資源・新興国通貨の2021年末までの展望

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最新投稿日時:2021/07/26 15:21 - 「資源・新興国通貨の2021年末までの展望」(八代和也)

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資源・新興国通貨の2021年末までの展望

著者:八代和也
投稿:2021/07/26 15:21

豪ドル

豪ドル/NZドル(月足)と政策金利差(2008/1~2020/6)
豪ドル/NZドル(月足)と政策金利差(2008/1~2020/6)出所:リフィニティブより作成

RBA(豪中銀)は7月6日の政策会合時の声明で、「実際のインフレ率が2~3%の目標範囲内に持続的に収まるまで、利上げは行わない」と表明し、「利上げの条件は、24年まで満たされない」との見方を示しています。

一方で、豪州の6月失業率は4.9%と、2010年12月以来の低水準を記録。RBAは金融政策運営において雇用情勢を注視する姿勢を示しています。失業率の低下(改善)傾向が今後も続けば、RBAは利上げ時期の見通しを前倒しするかもしれません。その場合、豪ドルの支援材料となりそうです。

豪ドルはまた、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。主要国の株価が堅調に推移するなどしてリスクオンが強まる場合、豪ドル/米ドルや豪ドル/円は底堅い展開になりそうです。

ただし、豪ドル/米ドルについては、米FRBの金融政策をめぐる市場の観測にも影響を受ける可能性があります。FRBの金融引き締め(量的緩和の縮小や利上げなど)観測の高まりは、豪ドル/米ドルの上値を抑える要因となり得ます。

***

RBA(政策金利は当面据え置き)とRBNZ(利上げ方向)の金融政策の方向性の違いが市場で意識されて、豪ドル/NZドルは目先軟調に推移する可能性があります。

一方で、RBAとRBNZの政策金利の差(現在はRBNZの方が0.15%高い)は2015年に一時1.50%、2016年と2019年には一時0.50%へと拡大したものの、豪ドル/NZドルはそれまでの1.00000~1.15000NZドルのレンジ内の動きは変化しませんでした。これを参考にすると、RBNZが今後若干利上げしても、豪ドル/NZドルは1.00000~1.15000NZドルのレンジ内に収まりそうです。

<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)の金融政策。
・投資家のリスク意識の変化。
・米FRBの金融政策。
・資源(主に鉄鉱石)の価格動向。
・米中関係、豪中関係(中国は豪州の主要輸出先)。

NZドル

RBNZ(NZ中銀)は7月14日の政策会合で、大規模資産購入プログラム(量的緩和)の停止を決定。金融刺激策の縮小へと動きました。市場では、「RBNZは8月に利上げを開始し、今年中に計0.50%(8月と11月にそれぞれ0.25%)の利上げを行う」との観測があります。RBNZの利上げ観測がNZドルを下支えしそうです。

また、NZドルは豪ドルと同様に投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。主要国株価が上昇するなどしてリスクオンが強まる場合、NZドル/米ドルやNZドル/円は堅調に推移しそうです。

一方で、NZドル/米ドルについては、米FRBの金融政策をめぐる市場の観測にも影響を受ける可能性があります。FRBの金融引き締め(量的緩和の縮小や利上げなど)観測が高まれば、NZドル/米ドルは上値が重くなるかもしれません。

<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)の金融政策。
・投資家のリスク意識の変化。
・米FRBの金融政策。
・米中関係、(中国はNZの主要輸出先)。
・乳製品(NZ最大の輸出品)の価格動向。

カナダドル

BOC(カナダ中銀)は7月14日の政策会合で、4月に続いて量的緩和プログラムの縮小を決定。カナダ国債の買い入れ目標を週30億カナダドルから20億カナダドルへと、さらに10億カナダドル減額しました。

BOCは今後も量的緩和プログラムの縮小を続けるとみられ、プログラムは今年中に終了する可能性があります。BOCはまた、22年下半期に利上げする可能性を示しています。カナダのCPI(消費者物価指数)上昇率の高止まりが続けば、市場ではBOCの利上げ観測が高まりそうです。BOCの利上げ観測はカナダドル/円の上昇要因となり得ます。

カナダドル/円については、原油価格(米WTI原油先物など)の動向にも目を向ける必要がありそうです。世界経済の回復が進めば、原油価格は堅調に推移しそうです。原油価格の上昇はカナダドル/円の支援材料と考えられます。

<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)の金融政策。
・資源(特に原油)価格の動向。
・米国景気の動向。

