S&P500月例レポート(21年8月配信)<前編>

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最新投稿日時:2021/09/17 13:30 - 「S&P500月例レポート(21年8月配信)<前編>」(みんかぶ株式コラム)

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S&P500月例レポート(21年8月配信)<前編>

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET: 2021年8月
個人的見解: 恋人と別れる50の方法

 ポール・サイモンが「50 Ways to Leave Your Lover(恋人と別れる50の方法)」で歌ったように、「意図することが無意味になったり、誤解されたくないが、何度でも言います」。S&P 500指数は2021年6月7日の週から13週連続(回数にして27回)で終値での過去最高値を更新した日がありました。年初来の最高値更新は53回となり、1926年以降で4番目の記録に並びました(過去最多は1995年の77回)。8月は22営業日中12日で最高値を更新し、更新しない日の方が珍しいほどでした。同指数は8月に2.90%上昇しました。

 さらに驚くことに、S&P 500指数構成銘柄のうち442銘柄で株価が年初来で上昇しており(平均上昇率26.29%)、248銘柄が少なくとも20%上昇しています(同38.66%)。コロナ禍前の2019年末以降で見ても、394銘柄が値上がりし(同57.51%)、100%以上値上がりした40銘柄を除いた354銘柄の平均上昇率でも35.96%となっています。

 歌詞にあるように、というよりも市場にとって公平に言うと、足元の市場に対処する「方法は50通りはあるはず」で、「こっそり抜け出しても、新しい計画を見つけても、ためらわずに利益確定しても」よいのです。S&P 500指数は年初来で20.41%上昇しています(2020年は16.26%上昇、2019年は28.88%上昇)。

 もう一つ引用すると、ニューヨーク・タイムズ紙の1面に書かれたように「今の市場は狂っている」が、そこに参加しないのもばかげた話であり、一方で仕事を失いかねません(すぐに売れるように準備しておく必要があります)。

 過去の実績を見ると、8月は55.9%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.91%、下落した月の平均下落率は3.95%、全体の平均騰落率は0.70%の上昇となっています。2021年8月のS&P 500指数は2.90%の上昇でした。

 9月は45.2%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.28%、下落した月の平均下落率は4.60%、全体の平均騰落率は0.99%の下落となっています。

 今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、9月21日-22日、11月2日-3日、12月14日-15日、2022年1月25日-26日、3月15日-16日、5月3日-4日、6月14日-15日、7月26日-27日、9月20日-21日、11月1日-2日、12月13日-14日となっています。

 S&P 500指数は8月に2.90%上昇して4522.68で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス3.04%)。7月は4395.26で終え、2.27%の上昇(同プラス2.38%)となり、6月は4297.50で終え、2.22%の上昇(同プラス2.33%)でした。過去3ヵ月間では7.58%上昇(同プラス7.95%)、年初来では20.41%上昇(同プラス21.58%)、過去1年間では29.21%上昇(同プラス31.17%)、コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値からは33.56%上昇(同プラス36.99%)して月を終えました。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は1.22%上昇の3万5360.73ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス1.50%)。なお、7月は3万4935.47ドルで終え、1.25%の上昇(同プラス1.34%)、6月は3万4502.51ドルで終え、0.08%の下落(同プラス0.02%)でした。過去3ヵ月間では2.41%上昇(同プラス2.88%)、年初来では15.53%上昇(同プラス17.04%)、過去1年間では24.38%上昇(同プラス26.77%)でした。

主なポイント

 ○S&P 500指数は8月も上昇を続け、22営業日のうち、終値ベースでの最高値更新を12回更新しました(7月は7回、6月は8回)。年初来の最高値更新は53回となり、史上4番目の記録に並びました(過去最多は1995年の77回)。13週連続で終値で最高値を更新した日があり、2020年11月以降、終値での最高値を更新した日が毎月あったことになります(2020年10月はありませんでしたが、その前の9月と8月は最高値を更新)。

  ⇒S&P 500指数は8月に2.90%上昇しました(配当込みのトータルリターンはプラス3.04%)。7月は2.27%上昇(同プラス2.38%)、6月は2.22%上昇(同プラス2.33%)、5月は0.55%上昇(同プラス0.70%)、4月は5.24%上昇(同プラス5.34%)、3月は4.24%上昇(同プラス4.38%)でした。過去3ヵ月では7.58%上昇(同プラス7.95%)、年初来では20.41%上昇(同プラス21.58%)、過去1年間では29.21%上昇(同プラス31.17%)でした。

