―オフィス縮小と東京脱出が生み出す商機、一極集中解消の行き先は―
新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて確認されたのは1月16日だったが、その後の約半年間で日本のビジネス環境は大きく変化している。顕著なのが、急速に普及し始めた テレワークで、これにより働き手は場所を選ばずに仕事ができるようになった。緊急事態宣言解除後には、オフィスへ回帰する動きもみられたが、それでもオフィスに行かなくてもさまざまな業務ができるとの意識改革につながった。西村康稔経済再生担当大臣は7月26日、経済界に「テレワーク70%」「時差通勤」を要請しており、今後も利用の拡大が予想されている。
一方、企業はテレワークの普及に伴い、働き方や働く場所のニューノーマル(新常態)への対応を迫られるようになっており、オフィスの縮小などに動き出す企業も出始めている。それに伴うビジネスも活発化し始めており、関連銘柄のビジネスチャンスも広がりそうだ。
●都内のオフィス需要に変化
ぐるなび <2440> は7月29日、東京都内にある5つのオフィスフロアのうち、3つのフロアを解約し、座席数を75%削減すると発表した。同社では、新型コロナウイルス感染拡大抑止のため、2月末から原則リモートワークでの業務を継続しているが、こうした環境変化を進化の機会ととらえ、新たな働き方を目指すという。また、オフィス返却による固定費削減効果を年間約4億円と見込んでおり、同社が取り組む固定費削減を加速させる。
同様の動きは、IT企業などでみられ始め、都内のオフィス需要にも表れている。オフィスビル仲介大手の三鬼商事(東京都中央区)が発表するオフィスデータによると、都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の平均空室率が6月は1.97%となり、前月に比べて0.33ポイント上昇した。4ヵ月連続の上昇で、2018年10月以来の2%台が目前に迫っている。
●東京一極集中の解消を促進か
空室率の上昇は、テレワークの普及によるものだけではないが、一因であるのは確かだ。例えば今後、テレワークの普及や働き方改革に伴い、都心部にある本社に多数の社員を集中させる従来の集中型オフィスから、郊外などにサテライトオフィスを複数設ける分散型オフィスへの転換などが進むようなら、空室率は更に上昇する可能性がある。調査機関のなかには、21年初めには都心5区の空室率が5%台に上昇するとの見方もある。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、都心からのオフィス離れは、長らく続いてきた東京一極集中の解消を促進する可能性がある。自民党の岸田文雄政調会長は7月27日の記者会見で、東京一極集中の是正を新型コロナウイルス収束後の政治課題と位置づけており、ポストコロナでは「脱東京」が大きなうねりとなりそうだ。
●人の流れを加速させるカヤック
「脱東京」で注目されるのは、都心と地方を結ぶマッチングサービスだ。
カヤック <3904> [東証M]子会社のカヤックLivingは、移住スカウトサービス「SMOUT(スマウト)」を運営しており、地域に行きたい人と地域の人をつなぐ マッチングサービスを展開。利用者は気になる地域を知るためにその地域の人と連絡を取ることや、自分に合う地域をオンラインで診断し探すことができる。会社側によると、新規登録者数は5月から急増し5月、6月と連続で過去最高を更新。6月26・27日に開催された同サービス初のオンラインイベントには延べ6500人が参加したという。また、カヤックLivingは、定額制で全国どこでも住み放題サービスを展開するアドレス(東京都千代田区)と業務提携しており、これも注目されている。なお、カヤックLivingは9月1日付けでカヤックに吸収合併される予定だ。
みらいワークス <6563> [東証M]は、グループのスキルシフトが都市部で働くビジネスパーソンと地方の中小企業をつなぐマッチングサービス「Skill Shift」を運営している。地方では、専門的で高度なスキルを持つ人材を集めるのに苦戦するが、「Skill Shift」では、都市部で働くこうしたスペシャリストが、副業というスタイルで地方で働くことを支援している。都心部から郊外・地方へ人が動けば、地方の企業への関心も高まるとみられ、こうしたマッチングサービスも注目されそうだ。
●郊外の戸建ニーズを取り込むカチタス
人が動くと、住居を決める必要がある。引っ越しにあたり、郊外などの地域に根差した不動産事業を展開する企業には注目だ。
カチタス <8919> は、中古住宅買い取り再販事業で、販売件数が業界トップ。中古戸建て住宅の仕入れからリフォーム、販売まで一貫して提供している。人口5万人程度の中小規模都市も含め、他社があまり展開していない地域を細かくカバーしているのが特徴で、全国に100以上の直営店舗を展開しており、最近では郊外の戸建住宅を買いたいという引き合いが増えているという。
ケイアイスター不動産 <3465> は、関東及び愛知・福岡を営業エリアに分譲住宅の販売を主力とする不動産企業で、土地の仕入れからアフターサービスまで自社で行う社内責任一貫体制を構築しているのが強みだ。同社では、主力の分譲住宅事業における月次の受注金額を発表しており、4月は前年同月比8%減だったものの、5月は同32%増、6月は同25%増で推移。ステイホームやテレワークによる個室の必要性などで戸建住宅に対する需要の高まりを受けて足もとの受注は堅調としている。
このほか、大阪府を中心に兵庫県、和歌山県北部地域で分譲住宅や改装付き中古住宅を販売するフジ住宅 <8860> や、大分を地盤に建売住宅を販売するグランディーズ <3261> [東証M]などにも注目したい。
株探ニュース
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