トルコリラ

TCMB(トルコ中銀)の金融政策の次の一手は「利下げ」と市場はみており、市場の関心は「いつ利下げするのか」となっています。TCMBの現在の政策金利は19.00%です。

市場では、TCMBの利下げ開始は21年10-12月期との見方が有力です。ただ、これまでのトルコリラ安(対米ドル)や資源価格高の影響によってCPI(消費者物価指数)上昇率は今後、一段と高まる可能性があります。その場合にはTCMBの利下げ観測が市場で後退し、トルコリラ/円の支援材料になるかもしれません。

ただし、エルドアン・トルコ大統領の言動には要注意です。エルドアン大統領は以前からTCMBに対して利下げを要求。6月1日には「(政策)金利は、7月か8月に低下し始める必要がある」と述べました。エルドアン大統領の圧力によってTCMBはCPI上昇率が十分に下がる前に利下げするおそれがあります。その場合、TCMBの独立性をめぐる懸念から、トルコリラ/円に対して下押し圧力が加わりそうです。

その他、トルコと米国の関係にも注意が必要です。トルコはS400(ロシア製地対空ミサイルシステム)を2019年に導入し、追加購入も検討。一方、米国はNATO(北大西洋条約機構)の軍事機密がロシアに漏洩するおそれがあるとしてトルコのS400購入に強く反発しており、「S400を追加購入すれば、さらなる制裁を科す可能性がある」とトルコに警告しています。両国の関係が悪化した場合、トルコリラ/円は下押ししそうです。

<注目点・イベントなど>
・TCMB(トルコ中銀)の金融政策。
・トルコと米国、EUとの関係。
・トルコの地政学リスク。

南アフリカランド

南アフリカランド/円は7月23日、約4カ月ぶりの安値をつけました。足もとの南アフリカランド/円の下落は、<1>ズマ前大統領の収監をきっかけとした暴動の発生、<2>SARB(南アフリカ中銀)の利上げ観測の後退、などが挙げられます。

<1>ラマポーザ南アフリカ大統領は7月16日に暴動はおおむね沈静化したと述べました。南アフリカの政情には引き続き注意は必要ですが、南アフリカランド/円に対する下押し圧力は弱まるとみられます。

<2>SARBは7月22日に政策会合を開き、全会一致で政策金利を3.50%に据え置くことを決定しました。ただ、市場では「今回の会合で利上げを主張するメンバーが出てくるのでは?」との観測があったものの、実際には利上げを主張したメンバーがいなかったことで、SARBの利上げ観測が市場で後退しました。

南アフリカの6月CPI(消費者物価指数)は前年比4.9%と、SARBのインフレ目標(3~6%)の中央値である4.5%を2カ月連続で上回りました。CPI上昇率が今後も目標中央値より上の水準で推移し続ければ、SARBは利上げを検討し始めるかもしれません。いったん後退した利上げ観測は、いずれ再び高まる可能性があります。SARBの利上げ観測は、南アフリカランド/円の支援材料と考えられます。

<注目点・イベントなど>
・SARB(南アフリカ中銀)の金融政策。
・米FRBの金融政策。
・商品価格の動向。
・エスコム(南アフリカの国営電力会社)の経営危機問題。

メキシコペソ

BOM(メキシコ中銀)は6月24日、0.25%の利上げを決定。政策金利を4.00%から4.25%へ引き上げました。BOMはまた、CPI(消費者物価指数)上昇率がインフレ目標の3%に収束する時期について、「22年第3四半期(7-9月期)」との見通しを示し、5月時点の「22年第2四半期(4-6月期)」から1四半期後ズレさせました。

メキシコの6月CPI上昇率は前年比5.88%と、BOMのインフレ目標(3%)の許容レンジ上限である4%を4カ月連続で上回りました。インフレ圧力の強さが再確認されたことで、BOMは8月12日の次回政策会合で追加利上げに踏み切る可能性があります。8月に利上げを行い、その後も利上げを続けるとの観測が市場で高まる場合、メキシコペソ/円は底堅い展開が想定されます。

メキシコペソは、原油価格(米WTI原油先物など)の動向にも影響を受けやすいという特徴があります。原油価格が堅調に推移すれば、メキシコペソ/円の支援材料になるとみられます。

<注目点・イベントなど>
・BOM(メキシコ中銀)の金融政策。
・資源(主に原油)価格の動向。
・米FRBの金融政策。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想

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