  ⇒同指数は8月に終値での最高値を12回更新し、一時は4537.36を付け、終値ベースでも初めて4500を超えました。7月の最高値更新は7回でした(6月は8回、5月は1回、4月は10回、3月、2月、1月は5回)。

  ⇒コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値からは33.56%上昇し(同プラス36.99%)、同期間に終値ベースで72回、最高値を更新しました。

  ⇒2020年11月3日の米大統領選挙以降では、同指数は34.24%の上昇(同プラス35.94%)でした(バイデン大統領就任以降に51回、最高値を更新しています)。

  ⇒2020年3月23日の底値からの強気相場では102.14%上昇しています(同プラス106.90%)。

 ○現時点で、490銘柄が2021年第2四半期の決算発表を終え、422銘柄(86.1%)で利益が予想を上回り、53銘柄で予想を下回り、15銘柄で予想通りとなりました。また、489銘柄中の427銘柄(87.3%)で売上高が予想を上回りました。2021年第2四半期の利益予想は1年前(2020年第2四半期末)から37.3%、2021年第2四半期末(2021年6月30日)から18.0%、それぞれ上方修正されています。第2四半期は最高益を更新する見通しで、過去最高を記録して好調だった2021年第1四半期から9.9%の増益、(新型コロナウイルスの影響を受けた)2020年第2四半期から94.5%の増益が見込まれています。

 ○政治関連では、下院は、気候変動、教育、医療に対応するための3.5兆ドル規模の予算決議案を可決しました(賛成220、反対212)。2021年9月下旬には1兆ドル規模のインフラ法案についても採決を行う予定です。予算決議案に関しては、上院は3.5兆ドルの同決議案を単純過半数で可決することが可能で、100議席中50票の賛成票を獲得すれば、最終的に副大統領の賛成票で51対50となります。

 ○市場関係者のS&P 500指数の1年後の目標値はこの1ヵ月間で上昇し、現在値から10.4%上昇(前月は11.6%上昇)の4993(かなり強気な予想)となっています(7月末の目標値は4905、6月末の目標値は4767)。ダウ平均の目標値は現在値から10.8%上昇(前月は11.1%上昇)の3万9166ドル(かなり強気な予想)となっています(同3万8796ドル、同3万8123ドル)。

バイデン大統領と政府高官

 ○上院は超党派による1兆ドル規模のインフラ法案を賛成69、反対30で可決し、同法案は下院に送られました。さらに上院では3.5兆ドル規模の予算決議が民主党の公約に沿った形で50対49の賛成多数で可決され、経済対策の法制化に向けた話し合いに道が開かれました。

 ○下院は、気候変動、教育、医療に対応するための3.5兆ドル規模の予算決議案を可決しました(賛成220、反対212)。2021年9月下旬には1兆ドル規模のインフラ法案についても採決を行う予定です。予算決議案に関しては、上院は3.5兆ドルの同決議案を単純過半数で可決することが可能で、100議席中50票の賛成票を獲得すれば、最終的に副大統領の賛成票で51対50となります。

 ○(米軍の撤退によって)反政府武装勢力タリバンがアフガニスタンを支配下に置き、彼らは首都カブール入りして大統領府を掌握しました。ガニ大統領は出国しました。バイデン大統領はテレビ演説の中で撤退の正当性を主張し、8月31日を撤退期限としました。出国を試みる人々の姿が報道されましたが、国外退避の動きの大半は制御かつ制限されていました。

 ○8月26日にカブールの空港付近で2度にわたって(自爆テロによる)大規模な爆発がありました。13人の米軍兵士(2020年2月に撤退合意して以降で初めてとなる米軍犠牲者)と少なくとも170人のアフガニスタン人が死亡しました。この爆発は(タリバンと敵対している)過激派組織イスラム国の関連組織ISISによる犯行でした。

 ○米国の撤退は8月31日に完了しましたが、金融市場は無反応でした。

新型コロナウイルス関連

 ○変異ウイルスの感染拡大が続き、人口の70%がワクチン接種を完了したとしても集団免疫の獲得は厳しいとされており、懸念が広がっています。集団免疫の獲得に必要な接種率は引き上げられ、80%以上とも言われています。

