S&P500月例レポート(21年3月配信)<中編>

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最新投稿日時:2021/03/11 11:31 - 「S&P500月例レポート(21年3月配信)<中編>」(みんかぶ株式コラム)

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S&P500月例レポート(21年3月配信)<中編>

<前編>の続き

バイデン大統領と政府高官

 ○バイデン大統領が民主/共和両党にとって政治的に重要な1兆9000億ドル規模の景気刺激策を実現するためのロビー活動を継続する一方、共和党は6180億ドルの経済対策法案を提出しました。両党間の協議は続きましたが、15時間に及ぶ話し合いを経て(協議終了は真夜中)、賛成50票と反対50票の同数となった上院での採決でハリス副大統領が賛成票を投じ、民主党が共和党の同意なしで法案を通過させる環境が整いました(単純過半数での法案可決が可能となる)。この結果、少なくとも1兆6000億ドル規模の景気刺激法案が成立する見通しとなりましたが、連邦政府が定める最低賃金を時給15ドルに引き上げる案は同法案に盛り込まれませんでした(現在時給7.25ドル)。

  ⇒市場関係者は3月に景気刺激法案が議会を通過し、その規模は1兆6000億ドル前後になる、また法案可決後には速やかに現金給付が開始されると予想しています。

  ⇒前回の財政刺激法案の影響は、週間失業保険申請件数のデータに反映されています。政府の失業支援措置で失業給付を受給している国民の総数は2044万人に達し、1週間で260万人増加しました。また、失業給付を週300ドル加算する措置が再開されました(失効したこれまでの特例措置では週600ドルの加算)。

トランプ前大統領の弾劾裁判と評決

 ○数週間にわたりメディアが報道合戦を繰り広げたトランプ前大統領の弾劾裁判は、市場では材料視されませんでした。弾劾裁判は、その合憲性に対する採決において賛成56票、反対44票で合憲と認められたため(共和党議員の造反があった)、2月9日に上院で開始されました。3日間を費やして民主党議員が有罪を主張したのに対し、共和党側は12日に3時間かけて大統領を擁護しました。2月13日に行われた評決で前大統領は無罪となりました(有罪には67人の議員の賛同が必要)。評決の結果は、57人(民主党議員50人全員と共和党議員7人)の議員が有罪と判断したのに対し、43人(全員が共和党)は無罪と判断しました。裁判は終わりましたが、分断はまだ続いているようでした。

新型コロナウイルス関連

 ○感染状況等:

  ⇒世界的に感染拡大は続いていますが、感染者数の増加ペースは鈍化しました。米国では感染者数が2840万人に達しました(1月は2590万人、12月は2000万人)。世界の感染者数は1億1320万人でした(1月は1億200万人。12月は8360万人)。また、米国の死者数は50万9000人(同43万6000人、同34万6000人)、世界全体の死者数は251万2000人(同220万4000人、同182万1000人)となりました。米国の1日の新規感染者数は1月に過去最高の30万594人に達しましたが、その後は減少傾向となり、2月末には7万7804人に減少しました。1月末は16万5264人でした。新規感染者数の7日間平均も1月に記録した過去最多の25万9564人から2月末には6万9450人に減少しました。1月末時点では15万9625人でした。感染による入院者数は1月末の10万4303人から2月末は5万2669人に減少しました。

 ○新型コロナウイルスの治療薬と治療法、そして夢の万能薬

  ⇒ワクチンの供給と接種状況の進捗が続いていますが、大寒波によってスケジュールに影響が出たため、進捗ペースは緩やかです。また、予約を取るのが困難なことも引き続き問題となっています。

   →米食品医薬品局(FDA)はJohnson & Johnson’s(JNJ)が開発したワクチンの安全性と有効性を公表しました(有効性は66.1%、米国に限ると72%)。

    ・2月26日のFDA諮問委員会の会合で、1回の接種で済む同社ワクチンの有効性が賛成22、反対ゼロで支持されました。近いうちに全面的な認可があり、これを受けて直ちに輸送手続きに入るとみられます。

