■日本システムウエア<9739>の業績動向
1. 2020年3月期の業績概要
2020年3月期における日本経済は、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調が続いていたが、米中貿易摩擦による影響に加え、新型コロナウイルス感染拡大による国内外の経済活動や社会生活への深刻な影響が懸念されるなど、先行き不透明感が強まっている。また、情報サービス産業界においては、企業のIT投資は堅調に推移し、特にIoT、AI、5Gなどのデジタル技術を活用したビジネスプロセスや業務プロセスを柔軟に変えていくDX、働き方改革などへの取り組みが本格化した。
このような状況のもと、同社グループでは、2020年3月期より新たな中期経営計画(2019年4月~2022年3月)をスタートさせた。「DX FIRST」をスローガンに、長年培ってきた業務ノウハウや技術力と様々な実現手段を組み合わせることによって、顧客のビジネスモデル変革と業務プロセス改革に貢献し、顧客のDX実現を先導する企業として事業成長を加速している。これまで取り組んできたIoT・AIサービスをもとにしたDX事業の拡大を図るとともに、現在の収益基盤をより確固たるものにするため、受託型から提案型へ、開発からソリューション、サービスへ軸足を移したビジネス展開に取り組んでいる。
こうした取り組みの結果、2020年3月期の業績は、売上高38,273百万円(前期比6.0%増)、営業利益3,860百万円(同15.1%増)、経常利益3,898百万円(同14.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,668百万円(同16.7%増)と大幅な増収増益となり、売上高、利益ともに過去最高を連続更新した。売上高は期初計画比0.7%増、また営業利益も同10.3%増の好決算であった。売上高は3セグメントとも増収となり、増収に加えて案件習熟度のアップ、高収益案件へのシフトなどによる収益性改善によって計画を上回る増益となった。また、売上総利益が前期比10.6%増となったのに対し、販管費が同5.9%増にとどまったことから、営業利益率は前期の9.3%から10.1%に上昇している。
プロダクトソリューションセグメント、サービスソリューションセグメントが増益に貢献
2. セグメント別概況
セグメント別の業績を見ると、ITソリューションセグメントの売上高は小売業向けシステム機器販売、官公庁・団体向けインフラ案件などが伸長し13,415百万円(前期比6.8%増)であった。一方で営業利益は、増収や一部大型案件の収益性改善による増加があったものの、不採算案件が複数発生(影響額500百万円の損失)し1,205百万円(同1.8%減)にとどまった。この結果、売上高は期初計画比1.6%増であったものの、営業利益は同3.5%減となり、営業利益率は前期の9.8%から9.0%へと低下した。
売上高の内訳では、金融・公共ソリューションにおいて、官公庁・団体向けのシステム開発、インフラ構築案件などが大きく増加したことから、6,378百万円(前期比10.6%増)となった。また、システム機器販売では、小売業の既存顧客におけるPOSシステム入替などにより、2,263百万円(同31.1%増)と大きく増加した。これは小売業を中心に、2019年10月の消費税増税前の駆け込みや人手不足を補う省人化・自動化への対応需要があったようだ。一方、ビジネスソリューションでは、製造業向け、小売業向けが前期の大型受託案件の反動等により減少したことや、物流業向け、及びその他システム開発において不採算案件が発生したことが影響し、4,774百万円(同5.7%減)にとどまった。ただし、不採算案件に対しては既に損失引当金を計上している。
サービスソリューションセグメントでは、売上高はデジタルソリューション、クラウド・インフラサービスともに拡大し9,853百万円(前期比7.0%増)、営業利益は増収に伴う利益増に加え、より付加価値の高いサービス提供型ビジネスの伸長により収益性が改善し、630百万円(同114.3%増)の増収増益となった。この結果、売上高は期初計画比0.5%増、特に営業利益は同66.0%増と計画を大きく上回った。結果、営業利益率は前期の3.2%から6.4%へと大きく上昇した。立ち上がって間もないセグメントであり、分母が小さいことから伸び率が大きくなっている面もあるが、収益性の改善が進んだほか、新事業が軌道に乗ってきたと言えるだろう。
