[資源・新興国通貨4/15-19の展望] トルコリラ:多くの懸念材料あり
トルコリラ
米国はトルコに対してS-400(ロシア製の地対空ミサイルシステム)の導入をやめるように強く要請していますが、トルコは導入の方針を撤回するつもりはないようです。
エルドアン・トルコ大統領は10日、「S-400の導入は決定事項だ」と強調し、「(S-400の)納入は7月になるが、前倒しされる可能性もある」と語りました。
トルコがS-400を導入するかどうかは軍事に関わるため、米国にとって極めて重要な問題と考えられます。トルコが導入を進めれば、米国はある時点でトルコに対して制裁を発動する可能性があり、その場合にはトルコリラ安が加速しそうです。
トルコリラについては、米国とトルコの関係悪化の他にも懸念材料があります。イスタンブール市長選では、野党候補が僅差で勝利しましたが、エルドアン大統領は不正があったため無効だと主張。再選挙を求める意向を示しました。こうした行動は、政治の不透明感につながるほか、大統領が選挙管理委員会に圧力をかけているとの印象を与える可能性もあります。TCMB(トルコ中銀)の外貨準備高(ネット)の減少もトルコリラにとってマイナス材料です。
トルコリラは、下落リスクが高まりつつあるように見えます。注意が必要です。
豪ドル
RBAは4月2日の会合時の声明で、「理事会は、経済の持続的な成長を支え、長期的にインフレ目標を達成するため、動向を監視し、金融政策を設定していく」との文言を最終段落に追加しました。市場はそれを“政策スタンスが中立から緩和方向へとシフトするシグナル”と解釈し、利下げ観測が高まりました。
4月16日にRBA議事録(4/2開催分)、18日に3月の豪雇用統計が発表されます。議事録では、RBAの政策スタンスについてのヒントが示されるかに注目です。議事録が政策スタンスのシフトを感じさせる内容にならず、また雇用統計も堅調な結果になれば、利下げ観測は後退するとみられます。RBAの利下げ観測の後退は、豪ドルの上昇要因です。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は3月27日の会合時の声明で、利下げの可能性を示しました。市場では、5月8日の次回会合での利下げ観測もあります。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)では、4月11日時点で5月会合での利下げの確率が29.3%織り込まれています(据え置きは70.7%)。
NZの1-3月期CPI(消費者物価指数)が17日に発表されます。RBNZは2月の金融政策報告の中で、1-3月期のCPIは前年比+1.6%との見通しを示しました。CPIがその見通しを下回った場合、RBNZは利下げに動きやすくなるとの見方ができます。市場で利下げ観測が高まり、NZドルに対して下落圧力が加わる可能性があります。
カナダドル
米WTI先物(原油価格)が4月9日に、一時1バレル=64.79ドルへと上昇し、約5カ月ぶりの高値を記録しました。OPEC(石油輸出国機構)と非加盟主要産油国との協調減産、米国による対イラン・対ベネズエラ制裁に加えて、リビアの内戦が激化したことで、供給が一段と引き締まるとの見方が強まり、原油価格を押し上げました。
資源国通貨であるカナダドルにとって、原油価格の上昇はプラス材料です。原油価格は当面、底堅く推移するとみられ、カナダドルは下値がしっかりした展開になりそうです。
来週(4/15の週)は、カナダの3月CPI(消費者物価指数)が17日、2月小売売上高が18日に発表されます。足もとの市場の関心は、BOC(カナダ中銀)の金融政策から離れている感がありますが、CPIや小売売上高の結果次第では、BOCの利上げ観測が再び高まる可能性があります。
南アフリカランド
南アフリカランドは4月11日、対米ドルや対円で一時1カ月半ぶりの高値を記録しました。米ドルが全般的に弱含んだことで、ランドは対米ドルで上昇。対円は対米ドルの上昇にけん引されました。
一方で、今週(4/8の週)発表の南アフリカの経済指標は弱めの結果でした。3月企業信頼感指数は91.8と、2月の93.4から低下。2月鉱業生産は前年比-7.50%、2月製造業生産は前年比-1.8%と、いずれも市場予想の-3.15%、-1.4%を下回りました。
来週(4/15の週)は、17日に2月小売売上高が発表されます。足もとの南アフリカランドは、国内要因よりも米ドルの動向に左右されやすい地合いです。ただ、鉱業生産などに続いて、小売売上高も軟調な結果になれば、市場は南アフリカ景気の弱さに着目する可能性があります。その場合、ランドは下値を試す展開になりそうです。
配信元: