■今後の成長戦略
ファンペップ<4881>は今後も独自技術である抗体誘導ペプチドの優位性を生かして、抗体医薬品が既に発売されている「炎症領域」を中心に開発パイプラインを拡充していく戦略となっている。標的となるタンパク質は既に上市されている抗体医薬品と同じであるため、リード化合物を特定する時間が通常よりも大幅に短縮できるほか、有効性や安全性についても既に抗体医薬品で確認されているため、開発リスクも小さい。第1相臨床試験によって体内で抗体産生がどの程度できているかを確認することで、薬効などをある程度読むことができる点もメリットと言える。
同社は既存パイプラインの開発を進めると同時に、今後も2年に1本のペースでパイプラインを拡充していくことを目指している。同社は研究開発人員が当初2名でスタートし(2020年12月末は6名)、直近6年間で3本の抗体誘導ペプチドを開発している実績からみて、実現可能なペースと言える。既に、精神神経疾患や疼痛、アレルギー性疾患、高血圧、抗血栓、家族性大腸腺腫症などを対象疾患とした研究テーマも保有している。また、人材投資については、基礎研究分野の人材だけでなく、今後は開発パイプラインの増加に伴ってCMC※関連や薬事関連の専門知識を持つ人材についても体制を強化していく方針で、2021年12月期末時点における研究開発部門の人員は6名から約10名に増員される見通しとなっている。
※CMC(Chemistry, Manufacturing and Control)…Chemistryは化学、Manufacturingは製造、Controlはそれらの品質管理を意味する。医薬品製造の承認を申請する際には非臨床試験から臨床試験さらに市販後に向けて、評価される製造物を定義づけることが求められる。製造物の処方や規格及びそれらの評価方法や設定根拠、包材を含めた原材料の管理、原料や製造物の製造プロセスを検討し、製造物の品質評価を統合して行う概念。
当面は開発ステージとなるため、営業損失が続く見込みだが、抗体誘導ペプチドの開発対象となる領域における抗体医薬品の2019年の世界市場規模は主要製品だけで約475億米ドルとなっており、中長期的な成長ポテンシャルは極めて大きいと弊社では見ている。既存のパイプラインのうち、1つでも開発に成功すれば抗体誘導ペプチドの認知度も一気に向上し、ライセンス契約の件数も増加していくものと予想される。まずは抗体誘導ペプチドの自社開発に注力していく方針だが、将来的には抗体誘導ペプチドの創薬プラットフォーム技術である「STEP UP」を提供していくことも、選択肢の一つとして視野に入れている。
また、2021年8月に共同研究契約を締結したメドレックスのマイクロニードル技術を用いた薬剤の開発の可能性なども検討していく予定にしている。従来、抗体誘導ペプチドは注射しか投与手段がなかったが、マイクロニードル技術を用いることにより、無痛経皮投与を患者自身でも行うことが可能になるといったメリットがある。同技術を用いることで、注射投与と比較して高い抗体価が得られるようであれば、同技術を用いた薬剤で開発を進めていく可能性も出てくる。
■株主還元策
同社は株主への利益還元について重要な経営課題と認識しているものの、現在は研究開発における先行投資の段階にあるため配当は実施しておらず、手元資金については研究開発活動に優先的に充当し、早期に収益化を実現し、企業価値の向上を図ることが株主還元になると考えている。
こうしたなか、多くの株主に同社株式を中長期的に保有してもらうことを目的に、株主優待制度の導入を2021年6月に発表している。優待内容は、毎年6月末及び12月末現在の株主(100株以上保有)を対象に、機能性ペプチド配合商品等を株主優待割引価格で購入できるようにした。初回となる2021年6月末の株主向けには、ポケッタブルウイルス除去スプレーを希望小売価格の40~50%割引価格で、また、化粧品シリーズを希望小売価格の50%割引価格にて提供することにした。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<AS>
ファンペップ<4881>は今後も独自技術である抗体誘導ペプチドの優位性を生かして、抗体医薬品が既に発売されている「炎症領域」を中心に開発パイプラインを拡充していく戦略となっている。標的となるタンパク質は既に上市されている抗体医薬品と同じであるため、リード化合物を特定する時間が通常よりも大幅に短縮できるほか、有効性や安全性についても既に抗体医薬品で確認されているため、開発リスクも小さい。第1相臨床試験によって体内で抗体産生がどの程度できているかを確認することで、薬効などをある程度読むことができる点もメリットと言える。
同社は既存パイプラインの開発を進めると同時に、今後も2年に1本のペースでパイプラインを拡充していくことを目指している。同社は研究開発人員が当初2名でスタートし(2020年12月末は6名)、直近6年間で3本の抗体誘導ペプチドを開発している実績からみて、実現可能なペースと言える。既に、精神神経疾患や疼痛、アレルギー性疾患、高血圧、抗血栓、家族性大腸腺腫症などを対象疾患とした研究テーマも保有している。また、人材投資については、基礎研究分野の人材だけでなく、今後は開発パイプラインの増加に伴ってCMC※関連や薬事関連の専門知識を持つ人材についても体制を強化していく方針で、2021年12月期末時点における研究開発部門の人員は6名から約10名に増員される見通しとなっている。
※CMC(Chemistry, Manufacturing and Control)…Chemistryは化学、Manufacturingは製造、Controlはそれらの品質管理を意味する。医薬品製造の承認を申請する際には非臨床試験から臨床試験さらに市販後に向けて、評価される製造物を定義づけることが求められる。製造物の処方や規格及びそれらの評価方法や設定根拠、包材を含めた原材料の管理、原料や製造物の製造プロセスを検討し、製造物の品質評価を統合して行う概念。
当面は開発ステージとなるため、営業損失が続く見込みだが、抗体誘導ペプチドの開発対象となる領域における抗体医薬品の2019年の世界市場規模は主要製品だけで約475億米ドルとなっており、中長期的な成長ポテンシャルは極めて大きいと弊社では見ている。既存のパイプラインのうち、1つでも開発に成功すれば抗体誘導ペプチドの認知度も一気に向上し、ライセンス契約の件数も増加していくものと予想される。まずは抗体誘導ペプチドの自社開発に注力していく方針だが、将来的には抗体誘導ペプチドの創薬プラットフォーム技術である「STEP UP」を提供していくことも、選択肢の一つとして視野に入れている。
また、2021年8月に共同研究契約を締結したメドレックスのマイクロニードル技術を用いた薬剤の開発の可能性なども検討していく予定にしている。従来、抗体誘導ペプチドは注射しか投与手段がなかったが、マイクロニードル技術を用いることにより、無痛経皮投与を患者自身でも行うことが可能になるといったメリットがある。同技術を用いることで、注射投与と比較して高い抗体価が得られるようであれば、同技術を用いた薬剤で開発を進めていく可能性も出てくる。
■株主還元策
同社は株主への利益還元について重要な経営課題と認識しているものの、現在は研究開発における先行投資の段階にあるため配当は実施しておらず、手元資金については研究開発活動に優先的に充当し、早期に収益化を実現し、企業価値の向上を図ることが株主還元になると考えている。
こうしたなか、多くの株主に同社株式を中長期的に保有してもらうことを目的に、株主優待制度の導入を2021年6月に発表している。優待内容は、毎年6月末及び12月末現在の株主(100株以上保有)を対象に、機能性ペプチド配合商品等を株主優待割引価格で購入できるようにした。初回となる2021年6月末の株主向けには、ポケッタブルウイルス除去スプレーを希望小売価格の40~50%割引価格で、また、化粧品シリーズを希望小売価格の50%割引価格にて提供することにした。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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