S&P500月例レポート(20年6月配信)<5>
○5月のまとめ
→S&Pグローバル総合指数の時価総額は2兆3,000億ドル増加しました(4月は4兆9,380億ドル増、3月は7兆8,810億ドル減)。米国以外の市場の時価総額は8,380億ドル増加し(同1兆6,590億ドル増、同3兆8,130億ドル減)、米国市場は1兆4,620億ドル(同3兆2,790億ドル増、同4兆680億ドル減)増加しました。
→新興国市場は5月に1.04%上昇し(4月は9.34%上昇)、年初来では17.06%の下落、過去1年間では8.22%の下落となっています。
→先進国市場は4月に4.88%上昇し(米国を除くと4.47%上昇)、年初来では9.83%の下落(同14.98%の下落)、過去1年間では3.66%の上昇(同4.46%の下落)となりました。
○5月は4月と同様に11セクター揃って上昇し、11セクター全てが下落した3月とは正反対の結果となり、セクター間のリターンのばらつきはさらに縮小しました。パフォーマンスが最高のセクター(情報技術、6.96%上昇)と最低のセクター(不動産、0.86%上昇)の騰落率の差は6.10%(過去1年間の平均は9.38%)と、4月の12.70%、3月の24.74%から縮小しました。
○新興国市場は5月に1.04%上昇しました。4月は9.34%の上昇、3月は17.18%の下落でした。年初来では17.06%の下落、過去1年間では8.22%の下落となりました。過去2年間では16.27%の下落、過去3年間では6.38%下落しています。
→5月は24市場のうち18市場が上昇しました。これに対して4月は24市場全てが上昇し、3月は24市場全てが下落しました。ポーランドのパフォーマンスが最も良好で、5月は8.21%上昇しました。年初来では22.97%の下落にとどまり、過去1年間では24.99%下落しています。次いでパフォーマンスが良かったのはブラジルで、5月に8.12%上昇しましたが、年初来では43.41%、過去1年間では34.31%下落しています。3番目にパフォーマンスが良かったのはロシアで、5月に7.80%上昇し、年初来では23.44%下落、過去1年間では10.11%下落しています。パフォーマンスが最低だったのはチリで、5月に6.29%下落し、年初来では29.17%の下落、過去1年間では38.07%の下落となりました。2番目にパフォーマンスが振わなかったのはエジプトで、5月に4.08%下落し、年初来では25.94%の下落、過去1年間では20.66%下落しました。3番目はパキスタンで、5月に3.59%の下落、年初来では24.51%の下落、過去1年間では22.44%の下落となりました。
○先進国市場は4月に3月の14.28%安から10.98%反発した後に、5月に全体で4.88%上昇しました。米国を除くリターンは4.47%の上昇(4月は7.57%の上昇、3月は14.81%の下落)でした。年初来では9.83%の下落(米国を除くと14.98%の下落)でした。先進国市場は過去1年間では3.66%の上昇(同4.46%の下落)、過去2年間では0.32%の下落(同13.72%の下落)、過去3年間では9.94%の上昇(同7.77%の下落)となりました。
→5月は25市場のうち23市場が上昇しました。対して、4月は25市場全てが上昇しました(3月はゼロ)。パフォーマンスが最高となったのはスウェーデンで、5月に9.74%上昇し、年初来では6.53%の下落、過去1年間では11.69%の上昇となりました。2番目はデンマークで、5月に8.24%上昇し、年初来では5.09%、過去1年間では22.59%上昇しました。3番目がドイツで、5月は8.23%上昇し、年初来では11.78%の下落、過去1年間では2.27%の下落となりました。パフォーマンスが最低だったのは香港で、5月は8.33%の下落、年初来では19.03%の下落、過去1年間では19.75%の下落となりました。これに続いたのがシンガポールで、5月は0.21%の下落、年初来では20.61%の下落、過去1年間では11.58%の下落となりました。3番目は英国で、5月は0.79%の上昇、年初来では25.85%の下落、過去1年間では17.37%の下落となりました。
→注意すべき点として、日本は6.32%の上昇(年初来では8.53%の下落、過去1年間では4.05%の上昇)、カナダは3.46%の上昇(同16.65%下落、同7.50%下落)でした。
S&P 500指数
市場の注目が米国の経済再開(メモリアルデーの連休に先駆けて、大半の州が5月18日に再開)に移る中で、S&P 500指数は4月に月間ベースで1987年1月以来の上昇率を記録して、5月を迎えました。経済再開のアプローチと度合いは地域ごとに差があります。5月は当初、再開に関して消費者が戻ってくるかが重要な疑問として浮上しましたが、6月には消費者が消費活動を再開しても感染が再拡大しないのかが重大な問題となるでしょう。
週間新規失業保険申請件数は5月23日終了週時点で10週間の合計が4,080万人に達しており、ペースは鈍るとはいえ今後も増加が予想されます。第1四半期の業績を見ると、S&P 500指数の時価総額の97.1%に相当する企業が決算発表を終え、489銘柄中323銘柄で利益が予想を上回り(利益予想は50.12%引き下げられており、1対2の株式分割を行ったかのようです)、484銘柄中290銘柄で売上高が予想を上回りました。利益予想については、第2四半期は2019年末時点から46.6%、第3四半期は32.0%、第4四半期は22.0%、2020年通期は37.4%下方修正され(市場が2020年の業績を織り込んでいないのは幸いです)、2021年通期は11.6%下方修正されました。4月の個人所得は政府による移転支出の拡大を受けて(景気刺激策、失業給付の拡充など)、前月比10.5%増加しました。第1四半期は自社株買いがサプライズとなりました。95%以上が公表された段階で、実施額は予想を大幅に上回っています。現時点の公表額に基づくと、第1四半期の自社株買いは2,000億ドルの大台付近(2,000億ドルからの誤差はCEO数名の報酬額の範囲)と、過去4番目の規模に達すると予想されます。
