、BOMのインフレ目標(3%)の許容レンジ上限である4%を大きく上回りました。インフレを抑制するため、BOMは22年も利上げを続けると考えられます。その通りになれば、メキシコペソ/円は堅調に推移しそうです。BOMでは、21年12月31日にディアスデレオン総裁が退任。22年1月1日にハト派と目されるビクトリア・ロドリゲス氏が総裁に就任します。

メキシコペソ/円は、原油価格(米WTI原油先物など)の動向にも影響を受けやすいという特徴があります。22年の世界経済は緩やかに回復を続けていくとみられ、原油価格は堅調に推移する可能性があります。原油価格の上昇はメキシコペソ/円の上昇要因です。

<注目点・イベントなど>
・BOM(メキシコ中銀)は利上げを継続するかどうか。
・資源(主に原油)価格の動向。資源価格の上昇はメキシコペソ/円の上昇要因。
・米FRBの利上げペース。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想

みんかぶおすすめ