  ⇒現時点で米国では6830万回分のワクチンが接種されました(1月末時点では2730万回)。世界全体では最低1回の接種が2億2500万回行われました(同8710万回)。1日当たりの接種回数の7日平均は131万回で、各州に配布されているワクチンの75%が接種されたことになります。

各国中央銀行の動き

 ○ニューヨーク経済クラブで講演したパウエルFRB議長は、金利はしばらくの間は低水準にとどまり、雇用状況の回復には時間がかかると述べました。また、失業率について公式発表では6.3%となっているものの、実際には10%近いとの見解を示しました(市場関係者は、この発言をより長期間にわたり経済支援が必要になると解釈しました)。

 ○FOMCの議事録では景気見通しの改善が示されました。2020年12月の景気刺激策の影響が指摘されるとともに、失業率が一段と高まるとも予想しています。

 ○半期に一度の金融政策に関する議会証言の中で、パウエル議長は新型コロナウイルスのパンデミックから経済が回復するまで低金利政策を継続することを確認しました。この発言を受けて、金融市場は金融緩和政策の継続を再確認し、政策変更に対する警戒感による下落から反発に転じました。

企業業績

 ○2020年第4四半期の決算シーズンは終盤に入り、S&P 500指数構成銘柄の479社が決算発表を終え、このうち77.5%に当たる371銘柄で利益が予想を上回りました。売上高に関しては、477銘柄のうち74.8%に相当する357銘柄が予想を上回りました。

  ⇒2020年第4四半期の利益予想は2020年12月末時点から4.7%引き下げられ(2019年末からは25.5%引き下げられています)、前期比で9.4%の減益、前年同期比では12.4%の減益となる見通しです。

  ⇒その結果、2020年の予想EPSは24.6%の減益、それに基づく足元の予想株価収益率(PER)は32.2倍となっています。

  ⇒2021年については、特に下半期で企業利益が過去最高を更新する見通しで、2020年比で44.4%増益(2019年比で9.0%増益)が見込まれており、2021年の予想PERは22.3倍となっています。

   →2022年見通しに基づく予想PERは19.2倍となっています。

個別銘柄

 ○インターネット通販大手Amazon.com(AMZN)の創業者(1994年設立)でCEOのJeff Bezos氏は、2021年第3四半期に退任し(別の事業に専念する)、執行会長職に就くことを明らかにしました。CEOは現在クラウド事業部門を統括しているAndy Jassy氏が引き継ぐことになります。同社の第4四半期の売上高は前年比44%増の1250億ドルとなり、過去最高を達成しました。

 ○製薬大手Merck(MRK)のCEOであるKenneth Frazier氏(2011年1月から現職、現在68歳)は2021年6月に退任する(執行会長に就任)ことを発表しました。後任には2021年7月1日付でRobert Davis氏(グローバルサービス担当の上級副社長、CFOを兼任)が就任します。

 ○自動車大手General Motors(GM)もようやく半導体部品不足によって被る潜在的影響について数字で公表し(Fordは前週に公表済み)、2021年の利益が15億~20億ドル減少する可能性があることを明らかにしました。半導体部品不足の原因はコロナ後を見据えたシステム(パソコン、ラップトップ、ゲーム機等)向けの半導体需要の急増です。バイデン政権は近いうちに、事態打開のために半導体供給網の見直しに関する大統領令に署名することを明らかにしました。

 ○S&Pグローバル・レーティングは石油大手Chevron(CVX)と同Exxon Mobil (XOM)の格付けをAAからAA-に、また、同ConocoPhillips(COP)の格付けをAからA-に引き下げました。

 ○United Airlines(UAL)のBoeing(BA)777型機が離陸直後にエンジン故障を起こしましたが、同機は引き返して無事に緊急着陸しました。Boeingは航空各社に対し、検査のために777型機の運行を停止するように求めました。米連邦航空局(FAA)も同機の運航停止を指示しました。

<後編>へ続く
 


配信元: みんかぶ株式コラム

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