[資源・新興国通貨8/26~30の展望] トルコリラには下落圧力が加わりやすい!?
豪ドル
8月20日、RBA(豪中銀)は6日の政策会合の議事録を公表。この会合では、政策金利を過去最低の1.00%に据え置くことが決定されました。
議事録は、「金融政策の設定のさらなる変更を検討する前に、世界や国内の経済情勢を評価することが適切だ」としたうえで、「“必要なら”一段の緩和(利下げ)を検討する」と表明。また、“超低金利やマイナス金利、国債買い入れなどの非伝統的な金融政策を導入した先進国の経験が会合で検証された”ことも議事録で明らかになりました。
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RBA議事録に豪ドルは反応薄でした。議事録では、RBAの“利下げバイアスの維持”や“当面は状況を見守るとの姿勢”が再確認されたに過ぎなかったためです。
ロウRBA総裁が24日のジャクソンホール会議で講演を行います。そこでRBAの金融政策の先行きについて新たな手掛かりが提供されれば、来週(8/26の週)の材料になりそうですが、その可能性はそれほど高くないとみられます。その通りになれば、豪ドルは引き続き、投資家のリスク意識の変化に反応しやすい地合いが想定され、リスク回避の動きが強まる場合には豪ドルは軟調に推移しそうです。
NZドル
オアRBNZ(NZ中銀)総裁は8月23日、「現在の金融政策に満足している」と語りました。RBNZは8月7日の会合で0.50%の利下げを決定。政策金利を1.50%から過去最低の1.00%に引き下げました。
市場では、RBNZの追加利下げ観測があり、それがNZドルに対する下落圧力になってきました。オア総裁の発言を受けて、利下げ観測を背景とした下落圧力はいったん緩和する可能性があります。リスク回避の動きが強まらなければ、NZドルは下げ渋るかもしれません。
カナダドル
カナダの7月CPI(消費者物価指数)が8月21日に発表されました。結果は、総合CPIが前年比+2.0%と、BOC(カナダ中銀)のインフレ目標中央値である+2%と一致。また、BOCが総合CPI以上に重視する3つのコアインフレ指標の結果は、共通値が前年比+1.9%、トリム値と中央値はいずれも同+2.1%となり、こちらも目標中央値近辺でした。
主要国中銀の多くが緩和姿勢を強めるなか、BOCはそれらとは異なり、利下げに慎重な姿勢を示しています。一方、市場はBOCが年内に利下げするとみています。世界景気の減速がカナダ景気を下押すと考えられることや、カナダの国債市場で10年債利回りが2年債利回りを下回り、逆イールド(長短金利の逆転)が発生しているためです。
7月の各種CPIがすべてインフレ目標の中央値近辺だったことで、BOCに利下げを急がせる要因は1つ減ったと考えられます。BOCが9月4日の次回会合で利下げする可能性は低くなったとみられ、そのことはカナダドルを目先下支えするかもしれません。
ただし、OIS(翌日物金利スワップ)では年内の利下げの確率が依然として約8割織り込まれており、年内に利下げするとの市場の見方は変わっていません。
トルコリラ
トルコリラは今週(8/19の週)、対米ドルで約1カ月半ぶり、対円で約2カ月ぶりの安値をつけました。 “TCMB(トルコ中銀)の預金準備率引き下げ”や“シリア情勢をめぐる懸念”を背景に、リラに対して下落圧力が加わりやすい地合いとなっており、こうした状況は当面続く可能性があります。
<TCMBの預金準備率引き下げ>
TCMBは19日、“融資の伸び率が10-20%の銀行を対象に、預金準備率を引き下げ”ました。預金準備率の引き下げによって銀行の融資が拡大する可能性があります。その場合、輸入が増加(トルコは原油の90%以上、天然ガスのほぼ100%を輸入に依存)して経常赤字が拡大するおそれがあり、市場はそれを懸念しています。
<シリア情勢>
トルコとシリア(アサド政権)の緊張が高まっています。19日にシリア北西部でトルコ軍の車列が空爆を受けました。それに対し、トルコは「アサド政権が停戦合意を破って軍事作戦を行っている」と非難。一方、アサド政権は「トルコ軍はテロ組織を支援するために越境してきた」と主張しています。
南アフリカランド
南アフリカランドは今週(8/19の週)、対米ドルや対円で堅調に推移しました。南アフリカの7月CPI(消費者物価指数。21日発表)が前年比+4.0%と、1月以来の低い伸びだったことが主な要因です。CPI上昇率が鈍化したことで、“SARB(南アフリカ中銀)は景気支援のための利下げに動きやすくなる”との見方が浮上しました。南アフリカが抱える問題のひとつに景気低迷があります。
ただ、市場では南アフリカの格下げ懸念が根強くあるため、ランドの堅調さは長続きしないかもしれません。また、米FRBの利下げ観測が後退した場合には、ランドに対して下押し圧力が加わる可能性があります。
メキシコペソ
メキシコペソは今週(8/19の週)、対米ドルで約8カ月ぶりの安値を記録。また、対円では依然として約1年2カ月ぶりの安値圏にあります。
メキシコペソが軟調な背景として、以下が挙げられます。
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・米中貿易摩擦や世界景気の先行き懸念から、新興国通貨全般に対して下落圧力が加わっていること
・メキシコの格下げ懸念やペメックス問題。ペメックスは国営石油会社であり、多額の債務を抱える
・メキシコの景気低迷。4-6月期のGDP速報値は前期比+0.1%と、かろうじて2四半期連続のマイナス成長を回避
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メキシコの4-6月期GDP確定値が8月23日に発表されます。本稿執筆時点で結果は判明していませんが、マイナス成長へと修正された場合、メキシコの景気低迷が改めて浮き彫りになるとともに、BOM(メキシコ中銀)の追加利下げ観測が市場で高まるとみられます。メキシコペソは軟調さを増す可能性があります。
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