豪ドル
RBA(豪中銀)は「インフレ率が2~3%の目標レンジに持続的に収まるまでは、政策金利を据え置く」と表明し、「利上げの条件は2024まで満たされない」との見方を示しています。米FRBやBOE(英中銀)、BOC(カナダ中銀)よりもRBAの利上げは遅くなるとみられます。
また、シドニーなどでのロックダウン(都市封鎖)の影響によって豪経済は21年7-9月期に大幅なマイナス成長になると予想されます。ロックダウンの状況次第では、10-12月期の経済成長は弱くなる可能性があります。
RBAの金融政策見通しや豪景気をめぐる懸念が、豪ドル/円や豪ドル/米ドルの重石となりそうです。とりわけ、米FRBがテーパリング(量的緩和の縮小)を開始すると予想されることから、豪ドル/米ドルは上値が重くなるとみられます。
一方で、豪ドルは投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。主要国の株価が堅調に推移するなどしてリスクオンが強まる場合、豪ドル/円や豪ドル/米ドルを下支えする可能性があります。
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豪ドル/NZドルは、軟調に推移するかもしれません。RBAの利上げはかなり先と考えられる一方、RBNZ(NZ中銀)は年内(10月?)に利上げを開始するとみられます。RBAとRBNZの金融政策の方向性の違いが市場で意識されそうです。
<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)の金融政策。
・投資家のリスク意識の変化。
・米FRBの金融政策。
・資源(主に鉄鉱石)の価格動向。
・米中関係、豪中関係(中国は豪州の主要輸出先)。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は8月の金融政策報告で、年内に利上げを開始することを示唆。市場では、RBNZは10月6日の会合で利上げを開始し、政策金利(9/27時点で0.25%)は22年8月までに1.50%へと上昇するとの見方が有力です。
RBNZの利上げ観測に支えられ、NZドル/円は堅調に推移しそうです。一方でNZドル/米ドルは、米FRBがテーパリングを開始するとみられることから、伸び悩む可能性があります。
豪ドルと同様にNZドルは、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。リスクオンはNZドルにとってプラス材料です。主要国の株価が上昇するなどしてリスクオンが強まる場合、NZドル/円やNZドル/米ドルにとってさらなる追い風になりそうです。
<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)の金融政策。
・投資家のリスク意識の変化。
・米FRBの金融政策。
・米中関係、(中国はNZの主要輸出先)。
・乳製品(NZ最大の輸出品)の価格動向。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)は21年4月と7月の会合で、量的緩和プログラムの縮小を決定。量的緩和プログラムは10月27日の次回会合で一段と縮小され、22年1-3月期にも終了する可能性があります。その場合、カナダドル/円の支援材料となりそうです。
BOCは早ければ22年下半期にも利上げを行うことを示唆しています。カナダの8月CPI(消費者物価指数)上昇率は前年比4.1%と、2003年3月以来、約18年ぶりの強い伸びを記録しました。BOCは最近のインフレ高進について「一時的なもの」との見方を示しているものの、CPI上昇率の高止まりが続く場合、BOCは利上げを検討し始める可能性があります。利上げ観測が市場で高まれば、カナダドル/円は上値を試す展開になりそうです。
カナダドル/円は、原油価格(米WTI原油先物など)の動向にも目を向ける必要があります。世界経済の回復が進めば、原油価格は堅調に推移するとみられます。原油高はカナダドル/円の上昇要因と考えられます。
<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)の金融政策。
・資源(特に原油)価格の動向。
・米FRBの金融政策。
・米国景気の動向。
トルコリラ
