コーポレートガバナンスはまだ道半ば

最新投稿日時:2019/10/02 12:37 - 「コーポレートガバナンスはまだ道半ば」(みんかぶマガジン)

コーポレートガバナンスはまだ道半ば

著者:鈴木 行生
投稿:2019/10/02 12:37

・7月にICGN(International Corporate Governance Network)の年次総会が東京で催された。そこで様々な議論を聴いた。コーポレートガバナンス(CG)が企業価値にいかに貢献するのか。ESGのEとSはどうか。CGにおける社外取締役の役割はいかに。これらに関連して、印象に残った点をいくつか取り上げてみたい。

・ネスレは、20年前に社会に何を還元するのか、という問いに対して、次のような答えを出した。還元はしない、共通価値を創っていく(CSV:Creating Shared Value)と決めて、以来それを実践している。共通価値は株主だけでなく、社会に対して作っていくとした。

・持続的な共通価値の創造には、エビデンスが要求される。より健康的で、よりウェルネスで、より早い成長を実現していくには、測定可能な目標を設定して実行する。それには一定のスタンダードが必要であり、究極的に成長のためには、パワフルなブランドを伸ばしていくことであると、D.フリック氏(ボードメンバー)は語った。

・GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、気候変動をどう考えるか。Climate Changeは、まさに将来世代に関わる。FD(フィデューシャリー デューティ:忠実義務)には、もっとバックボーンが必要であり、思考停止にならないような定義の明確化が必要である、と水野CIOは語る。

・GPIFは超長期投資家であり、年金という性格上、世代を超えた投資家である。例えば、運用において貸し株で利益を上げるというのは、何の意味があるのか。超長期投資家のGPIFがやることか、と自問する。

・現在5本のESGインデックスに投資しているが、運用の規模からみてパッシブにならざるをえない。将来はどうか。ESGをあらゆる企業が重視するようになって、それが定着してくれば、10年後にはESGインデックスと標準的なインデックスとの間に、違いはなくなっているかもしれない。

・では、企業に対してサイレントでよいのか。パッシブであっても、インデックスの底上げに向けて、アクティブマネジャーのようなエンゲージメントは必要である。運用機関がパッシブのフィーしかもらっていないというのであれば、ベンチマークの入れ替え、オーナーシップとしてのエンゲージメントに対して、プラスのフィーを支払うと明言した。これは画期的なことである。

・アクティブマネジャーの存在感は、どこで発揮するのか。敗者のゲーム(アクティブ運用でインデックスに継続的に劣後)では意味がない。ESGに関して、企業とのエンゲージメントを十分行っているか。それがパフォーマンスに反映する仕組みと能力を培っているか。オーナーのGPIFもまだ模索中というのが、一貫した運用プロセスの構築とその成果が問われている。

・水野CIOは、企業こそバリュークリエーターであり、GPIFはそれをサポートするバリューアクセラレーターであるという。では、GPIFの価値創造とは何か。投資家として、ポートフォリオの先にある企業価値創造に、実はパッシブを超えてもっとコミットする必要がある。アセットオーナーもアセットマネジャーも自らの価値創造に一段と邁進する必要があろう。

・塩野義製薬の手代木社長は、40年間製薬業界にあって、企業はステークホルダーのために存在する、と実感している。4つのステークホルダー(顧客、社員、地域社会、株主)のバランスが大切であって、ここに不均衡が起きるとスキャンダルが発生する。実際、いくつも起きている。

・そこで、社外取締役には、この4つのバランスをみてほしいと強調する。会社及び社長に偏向(かたより)があるのではないか、と常に疑問を投げかけてほしいという。塩野義では、取締役会の後に、これからのビジネスについて3~4時間議論しているという。

・社外取締役が本物の議論ができるようになるには2~3年かかる。これまでの知見をベースに、トップの意思決定レベルに対等に亘りあえるようになるには一定の時間を要する。手代木氏は、社長の私にチャレンジするにはかなりの努力をしてもらう必要がある、と認識しつつ、常にオープンな対話を続けている。

・その上で、社外取締役の任期については、10年が妥当であるとみている。どんな人材にも旬というものがある。長過ぎてもよくないので、3人の社外取締役が3年に1人ずつ交替していくようなローテーションが、新薬開発型の塩野義には適切なのであろう。

・荏原製作所の宇田独立社外取締役は、マッキンゼー出身で8年間社外取締役を務めている。指名委員会のメンバーとして3年、今年より取締役会議長を担当している。

・社外取締役としての素養として、3つ挙げる。第1にイシュー(その会社の課題)が分かること、第2に的確に質問ができること、第3に、その上で意見を述べることである。適任かどうかは、この3点ですぐわかるという。

・指名委員会で、本当に社長を選べるのか。この点については、まず独立のマインドを持っているか、組織から信頼されているか、とりわけ透明性が大事であるという。誰をどういう理由でノミネートしたか、その内容を的確に説明できるかが問われる。ステークホルダーのために、しっかりコミットできる力量が求められる。

・社外取締役だけの会議を開いて、役員候補、トップ候補にきてもらい、激しい議論を通して、互いにエンゲージメントしていく。そうすると実力がわかってくる。

・CGをよくすると、会社は本当によくなるのか。これは、今の日本企業にとって、やはり本質的問いである。①形ではない実体を作り込むこと、②そこそこでよしとするのではなく、徹底的に実行すること、③コミットして成果が出るまで継続することが必須であろう。

・それは、AO(アセットオーナー)、AM(アセットマネージャー)においても同じである。現在、三者のエンゲージメントはスパイラルによい方向に向かいつつある。「攻めのCG」は当たり前になってほしいが、まだ道半ばであり、一層の奮闘を期待したい。

日本ベル投資研究所の過去レポートはこちらから

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