売上高の内訳を見ると、クラウド・インフラサービスでは、クラウドサービスが既存顧客案件のクラウド化などにより増加したことや、その他サービスがデータ連携サービスやWindows10対応などから増加したことなどから、7,509百万円(前年同期比5.9%増)となった。データセンターの運営コストを引き下げる一方、より付加価値の高いサービス提供型のビジネスを増やした効果が現れ、クラウド・インフラサービスの収益性が改善した。また、デジタルソリューションも、IoT・AIが製品IoT化案件を中心に増加したほか、Web・ECサービスも堅調に推移した。AIは引き合いが多く、PoC(Proof of Concept:新しい概念や理論やアイディアの実証を目的とした検証やデモンストレーション)案件が増加したことなどから、2,343百万円(同11.0%増)となった。
プロダクトソリューションセグメントでは、売上高は組込み開発における設備・通信機器分野やデバイス開発の拡大により15,004百万円(前期比4.6%増)、営業利益は増収に伴う利益増、デバイス開発における一部案件の収益性向上などにより2,023百万円(同10.5%増)となった。この結果、期初計画比では売上高は計画通り、営業利益は8.2%増であった。この結果、営業利益率は前期の12.8%から13.5%へと上昇し、引き続き同社のセグメント中で最も高い利益率を維持している。これは、既述のとおり技術的な参入障壁が高く、独立系の同社規模で同事業を手掛ける企業が少ないためと考えられる。
売上高の内訳を見ると、組込み開発では、オートモーティブやモバイルが減少したものの、産業設備、医療機器などの産業設備分野や5G関連案件で通信機器分野が拡大したことから、8,753百万円(前期比4.8%増)となった。また、デバイス開発では、同社の得意領域である画像処理分野を中心に増加し、6,250百万円(同4.3%増)であった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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1. 2020年3月期の業績概要
2020年3月期における日本経済は、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調が続いていたが、米中貿易摩擦による影響に加え、新型コロナウイルス感染拡大による国内外の経済活動や社会生活への深刻な影響が懸念されるなど、先行き不透明感が強まっている。また、情報サービス産業界においては、企業のIT投資は堅調に推移し、特にIoT、AI、5Gなどのデジタル技術を活用したビジネスプロセスや業務プロセスを柔軟に変えていくDX、働き方改革などへの取り組みが本格化した。
このような状況のもと、同社グループでは、2020年3月期より新たな中期経営計画(2019年4月~2022年3月)をスタートさせた。「DX FIRST」をスローガンに、長年培ってきた業務ノウハウや技術力と様々な実現手段を組み合わせることによって、顧客のビジネスモデル変革と業務プロセス改革に貢献し、顧客のDX実現を先導する企業として事業成長を加速している。これまで取り組んできたIoT・AIサービスをもとにしたDX事業の拡大を図るとともに、現在の収益基盤をより確固たるものにするため、受託型から提案型へ、開発からソリューション、サービスへ軸足を移したビジネス展開に取り組んでいる。
こうした取り組みの結果、2020年3月期の業績は、売上高38,273百万円(前期比6.0%増)、営業利益3,860百万円(同15.1%増)、経常利益3,898百万円(同14.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,668百万円(同16.7%増)と大幅な増収増益となり、売上高、利益ともに過去最高を連続更新した。売上高は期初計画比0.7%増、また営業利益も同10.3%増の好決算であった。売上高は3セグメントとも増収となり、増収に加えて案件習熟度のアップ、高収益案件へのシフトなどによる収益性改善によって計画を上回る増益となった。また、売上総利益が前期比10.6%増となったのに対し、販管費が同5.9%増にとどまったことから、営業利益率は前期の9.3%から10.1%に上昇している。