TCMB(トルコ中銀)は9月23日の政策会合で1.00%の利下げを行うことを決定。政策金利を19.00%から18.00%へと引き下げました。
今回の利下げによって、TCMBの金融政策への信頼性は低下したと考えられます。TCMBは8月の前回会合の声明まで「政策金利はインフレ率(総合CPI上昇率)を上回る水準に設定する」との方針を示してきました。しかし、総合CPI上昇率が政策金利を上回ると、インフレ指標として重視する指標を「コアCPI上昇率」へと変更。コアCPI上昇率の鈍化を挙げて利下げを行ったからです。
エルドアン・トルコ大統領は「金利を下げれば、インフレ率は下がる」と主張し、以前からTCMBに対して利下げを要求してきました。エルドアン大統領はTCMBの金融政策に介入しているとの懸念が市場で一段と高まりそうです。
さらにTCMBは今後追加利下げに踏み切る可能性があります。トルコリラ/円には下押し圧力が加わりやすいとみられます。
トルコと米国の関係には注意が必要です。エルドアン大統領は9月26日、「S400(ロシア製地対空ミサイルシステム)を追加購入する方針に変わりはない」と述べました。米国は以前からトルコのS400購入に強く反対しています。両国の関係が悪化した場合、トルコリラ/円の下落材料になりそうです。
<注目点・イベントなど>
・TCMB(トルコ中銀)の金融政策。
・トルコと米国、EUとの関係。
・トルコの地政学リスク。
南アフリカランド
SARB(南アフリカ中銀)は、9月23日の会合で政策金利を3.50%に据え置きました。政策金利の据え置きは7会合連続です。
一方で、南アフリカの8月CPI(消費者物価指数)は前年比4.9%と、SARBのインフレ目標(3~6%)の範囲内に収まったものの、目標中央値である4.5%を4カ月連続で上回りました。CPI上昇率の高止まりが今後も続けば、SARBは利上げを検討し始めるかもしれません。
市場では、早ければ22年1月にも利上げを行うとの観測があります。SARBの利上げ観測が南アフリカランド/円の支援材料となりそうです。
クガニャゴSARB総裁は9月8日、インフレ目標について「現在の3~6%ではなく、3~4%程度かつ上下1%の誤差を認めることが有益だ」との見解を示しました。もしインフレ目標の数値がクガニャゴ総裁の言う通りに変更されれば、目標の上限が現在の6%から引き下げられることになります。足もとのCPI上昇率の動向をみると、SARBが利上げする可能性が高まると言えそうです。
南アフリカの景気動向には注意が必要かもしれません。南アフリカでは、国内電力の約9割を供給するエスコム(国営電力会社)の経営危機により、以前から計画停電がたびたび行われています。計画停電が行われるなどして、南アフリカ景気をめぐる懸念が強まる場合、南アフリカランド/円は下押しする可能性もあります。
<注目点・イベントなど>
・SARB(南アフリカ中銀)の金融政策。
・米FRBの金融政策。
・商品価格の動向。
・エスコム(南アフリカの国営電力会社)の経営危機問題。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は6月と8月の2会合連続で利上げを実施しました。
メキシコの8月総合CPI(消費者物価指数)は前年比5.59%と、BOMのインフレ目標(3%)の許容レンジの上限である4%を、依然として大きく上回っています。また、8月のコアCPI上昇率は同4.78%と、2017年12月以来、3年8カ月ぶりの強い伸びを記録しました。インフレ圧力の強さをみると。9月30日の会合で追加利上げに踏み切り(本稿執筆時点で9月の会合の結果は発表されていません)、その後も利上げを継続しそうです。
米FRBなど主要国の中銀と比べてBOMの政策金利(9/27時点で4.50%)は高く、今後もその状況に変化はないと考えられます。BOMが利上げを続ければ、主要国中銀との政策金利の差は一段と拡大する可能性があり、メキシコペソ/円の支援材料となりそうです。
メキシコペソ/円は、原油価格(米WTI原油先物など)の影響を受けやすいという特徴もあります。世界経済が回復するなどして原油価格が堅調に推移すれば、メキシコペソ/円は底堅さを増すと考えられます。
<注目点・イベントなど>
・BOM(メキシコ中銀)の金融政策。
・資源(主に原油)価格の動向。
・米FRBの金融政策。
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