 ○小学校でのマスク義務化を巡る対立が激化しています。こうした問題(あるいは子供の健康)に関しては、政治的信条の違いが対立を生みだしているようです。

 ○米食品医薬品局(FDA)は免疫が低下している人に対する新型コロナウイルスワクチンのブースター接種(3回目の接種)を承認しました。

  ⇒米疾病対策センター(CDC)はモデルナ製とファイザー製のワクチンに関して3回目の接種を初回接種から8ヵ月経過後に受けることを推奨しています。バイデン大統領は(9月20日の週から)2回の接種を終えた人に対して3回目の接種(ブースター接種)を、2回目の接種から8ヵ月経過後に受けることを奨励しています(ブースター接種の対象となるワクチンはモデルナ製とファイザー製で、ジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチンについては治験段階にあります。また、(医療従事者や、感染リスクが高い人、高齢者などを対象とした)優先接種計画も進めています。初回ワクチン接種を実施した際と同様に、(連邦政府に強制力はないため)州によって対応が分かれることになるでしょう。

 ○8月下旬にFDAは、これまで緊急使用を許可していたファイザー製の新型コロナワクチンを正式承認しました。これを受けて一部の企業や自治体が従業員や職員に対する接種義務化に動くとみられます。

 ○ジョンソン・エンド・ジョンソンは同社の1回接種型の新型コロナウイルスワクチンについて、追加接種によって抗体レベルが大幅に増加するとの治験結果が得られたことを公表しました。

 ○EUは加盟27ヵ国に対して、米国での変異型ウイルスによる急激な感染拡大を理由に、ワクチン未接種者による同国への不要不急の渡航を停止することを勧告しました(EUは2021年6月に米国を渡航許可リストに加えていました)。

 ○米国の1日当たり接種回数の7日間平均は、7月末の62万回から89.8万回に急増しました(6月は90万回、5月は170万回)。デルタ株による感染拡大が続いているためです。1日の新規感染者数は7月末の6万7000人から28万人に増加しています。この結果、多くの企業が職場復帰のスケジュールを延期しており、学校再開時期も見通せない状況にあります。

  ⇒フロリダ州が依然としてデルタ変異株感染のホットスポットとなっており、新規感染者数の最多更新が続いています。

  ⇒米国のワクチン接種率(少なくとも1回は接種済み)は成人で70%に達し、全人口では61.7%となっています。2回の接種を終えた人の割合は52.4%となっています。

  ⇒一部の州(ルイジアナ州)や地域(サンフランシスコ)ではマスク着用を再び義務付けています。カリフォルニア州は全米で最初に、全ての教職員に対して、学校に復帰する際にはワクチン接種か定期的な検査を義務付けると発表しました。ニューヨーク市もこれに続き、イベント参加やジム利用、レストランでの飲食に際してワクチン接種証明の提示を義務付けるとしました。また、米国防総省は全軍に対して9月15日までにワクチン接種を義務付けると発表しました。

  ⇒多くの企業(ホーム・デポ、マクドナルド、ターゲット、タイソンフーズ)がマスク着用を再び義務化し、一部企業は職場復帰の時期を延期したり(ブラックロック、シティグループ、ウェルズ・ファーゴ、アマゾン・ドット・コムは2022年まで)、ワクチン接種を義務付けています(マイクロソフト、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングスは米国内の従業員が対象)。

   →金融業界の動きを見ると、ニューヨーク証券取引所は取引フロアに出入りする全ての人に対してワクチン接種を9月13日までに終えるように要請しました。

 ○新型コロナウイルスの治療薬と治療法、そして夢の万能薬:

  ⇒世界全体で52億6000万人が少なくとも1回のワクチン接種を受けました(7月末時点では37億4000万人、5月末時点では17億4000万人、4月末時点では11億人、3月末時点では5億7400万人、2月末時点では2億2500万人)。

  ⇒米国では現時点で、3億7000万人が1回以上のワクチン接種を受けました(同3億4400万人、同2億8900万人、同2億3700万人、同1億4800万人、同6830万人)。

  ⇒人口の61.7%(7月末時点では57.2%、5月末時点では49.4%、4月末時点では43.3%)が少なくとも1回は接種したことになり、人口の52.4%(同49.4%、同39.3%、同30.0%)が2回の接種を終えました。