結論として、企業は第1四半期に自社株買いを着実に実施したと言えますが、3月半ばには多数の銀行が第2四半期の自社株買い停止を発表しています。第2四半期は、情報技術セクターの一部企業やキャッシュフローが好調な消費関連企業で自社株買いの継続が見込まれるものの、大きな期待を抱いても失望に終わるでしょう。世論(と政治的見解)も自社株買いに逆風となっています。2020年5月にS&P 500構成企業の11銘柄が増配(年初来では155銘柄)、1銘柄が配当の開始(同2銘柄)、5銘柄が減配(同19銘柄)、18銘柄(同40銘柄)が配当の停止を発表しており、年間配当額は差し引きで104億ドル(年初来では278億ドル)減少しています。
S&P 500指数の5月終値は4月末の2,912.43から4.53%上昇(配当込みのトータルリターンはプラス4.76%)の3,044.31となりました。4月は12.68%の上昇(月間として1987年1月以来最高、同12.82%)、3月は12.51%の下落(月間として2008年10月以来最低、同マイナス12.35%)で、終値は2,584.59でした。過去3カ月間では3.05%の上昇(同プラス3.59%)、年初来では5.77%の下落(同マイナス4.97%)、過去1年間では10.62%の上昇(同プラス12.84%)となっています。
ダウ平均は4月末の24,345.72ドルから4.26%上昇(同プラス4.66%)し、25,383.11ドルで月を終えました。4月は11.08%の上昇(同プラス11.22%)、3月は13.74%の下落(同マイナス13.62%)で、終値は21,917.16でした。過去3カ月間では0.10%の下落(同プラス0.55%)、年初来では11.06%の下落(同マイナス10.06%)、過去1年間では2.29%の上昇(同プラス4.83%)となっています。
S&P 500指数の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は4月の2.21%(3月は5.34%)から1.63%に低下しました。年初来では2.32%、4月は2.48%、2019年は0.85%、2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962以来の最低)でした。出来高は前月比で21%減少した4月からさらに11%減少しましたが(営業日数調整後)、前年同月比では59%増と引き続き大きく増加し、過去1年間でも前年比18%増加しました。
セクター間のリターンのばらつきは縮小したと言え高止まりの状態で、5月は2カ月連続で11セクター全てが上昇しました(全セクターが下落した3月、2月とは正反対の結果)。パフォーマンスが最高のセクター(情報技術、6.83%上昇)と最低のセクター(エネルギー、0.67%上昇)の騰落率の差は6.16%と、4月の26.49%(1年平均は12.60%)から縮小しました。騰落率の差は年初来では42.78%(4月末時点で36.38%)、2019年は40.41%となっています。
5月は、情報技術が6.83%上昇で騰落率首位の座を取り戻しました。同セクターは年初来では6.66%上昇しています(2016年11月の米大統領選以降では114.92%の上昇)。コミュニケーション・サービスは6.00%上昇し、年初来では0.41%の小幅安となっています。ヘルスケアは5月に3.11%上昇し、年初来で0.84%の上昇となりました。消費関連セクターのパフォーマンスには引き続き格差が見られました。一般消費財が4.86%上昇し、年初来の騰落率(1.62%上昇)がプラスに転じた3番目のセクターとなった一方、生活必需品は1.38%の上昇で、年初来では6.37%の下落です。金融は2.43%上昇したものの、年初来ではなお24.22%下落しています。エネルギーは0.67%の上昇で騰落率最下位となり、年初来でも36.12%の下落と、S&P 500指数構成セクターの中でパフォーマンスが最低となっています。
個別銘柄の騰落状況を見ると、値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の差は縮小したとは言え、なお値上がり銘柄数が大幅に上回りました。5月は値上がり銘柄数が4月の476銘柄(平均上昇率は15.76%、3月は41銘柄で平均上昇率は6.19%)から375銘柄(同8.01%)に減少しました。10%以上上昇した銘柄数も4月の305銘柄(同21.40%、3月は6銘柄で同18.42%)から119銘柄(同14.84%)に減少しましたが、なお多数となりました。25%以上上昇した銘柄数も4月の81銘柄(3月は1銘柄)から5銘柄に減少しました。一方、値下がり銘柄数は4月の29銘柄(平均下落率は6.55%、3月は463銘柄で平均下落率は21.36%)から130銘柄(同5.18%)に増加しました。10%以上下落した銘柄数も21銘柄(同15.81%)と、4月の7銘柄(同15.71%、3月は356銘柄で同26.22%)から増加し、4月と同様に1銘柄が25%以上下落しました。
年初来の動向はやや改善したとはいえ、値下がり銘柄数がなお大きく上回っています。値上がり銘柄数は4月末時点の86銘柄(平均上昇率は9.71%)から137銘柄(同13.79%)増加し、10%以上値上がりした銘柄数も67銘柄(同23.00%)と4月末時点の34銘柄(同19.41%)に増加し、25銘柄(4月末時点は7銘柄)が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は4月末時点の417銘柄(平均下落率は23.48%)から366銘柄(同23.17%)に減少し、10%以上値下がりした銘柄数も4月末時点の333銘柄(同28.11%)から265銘柄(同30.08%)に減少し、150銘柄(同40.18%、4月末時点は175銘柄で同28.62%)が25%以上値下がりしました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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