プロダクトソリューションセグメント、サービスソリューションセグメントが増益に貢献
2. セグメント別概況
セグメント別の業績を見ると、ITソリューションセグメントの売上高は小売業向けシステム機器販売、官公庁・団体向けインフラ案件などが伸長し13,415百万円(前期比6.8%増)であった。一方で営業利益は、増収や一部大型案件の収益性改善による増加があったものの、不採算案件が複数発生(影響額500百万円の損失)し1,205百万円(同1.8%減)にとどまった。この結果、売上高は期初計画比1.6%増であったものの、営業利益は同3.5%減となり、営業利益率は前期の9.8%から9.0%へと低下した。
売上高の内訳では、金融・公共ソリューションにおいて、官公庁・団体向けのシステム開発、インフラ構築案件などが大きく増加したことから、6,378百万円(前期比10.6%増)となった。また、システム機器販売では、小売業の既存顧客におけるPOSシステム入替などにより、2,263百万円(同31.1%増)と大きく増加した。これは小売業を中心に、2019年10月の消費税増税前の駆け込みや人手不足を補う省人化・自動化への対応需要があったようだ。一方、ビジネスソリューションでは、製造業向け、小売業向けが前期の大型受託案件の反動等により減少したことや、物流業向け、及びその他システム開発において不採算案件が発生したことが影響し、4,774百万円(同5.7%減)にとどまった。ただし、不採算案件に対しては既に損失引当金を計上している。
サービスソリューションセグメントでは、売上高はデジタルソリューション、クラウド・インフラサービスともに拡大し9,853百万円(前期比7.0%増)、営業利益は増収に伴う利益増に加え、より付加価値の高いサービス提供型ビジネスの伸長により収益性が改善し、630百万円(同114.3%増)の増収増益となった。この結果、売上高は期初計画比0.5%増、特に営業利益は同66.0%増と計画を大きく上回った。結果、営業利益率は前期の3.2%から6.4%へと大きく上昇した。立ち上がって間もないセグメントであり、分母が小さいことから伸び率が大きくなっている面もあるが、収益性の改善が進んだほか、新事業が軌道に乗ってきたと言えるだろう。
売上高の内訳を見ると、クラウド・インフラサービスでは、クラウドサービスが既存顧客案件のクラウド化などにより増加したことや、その他サービスがデータ連携サービスやWindows10対応などから増加したことなどから、7,509百万円(前年同期比5.9%増)となった。データセンターの運営コストを引き下げる一方、より付加価値の高いサービス提供型のビジネスを増やした効果が現れ、クラウド・インフラサービスの収益性が改善した。また、デジタルソリューションも、IoT・AIが製品IoT化案件を中心に増加したほか、Web・ECサービスも堅調に推移した。AIは引き合いが多く、PoC(Proof of Concept:新しい概念や理論やアイディアの実証を目的とした検証やデモンストレーション)案件が増加したことなどから、2,343百万円(同11.0%増)となった。
プロダクトソリューションセグメントでは、売上高は組込み開発における設備・通信機器分野やデバイス開発の拡大により15,004百万円(前期比4.6%増)、営業利益は増収に伴う利益増、デバイス開発における一部案件の収益性向上などにより2,023百万円(同10.5%増)となった。この結果、期初計画比では売上高は計画通り、営業利益は8.2%増であった。この結果、営業利益率は前期の12.8%から13.5%へと上昇し、引き続き同社のセグメント中で最も高い利益率を維持している。これは、既述のとおり技術的な参入障壁が高く、独立系の同社規模で同事業を手掛ける企業が少ないためと考えられる。
売上高の内訳を見ると、組込み開発では、オートモーティブやモバイルが減少したものの、産業設備、医療機器などの産業設備分野や5G関連案件で通信機器分野が拡大したことから、8,753百万円(前期比4.8%増)となった。また、デバイス開発では、同社の得意領域である画像処理分野を中心に増加し、6,250百万円(同4.3%増)であった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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