  ⇒米国の1日当たり接種回数の7日平均は90万回に低下しましたが(7月末時点では62万回、5月末時点では170万回、4月末時点では263万回、3月末時点では277万回、2月末時点では131万回)、変異株の蔓延により接種回数は増加しています。

各国中央銀行の動き(および関連ニュース)

 ○7月27-28日に開催されたFOMCの議事要旨から、米連邦準備制度理事会(FRB)は年内のテーバリング開始を見込んでいたものの(現在の資産買い入れペースは月額1200億ドル)、利上げに関しては、会合時には年内実施を想定していなかったことが明らかとなりました。

 ○FRBは今夏の「ジャクソンホール会議」(8月26-28日開催)を、予定していた対面形式からオンライン形式での開催に変更しました(開催日の前日にパウエルFRB議長は自身の講演をオンライン形式で行うと発表しました)。こうした開催形式の変更はハト派的判断であり、変異株による感染拡大の影響は限定的で、テーパリングの開始を早める余地があると言及した最近の発言とは矛盾すると、市場関係者には受け止められました。

 ○韓国はアジア諸国の中で最初に利上げに踏み切り、政策金利を0.25%引き上げて(前回利上げは3年前)0.75%としました。また、予想インフレ率も2.1%(従来は1.8%)に上方修正しました。

 ○FRBの意向と新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今年のジャクソンホール会議は対面形式からオンライン形式へと変更されました(この変更を市場関係者はハト派姿勢を裏付けるものと受け止めました)。実際の(オンライン)会議では慎重かつ注意深く言葉を選んだ発言が行われました。パウエル議長はあらためてインフレの上昇は一過性の現象とみられ、また現在のインフレ率はFRBの目標に沿った水準で推移していると述べました。雇用に関しては、(FOMCが)掲げる目標に到達はしていないものの、前進しているとの見解を示しました。さらに、全てが予想通りに進展すれば、年内にテーパリングを開始する可能性があることも示唆しましたが、具体的なスケジュールについては明らかにせず、テーパリングと利上げは別物であると説明しました。市場はこうした発言をハト派寄りと解釈し、テーパリング開始前にFRBによる事前予告があると受け止めました。また、FRBは利上げを急いでいないと判断し、結果的に市場は同日に最高値を更新しました。

IPOおよび「空箱」SPAC

 ○投資アプリを手掛けるロビンフッド・マーケッツは、7月に1株当たり38ドルで新規株式公開(IPO)を実施しました。7月の終値は35.15ドルとなりましたが、8月に入って同社の株価は急騰し、一時85ドルを付けました。8月の終値は44.32ドル(IPO価格から16.6%上昇)、月間上昇率は26.1%となりました。

 ○今後も活発なIPOが見込まれます:

  ⇒地域SNSを運営するNextdoorはSPACのコースラ・ベンチャーズ・アクイジションとの合併を通じて上場を計画しており、企業評価額を43億ドルと見込んでいます。

  ⇒デジタル貯蓄・投資アプリを運営するAcornはSPAC経由での上場を計画しており、企業評価額を22億ドルと見込んでいます。

  ⇒英国のオンライン中古車販売会社Cazoon Holdingは、SPAC経由で上場することを明らかにしました。上場時の企業評価額を80億ドルと見込んでいます。

  ⇒未公開のリチオムイオン電池メーカーEnovixはSPAC経由での上場を準備しており、当初評価額11億ドルを見込んでいます。

  ⇒イスラエルのデジタル取引プラットフォームのeToro GroupはSPAC(FinTech)経由で上場すると発表しました。時価総額100億ドルを見込んでいます。

  ⇒東南アジアでライドシェア、フードデリバリー、送金のアプリを運営しているGrab HoldingsはSPAC経由で上場することを発表し、企業評価額を400億ドルと予想しています。

  ⇒EVメーカーLucid MotorsはChurchill Capital Corp IV(CCIV)との合併を通じて上場を計画しています。

  ⇒シェアオフィス大手のWeWorkが再び上場を計画しており、上場時の企業評価額として90億ドルを見込んでいます。これに対して、パンデミックにより労働環境が変化するよりもかなり前の2019年の評価額は470億ドルでした。

<後編>へ続く
 


配信元: みんかぶ株式コラム

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